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人混みが嫌いで、いつもみんなより
2本ほど早い電車で通学しているわたし。
私の降りる駅までは4つの停車駅を通過する。
そして、この電車には
毎日同じ時間、同じ駅から乗ってくる男の子がいる。
青い髪に青い瞳、アシメに切り揃えられた前髪の彼は
どちらかと言えば
少し大人しそうな顔。
いつも車両の1番端っこの席に座るわたしに対して
反対側のドアの近くに座り
今日も本を読んでいる男の子。
最初はただ
いつも同じ電車だな〜…
この子も人混み嫌いなのかな〜…なんて
そんな程度だったはずなのに
なんだか毎日見ているうちに
いつのまにか、恋をしてしまった…。
毎日会っているのにお互い名前も知らない。
それなのに毎日、毎日、
その男の子のことを考えてしまう……。
『はぁ〜…。ほんと無理〜』
カナ「恋ですね〜。
てかそろそろ名前くらい聞けばいいじゃん〜」
そうわたしに話しかけてくるのは、
同じ高校のカナ。
カナは毎日のように聞かされているこの恋バナに
今やそれほど興味もなさそうだ。
『そんな簡単に聞けたらこんな悩まないってば〜。』
カナ「え〜。カナなら普通に声かけるけどな〜」
『そうゆうとこ、本当尊敬する〜。
あ〜、もう、本当どうしよ〜…』
カナ「どうしようも、こうしようも
(名前)が行動起こさなきゃ何も変わらなくない?」
『ごもっとも過ぎて、ぐうの字も出ません〜』
カナ「とりあえず挨拶から始めれば?」
『え!?ハードル高くない!?
急に知らない人からおはようございますとか
言われたらびっくりしない??』
カナ「えー。じゃあ、単刀直入に名前聞けば?」
『そんな簡単じゃないってば〜』
カナ「そ〜?」
とは言いつつ、
いつまでもこのままじゃいけないのは
自分でも痛いほどわかっていて…
明日こそ、明日こそ…と思いつつ
どんどん月日は流れていった。
ある日
いつも同じ駅で降りる彼が
電車から降りていくのを眺めつつ
自分も降りようと席を立てば
男の子が本を忘れていることに気がついた
(あ…、これあの子の…)
どうしようと考える暇もなく
とりあえず本を持って電車を降りた
急いで男の子を見つけようと辺りを見渡したが
男の子の姿はもうどこにもない…。
(……うわ、どうしよう。……明日渡すしかないよね)
そう思いつつ、ふと、本を眺める。
(っていうか…この本、
わたしがこの前読んでたのと同じだ。)
そして緊張したまま、次の日を迎えた
(わー…どうしよう。今日渡さなきゃ…。
なんて言って渡せばいいんだろ…
てかいつのタイミングで渡そう…)
そんなことが頭の中をループする
(もういっそのこと、あの子のいつも座る場所に
本を置いて逃げ出したい…。)
緊張しすぎてそんなことばかり考えていれば
いつのまにか男の子は
いつもの場所に座っていた
今日は本も読まずに
少し退屈そうにしている男の子
(って、わたしが本持ってるんだった…
渡さなきゃ……!)
電車の中にはわたしと男の子
それと少し離れた席におじさんが数人…
ガラガラの車両の中
意を決して男の子の元に向かった
『あの…すみません。昨日たぶん
これ、忘れてったと思うんですけど…』
と男の子の前に本を差し出した
男の子はわたしの顔をしっかりと見つめ
勇次郎「あ、ありがとうございます。」
と少しキョトンとした顔で言った。
『いえ、じゃあ…』
と立ち去ろうと思ったのだが
ふと頭の中で
カナの言っていた言葉が浮かんできた
カナ(どうしようも、こうしようも
(名前)が行動起こさなきゃ何も変わらなくない?)
『あの…、この小説好きなんですか?』
勇次郎「え。……と言うか、ただ気になって…」
『そう、なんですか…』
(だめだ…、話続かない…)
勇次郎「前、これ読んでたよね?」
『え?』
勇次郎「なんかすごい真剣に読んでたから、そんなに面白いのかと思って」
『……え!』
(わたし、まさかの認知されてたんだ…!)
『あ、そうです。これ今、上ですよね?
