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不死鳥のおかげで、無事キングコブラの毒も消えたカイト。不死鳥はそのまま、兄妹を城に送り届けた。国王は伝説とされる不死鳥の存在に驚き、カイトに質問攻めをした。
「……だから、アイオーンが助けてくれたんだ。」
「そうか。それにしても、なんと危ない事をしたんだ!わかっているのか、カイト」
「はい、父上。申し訳ありません」
「はぁ…。だが今回は動物の声が聞ける能力を持っていたからこそ起きてしまった事件だ。まだ、お前にこの能力は早すぎるのかもしれん……」
「すみません……」
「カイト。お前に物心がつき、能力を使いこなせる様になるまでは、その能力を封じ込めていた方がいいかもしれん」
「……ですが!!」
「リリアの命も奪うところだったのだぞ」
「……はい。申し訳ありません」
「まぁ、今回は2人とも無事だったから良かったものの、もし何かあったら……私もお前の母上もどれだけ悲しむことか……。」
そう言いカイトを抱きしめる国王。カイトの目に初めて涙が浮かんだ。王子とは言え、まだ8つの子供。どれだけ怖い思いを我慢していたのだろう。カイトは国王の元、声を押し殺し、シクシクと涙を流した。
後日ーー。
国王は遥か遠い国の呪術師を呼びつけた。
「カイト。しばらくの間この能力とはお別れだ」
「……はい、父上。」
そして呪術師の指導のもと、左耳にピアスを開け、呪術師の念を込めた。これによってカイトは、動物と話すことのできる能力を封じ込められた。
「今の気持ちはどうだ?」
「うーん……、なんだか不思議な感じです。でも本当にもう聞こえないのでしょうか?」
「そうだな。じゃあ、外に行き試してみよう」
そう言うと、外に向かう2人。外につけば庭園の中には、たくさんの鳥達で溢れていた。
「どうだ?鳥達の声が聞こえるか?」
(ピピピピ……、ピピ、ピピ)
「……本当に聞こえません。なんだか不思議な気持ちです」
「ははは。普通の人間には聞こえないのが当たり前なのだがな。まぁ、しばらくのうちは不便もあるかもしれぬが、すぐに慣れるだろう」
「はい、父上」
「国王陛下、アルマンド様がいらっしゃいました」
そこに執事がやってきた。
「そうか。ではカイト、私はもう行く」
「はい、父上。」
国王が立ち去るとカイトは空を見上げた。左耳のピアスを触り、もう一度鳥たちに話しかけた。
「鳥たちよ、僕の声が聞こえないのか?」
(…………)
返事はなかった。少し悲しそうな顔で空を見つめるカイト。カイトはそのまま城にいるリリアの元へ向かった。
「リリィ。一緒に散歩に行かないか?」
『カイト!もちろん行くわ!』
「今日は中庭を探索に行こう」
『うん!ところで……カイト、本当に動物とお話出来なくなってしまったの?』
「あぁ。」
『そっか……。私が野うさぎを見たいと言い出したせいで……。本当にごめんね』
「リリィのせいじゃないさ。俺のせいだ。それにまた大きくなればピアスは外してもらえる。聞こえないのは今だけだ」
『それでも……』
「リリィ。本当に気にしないでくれ。」
カイトとリリアが中庭を通れば、そこには1人の少年がいた。少年は中庭のレンガの上を片足で飛び遊んでいる。
「やぁ、ごきげんよう。」
カイトが話しかければ少年はびっくりした顔でカイトを見つめた。
「え?きみ、だれ?」
「俺はカイトだ。君は?」
「バロン!そっちの子は?」
『私はリリアよ』
「カイトとリリアね!よろしく!」
バロンと言った少年は金の髪に金色の瞳。優しい雰囲気の可愛らしい少年だ。
「ところでこんなとこで何してるんだ?」
「父上に連れられて来たんだけど、ここで待ってろって言われて…」
『へぇ、お父様が……。』
「もしかして、アルマンド様の……?」
