Ⅳ 魔界編
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✴︎86✴︎忌み子飛影
軀軍の移動要塞・百足。
昼夜問わず血生臭い戦いが繰り広げられるそこで過ごしていると、日付感覚なんて失い行事ごととは無縁になる。それが人間界のイベントなら尚更だ。
だから今日がクリスマスイブ…
聖なる夜なんて知るはずもなく、飛影は戦闘に明け暮れていた。
男の赤子…忌み子…
忌み子じゃ…!
氷女たちのひっそりとした騒ぎ声がひっきりなしに耳元で聞こえる。
注がれるのは恐れと軽蔑の眼差し。
目を合わせニヤリと笑ってやると氷女たちは面白いくらい怯えた表情をする。
女児は同朋じゃ
しかし男児は忌み子
必ず災いをもたらし氷河を蝕む
冷たい冷たい氷河の風。
炎の妖気を纏っていたのに、凍てつく吹雪の感触を、今も忘れないのは何故なのか。
落ちていく。
氷河の国が遠くなっていく。
腹の底から嬉しくて自然と笑みがこぼれる。
生まれてすぐ目的ができた。
飛影!
場面は変わり、こちらへ微笑みかけるあいつの顔。
行くな
あの時と同じように掴んだ腕を強く握る。
返ってくる応えは知っているのに。
……えっと……
瞬間、さあっと急速に身体が冷えていく。
ああ…またこの夢か…
「起きたか」
降ってきた声に、パチリと飛影は瞼を開けた。
周りにはゴロゴロ無数の死体が散らばっており、ああ自分が倒した奴らかと眠る前の記憶を呼び覚まし理解する。
「もうA級妖怪じゃ束になってもかなわねェな」
感心したように呟いて、近づいてきたのは軀だった。
「たった半年でここまで成長するとは正直思わなかった。お前たいした奴だ」
「強くなるほど貴様が遠くなっていく気がするぜ化け物め。一体貴様どんな妖怪でどんなツラしてやがるんだ?」
「まあそう急くなよお前の親父なんてオチはねェ。だがそろそろ姿くらい見せてもいい頃かな」
軀は頭部を包帯でぐるぐる巻きにし、いくつもの呪符を貼って顔を隠していた。
窺えるのは、そのギョロッとぎらつく丸い片目だけだ。
「今からオレの直属戦士を連れてくる。そいつに勝ったらお前に姿を見せ、褒美の品をやろう」
側近である77人の厳選された戦士のうち、一番弱い一人と飛影をサシで戦わせようと軀は提案した。
「そいつの代わりに戦士の称号もくれてやる。多分今のお前と互角くらいの力の持ち主だ」
「いちいち気に障る野郎だ。別に称号なんぞいらん」
「そう言うな。オレ直属の戦士ってだけで大抵の妖怪は協力的になる。便利だぜ」
それに、と軀は続ける。
「探し物も見つかりやすい…」
全て見透かした様な視線を向ける軀に、ざわりとした不快感が飛影の心を撫でる。
(つくづく薄気味悪いヤローだ)
軀が去った後、飛影はぼそりと胸の内で呟いた。
ふと、胸の真ん中に下げられた二つの石を眺める。
一つは古く綻びも目立った白い紐で。
一つは真新しい、薄ピンク色の紐で繋がれている。
どちらも半年前、妹から受け取った氷泪石だった。
・・・
半年前、幻海邸。
既に未来と幽助は人間界を去っており、最後に旅立つ飛影のため、霊界特防隊が魔界への穴を開けようと奮闘している。
「母の形見です」
雪菜が飛影に差し出したのは、古く綻びのある白い紐で結ばれた氷泪石だった。
氷女は子を産むと一つぶの涙をこぼし、それは結晶となり産まれた子供に与えられる。
雪菜の母である氷菜は、二つぶの涙をこぼしたという。
「一つは私が。そしてもう一つを私の兄が持っているはずです」