この下がもう、めちゃくちゃ面白くて…!』
勇次郎「へぇ〜。じゃあ、今度これ読み終わったら借りてもいい?」
『え?』
勇次郎「あ、ごめん。嫌なら全然、大丈夫なんだけど」
『いや、嫌とかじゃ全然無いです!』
勇次郎「そっか。僕、勇次郎。きみ、名前は?」
『勇次郎…くん。わたしは、(名前)!』
勇次郎「(名前)ちゃんね。よろしく。」
『えっと…よろしくお願いします!』
勇次郎「あ、もうすぐ停車駅だよね。」
『あ、ほんとだ!』
そう言って2人いっしょに駅に降りた。
なんとなく流れで一緒に改札まで出ると
勇次郎くんは少し遠慮がちに
勇次郎「じゃあ、ね。」
と手を振ってくれた
『あ、はい!』
とこちらはペコリとお辞儀をして別れた。
(やばいやばいやばいやばいやばい!!!
名前聞いちゃった!
ってか、めっちゃ喋っちゃった!)
『あの子…、勇次郎くんって言うんだ…。』
自然と顔はほころんだ。
そして次の日…
いつもの電車に乗った。
しばらくして乗ってくる勇次郎くん。
入ってきた瞬間、バチっと目が合うと
勇次郎くんは私に向かって
勇次郎「おはよう」
と言ってくれた
いつもの場所ではなく
わたしの1つ開けてその隣に座る勇次郎くん
『おはよう…ございます。』
少しぎこちないけど勇次郎くんに挨拶ができた。
勇次郎「(名前)ちゃんって何年生なの?」
『えっと、1年生です』
勇次郎「じゃあ、一緒だね。」
『そうなんですか…!』
勇次郎「なんで敬語なの?」
『え?なんででしょう……』
勇次郎「タメなんだから、タメ語でよくない?」
『あ、ありがとう!じゃあタメで…!』
それ以降続く沈黙……
(う…、気まずい……。何か話しかけなきゃ…)
そう思うもののテンパったわたしの中で
会話なんて出てくるわけもなく…
ただぼーっと外を眺めるフリをする私
(あー…だめだ。これじゃ明日から
また話しかけてもらえなくなっちゃう…)
そう思って意を決して口を開く
『あ、あの!勇次郎くんはえ〜っと…
好きな…』
(好きな人とかいるんですか……?)
そう言いかけて口を閉じる
(いやいやいや、
そんなこと急に聞いたら変なやつじゃん!!)
『え〜っと…、好きな…こと!とかある?』
勇次郎「好きなこと?甘いものとか好きだから
カフェ巡りとか好きかも」
『そうなんだ!わたしもカフェ巡り結構よく行くよ!
あ、この前もねすっごいとこ見つけたんだ!』
とちょうどカナと行ったカフェを思い出し
携帯でその時の画像を探すわたし
勇次郎「そうなんだ。すごいとこって?」
『ほら!これ見て!』
と見せたのはジョッキサイズのパフェ。
勇次郎「あ、ここ知ってる。結構有名なとこだよね?全部食べれた?」
『そう!一緒に行った子、
コーヒーもブラックしか飲めないとか言うくらい
甘いもの苦手で、全然食べてくれなくて…
1人じゃ完食できなかったんだぁ〜。』
勇次郎「……そうなんだ。」
『うん。』
そして次の日からしばらく
電車で勇次郎くんを見かけることは無くなった
(今日もいない……。電車の時刻、変えたのかな
わたし、何か変なこと言ったかな…)
ネガティブな感情に心の中が支配されていく…
『あぁ〜…、しんど。』
カナ「そーゆう時は、やっぱカラオケっしょ♪」
そしてカナに連れられカラオケにやってきた。
思う存分歌って、ハメを外して
気づけばもう8時…。
自転車通学のカナとはその場で別れ
私はいつもよりだいぶ遅い電車に乗ることになった
(あ〜…、だいぶ遅くなっちゃったなー…。)
電車が来るまであと10分ほど…。
駅のホームで1人立って待っていれば
20代くらいのお兄さんが声を掛けてきた
ナンパ師「ねぇ、君可愛いね。番号教えてくれない?」
『あ…、どうも。』
適当に流しているのに
なかなかどっかに行ってくれないナンパ師に
困り果てていれば
勇次郎「(名前)!売店の前で待っててって言ったじゃん。」
『え?勇次郎くん。あ、ごめん』
勇次郎「この人誰?」
『え?誰だろ…?』
ナンパ師「俺はハルトだよー♪え?もしかして…彼氏持ち?」
『え?』
勇次郎「そうだけど。だから他の人当たってもらってもいいですか?」
ナンパ師「まじかよ〜。超ショック〜」
そう言いつつナンパ師はどこかへ立ち去った
『勇次郎くん、ありがとう!』
勇次郎「いや、別に。
それにしてもこんな時間にいるなんて珍しいね」
『あー、ちょっと友達とカラオケ行ってたんだぁ〜』
勇次郎「それって、この前言ってた
ブラックコーヒーしか飲めない子?」
『そーそー!よく覚えてるね〜』
勇次郎「そっか…」
そう言えば
なんとなく勇次郎くんの顔が少し曇った気がした
『勇次郎くんはいつもこの時間なの?』
勇次郎「そうだよ。」
『そうなんだ。遅いね』
勇次郎「まぁね、」
何故か気まずい空気が流れる私たち……
『……最近、勇次郎くん朝いないよね?』
勇次郎「え?あぁ…。次の電車でも間に合うから
最近は一本遅らせてるんだ」
『そう、なんだ〜』
(え…、なんで?今まであんなに早く行ってたのに?)
