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(リリアの物語)
授業が終わり、リリアは家に帰ろうと立ち上がった。
クラスではカタリナが何人かの令嬢たちと談笑をしていた。
『みなさん、ごきげんよう』
リリアはカタリナ達に挨拶をしたものの、何故か彼女たちから返事はなかった。
(聞こえなかったのかしら……)
そう気を取り直し、カイトと一緒に帰ろうと、いつものように少し離れた場所からカイトに声をかけた。
『カイト〜!』
そう呼びかければ、カイトと隣にいたティアが一斉にこちらを向いた。だが、ティアは何故かすごく悲しそうな表情でリリアを見つめた。
(……え?)
「あ、リリア!」
『カイト、そろそろ帰ろ〜』
リリアがそう言えば、近くにいたカタリナが取り巻きを連れて、リリアの元にやってくる。
「リリア様、少しよろしいかしら」
リリアを見つめ、臆する事なく声をかけるカタリナ。
『え?何かしら』
「いくらリリア様と言えど、カイト様とティアの話の最中に割り込むのはどうかと思いますの」
『え?……あ、ごめんなさいね。お話し中だったのね。』
「ええ。わかっていただけたならよろしいですわ。でもまさかティアのことを、疎ましいと思っての行動ではないですわよね?」
『え?』
カタリナと、その取り巻きは鋭い瞳でリリアを睨みつけた。それには流石のリリアも驚いた。
『え? どうしたの? みんな』
「いえ、あまりにもリリア様がティアの気持ちに対してに無神経だと思いまして」
『え……?』
「カイト様とティアの話を遮ったり、ティアに酷いことを言ったり、嫌がらせをしたり……、ご自身で酷いと思いませんの?」
『え?何それ。何かの間違いじゃないかしら?』
「まさか、シラを切るおつもりですか?」
そうカタリナが言えば周りの取り巻きたちは、一斉にリリアに向かって文句を言い始めた。
『え、ちょっと待って……』
状況が掴めず戸惑うリリア。
「きっと何かの間違いだよ」
そうリリアの肩を持つカイトに、カタリナは
「それではティアが嘘をついていると言いたいのですか?」
そう強い口調で言い放った。
「いや、嘘だとは言ってないが、ティアの勘違いではないのか?」
そうはっきりとリリアを庇うカイトに、ティアはショックを受けた。
「……カイト様。酷いですわ、私……、私……」
そう言ってクラスから走り出すティア。
「……え?」
カイトはその様子を呆然と眺めていた。
そこに騒ぎを聞きつけたリアムとバロンがやってきた。
「追いかけた方がいいんじゃない?」
バロンは走り出したティアを指さし、カイトに言った。
リアムはそれを冷たい視線で眺めると
「……ほっとけば」
そう言い放った。
カイトは少し悩み、リリアの方を向いた。
「俺はリリアのことを信じてる」
カイトはそう言い、リリアの頭を撫でるとニッコリと微笑み、ティアを追っていった。
「はぁ。あんなのほっとけばいいのに」
「だめだよ、リアム。女の子には優しくしないと?」
「……ふん」
「ところで……、リリアが嫌がらせしてたってほんと?誰か見た人はいるの?」
バロンはカタリナ達に問いかける。
そのバロンの言葉に、カタリナもその取り巻きたちも一斉に口を閉じた。
「……ですが、ティアは本当に悩んでいましたわ」
カタリナがそう言えば、リアムは冷たく笑みを浮かべた
「悩んでたのは本当でも、それかティアの勘違いだったらどうするの?リリアはこの国の王女だよ?」
「それは……!」
リアムのその言葉に、カタリナやその他の取り巻き令嬢たちは、わかりやすく動揺をした。
「ですが……!」
それでもまだ食い下がるカタリナに、バロンは優しく微笑む。
「僕はね、今まで10年近くリリアと一緒にいて、リリアが人に意地悪をしたり、人が嫌がることをやったところを見たことがないんだ。だから僕は他の人がなんと言おうとリリアの事を信じるよ」
そう屈託のない笑顔で言えば、カタリナ達も何も言えなくなってしまった。
『バロン……。ありがとう』
「で、どうするわけ?この状態」
リアムが冷たい声でカタリナを睨む。
「……今日のところは、一旦引き返しますわ。ですが、私はティアのことを信じています。いつか必ずあなたの悪事を暴いて見せますわ」
カタリナはそう宣言するとそそくさと退散して行った。
(……私、ティアの悲しむようなこと何かしたかしら)
だが、いくら考えても答えは出なかった。
