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「リリア!!」
バロンがそう叫べば、サルたちに囲まれていたリリアが驚いた顔でこちらを見つめた。
『バロン!!』
その声に反応し、サルたちはバロンを睨みつける。
この地方にしか生息のしない、全身が白く、手足の長いサル。その白く可愛らしい姿とは反対に、性格は悪く悪魔の使いとも呼ばれるこのサルたちは、リリアの手足や洋服をこれでもかと引っ張っている。
「サル!リリアから手を離せ!」
そう言うと、バロンは道端に落ちている少し太めの木の棒を持ち、サルのほうに向けた。
その瞬間、バロンは素早く走り出した。サル達の間をうまくぬい、サルたちの頭を木の棒で叩きながら。
その姿は軽やかな舞を見ているかのように美しく、リリアはいつのまにか見入ってしまった。
あっという間にサル達を仕留め、リリアの元に辿り着いたバロンは、リリアの顔を見つめ
「あ!しまった!」
と声を上げた。
『え?どうしたの?』
「リリアの靴持ってくるの忘れた!ごめんね?」
『あ、ははは…!そんなこと全然気にしなくていいのに!』
「だって、さっき靴見かけたのに!」
『そっか。バロン、助けてくれてありがとう!ほんとに、すっごくかっこよかったよ!』
「ふふ、あたりまえでしょ!なんたって僕ヒーローだから!それに僕、この国の王子と王女を守るって言ったでしょ?」
そう笑う姿からは、先程の強さは微塵と感じられない。
だがリリアには、そんなバロンがとてもかっこよく思えた。
「それにしても……、なんでサルに襲われてたの?」
『それはよくわからないんだけど、バロンの家の庭を散策してたらね、さっきのサルが私のこと呼んでたの』
「え?どうやって?」
『どうやってって言われても……、なんか、私のほうを振り返ったりして?』
「へぇ〜」
『それでサルに着いて行ったら、結構遠くまで来ちゃってて、引き返そうと思ったところで、サル達に囲まれちゃって……。』
「そうだったんだぁ。それで靴も落としちゃったの?」
『うん。そうなの』
「そっかぁ〜。……ところで、早く帰らないと!カイトが心配してるよ」
『あ、そうだね!』
だが、リリアの足元を見つめ、バロンは少し悩んだ。一国の王女を、裸足のまま歩かせるわけにはいかない。
バロンは少し悩んだ末、リリアの前に背を向けてしゃがみ込んだ。
「はい。リリア乗って?」
『え!?いいよ、自分で歩けるから!』
「え〜。だって王女様を裸足で歩かせるわけにいかないよ」
『だからって……。私、重たいし……』
そう言ってリリアは、しょぼんと肩をすぼめた。
「あっはは……!リリアってそんなこと気にするんだね!なんだか意外。大丈夫だよ、僕こう見えてもちゃんと鍛えてるんだからっ」
そう笑うバロンにリリアも少し安心をし、
それじゃあ……とバロンの首に手をかけ、背中に寄りかかる。
するとーー
しゃがんでいたバロンは、そのまま前によろけ、顔ごと地面に激突をしたーー。
『え!?大丈夫!??』
「ふ…はははっ!!ご、め〜ん!やっぱり無理だったみたい!」
地面に激突したにもかかわらず、何故か大笑いをしているバロンに、リリアはため息を漏らす。
『も〜!大丈夫なの?ほんとに。痛くない?』
「え?あ、そういえばちょっと痛いかも〜」
バロンは地面にぶつかった額を触る。
『も〜。……あ!じゃあ、私がおまじないしてあげる!』
「おまじない?」
『うん!……痛いの痛いの、飛んでけ〜』
そう言いながら、バロンの怪我をした額に触れ、その痛みを飛ばす動作をしたリリア。
バロンは少し目を見開くと、ほんのりと頬を染め、リリアを見つめた。
『どうしたの?痛いの飛んでった?』
「なんか……リリアって天使みたいだね」
『え?……そう、かなぁ?』
「うん!僕の天使様になってくれる?」
『え、それってどういうこと?』
「わかんない〜。」
こうしてバロンは幼いながらにリリアに恋をした……。
結局、リリアの靴がある場所まで、リリアに靴を貸してあげたバロン。隣に歩くリリアを見つめ、嬉しそうに歩く。やっとリリアの靴の場所まで辿り着くと、バロンはリリアの靴を持ち、こう言った。