そのまま2人隣の席に座ったものの
話すこともなく
もうすぐ勇次郎くんの降りる駅…
(……だめだなぁ…。せっかく接点ができたと思ったのに…。)
1人ネガティブなことを考えていれば
勇次郎くんが神妙な顔で話し出した
勇次郎「あのさ…、(名前)ちゃんって彼氏いるの?」
「え…?」
その予想外の質問にびっくりする私
「彼氏なんていないよ!なんで?」
勇次郎「いや、この前、カフェに一緒に行った子って
男なのかなって思って」
「え…?カフェに行った子?」
勇次郎「うん。コーヒーもブラックしか飲めないって言ってたでしょ?」
「あぁ!カナのことかっ!そうそう!
ブラックコーヒーしか飲めないなんて、なんか大人だよね〜」
勇次郎「え?女の子なの?」
「うん!そうだよー」
勇次郎「そっか……。あのさ……」
車内アナウンス「まもなく駅に到着します……」
何かを話しかけようとした勇次郎を
車内アナウンスの音がかき消した。
勇次郎くんは、ハッとした顔をして
勇次郎「また明日ね」
と言って電車を出た
(また明日……かぁ……)
そして次の日。
いつもの時間に電車に乗った私。
しばらくして勇次郎くんがやってきた。
勇次郎「おはよう。」
「おはよ!」
そう言って私の隣に座った勇次郎くん。
でも勇次郎くんは一言も話すことはなく……
あっという間に降りる駅に着いてしまった
駅に降り、階段を登ろうと歩き出せば
何故か勇次郎くんに手を引かれた。
「え?」
勇次郎「ちょっと、いいかな」
あたりの人たちが階段を登り、
駅のホームに人気がなくなると
勇次郎くんは駅のホームのベンチに腰掛けた
(………どうしたんだろ)
そう思って勇次郎くんを眺めていれば
勇次郎くんはゆっくりと話し始めた
勇次郎「あのさ、変なこと言うんだけど聞いてくれる?」
「変なこと?うん。」
勇次郎「僕……、実は結構前から
ずっと(名前)のこと気になってて……
……と、とにかく好きなんだけど。(名前)のこと」
「……え?」
勇次郎くんが私を好き?
そんな夢みたいなことある?
そんなことを思いながら
ぽけーっと勇次郎くんを見つめていれば
痺れを切らした勇次郎くんが
勇次郎「……返事聞きたいんだけど」
そう私から視線を逸らして呟いた。
「え、えっと……私もずっと前から好きでした!」
そう言えば勇次郎くんは、少し驚いた顔をした。
勇次郎「え、本当?」
「……うん。たぶん私の方が勇次郎くんより
もっと前から好きだと思う!」
勇次郎「……どうかな。」
そう微笑む勇次郎くんは
「また後で連絡して。」
そう言ってコソッと私に番号の書かれたメモを渡した。
そして私の耳元に手を添え
勇次郎「好きだよ」
そう小さな声で呟くと勇次郎くんは
1人先に階段を登り行ってしまった。
(……え!!何これ、反則じゃない!?)
