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1.プロローグ
何百年も昔の話ーー。
先代国王は、とても優しい青年だった。まだ王国は成り立っておらず、人々は自由に土地を奪い合い、動物達の住む森を壊しては動物達を無惨にも死に追いやった。
それに嘆き悲しんだ1人の青年。名前をジャック・カルロイと言った。ジャックは金色の髪にオレンジの瞳。誰もが羨む美しい青年だ。彼には1つ、特殊な能力があった。それは動物と会話ができること……。
その頃の人々は、森を追われた動物たちが、たびたび村を襲うことに悩まされていた。ジャックは自らの能力を使い、動物と人間の間で掟を作ることに成功した。人々と動物は共存することを選んだのだ。
その時、1人の青年も協力者として作戦に加わった。
その名はウィリアム。彼はとても剣術に長けていた。ジャックは、彼を戦士としても友人としても絶大的に信頼していた。
そしてそんな功績を称され、この国の王として認められたジャック。彼は、天使と呼ばれた少女と恋をする。
天使の名前はミラ。2人は互いに愛し合っていた。それだけは紛れもない事実だった。
だがーー、この恋は長くは続かなかった。
ジャックはこの国に1人しかいないと呼ばれる聖女と婚姻を結んだのだ。悲しみにくれた天使・ミラは、天に舞い戻った。そして、ジャックは聖女と正式に結ばれたのだ。
聖女と呼ばれた少女の名前はティア。淡いピンク色の髪に、ピンク色の瞳。彼女はこの世のものとは思えないような、美しい女性だった。
そして先代国王ジャックと聖女ティアは、カルティア王国と言うめ平和な国を作り上げたのだ。
それから何百もの年月を経て、カルティア王国に双子の王子と王女が生まれた。
兄の方は、先代国王・ジャックを思い起こすような金髪の髪にオレンジ色の瞳ーー。彼は、カイトと名付けられた。
そして妹の方は、ピンク色の髪にピンクの瞳。まるでおとぎの世界から出てきたような可愛らしい赤ん坊。彼女はリリアと名付けられた。
2人は年と共にどんどんと美しく、カイトは先代の国王陛下・ジャックに、そしてリリアは先代の聖女・ティアに似ていった。
2人が7歳になったある日の事ーー。
リリアがどうしても野生のウサギを見たいと言い出した。カイトはその願いを叶えるべくリリアを連れ、森へ向かった。
森にはさまざまな動物達が住んでいた。野ウサギやリス、たぬきやシカなど……、お城の中では見ることのできない動物達に興奮する2人。
「リリィ、どうだい?野生の動物は」
『とっても素敵!』
「それは良かった!でも早く帰らないとみんな心配する。そろそろ行こう」
『えー!私、もっとここにいたい!』
「リリィ…、じゃあ後5分だけだぞ?」
『やったぁ!カイトだいすきっ!』
「リリィは本当に困った妹だな。」
『ふふふっ』
しばらくすると、森の中から動物の鳴き声が鳴り響く。リリアには動物の鳴き声にしか聞こえない。だがカイトにはその声がはっきりと聞こえた。
(こっちにおいで……坊や達……。)
「誰だろう……。誰かが俺たちを呼んでいる」
『え?私には何も聞こえないけど……』
「行ってみよう。」
『うん!』
そして森の奥へ進んでいく2人。明るく陽が照らしていた、先ほどの森の入り口とは違い、奥に行けば行くほど暗くどんよりとした空気があたりを包む。
『カイト、私怖い……。』
「大丈夫だ、リリィ。僕が守ってあげるから」
(そう…。こっちだよ。その道をまっすぐ進むんだ)
声の通りに進んでいくカイトと、それにくっついていくリリア。気づけば2人は森の奥深くまでやってきていた。
『カイト、もう帰ろう……!』
「いや、誰かが俺たちを呼んでいるんだ」
『でも……』
(もうすぐだよ。坊やたち。)
「ほら、もうすぐだって言ってる」
『……カイト。』
そして更に森の奥深くまで進んでいくと、開けた場所にたどり着いた。あたりは木が覆っていて真っ暗だ。カイトの腕に抱きつくリリア。
(よく来たね……。待っていたよ)
「ここだ。……君は誰だ?」
カイトがそう尋ねれば、兄妹をここまで呼び寄せたものが、ゆっくりと姿を現した。
兄カイトと同じくらいの幅に、10メートルはあるであろう、キングコブラの中でもかなり大きなその姿。
ニョロニョロと動くその様子を見れば、大人でも泣いて逃げ出したくなるほど恐ろしい。
巨大なキングコブラは、長い舌ベロをひょろひょろと出したり入れたりしながら、その鋭い瞳で兄妹達をじっと見つめた。
(俺はブラッドリー。この森に住む蛇さ。お前たちはこの国の王子と王女だな?)
