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夢小説設定
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ある日、リリアはテオドールから呼び出しをされた。
呼び出された場所は学園の裏庭。他人から盗み聞きをされることのないように結界の張られた場所だ。
(なんでこんなところに呼び出されたのかしら……。テオドールが私にそんなに重要な話を……?)
そう考えつつもテオドールの到着を待つ。
少し遅れてきたテオドールは、結界の中に入ると早速本題に入った。
「急に呼び出してすまないな。単刀直入に聞くが、王女よ、聖女についてどう思う?」
『え?』
急に何を聞かれるかと思えば、あまりにも予想外な言葉に驚いてしまった。
『どう思う……と言われても……』
「本当に聖女だと思うか?」
『え?聖女と言われているのだから聖女なんじゃないの?』
「そうか……。俺は正直、聖女ティアは本物の聖女ではないと疑っている」
『でも聖女の力を持っているのよね?聖女じゃ無いと言うなら、なんなのよ』
「それはまだわからないが……。」
『治癒や魔物を追い返す能力があるのよね?そんなのできるのって聖女様くらいなんじゃないの?』
「まぁ、それはそうなんだが……。だが俺が学園に秘密で彼女の血族を調べたさせたところによると、その家系から聖女が生まれる可能性は1%未満だそうだ。」
『え?どういうこと?』
「つまり、彼女は聖女である可能性が極めて低いと言うことだ」
『だって、すごい能力持ってるのよね?だから学園側も無理言って入園させたって聞いたけど』
「そうだ。だからわからないのだよ。」
『いや、私のほうが全然意味がわからないわよ。と言うかなんで私にそんな話をしてくるわけ?』
「なんとなくだが、お前は聖女・ティアに嫌われている。」
『……え??テオドールもやっぱりそう思う?』
「あぁ。奴がバロンを引き抜こうとしているのも、お前が原因では無いかと考えている」
『……そうなのかなぁ。』
「恐らくだがな。なぁ、王女よ。俺と手を組まないか?」
『え?何するわけ?』
「それはまだわからないが共に協力し合おう。王女もこのまま、バロンが聖女の元に落ちるのは見たく無いだろ?」
『……でも人の気持ちとか変えられなくない?バロンが聖女様のこと好きになるなら、それはそれで……』
「そうか……。まぁ、返事は今すぐにとは言わないさ。よく考えてみてくれ」
『……わかったわ』
そしてテオドールと別れ、1人クラスに戻る途中。
廊下を歩いていればクラスの前で、急に聖女ティアが現れた。するとティアはびっくりする事に、自分で自分の制服に水をかけ叫んだのだーー。
「きゃーー!王女様……、酷いです。私が最近バロン様と仲が良いからと言って……」
『え?何言ってるの?』
状況が飲み込めず、オロオロとしていれば、いつのまにか辺りには人だかりが出来ていた。その中にはもちろん、バロンもーー。
「ティア?大丈夫?」
『え……』
真っ先にティアの元に走り、ティアを心配するバロンに心が深く締め付けられる。
(どうして、私じゃ無いのにーー……!)
「リリア!いくらなんでもこれは酷いよ。どうしてこんな事したの?」
悲しそうな顔をしてリリアを見つめるバロン。
『え?私が?私はそんなことやってないわ』
「酷い……!リリア様、私がバロン様を取ったからとそう仰ったじゃないですか!」
「リリア、ティアがこう言ってる。僕、リリアにこんな事言いたく無いけど、これは流石に見損なったよ」
『え……』
リリアの元から流れ落ちる大粒の涙。
(なんで……、なんでバロンは信じてくれないの?)
周りの目は厳しい。リリアを庇うものはいなかった。
「みんな、どうしたの?」
そこにやってきたリアム。
「……リリア様が、私のことが気に食わないと、私にお水を……!!」
そう言って涙を見せるティア。周りの視線はさらにリリアに冷たさを増す。
「リリア、本当なの?」
リアムはリリアの瞳をじっと見て、優しく問いかける。
(リアムもきっと……)
そう思いながらも
『私はやってない。』
ハッキリと呟いた。
「そっか。リリアはやってないんだね。僕はリリアを信じるよ」
『え…!?』
「リアム!でも…」
「ねぇ、バロン。君はリリアが聖女様に水をかけたところを見たの?」
「いや……、見ては無いけど。でもティアがそう言ってる!」
「じゃあさ、バロンは今まで、リリアが人に酷いことをした所を見たことがある?」
「……それは、ないけど。」
「じゃあ、どうして一方の意見しか聞かないわけ?」
『リアム……、ありがとう。もういいよ。』
「それに君たち、リリアはこの国の王女だよ?この国の王女に対して、そういう態度ってないんじゃないかな」
そう言えば周りの者達は身を引いた。
「行こっか、リリア。」
『うん。』
『リアム。……どうして信じてくれたの?』
「僕さ……、実は神の加護を受けた家系なんだ」
『神の加護?』
「そう。正確に言えば神判の家系って言われていて、嘘を見抜くことができるんだ。」
『へぇ〜。』
「誰かが嘘をついていると頭の中に神判の鐘が鳴るんだ。だから嘘ついてるのがすぐにわかる。」
『そうなんだ……。それってさ……、辛くないの?』
「え?」
『だって、誰かが自分に嘘ついたのがわかるのって辛くない?』
(……そう。その通り。小さな時はこの能力のせいで疑心暗鬼になっていた。もちろん人を嫌いになったし、いっそ、嘘なんてわからない方がいいに決まっている。そう思っていた。
でもどんな時でも、お世辞抜きに心から褒めてくれるリリアと出会ってから、疑心暗鬼になっていた心が溶けていった気がする。
人の嘘がわかってしまうからこそ、人の本心からの賞賛が嬉しかった。)
「昔は辛かったけど、でも今はもう大丈夫。」
『そっかぁ…。でも、もし辛くなったらいつでも言ってね?私、リアムのことすっごい大切だから!』
(ほら、リリアの心からは今も心地よい鐘の音が鳴り響いている。)
「じゃあさ、リリアにとって1番大切に思ってくれる?」
そう聞けば答えはもう知っている
『え?う〜ん……、それはどうかな。』
(少し困った鐘の音。でもそれでも、君は嘘をつかないーー。)
「ははは、知ってる。」