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この日、カイトとリリアはバロンの家に向かっていた。
今日の為に、お城の専属シェフと共に練習をしたアップルパイを持って、リリアは微笑んだ。
「リリィ、なんだか嬉しそうだな」
『もちろんよ。この日のためにシェフとたくさんアップルパイの練習をしたんだから!早くカイトとバロンに食べてほしいわ』
「それは楽しみだな。バロンが喜ぶ顔が目に浮かぶよ」
馬車は予定よりもかなり早く進み、予想時刻よりも30分ほど早く着いた。早速、執事とともにバロンの元へと向かえば、バロンは剣術の練習の最中だった。
普段はおっとりとした可愛らしい少年だが、剣を持ち果敢に攻めていく姿は、とても普段のバロンからは想像がつかない。
「バロンは本当に剣が好きなんだな。なんだかとても生き生きしている」
『この前のバロンとはまるで別人ね』
そんな姿をしばらく見ていれば、こちらに気付いたのかバロンがかけてやってきた。
「カイト!リリア!来てたのなら声をかけてくれれば良かったのに」
「あぁ、すまない。君があまりにも真剣に練習していたから」
『うん。とっても素敵だったわ』
「ほんと?ありがとう」
「ところで今日は、リリィがアップルパイを焼いてきてくれたんだ。」
「え!ほんとに!?すっごい楽しみ!ちょうどお腹空いてた頃だし、はやく食べたいな〜」
「じゃあ、執事にお茶の準備をして貰おう。」
ところ変わって〇〇家の中庭。
まるで森をそのまま切り取ったかのような緑豊かなこの場所には、美しい花たちが咲き乱れている。
『わぁ!とっても素敵』
「そうでしょ?僕この場所がお気に入りなんだ。」
「本当に素敵だな。まるで森の中にいるようだ」
「冬になると辺り一面にアングレカムの花が咲き乱れるんだぁ〜」
『へぇ〜、アングレカムが…』
「この場所はね、ず〜っと昔のお爺さまの、とっても大切な場所に繋がる、隠し扉が隠されているんだよ!」
「へぇ〜!なんだか、ワクワクするな。もう見つけたのか?」
「それがいくら探しても全然見つからないんだよね〜。」
「そうなのか。どこにあるんだろう、気になるな…」
『隠し扉も良いけど、早くアップルパイを食べましょ?せっかく温めなおしてもらったのにまた冷めてしまうわよ』
「そうだったな。」
「わぁ〜、美味しそ〜!いただきま〜す」
バロンが大きな口でアップルパイを頬張る。その瞬間、大きな瞳を輝かせ、ほっぺたに手をやる姿に、カイトとリリアは顔を見合わせて笑った。
「お、美味しーーいっ!僕、こんなに美味しいアップルパイ初めて食べたよ!」
「そうだろ?リリィの作るアップルパイは特別に美味しいんだ」
『ふふふ、2人とも大袈裟過ぎ!』
「だって本当に美味しいんだもん!ねぇ、また今度も作ってくれる??」
『もちろんいいわよ』
そして、それから10年の月日が流れ、3人は17歳を迎えたーー。
カイトはスラっと背が伸び、幼く可愛らしい少年から美しい青年へと成長をした。サラサラとした金色の髪に、燃えるようなオレンジ色の瞳は、まるで先代国王ジャックそのものと言えるほどにそっくりだ。
リリアは、シミひとつない真っ白な美しい肌に、腰まで伸びたピンク色の髪。彼女が一つ歩けば、その足元から花が浮き上がるのではないかと錯覚するような……、まるで天使の生まれ変わりなのかと言われるほどに美しい少女に成長をした。
そしてバロンはと言うと、相変わらず少年の頃のまま、可愛らしい美男子というような……、あまり変わっていないような……。それでも身長だけは高くなったようだ。
そしてもう1人。3人には仲の良い友人ができた。
その名はリアム・ーー。
リアムは真っ白の肌に、くるくるとした真っ白の髪の毛、そしてライトブルーの瞳の持ち主。
周りからは白雪の王子と呼ばれるほどに美しい美貌を持った少年だ。
リアムを含めたこの4人は、上流貴族のみが通うことを許される〇〇学園に入学し、平和な毎日を送っていた。
「リリィ!今日もアップルパイある??」
そう嬉しそうに聞くのはバロン。17歳になった今でも、リリアの作るアップルパイが大好物の彼は、毎日のようにリリアにアップルパイをせがんでいる。
「バロン、昨日もリリィにねだってなかったかい?」
「だって美味しいんだもん〜」
『バロン、ごめんね。今日は作ってないの。』
「そりゃ、そうだよ。リリアだってそんなに暇じゃないんだから」
そう言って笑うリアム。
「わかってるけどさ〜。」
「そういえば、今日転入生が入るらしいけど聞いた?」
「そういえば俺もさっき、テオドールが言ってたのを聞いたよ」
テオドールはカイト達の通う〇〇学園の教師の1人であり、テオドール自体もかなりなのある貴族のうちの1人だ。腰まで伸ばされた緑色の髪を1つに結い、眼鏡をかけた姿がカッコ良いと生徒から人気があるが、その気難しい性格から苦手に思っている生徒も多い。
『テオドールが?なんて言ってたの?』
「伝統あるこの学園に、下級貴族が入ってくるのが許せないそうだ」
『あ〜。確かに、テオドールは貴族階級にうるさいからね〜』
「でもなんでそんな下級貴族がこの学園に入れたの〜?」
とバロンは不思議そうに首を傾げる。
「それはその子が聖女の生き残りで、聖女の力ってものを持っているから、らしいよ」
『へぇ〜。聖女様って今の時代もいたんだね〜』
「そう。随分と昔に途絶えてしまっていたはずの、聖女の力を持つ少女だから、学園としてはぜひ入園させたいわけ」
「テオドールが言うには、テオドールはその聖女様の入園をかなり反対したらしい。だが、そんな反対を押し切って、学園側が無理やり聖女様を入園させたらしいな」
『え、だってテオドールだって、この学園のかなりの権力者だよね?』
「あぁ。だからそんなテオドールの反対を押し切ってでも入園させたわけだから、相当な実力の持ち主なんだろうな」
『そうなんだ〜。』
そしてしばらくしてテオドールによって連れてこられた少女。
テオドールは明らかに不機嫌そうな顔で彼女を見ると、自己紹介をするようにと声をかけた。
「みなさん、はじめまして。私、ティアと申します。私は皆様と違い下級貴族出身で、あまり快く思わない方もいらっしゃると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
ティアと名乗った少女は、ツヤツヤのミルクティ色の髪に、金色に透き通った瞳のとても可愛らしい少女であった。
『わぁ〜!可愛い。まるで天使みたいだね』
そう隣にいるバロンに話しかければ
「え〜?そうかな?僕はリリアの方が可愛いと思うけどな〜」
バロンは屈託なく笑った。
そんな仲睦まじい様子を見てリアムとカイトは微笑みを浮かべた。
そして歯車は少しずつ歪み始めていくーー……。