「あぁ。どうして俺たちのことを呼んだんだ?」
(お前、動物の言葉がわかるんだろ?俺と取引きをしないか?)
「取引?」
(俺は人間が嫌いだ。はるか昔、俺はお前ら人間に森を焼かれ、すみかを追い出された。そして何よりも大切だった俺の妹をお前達は奪ったのだ。)
「はるか昔?森を焼いた?君ってそんなに長生きなのか?」
(あぁ。俺はその時に悪魔に助けられ、不死身の身体を貰ったんだ。お前ら人間に復讐をするためにな。)
「悪魔……?」
(あぁ。お前、名前は何という?)
「俺はカイト。」
(そっちの女は?)
「この子は俺の妹のリリア。」
(そうか。お前にも妹がいるのか。俺はお前達人間が嫌いだ。だが、もし俺に協力するのならお前と妹の命は助けてやる。だがーー)
「だが??」
(協力しないと言うのなら、今この場でお前達を丸呑みにしてやる)
そう言うと先ほどまでの雰囲気とは一転、兄妹を睨みつけ威圧する。
「……協力って何をすればいいんだ?」
(国王に嘘をつき、民を騙せ。そして、あの時と同じように、お前達人間の住む街を一つ残らず燃やしてやる)
「そっか……。じゃあ俺は協力できないな」
(なんだと!……それではお前の妹を先に食い殺してやる!!)
キングコブラはそう言うと素早くリリアの元に走り出す。カイトは大きな声で助けて!!!と叫ぶとリリアの上に被さった。
(助けなど来ぬ!!)
キングコブラが、リリアの上に被さるカイトを丸呑みにしようと、大きな口を開き、勢いよく口を閉じた。
「ぐ……っ!!」
痛みを感じたのは足。キングコブラの鋭い牙がカイトの細い足を貫通していた。
『カ……、カイト!!!』
だがその直後、不思議なことに宙を舞うような感覚に包まれる。
「リリィ!!大丈夫か!?……え?」
カイトが目を開ければそこには青い空が広がっていた。
『カイトこそ……!!』
と泣き崩れているリリア。
「リリィ!目を開けて。」
カイトに言われ、リリアも目を開ける。森の木々よりも高く、飛ぶリリアとカイト。そして兄妹を掴む巨大な脚。
上を覗けば、真紅に輝く大きな鳥が2人を掴み、空を舞っていた。
(王子殿。王女をよくお守りになった。その勇気、賞賛に値する。)
「……君は、誰だ?俺たちを助けてくれたのか?」
(私の名前はアイオーン。君たち人間からは不死鳥と呼ばれる存在だ。)
「不死鳥……?」
(あぁ。王子、よく聞くと良い。お前はあと数分で死ぬだろう。奴の毒はすぐに全身に回る。)
そう言うと高い丘の上にカイトとリリアを下ろす。すると不死鳥・アイオーンは涙を流した。
(だが……。私の涙には、癒しの効果がある。よく傷口に塗り込むと良い。すぐに効果は現れる)
「ありがとう。」
不死鳥の涙を傷口に塗り込めば、牙の貫通した足はすぐに塞がり、身体中を回っていた気怠さはすぐに解消された。
「きみ、すごいな!だが、どうして助けてくれたんだ?」
(そうだな……。先代国王に感謝をしているから、とでも言っておこうか。)
「先代国王?誰のことだろう……」
(君は、そのお方によく似ている……。会えて嬉しいよ。さぁ、背中にお乗り。家まで案内しよう。)
「ありがとう。」
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