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兄妹達の前に現れたのは、幅がカイトと同じくらい、いやそれよりも太い、巨大なキングコブラ。キングコブラの中でも随分と大きく育った体は、全長10メートルほどあるだろう。
ニョロニョロと動くその姿を見れば、大人でも泣いて逃げ出したくなるほどに恐ろしい。
巨大なキングコブラは、長い舌ベロをひょろひょろと出したり入れたりをしながら、その鋭い瞳で兄妹達をじっと見つめた。
(俺はブラッドリー。この森に住む蛇さ。お前たちはこの国の王子と王女だな?)
「そうだよ。どうして僕たちのことを呼んだの?」
(お前、動物の言葉がわかるんだろ?俺と取引きをしないか?)
「……取引?」
(そうだ。俺は人間が嫌いだ。
はるか昔、俺はお前ら人間に森を焼かれ、すみかを追い出された。
そして奴らは、何よりも大切だった俺の妹をお前達は奪ったのだ。)
「はるか昔?森を焼いた?……君ってそんなに長生きなの?」
(あぁ。俺はその時に悪魔に助けられ、不死身の身体を貰ったんだ。お前ら人間に復讐をするためにな。)
「悪魔……?」
(あぁ。お前、名前は何という?)
「僕はカイト。」
(そっちの娘は?)
「この子は僕の妹のリリア。」
(そうか。お前にも妹がいるのか。俺はお前達人間が嫌いだ。だが、もし俺に協力するのならお前と妹の命は助けてやる。だがーー)
「だが??」
(協力しないと言うのなら、今この場でお前達を丸呑みにしてやる)
そう言うと先ほどまでの雰囲気とは一転、兄妹を睨みつけ威圧する。
「……協力って何をすればいいの?」
(国王に嘘をつき、民を騙せ。
そして、あの時と同じように、お前達人間の住む街を一つ残らず燃やしてやる)
「そっか……。じゃあ僕、協力できないや」
(なんだと!……それではお前の妹を先に食い殺してやる!!)
ブラッドリーはそう言うと、素早くリリアの元に走り出す。
カイトは大きな声で助けて!!!と叫び、リリアの上に被さった。
(助けなど来ぬ!!)
ブラッドリーは、リリアの上に被さるカイトを丸呑みにしようと、大きな口を開いた。だがリリアの投げた石がブラッドリーの顔に当たり、コントロールを失ったブラッドリーは、カイトの足に勢いよく噛みついた。
「ぐ……っ!!」
鋭い痛みに目をあけ、痛みの元を見てみれば、カイトの細い足にはブラッドリーの牙が貫通していた。
『カ……、カイト!!!』
リリアは必死にブラッドリーの頭を何度も石で殴りつける。
それに苛ついたブラッドリーは、次にリリアに噛みつこうと口を大きくあけた。噛みつかれる!そう思い目を瞑ったリリアーー。
だがその直後、不思議なことに宙を舞うような感覚に包まれた。
「リリィ!!大丈夫!?……え?」
カイトが目を開ければそこには青い空が広がっていた。
『カイトこそ……!!』
と泣き崩れているリリア。
「リリィ!目を開けてごらん。」
カイトに言われ、リリアもようやく目を開ける。
森の木々よりも、遥か高く飛ぶリリアとカイト。そして兄妹を掴む巨大な脚。
上を覗けば、真紅に輝く大きな鳥が2人を掴み、空を舞っていた。
(王子殿。王女をよくお守りになった。その勇気、賞賛に値する。)
「……痛っ。……君は、だれ?僕たちを助けてくれたの?」
カイトは痛みに顔を歪めながらも、声の主と会話を交わした。
(私の名前はアイオーン。君たち人間からは不死鳥と呼ばれる存在だ。)
「不死鳥……?」
(あぁ。王子、よく聞くと良い。このままだとお前はあと数分で死ぬだろう。奴の毒はすぐに全身に回る。)
そう言うとアイオーンは、高い丘の上にカイトとリリアを下ろした。
(だが……。私の涙には、癒しの効果がある。よく傷口に塗り込むと良い。すぐに効果は現れるだろう)
不死鳥・アイオーンは涙を流した。
「ありがとう……」
不死鳥の涙を傷口に塗り込めば、牙の貫通した足はすぐに塞がり、身体中を回っていた気怠さはすぐに解消された。
