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次の日リリアが学園に着くと、クラスでは数人の生徒が集まっていた。
『みんな、おはよう』
「リリア様、おはようございます」
数人の生徒たちがリリアに話しかける。
「リリア、おはよう」
『バロン、おはよう。どうしたの?みんな集まって』
「今、ティアの作ったクッキーをみんなで貰っていたんだ」
(ティア……)
そう親しげにティアの名前を呼ぶバロンに、心が締め付けられる。
『そうなの。』
「リリア様も、よろしければおひとついかがですか?」
そう満面の笑みで言うティア。リリアは、とてもクッキーを貰う気持ちにはなれなかった。
『ごめんなさい。今日朝ごはんを食べ過ぎてしまって、お腹がいっぱいなの……。だから遠慮しておくわ』
「え〜、とっても美味しいのに!もったいないよ〜。ティアの作るクッキーは格別だよ?」
バロンはそう嬉しそうにティアの方を向いて微笑んだ。
「ありがとう、バロン。でも……」
いつのまにかバロンのことを呼び捨てで呼んでいるティアに、焦りが募る。
「やっぱり……リリア様には、私のような下級貴族の作ったものはお召し上がりいただけないのでしょうか」
そう今にも泣き出してしまいそうな顔をしてリリアを見つめるティア。
『え?そんなこと言ってないわ』
リリアがそう言うものの、周りの目は厳しい。
(え……?みんなどうしたと言うの?)
「リリア。ティアもそう言っているし、1枚くらい食べたらどう?」
少し困惑したようなバロンの表情に、リリアは戸惑いを隠せない。
『え……。だからお腹がいっぱいなの。今せっかくいただいても、美味しく頂けないわ』
「大丈夫だよ〜。ティアのクッキーは美味しいから、どんだけお腹がいっぱいでも美味しいに決まってる!」
『バロン……』
みんながリリアを見つめる中、しょうがなくリリアがクッキーに手を伸ばそうとした時
「リリア!」
とリアムが声をかけてきた。
『リアム……。』
「わぁ、美味しそうなクッキーだね。僕も1つ貰ってもいい?」
「もちろんですわ。」
そう微笑むティアは、横目でリリアを見つめると
「リリア様……、無理やり食べていただこうとして申し訳ありませんでした。」
伏し目がちに悲しそうな顔をしているティアに、周りはリリアのことをまるで悪役だと言わんかのように接する。そんな様子を見てリアムが
「はははっ、今日の朝食たくさん食べ過ぎたって言っていたもんね。せっかくならお腹が空いた時に食べたいよね。」
『え?うん。そうなの……。でもみんなにはうまく伝わらなかったのかしら』
そうショボンと呟けば、周りもリリアに少し同情の様子を見せる。
「リリア、そろそろ行こうか」
そう言うとリアムは、リリアの手を引いてみんなの元から離れて行った。
「リリア、大丈夫?何、あれ。」
『うん。ありがとう、リアム』
リアムは貰ったクッキーをティッシュに包み、握りつぶして、こっそりゴミ箱に捨てた。
『え!?捨てちゃうの?』
「あぁ、なんか嫌な気がするんだよね。」
『嫌な気?』
「まぁ、感覚みたいなものだから気にしないで。でもリリアも食べなくて正解だと思う。」
『そう、なのかな?でも、みんななんか怖かった』
「僕もなんだか異様な光景に見えたよ」
『でも、バロンは……』
「うん。……とにかく、しばらく様子を見よう?」
『わかった』
「リリィ、リアム!」
『カイト!もう!どこ行ってたの〜?』
「あぁ、テオドールのとこだよ。別に大した用では無かったんだが……。そう言えばバロンの姿が見えないけどどこに行ったんだ?」
「バロンなら……、ほらあそこ」
指差す先はティアの隣。ティアを囲む取り巻きの中、バロンはティアの1番近くに腰をかけて座っていた。
「珍しいな。バロンがリリィと一緒にいないなんて……」
そう口にして、しまった!とリリアの顔を覗くカイト。
リリアは何も言わずにバロンを見つめている。
「カイト、余計な事言わないでくれる?」
少し睨みをきかせカイトを見つめるリアムは、悲しげな顔をしているリリアを見てため息をついた。
『バロン、聖女様が好きなのかなー……』
「どうだろう?」
首を傾げて真面目に考えるカイトを、リアムは肘で突く。
「いや、そんなこと無いって!聖女様よりリリアのほうがバロンのこと色々知ってるし、バロンだってリリアの方が大切に思ってるはずだよ!」
『……ありがと、リアム。リアムは優しいね。』
リリアにそう褒められ、僅かに頰を染めるリアム。
だが、悲しそうに微笑むリリアを見て、リアムは悲しみの表情を浮かべた。
……手に入らなくても応援すると決めた恋ーー。
辛そうなリリアを見ていると、鍵をかけて閉まったはずの恋心が、まるで小さな箱の中で開けてくれ!と叫んでいるように感じる。
(好きなのに諦める。これは何よりも辛いことだ。だからリリアにはそうなってほしく無い。リリアの笑顔が、何よりも好きだからーー……)