入学
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
事務所の雑用をしていたら
いつのまにか外は真っ暗になっていた。
「もうこんな時間…。急いで帰らないと」
事務所の鍵をかけて1人夜道を歩く
(1人で歩く夜道はなんだか淋しいし怖いな…
こんなとき勇次郎くんがいてくれたらな…)
なんて自分で避けておいて
都合の良いことを考えてしまう
繁華街を通ると20代くらいの男の人に
声をかけられた
「ねぇ、キミ超かわいいね!一緒に遊び行こうよ」
「…ごめんなさい、私未成年なので」
「ちょっとくらい大丈夫大丈夫!行こうよ〜」
しつこい相手に困っていると
「僕の彼女に何か用ですか?」
と声をかけてくれたのは
勇次郎くんだった
「勇次郎くん。」
「おいで、怖かったね」
と肩を抱き寄せられる
「なんだよ、彼氏持ちかよ」
と男性はどこかへ消えて行った
「…勇次郎くん。ごめんね、ありがとう」
「こんな時間に1人で外歩くなんてバカなの?
もし僕がいなかったらどうなってたと思ってるの?」
いつもと違って少し怒った勇次郎くんの言葉に
シュンと凹んでしまう
「ごめんね…」
「…はぁ。僕もごめん。
心配でつい、きつく言っちゃって」
「ううん。大丈夫。勇次郎くんは仕事終わり?」
「そうだよ。危ないから送ってくよ」
「え、疲れてるのに悪いよ…」
「僕の話聞いてた?こんな夜遅くに
女の子が1人で歩くなんて危なすぎる
もっと危機感持ちなよ」
「…うん。ごめんなさい」
「……はぁ。
これからもし夜遅くなるんだったら
僕に連絡して。
そしたら迎えに行くから。」
「いやいや、それは勇次郎くんに申し訳なさすぎる」
「…はぁ。好きな子が知らない男に連れてかれる
男の気持ちわかる?」
「……え、?」
「…だから、僕は君のことが
女の子として好きってこと」
顔が赤くなるのがわかる
言ってる勇次郎くんも照れている
「あ、あ…ありがとう」
「ほら、行くよ」
と手を繋いでくれた
「ねぇ、ちょっと公園で話せる?」
「うん…。」
「ありがとう。」
夜の公園なんていつ以来だろう。
なんとなくブランコに座ると勇次郎くんが
すぐ近くの自販機でココアを買ってきてくれた
「…ありがとう」
今まではただ紳士だなと思っていたけど
自分に恋する優しさだと知って
なんだか照れてしまう…
「あのね、ミリアちゃん。
昨日は君のことからかったりして本当にごめん」
「…うん。」
「僕、ミリアちゃんのこと
中学の頃からずっと好きだったんだ。」
「え?そうなの?」
「うん。中学の時さ、
みんなが僕を染谷家の長男として見てて
正直僕の存在価値なんてないと思ってた
でもミリアちゃんが
家柄とか関係なく
勇次郎くんは勇次郎くんでしょ?
って言ってくれたときがあって
それがすごく嬉しかった。」
「…うん。」
「君が芸能界に入った時
クラスの女子に調子乗ってるとか言われて
教科書隠されてたの、
実は途中から気付いてて
それでも負けずに笑う君にかっこいいなって
ずっと思ってた。
君はいつのまにか転校しちゃって
伝えられなかったし
守ることができなかったけど
次会うことが出来たら、今度こそ
僕が君のこと守ろうってずっと思ってたんだ」
「そうだったんだ…全然知らなかった」
「好きなんだ。君のことがずっと」
勇次郎くんが真剣な目で私を見つめる
「ありがとう。でも、私…」
勇次郎くんのことは
ずっと前から好きだった
でもお互いにアイドルだし
私達が付き合ったら
スキャンダルになっちゃうし
それに、沙良くんのこともある…
なんかもうどうしたらいいかわからなくなって
……ポツンと涙が溢れた
勇次郎くんに心配かけちゃうと思って
止めようと思うのに
ポツン、ポツン…と涙が止まらなくなる
「…ご、めん、わた、し…」
私が泣いてしまって
勇次郎くんが焦っているのが伝わる
「え、?大丈夫?
そんなに気負わないで…
僕は大丈夫だから。
僕の方こそ急にこんなこと言ってごめん、」
少し悲しそうな顔をする勇次郎くん
違うの、伝えなきゃ、伝えなきゃって思うのに
涙が止まらなくてうまく伝えられない
そんな私に勇次郎くんが
「…泣かせてしまってごめんね。
もう遅いし、家に帰った方がいい…」
と少し悲しげに言う
「…う、」
頷くのが精一杯な私の手を握り
夜道を歩いた
しばらく歩くと
一人暮らしをしているアパートについた
「ありがとう…」
小さな声で呟くのがやっとで
少し喋ると涙が出てきてしまう
そんな私の顔を見て
勇次郎くんは指で私の涙をぬぐった
頭をポンポンと2回撫で
「じゃあね」と言った
彼は悲しそうに笑っていて
そんな彼を見て私は心が苦しくなる
私が部屋に入るまで彼は
私の側に居てくれた
(ごめんね…)