「きみ、すごいね!でも……、どうして助けてくれたの?」
(そうだな……。先代国王に感謝をしているから、とでも言っておこうか。)
「先代国王?誰のことだろ。」
(君は、そのお方によく似ている……。会えて嬉しいよ。さぁ、背中にお乗り。家まで案内しよう。)
「ありがとう。」
そう言うとアイオーンは2人をしっかりと掴み、空高く飛び立った。
「ねぇ、アイオーンは森に住んでいるの?」
(あぁ。)
「そうなんだ。さっきの……ブラッドリーは知り合い?」
(まぁ、知らないやつではないな。あいつもかつては仲間だったのだ。遥か昔、人間に妹を奪われるまではな)
「……そっか。人間は昔、動物たちに酷いことをしてしまったんだね」
(そうだな……。だが先代の国王陛下が動物と人間の橋渡しをしてくれたのだ。そして、森を追われた動物たちに新しい居場所を用意してくれた。私の仲間達も何匹も助けられたものだよ)
「そうなんだ。昔の国王様は、すごい人だったんだね」
(あぁ。そうだ。だが王子殿も必死に王女をお守りになったではないか。自分を犠牲にしてでも何かを守るということはなかなかできるものではない。)
「そうかな。リリィは、僕の命よりも大切な存在だからね」
そう言って先ほどから気絶をしているリリアを見つめる。
(そうか。王子殿に一つ忠告をしておこう。
自分の命よりも大切な存在と言えるものは、これから先もなかなか現れるものではない。
命をかけて守りたいそう思うのならば、どんな時でも相手を信じる事を忘れるでないぞ。)
「うん、わかったよ」
(さぁ、そろそろ城に着く)
「本当だ!アイオーン、助けてくれてありがとう。また会えるかな?」
(そうだな。またいつか逢えると良いな)
「うん!」
アイオーンはそう言うと、カイトとリリアを優しく城の中に降ろした。
(では王子殿、またいつか)
「うん!元気でね」
そしてアイオーンは空へ飛び立っていった。
兄妹達の前に現れたのは、幅がカイトと同じくらい、いやそれよりも太い、巨大なキングコブラ。キングコブラの中でも随分と大きく育った体は、全長10メートルほどあるだろう。
ニョロニョロと動くその姿を見れば、大人でも泣いて逃げ出したくなるほどに恐ろしい。
巨大なキングコブラは、長い舌ベロをひょろひょろと出したり入れたりをしながら、その鋭い瞳で兄妹達をじっと見つめた。
(俺はブラッドリー。この森に住む蛇さ。お前たちはこの国の王子と王女だな?)
「そうだよ。どうして僕たちのことを呼んだの?」
(お前、動物の言葉がわかるんだろ?俺と取引きをしないか?)
「……取引?」
(そうだ。俺は人間が嫌いだ。
はるか昔、俺はお前ら人間に森を焼かれ、すみかを追い出された。
そして奴らは、何よりも大切だった俺の妹をお前達は奪ったのだ。)
「はるか昔?森を焼いた?……君ってそんなに長生きなの?」
(あぁ。俺はその時に悪魔に助けられ、不死身の身体を貰ったんだ。お前ら人間に復讐をするためにな。)
「悪魔……?」
(あぁ。お前、名前は何という?)
「僕はカイト。」
(そっちの娘は?)
「この子は僕の妹のリリア。」
(そうか。お前にも妹がいるのか。俺はお前達人間が嫌いだ。だが、もし俺に協力するのならお前と妹の命は助けてやる。だがーー)
「だが??」
(協力しないと言うのなら、今この場でお前達を丸呑みにしてやる)
そう言うと先ほどまでの雰囲気とは一転、兄妹を睨みつけ威圧する。
「……協力って何をすればいいの?」
(国王に嘘をつき、民を騙せ。
そして、あの時と同じように、お前達人間の住む街を一つ残らず燃やしてやる)
「そっか……。じゃあ僕、協力できないや」
(なんだと!……それではお前の妹を先に食い殺してやる!!)
ブラッドリーはそう言うと、素早くリリアの元に走り出す。
カイトは大きな声で助けて!!!と叫び、リリアの上に被さった。
(助けなど来ぬ!!)