「リリア、気にしなくていいよ。僕はどんな時でも絶対に君の味方だからね」
こうゆう時にこうゆう事をサラッと言えてしまうバロンに、いつもリリアは心を持っていかれる。こんなところがとてつもなく好きなのだ。
暗くどんよりした気持ちから、あっという間にリリアの心をカラッと晴れた場所に連れていってくれる。
(バロンのおかげで私は笑っていられる……)
こう感じるのは今までで何回目だろう。
……もう数えられないほど、リリアはバロンに救ってもらっているのだ。
『ありがとう』
そう笑えば、バロンは唐突にこう告げた。
「僕ね、ずっと前からリリアのことが好きなんだ。だから、命をかけても君のことを守ると誓うよ」
その瞬間、リリアは不覚にも泣き出してしまった。
嬉しい気持ちと、先程まで感じていた不安や動揺が一気に溢れ出してきた。
そんなリリアをバロンは優しく撫でる。まるでこの世で1番愛おしいものに触れているかのように、優しく。
『バロン、私も…………好き。……大好き!』
バロンはすごく驚いた。驚きすぎて、
「どうしよう、リアム……!! 僕、今幻聴が聞こえた。リリアが僕のこと大好きって!いよいよ、僕やばいのかもしれない……!」
そう言われたリアムは呆れた顔をして
「うん。たぶん、本当にやばいと思う」
そう笑った。
『……え!?待って待って!バロン、わたし本当にバロンが好きだよ?』
「リアム。ちょっと一発僕のこと殴ってくれない?」
「え? いいの?」
「うん」
そう言うとリアムは、遠慮なく本気で殴りかかる。
拳がバロンの頬に当たる! と思ったところで、バロンは瞬時にその拳を受け止めた。
「……なんで止めたの?」
「……つい反射的に? まさかこんなに本気で来ると思わなかったから。ねぇ、リアムってもしかして僕のこと嫌いだったりする!?」
「いや、別に。」
『……もう!2人とも何してるのよ!』
「あ、ごめんごめん!」
バロンは慌ててリリアの元へ向くと、リリアの前に手を差し出した。
「行こう、リリア」
そうリリアに微笑み手を差し出す姿は、リリアにはまるで本物の王子様のように見えた。
リリアはバロンの瞳を見つめ、手を握った。
リアムは少し呆れたような、それでいて少し嬉しそうな顔でそんな様子を見つめていたーー……。
(リリアの物語)
授業が終わり、リリアは家に帰ろうと立ち上がった。
クラスではカタリナが何人かの令嬢たちと談笑をしていた。
『みなさん、ごきげんよう』
リリアはカタリナ達に挨拶をしたものの、何故か彼女たちから返事はなかった。
(聞こえなかったのかしら……)
そう気を取り直し、カイトと一緒に帰ろうと、いつものように少し離れた場所からカイトに声をかけた。
『カイト〜!』
そう呼びかければ、カイトと隣にいたティアが一斉にこちらを向いた。だが、ティアは何故かすごく悲しそうな表情でリリアを見つめた。
(……え?)
「あ、リリア!」
『カイト、そろそろ帰ろ〜』
リリアがそう言えば、近くにいたカタリナが取り巻きを連れて、リリアの元にやってくる。
「リリア様、少しよろしいかしら」
リリアを見つめ、臆する事なく声をかけるカタリナ。
『え?何かしら』
「いくらリリア様と言えど、カイト様とティアの話の最中に割り込むのはどうかと思いますの」
『え?……あ、ごめんなさいね。お話し中だったのね。』
「ええ。わかっていただけたならよろしいですわ。でもまさかティアのことを、疎ましいと思っての行動ではないですわよね?」
『え?』
カタリナと、その取り巻きは鋭い瞳でリリアを睨みつけた。それには流石のリリアも驚いた。
『え? どうしたの? みんな』
「いえ、あまりにもリリア様がティアの気持ちに対してに無神経だと思いまして」
『え……?』
「カイト様とティアの話を遮ったり、ティアに酷いことを言ったり、嫌がらせをしたり……、ご自身で酷いと思いませんの?」
『え?何それ。何かの間違いじゃないかしら?』
「まさか、シラを切るおつもりですか?」
そうカタリナが言えば周りの取り巻きたちは、一斉にリリアに向かって文句を言い始めた。
『え、ちょっと待って……』
状況が掴めず戸惑うリリア。
「きっと何かの間違いだよ」
そうリリアの肩を持つカイトに、カタリナは
「それではティアが嘘をついていると言いたいのですか?」
そう強い口調で言い放った。
「いや、嘘だとは言ってないが、ティアの勘違いではないのか?」