「あー、そうそう!それ、僕のお父さん!」
「やっぱり。じゃあ君も将来、騎士になるのか?」
「え?よく知ってるね!僕、この国を守る騎士になりたいんだ!この国の王子をお守りするんだよ!」
「そうなのか。それは嬉しいな」
『そうね』
「え?どうして?」
「それは、俺がこの国の王子だから」
『私はこの国の王女よ』
「ええ!!本当に!??」
「あぁ」
「……あ、えっと!申し訳ありません!!敬語も使わずに!!」
「いいさ、そんなこと気にしなくて。ところで君、年はいくつなんだ?」
「僕は今年で7歳です!」
『じゃあ、私たちと一緒ね』
「そうだな。じゃあ、敬語は無しだ。バロン、俺の友達になってくれるか?」
「え……、本当にいいの?」
「もちろんだ。俺たち友達が全然いなくて飽き飽きしてたんだ。俺たちのことはカイトとリリアと呼んでくれ」
『そうだ!バロン!今度ご一緒におままごとしようよ』
「え?おままごと……?って何するの??」
「簡単に言えば配役を決めて、役になりきることだな。」
「へぇ〜。楽しそうだね!」
『バロンはいつも何をして遊んでるの?』
「僕はいつも剣術の練習をしているよ。あ、今度カイトも一緒にやらない?でも怒られてしまうかな」
「いや、そんなことはない。」
『カイトばっかりずるいわ。』
「リリアも一緒にやるかい?」
そう言って笑う姿は、とても可愛らしい印象だ。
『いいの??』
「うん。僕は全然いいけど…」
「リリィは辞めといた方がいいんじゃないか。父上にバレたら、きっとバロンが怒られてしまうだろ?」
『そう、よね。』
「リリア、ごめんね?でも剣術じゃなくても僕いろんな遊びを知ってるよ」
「そうだな。剣術以外にも楽しいことはいっぱいあるさ」
『ありがとう!そうよね。バロンは次はいつお城に来るの?』
「う〜ん、どうだろう。父上が次にいつ来るのか、僕にはわからないんだよね」
「そうなのか。じゃあ、俺たちがバロンのところに遊びに行ってもいいか?」
「え?いいの!?」
「あぁ。また執事から連絡してもらうよ」
「執事?さすが王子だね!」
「バロンだって、アルマンド様の息子だろう?執事の1人くらいいるんじゃないのか?」
「え?僕の家は執事なんていないよ。一流の騎士になるためには、自分のことは自分でできるようにならないといけないからね」
『さすが、〇〇家ね。私たちも見習わなくちゃ』
「そうだな、俺たちも見習わないとな」
「そんなすごいことじゃないよ。王子と王女って、かなり勉強ができないといけないんだろ?父上が言っていたよ」
『確かに、毎日お勉強ばかりで、大変は大変よね』
「そうだな。勉強は俺よりも妹のリリィの方が得意なんだ。」
「そうなの?じゃあ、リリアはすごく賢いんだね。」
『ふふふ、そんなに褒めても私、アップルパイくらいしか作ってあげられないわよ?』
「え!アップルパイ作れるの??僕アップルパイ大好きなんだ!」
「リリィのアップルパイは格別だよ。今度バロンにも作ってあげたらどうだ?」
『ええ。もちろんいいわよ。』
「ほんと!?僕すっごく楽しみっ!」
「バロン、もう帰るぞ」
そう呼ぶのは、アルマンド。この国の1番騎士として名高い男だ。短く切り揃えられた金色の髪に、鋭い瞳、たくましい腕。いかにも騎士と言った風貌の彼は、自身の息子を呼ぶと、そこに王子と王女がいることに気が付いた。
「これは失礼致しました。まさかバロンが殿下とご一緒だとは…。」
「いや、大丈夫だ」
「バロンが失礼なことをしていませんでしたか?」
「バロンはもう俺の友達だ。気にしないでくれ。」
『そうね。ところで今度そちらにお邪魔してもよいかしら?』
「それは、もちろんでございます。」
「やったぁー!」
嬉しそうに笑うバロンに、微笑むアルマンド。
そしての日は、バロンの家に遊びに行くと約束を取り付け、バロンと別れた。