「あなたが僕のお姫様ですか?」
『え?』
そう言いながら、バロンはリリアに靴を履かせる。
もちろん靴は、リリアにピッタリだ。
「わーい。僕のお姫様だぁ〜!」
そう楽しそうに喜ぶバロンに、リリアは笑いを堪えきれない。
『はははは…!何それ!』
「え〜?」
2人で笑っていれば、そこにカイトがやってきた。
「リリア!……無事で良かった!」
と少し泣き出しそうなカイトを見て、リリアも瞳を潤ませる。
「カイト〜!」
そこに空気の読めないバロンが話しかける。カイトがそちらに目を向けると
「僕、天使を見たんだ!」
そう唐突に言い放った。
「天使?」
「うん!僕の天使!」
『はぁ〜…。』
盛大にため息をつくリリアを見て、訳のわからないカイト。3人はとりあえずバロンの家に向かって歩き出した。
「バロン、ところで天使って何のことだ?」
「ふふ、リリアのことだよ!」
「リリア?」
「うん!僕の天使様なの!」
「へぇ〜…。そう言えば、なんでリリアはあんな森の奥に行ったんだ?」
『あー、それはね……』
帰りの道中、成り行きを説明するリリア。
それに対して、カイトはとても驚いた。
「あのサル達が人間を襲うなんて……。悪魔の使いと呼ばれるサル達だが、実際には臆病で人間に手を出すことなんてないはず……」
『そうなの?』
「ああ。確かに、自分よりも弱い動物に対して意地悪をすることはある。でもこの国には動物と人間の協定があるだろ?それを破ることまずしないはずだ……」
「うーん……、じゃあ何でサルはリリアを襲ったのかな?」
「わからないな……」
「僕、わかった!リリアが可愛かったからじゃない?」
『え?』
「きっとそうだよ!だって、リリアってすっごく可愛いもん」
そう屈託のない笑顔で言うバロンに、リリアは照れて顔を紅くし、カイトはあっけに取られている。
「確かに、リリアは可愛いけど」
『はぁ……。カイトまで』
そうこう話しているとやっとバロンの家に辿り着いた。
あたりはだいぶ薄暗い。バロンとリリアを送りに来た執事は、随分心配をしたようで2人が見つかると泣いて喜んだ。
「リリア!!」
バロンがそう叫べば、サルたちに囲まれていたリリアが驚いた顔でこちらを見つめた。
『バロン!!』
その声に反応し、サルたちはバロンを睨みつける。
この地方にしか生息のしない、全身が白く、手足の長いサル。その白く可愛らしい姿とは反対に、性格は悪く悪魔の使いとも呼ばれるこのサルたちは、リリアの手足や洋服をこれでもかと引っ張っている。
「サル!リリアから手を離せ!」
そう言うと、バロンは道端に落ちている少し太めの木の棒を持ち、サルのほうに向けた。
その瞬間、バロンは素早く走り出した。サル達の間をうまくぬい、サルたちの頭を木の棒で叩きながら。
その姿は軽やかな舞を見ているかのように美しく、リリアはいつのまにか見入ってしまった。
あっという間にサル達を仕留め、リリアの元に辿り着いたバロンは、リリアの顔を見つめ
「あ!しまった!」
と声を上げた。
『え?どうしたの?』
「リリアの靴持ってくるの忘れた!ごめんね?」
『あ、ははは…!そんなこと全然気にしなくていいのに!』
「だって、さっき靴見かけたのに!」
『そっか。バロン、助けてくれてありがとう!ほんとに、すっごくかっこよかったよ!』
「ふふ、あたりまえでしょ!なんたって僕ヒーローだから!それに僕、この国の王子と王女を守るって言ったでしょ?」
そう笑う姿からは、先程の強さは微塵と感じられない。
だがリリアには、そんなバロンがとてもかっこよく思えた。
「それにしても……、なんでサルに襲われてたの?」
『それはよくわからないんだけど、バロンの家の庭を散策してたらね、さっきのサルが私のこと呼んでたの』
「え?どうやって?」
『どうやってって言われても……、なんか、私のほうを振り返ったりして?』
「へぇ〜」
『それでサルに着いて行ったら、結構遠くまで来ちゃってて、引き返そうと思ったところで、サル達に囲まれちゃって……。』
「そうだったんだぁ。それで靴も落としちゃったの?」
『うん。そうなの』