そうはっきりとリリアを庇うカイトに、ティアはショックを受けた。
「……カイト様。酷いですわ、私……、私……」
そう言ってクラスから走り出すティア。
「……え?」
カイトはその様子を呆然と眺めていた。
そこに騒ぎを聞きつけたリアムとバロンがやってきた。
「追いかけた方がいいんじゃない?」
バロンは走り出したティアを指さし、カイトに言った。
リアムはそれを冷たい視線で眺めると
「……ほっとけば」
そう言い放った。
カイトは少し悩み、リリアの方を向いた。
「俺はリリアのことを信じてる」
カイトはそう言い、リリアの頭を撫でるとニッコリと微笑み、ティアを追っていった。
「はぁ。あんなのほっとけばいいのに」
「だめだよ、リアム。女の子には優しくしないと?」
「……ふん」
「ところで……、リリアが嫌がらせしてたってほんと?誰か見た人はいるの?」
バロンはカタリナ達に問いかける。
そのバロンの言葉に、カタリナもその取り巻きたちも一斉に口を閉じた。
「……ですが、ティアは本当に悩んでいましたわ」
カタリナがそう言えば、リアムは冷たく笑みを浮かべた
「悩んでたのは本当でも、それかティアの勘違いだったらどうするの?リリアはこの国の王女だよ?」
「それは……!」
リアムのその言葉に、カタリナやその他の取り巻き令嬢たちは、わかりやすく動揺をした。
「ですが……!」
それでもまだ食い下がるカタリナに、バロンは優しく微笑む。
「僕はね、今まで10年近くリリアと一緒にいて、リリアが人に意地悪をしたり、人が嫌がることをやったところを見たことがないんだ。だから僕は他の人がなんと言おうとリリアの事を信じるよ」
そう屈託のない笑顔で言えば、カタリナ達も何も言えなくなってしまった。
『バロン……。ありがとう』
「で、どうするわけ?この状態」
リアムが冷たい声でカタリナを睨む。
「……今日のところは、一旦引き返しますわ。ですが、私はティアのことを信じています。いつか必ずあなたの悪事を暴いて見せますわ」
カタリナはそう宣言するとそそくさと退散して行った。
(……私、ティアの悲しむようなこと何かしたかしら)
だが、いくら考えても答えは出なかった。
「リリア、気にしなくていいよ。僕はどんな時でも絶対に君の味方だからね」
こうゆう時にこうゆう事をサラッと言えてしまうバロンに、いつもリリアは心を持っていかれる。こんなところがとてつもなく好きなのだ。
暗くどんよりした気持ちから、あっという間にリリアの心をカラッと晴れた場所に連れていってくれる。
(バロンのおかげで私は笑っていられる……)
こう感じるのは今までで何回目だろう。
……もう数えられないほど、リリアはバロンに救ってもらっているのだ。
『ありがとう』
そう笑えば、バロンは唐突にこう告げた。
「僕ね、ずっと前からリリアのことが好きなんだ。だから、命をかけても君のことを守ると誓うよ」
その瞬間、リリアは不覚にも泣き出してしまった。
嬉しい気持ちと、先程まで感じていた不安や動揺が一気に溢れ出してきた。
そんなリリアをバロンは優しく撫でる。まるでこの世で1番愛おしいものに触れているかのように、優しく。
『バロン、私も…………好き。……大好き!』
バロンはすごく驚いた。驚きすぎて、
「どうしよう、リアム……!! 僕、今幻聴が聞こえた。リリアが僕のこと大好きって!いよいよ、僕やばいのかもしれない……!」
そう言われたリアムは呆れた顔をして
「うん。たぶん、本当にやばいと思う」
そう笑った。
『……え!?待って待って!バロン、わたし本当にバロンが好きだよ?』
「リアム。ちょっと一発僕のこと殴ってくれない?」
「え? いいの?」
「うん」
そう言うとリアムは、遠慮なく本気で殴りかかる。
拳がバロンの頬に当たる! と思ったところで、バロンは瞬時にその拳を受け止めた。
「……なんで止めたの?」
「……つい反射的に? まさかこんなに本気で来ると思わなかったから。ねぇ、リアムってもしかして僕のこと嫌いだったりする!?」
「いや、別に。」
『……もう!2人とも何してるのよ!』
「あ、ごめんごめん!」
バロンは慌ててリリアの元へ向くと、リリアの前に手を差し出した。
「行こう、リリア」
そうリリアに微笑み手を差し出す姿は、リリアにはまるで本物の王子様のように見えた。
リリアはバロンの瞳を見つめ、手を握った。
リアムは少し呆れたような、それでいて少し嬉しそうな顔でそんな様子を見つめていたーー……。