「どうしてこいつをオレによこすんだ?」
「私の兄は炎の妖気に包まれていたそうです。あなたと近い種族の人だと思うんです」
もしも魔界で同じ氷泪石を持っている人に会ったら、それを渡して妹は人間界にいると伝えてほしいと雪菜は頼む。
「くたばったに決まってるぜ。空飛ぶ城の上から捨てられたんだろ?」
「きっと生きています」
動じることなくニコリと微笑んで言い切った雪菜に、飛影は何も言えなくなる。
雪菜はいつも害のない笑みを浮かべているくせして、相手に有無を言わせない…強い意志を秘めている女性なのだと、飛影に感じさせる瞬間がたまにあった。
「母の友人が言っていました。兄はきっといつか復讐にくると…。私もそう信じています」
一昨日雪菜と話した際に嗅ぎ取った嘘の匂いはこれかと飛影は勘付く。
雪菜は“兄を探すのはただ兄に会ってみたいから”と述べていたが、理由はそれだけじゃないだろう。
「心まで凍てつかせてなければ長らえない国ならいっそ滅んでしまえばいい。そう思います」
「フン…それでお前国を飛び出したわけか。となると氷河の国が兄探しを許したって話も嘘っぱちだな」
普段の彼女からは想像がつかないほど冷たい瞳で、過激な発言をした雪菜が重ねたもう一つの嘘を、飛影は見抜く。
「いいか甘ったれるなよ。滅ぼしたいなら自分でやれ。生きてるかどうかも知れん兄とやらに頼るんじゃない」
まるで叱る如く、強い口調で語りかけられた飛影の言葉。
ハッと気づかされたように、雪菜の目が見開かれた。
「そうですね。本当…そうです」
雪菜は繰り返し、もらった言葉を胸で噛みしめ反芻する。
「なんだか兄に会っても同じこと言われそうですね」
飛影に向けられたその優しい眼差しの先に、雪菜は誰を見ているのだろう。
「飛影さん、もう一つ渡したいものがあります。私の涙で出来た氷泪石です。受け取ってください」
次に雪菜が差し出したのは、新品であろう綺麗な薄ピンク色の紐で結ばれた氷泪石だった。
「実はさっき未来さんに渡したものと同じ素材の紐で結んでいます。未来さんと飛影さん、こっそりお揃いです」
ニコッといたずらっぽい笑みを浮かべた、思わぬ雪菜の計らいに意表を突かれた飛影だったが、黙って二つの氷泪石を受け取る。
「離れていても、私は未来さんと飛影さんの幸福をお二人に渡した石に祈っています」
「オレもお前に渡すものがある」
飛影が取り出したのは、先ほどの打ち上げで未来からもらった五人の集合写真だった。
「これは…未来さんが飛影さんに贈った大切な写真でしょう?飛影さんが持っておくべきです!」
「オレはきっと失くす」
半ば強引に雪菜に写真を押し付けた飛影。
「魔界に…行くんですものね。分かりました」
しばらく躊躇していた雪菜だったが、彼女も軀の元がどのような環境かは容易に想像がついたため、飛影に従うことにした。
「またお会いした時、飛影さんに返します。それまで大事に預かっておきますね」
そう告げて笑った雪菜の顔は、やけに飛影の脳裏に張り付いて今日まで離れることはなかった。
・・・
「待たせたな」
五分程経ち、軀が連れてきた戦士は飛影もよく知っている男だった。
「貴様いつから軀の配下になったんだ」
「御主に邪眼の移植を行ってから程なくな」
知り合いか、と軀が尋ねる。
魔界整体師・時雨。
飛影に邪眼の移植手術を施し、剣術の手ほどきをした男だった。
「手術からたった数年で前以上の妖力で我が前に現れるとは。まこと驚いた」
邪眼移植の代償として妖力は赤子同然にまで下がる。
にもかかわらず当時以上の強さで現れた飛影に、時雨は感嘆の声を漏らした。