ほてる顔を手で押さえながら、
ベンチに座り込んだ私。
そして、2人の恋が始まったーー
終わり
人混みが嫌いで、いつもみんなより
2本ほど早い電車で通学しているわたし。
私の降りる駅までは4つの停車駅を通過する。
そして、この電車には
毎日同じ時間、同じ駅から乗ってくる男の子がいる。
青い髪に青い瞳、アシメに切り揃えられた前髪の彼は
どちらかと言えば
少し大人しそうな顔。
いつも車両の1番端っこの席に座るわたしに対して
反対側のドアの近くに座り
今日も本を読んでいる男の子。
最初はただ
いつも同じ電車だな〜…
この子も人混み嫌いなのかな〜…なんて
そんな程度だったはずなのに
なんだか毎日見ているうちに
いつのまにか、恋をしてしまった…。
毎日会っているのにお互い名前も知らない。
それなのに毎日、毎日、
その男の子のことを考えてしまう……。
『はぁ〜…。ほんと無理〜』
カナ「恋ですね〜。
てかそろそろ名前くらい聞けばいいじゃん〜」
そうわたしに話しかけてくるのは、
同じ高校のカナ。
カナは毎日のように聞かされているこの恋バナに
今やそれほど興味もなさそうだ。
『そんな簡単に聞けたらこんな悩まないってば〜。』
カナ「え〜。カナなら普通に声かけるけどな〜」
『そうゆうとこ、本当尊敬する〜。
あ〜、もう、本当どうしよ〜…』
カナ「どうしようも、こうしようも
(名前)が行動起こさなきゃ何も変わらなくない?」
『ごもっとも過ぎて、ぐうの字も出ません〜』
カナ「とりあえず挨拶から始めれば?」
『え!?ハードル高くない!?
急に知らない人からおはようございますとか
言われたらびっくりしない??』
カナ「えー。じゃあ、単刀直入に名前聞けば?」
『そんな簡単じゃないってば〜』
カナ「そ〜?」
とは言いつつ、
いつまでもこのままじゃいけないのは
自分でも痛いほどわかっていて…
明日こそ、明日こそ…と思いつつ
どんどん月日は流れていった。
ある日
いつも同じ駅で降りる彼が
電車から降りていくのを眺めつつ
自分も降りようと席を立てば
男の子が本を忘れていることに気がついた
(あ…、これあの子の…)
どうしようと考える暇もなく
とりあえず本を持って電車を降りた
急いで男の子を見つけようと辺りを見渡したが
男の子の姿はもうどこにもない…。
(……うわ、どうしよう。……明日渡すしかないよね)
そう思いつつ、ふと、本を眺める。
(っていうか…この本、
わたしがこの前読んでたのと同じだ。)
そして緊張したまま、次の日を迎えた
(わー…どうしよう。今日渡さなきゃ…。
なんて言って渡せばいいんだろ…
てかいつのタイミングで渡そう…)
そんなことが頭の中をループする
(もういっそのこと、あの子のいつも座る場所に
本を置いて逃げ出したい…。)
緊張しすぎてそんなことばかり考えていれば
いつのまにか男の子は
いつもの場所に座っていた
今日は本も読まずに
少し退屈そうにしている男の子
(って、わたしが本持ってるんだった…
渡さなきゃ……!)
電車の中にはわたしと男の子
それと少し離れた席におじさんが数人…
ガラガラの車両の中
意を決して男の子の元に向かった
『あの…すみません。昨日たぶん
これ、忘れてったと思うんですけど…』
と男の子の前に本を差し出した
男の子はわたしの顔をしっかりと見つめ
勇次郎「あ、ありがとうございます。」
と少しキョトンとした顔で言った。
『いえ、じゃあ…』
と立ち去ろうと思ったのだが
ふと頭の中で
カナの言っていた言葉が浮かんできた
カナ(どうしようも、こうしようも
(名前)が行動起こさなきゃ何も変わらなくない?)
『あの…、この小説好きなんですか?』
勇次郎「え。……と言うか、ただ気になって…」
『そう、なんですか…』
(だめだ…、話続かない…)
勇次郎「前、これ読んでたよね?」
『え?』
勇次郎「なんかすごい真剣に読んでたから、そんなに面白いのかと思って」
『……え!』
(わたし、まさかの認知されてたんだ…!)
『あ、そうです。これ今、上ですよね?