「そっかぁ〜。……ところで、早く帰らないと!カイトが心配してるよ」
『あ、そうだね!』
だが、リリアの足元を見つめ、バロンは少し悩んだ。一国の王女を、裸足のまま歩かせるわけにはいかない。
バロンは少し悩んだ末、リリアの前に背を向けてしゃがみ込んだ。
「はい。リリア乗って?」
『え!?いいよ、自分で歩けるから!』
「え〜。だって王女様を裸足で歩かせるわけにいかないよ」
『だからって……。私、重たいし……』
そう言ってリリアは、しょぼんと肩をすぼめた。
「あっはは……!リリアってそんなこと気にするんだね!なんだか意外。大丈夫だよ、僕こう見えてもちゃんと鍛えてるんだからっ」
そう笑うバロンにリリアも少し安心をし、
それじゃあ……とバロンの首に手をかけ、背中に寄りかかる。
するとーー
しゃがんでいたバロンは、そのまま前によろけ、顔ごと地面に激突をしたーー。
『え!?大丈夫!??』
「ふ…はははっ!!ご、め〜ん!やっぱり無理だったみたい!」
地面に激突したにもかかわらず、何故か大笑いをしているバロンに、リリアはため息を漏らす。
『も〜!大丈夫なの?ほんとに。痛くない?』
「え?あ、そういえばちょっと痛いかも〜」
バロンは地面にぶつかった額を触る。
『も〜。……あ!じゃあ、私がおまじないしてあげる!』
「おまじない?」
『うん!……痛いの痛いの、飛んでけ〜』
そう言いながら、バロンの怪我をした額に触れ、その痛みを飛ばす動作をしたリリア。
バロンは少し目を見開くと、ほんのりと頬を染め、リリアを見つめた。
『どうしたの?痛いの飛んでった?』
「なんか……リリアって天使みたいだね」
『え?……そう、かなぁ?』
「うん!僕の天使様になってくれる?」
『え、それってどういうこと?』
「わかんない〜。」
こうしてバロンは幼いながらにリリアに恋をした……。
結局、リリアの靴がある場所まで、リリアに靴を貸してあげたバロン。隣に歩くリリアを見つめ、嬉しそうに歩く。やっとリリアの靴の場所まで辿り着くと、バロンはリリアの靴を持ち、こう言った。
「あなたが僕のお姫様ですか?」
『え?』
そう言いながら、バロンはリリアに靴を履かせる。
もちろん靴は、リリアにピッタリだ。
「わーい。僕のお姫様だぁ〜!」
そう楽しそうに喜ぶバロンに、リリアは笑いを堪えきれない。
『はははは…!何それ!』
「え〜?」
2人で笑っていれば、そこにカイトがやってきた。
「リリア!……無事で良かった!」
と少し泣き出しそうなカイトを見て、リリアも瞳を潤ませる。
「カイト〜!」
そこに空気の読めないバロンが話しかける。カイトがそちらに目を向けると
「僕、天使を見たんだ!」
そう唐突に言い放った。
「天使?」
「うん!僕の天使!」
『はぁ〜…。』
盛大にため息をつくリリアを見て、訳のわからないカイト。3人はとりあえずバロンの家に向かって歩き出した。
「バロン、ところで天使って何のことだ?」
「ふふ、リリアのことだよ!」
「リリア?」
「うん!僕の天使様なの!」
「へぇ〜…。そう言えば、なんでリリアはあんな森の奥に行ったんだ?」
『あー、それはね……』
帰りの道中、成り行きを説明するリリア。
それに対して、カイトはとても驚いた。
「あのサル達が人間を襲うなんて……。悪魔の使いと呼ばれるサル達だが、実際には臆病で人間に手を出すことなんてないはず……」
『そうなの?』
「ああ。確かに、自分よりも弱い動物に対して意地悪をすることはある。でもこの国には動物と人間の協定があるだろ?それを破ることまずしないはずだ……」
「うーん……、じゃあ何でサルはリリアを襲ったのかな?」
「わからないな……」
「僕、わかった!リリアが可愛かったからじゃない?」
『え?』
「きっとそうだよ!だって、リリアってすっごく可愛いもん」
そう屈託のない笑顔で言うバロンに、リリアは照れて顔を紅くし、カイトはあっけに取られている。
「確かに、リリアは可愛いけど」
『はぁ……。カイトまで』
そうこう話しているとやっとバロンの家に辿り着いた。
あたりはだいぶ薄暗い。バロンとリリアを送りに来た執事は、随分心配をしたようで2人が見つかると泣いて喜んだ。