ブラッドリーは、リリアの上に被さるカイトを丸呑みにしようと、大きな口を開いた。だがリリアの投げた石がブラッドリーの顔に当たり、コントロールを失ったブラッドリーは、カイトの足に勢いよく噛みついた。
「ぐ……っ!!」
鋭い痛みに目をあけ、痛みの元を見てみれば、カイトの細い足にはブラッドリーの牙が貫通していた。
『カ……、カイト!!!』
リリアは必死にブラッドリーの頭を何度も石で殴りつける。
それに苛ついたブラッドリーは、次にリリアに噛みつこうと口を大きくあけた。噛みつかれる!そう思い目を瞑ったリリアーー。
だがその直後、不思議なことに宙を舞うような感覚に包まれた。
「リリィ!!大丈夫!?……え?」
カイトが目を開ければそこには青い空が広がっていた。
『カイトこそ……!!』
と泣き崩れているリリア。
「リリィ!目を開けてごらん。」
カイトに言われ、リリアもようやく目を開ける。
森の木々よりも、遥か高く飛ぶリリアとカイト。そして兄妹を掴む巨大な脚。
上を覗けば、真紅に輝く大きな鳥が2人を掴み、空を舞っていた。
(王子殿。王女をよくお守りになった。その勇気、賞賛に値する。)
「……痛っ。……君は、だれ?僕たちを助けてくれたの?」
カイトは痛みに顔を歪めながらも、声の主と会話を交わした。
(私の名前はアイオーン。君たち人間からは不死鳥と呼ばれる存在だ。)
「不死鳥……?」
(あぁ。王子、よく聞くと良い。このままだとお前はあと数分で死ぬだろう。奴の毒はすぐに全身に回る。)
そう言うとアイオーンは、高い丘の上にカイトとリリアを下ろした。
(だが……。私の涙には、癒しの効果がある。よく傷口に塗り込むと良い。すぐに効果は現れるだろう)
不死鳥・アイオーンは涙を流した。
「ありがとう……」
不死鳥の涙を傷口に塗り込めば、牙の貫通した足はすぐに塞がり、身体中を回っていた気怠さはすぐに解消された。
「きみ、すごいね!でも……、どうして助けてくれたの?」
(そうだな……。先代国王に感謝をしているから、とでも言っておこうか。)
「先代国王?誰のことだろ。」
(君は、そのお方によく似ている……。会えて嬉しいよ。さぁ、背中にお乗り。家まで案内しよう。)
「ありがとう。」
そう言うとアイオーンは2人をしっかりと掴み、空高く飛び立った。
「ねぇ、アイオーンは森に住んでいるの?」
(あぁ。)
「そうなんだ。さっきの……ブラッドリーは知り合い?」
(まぁ、知らないやつではないな。あいつもかつては仲間だったのだ。遥か昔、人間に妹を奪われるまではな)
「……そっか。人間は昔、動物たちに酷いことをしてしまったんだね」
(そうだな……。だが先代の国王陛下が動物と人間の橋渡しをしてくれたのだ。そして、森を追われた動物たちに新しい居場所を用意してくれた。私の仲間達も何匹も助けられたものだよ)
「そうなんだ。昔の国王様は、すごい人だったんだね」
(あぁ。そうだ。だが王子殿も必死に王女をお守りになったではないか。自分を犠牲にしてでも何かを守るということはなかなかできるものではない。)
「そうかな。リリィは、僕の命よりも大切な存在だからね」
そう言って先ほどから気絶をしているリリアを見つめる。
(そうか。王子殿に一つ忠告をしておこう。
自分の命よりも大切な存在と言えるものは、これから先もなかなか現れるものではない。
命をかけて守りたいそう思うのならば、どんな時でも相手を信じる事を忘れるでないぞ。)
「うん、わかったよ」
(さぁ、そろそろ城に着く)
「本当だ!アイオーン、助けてくれてありがとう。また会えるかな?」
(そうだな。またいつか逢えると良いな)
「うん!」
アイオーンはそう言うと、カイトとリリアを優しく城の中に降ろした。
(では王子殿、またいつか)
「うん!元気でね」
そしてアイオーンは空へ飛び立っていった。