この下がもう、めちゃくちゃ面白くて…!』
勇次郎「へぇ〜。じゃあ、今度これ読み終わったら借りてもいい?」
『え?』
勇次郎「あ、ごめん。嫌なら全然、大丈夫なんだけど」
『いや、嫌とかじゃ全然無いです!』
勇次郎「そっか。僕、勇次郎。きみ、名前は?」
『勇次郎…くん。わたしは、(名前)!』
勇次郎「(名前)ちゃんね。よろしく。」
『えっと…よろしくお願いします!』
勇次郎「あ、もうすぐ停車駅だよね。」
『あ、ほんとだ!』
そう言って2人いっしょに駅に降りた。
なんとなく流れで一緒に改札まで出ると
勇次郎くんは少し遠慮がちに
勇次郎「じゃあ、ね。」
と手を振ってくれた
『あ、はい!』
とこちらはペコリとお辞儀をして別れた。
(やばいやばいやばいやばいやばい!!!
名前聞いちゃった!
ってか、めっちゃ喋っちゃった!)
『あの子…、勇次郎くんって言うんだ…。』
自然と顔はほころんだ。
そして次の日…
いつもの電車に乗った。
しばらくして乗ってくる勇次郎くん。
入ってきた瞬間、バチっと目が合うと
勇次郎くんは私に向かって
勇次郎「おはよう」
と言ってくれた
いつもの場所ではなく
わたしの1つ開けてその隣に座る勇次郎くん
『おはよう…ございます。』
少しぎこちないけど勇次郎くんに挨拶ができた。
勇次郎「(名前)ちゃんって何年生なの?」
『えっと、1年生です』
勇次郎「じゃあ、一緒だね。」
『そうなんですか…!』
勇次郎「なんで敬語なの?」
『え?なんででしょう……』
勇次郎「タメなんだから、タメ語でよくない?」
『あ、ありがとう!じゃあタメで…!』
それ以降続く沈黙……
(う…、気まずい……。何か話しかけなきゃ…)
そう思うもののテンパったわたしの中で
会話なんて出てくるわけもなく…
ただぼーっと外を眺めるフリをする私
(あー…だめだ。これじゃ明日から
また話しかけてもらえなくなっちゃう…)
そう思って意を決して口を開く
『あ、あの!勇次郎くんはえ〜っと…
好きな…』
(好きな人とかいるんですか……?)
そう言いかけて口を閉じる
(いやいやいや、
そんなこと急に聞いたら変なやつじゃん!!)
『え〜っと…、好きな…こと!とかある?』
勇次郎「好きなこと?甘いものとか好きだから
カフェ巡りとか好きかも」
『そうなんだ!わたしもカフェ巡り結構よく行くよ!
あ、この前もねすっごいとこ見つけたんだ!』
とちょうどカナと行ったカフェを思い出し
携帯でその時の画像を探すわたし
勇次郎「そうなんだ。すごいとこって?」
『ほら!これ見て!』
と見せたのはジョッキサイズのパフェ。
勇次郎「あ、ここ知ってる。結構有名なとこだよね?全部食べれた?」
『そう!一緒に行った子、
コーヒーもブラックしか飲めないとか言うくらい
甘いもの苦手で、全然食べてくれなくて…
1人じゃ完食できなかったんだぁ〜。』
勇次郎「……そうなんだ。」
『うん。』
そして次の日からしばらく
電車で勇次郎くんを見かけることは無くなった
(今日もいない……。電車の時刻、変えたのかな
わたし、何か変なこと言ったかな…)
ネガティブな感情に心の中が支配されていく…
『あぁ〜…、しんど。』
カナ「そーゆう時は、やっぱカラオケっしょ♪」
そしてカナに連れられカラオケにやってきた。
思う存分歌って、ハメを外して
気づけばもう8時…。
自転車通学のカナとはその場で別れ
私はいつもよりだいぶ遅い電車に乗ることになった
(あ〜…、だいぶ遅くなっちゃったなー…。)
電車が来るまであと10分ほど…。
駅のホームで1人立って待っていれば
20代くらいのお兄さんが声を掛けてきた
ナンパ師「ねぇ、君可愛いね。番号教えてくれない?」
『あ…、どうも。』
適当に流しているのに
なかなかどっかに行ってくれないナンパ師に
困り果てていれば
勇次郎「(名前)!売店の前で待っててって言ったじゃん。」
『え?勇次郎くん。あ、ごめん』
勇次郎「この人誰?」
『え?誰だろ…?』
ナンパ師「俺はハルトだよー♪え?もしかして…彼氏持ち?」
『え?』
勇次郎「そうだけど。だから他の人当たってもらってもいいですか?」
ナンパ師「まじかよ〜。超ショック〜」
そう言いつつナンパ師はどこかへ立ち去った
『勇次郎くん、ありがとう!』
勇次郎「いや、別に。
それにしてもこんな時間にいるなんて珍しいね」
『あー、ちょっと友達とカラオケ行ってたんだぁ〜』
勇次郎「それって、この前言ってた
ブラックコーヒーしか飲めない子?」
『そーそー!よく覚えてるね〜』
勇次郎「そっか…」
そう言えば
なんとなく勇次郎くんの顔が少し曇った気がした
『勇次郎くんはいつもこの時間なの?』
勇次郎「そうだよ。」
『そうなんだ。遅いね』
勇次郎「まぁね、」
何故か気まずい空気が流れる私たち……
『……最近、勇次郎くん朝いないよね?』
勇次郎「え?あぁ…。次の電車でも間に合うから
最近は一本遅らせてるんだ」
『そう、なんだ〜』
(え…、なんで?今まであんなに早く行ってたのに?)
そのまま2人隣の席に座ったものの
話すこともなく
もうすぐ勇次郎くんの降りる駅…
(……だめだなぁ…。せっかく接点ができたと思ったのに…。)
1人ネガティブなことを考えていれば
勇次郎くんが神妙な顔で話し出した
勇次郎「あのさ…、(名前)ちゃんって彼氏いるの?」
「え…?」
その予想外の質問にびっくりする私
「彼氏なんていないよ!なんで?」
勇次郎「いや、この前、カフェに一緒に行った子って
男なのかなって思って」
「え…?カフェに行った子?」
勇次郎「うん。コーヒーもブラックしか飲めないって言ってたでしょ?」
「あぁ!カナのことかっ!そうそう!
ブラックコーヒーしか飲めないなんて、なんか大人だよね〜」
勇次郎「え?女の子なの?」
「うん!そうだよー」
勇次郎「そっか……。あのさ……」
車内アナウンス「まもなく駅に到着します……」
何かを話しかけようとした勇次郎を
車内アナウンスの音がかき消した。
勇次郎くんは、ハッとした顔をして
勇次郎「また明日ね」
と言って電車を出た
(また明日……かぁ……)
そして次の日。
いつもの時間に電車に乗った私。
しばらくして勇次郎くんがやってきた。
勇次郎「おはよう。」
「おはよ!」
そう言って私の隣に座った勇次郎くん。
でも勇次郎くんは一言も話すことはなく……
あっという間に降りる駅に着いてしまった
駅に降り、階段を登ろうと歩き出せば
何故か勇次郎くんに手を引かれた。
「え?」
勇次郎「ちょっと、いいかな」
あたりの人たちが階段を登り、
駅のホームに人気がなくなると
勇次郎くんは駅のホームのベンチに腰掛けた
(………どうしたんだろ)
そう思って勇次郎くんを眺めていれば
勇次郎くんはゆっくりと話し始めた
勇次郎「あのさ、変なこと言うんだけど聞いてくれる?」
「変なこと?うん。」
勇次郎「僕……、実は結構前から
ずっと(名前)のこと気になってて……
……と、とにかく好きなんだけど。(名前)のこと」
「……え?」
勇次郎くんが私を好き?
そんな夢みたいなことある?
そんなことを思いながら
ぽけーっと勇次郎くんを見つめていれば
痺れを切らした勇次郎くんが
勇次郎「……返事聞きたいんだけど」
そう私から視線を逸らして呟いた。
「え、えっと……私もずっと前から好きでした!」
そう言えば勇次郎くんは、少し驚いた顔をした。
勇次郎「え、本当?」
「……うん。たぶん私の方が勇次郎くんより
もっと前から好きだと思う!」
勇次郎「……どうかな。」
そう微笑む勇次郎くんは
「また後で連絡して。」
そう言ってコソッと私に番号の書かれたメモを渡した。
そして私の耳元に手を添え
勇次郎「好きだよ」
そう小さな声で呟くと勇次郎くんは
1人先に階段を登り行ってしまった。
(……え!!何これ、反則じゃない!?)
ほてる顔を手で押さえながら、
ベンチに座り込んだ私。
そして、2人の恋が始まったーー
終わり