「そうか…オレはいつのまにか貴様と同じくらいの強さになっていたのか」
感慨深そうに言った飛影が、額に巻かれた眼帯を外す。
「目的の氷泪石はもう見つけ出したようだな。二つとはどういうことだ?」
「これはオレのじゃない」
首に下げられた二つの氷泪石を、飛影は服の下に隠す。
「ほう…すると妹の方の石か。どちらにしろ探し物の一つは見つけたわけだ」
「面白そうだ。聞かせろよ」
軀が命じれば、時雨が事の次第を語る。
妹のいる氷河の国。
母の形見の氷泪石。
この二つの探し物を見つけるため、飛影は邪眼移植の依頼をしたのだと。
「拙者の手術の報酬は患者から今後の人生の一部を頂くこと。奴からの手術代は妹を見つけても兄と名乗らないことです」
「ほォ…」
軀が興味深そうに呟く。
「ワシを倒せたら手術代は返してやるぞ」
「手術の前にも言ったはずだぜ。はじめから名乗るつもりはないとな」
「心は変わるものだ」
時雨は大きなリング状の刀を、飛影は鞘から鋭く光る剣を引き抜き、戦闘に備える。
「さて想い出話はそれくらいだ。勝負は勝負、命かけてもらうぜ」
真剣勝負は技量にかかわらずいいものだ。
決する瞬間互いの道程が花火の様に咲いて散る。
それが軀の持論だった。
「はじめ」
軀の合図と同時、決戦の火蓋が切られる。
対峙はほんの一瞬だった。
そして勝負も。
戦いの最中、互いの間で交錯した幾つもの策と思惑とは裏腹に、一瞬で決したように見えた勝敗。
刃が肉体を切り裂く音の後、辺りには真っ二つに頭部が割れた時雨と、左腕を失い腹部で身体を切断された飛影がいた。
「御見事」
健闘を褒め称えると、頭から鮮血を吹き出し時雨は倒れる。
(相打ちか。悪くない)
昔の自分なら考えられない感想を抱く飛影。
いつからこうなった。
いつから。
「素晴らしい勝負だった。褒美をやろう。お前の氷泪石だ」
倒れた飛影の上半身へ軀が歩み寄り、口元を覆う部分の包帯を解くと舌を出す。
「お前が人生の大半をかけて探した石だ。オレにとっては支配国の貢ぎ物の一つにすぎなかったが」
軀の舌の上には、飛影自身が母から授かった氷泪石が乗っていた。
軀が腹の中に隠していたため、いくら飛影が邪眼で探しても見つからなかったのだ。
「貴様の胃液くさい石など、もう…いら…ん」
しかし、石を見つけても閉じかけた飛影の瞳に光は戻らない。
もう氷泪石では飛影の心は満たされなくなっていた。
石よりもずっと愛しくて自分を満たしてくれるものを知ってしまったから。
“飛影!”
薄れる意識の中、ぼんやりとした頭に浮かぶのは己の名を呼ぶ未来の笑顔。
最後の一瞬まで、未来を忘れることはない。
半年前に強く思ったことを果たせたと、飛影は満足そうに目を瞑る。
瞼の裏にもう一度未来を描いて…。
そうしてついに、飛影の意識は途絶えたのだった。
・・・
故郷は氷河の国。
忌み子としてお前は産声をあげた。
男児を産んだ氷女は例外なくその直後死に至る。
産まれた子供は凶悪で残忍な性格を有するのが通例だった。
氷女たちは赤子のお前を空から投げ捨てる。
母がこぼした氷泪石を小さな手に握らせて。
落ちていく中お前は笑う。
生まれてすぐ生きる目的ができた。
氷河の女を皆殺しにしてやる。
地上で盗賊に拾われ授けられた名は飛影。
戦闘に明け暮れる日々が始まった。
氷泪石を所持していれば一日中血に不自由しない。
いつしか地元の盗賊もお前を恐れ避けるようになる。
一人で石を眺める時間が増える。
石を見ると気持ちが和む自分に気づいた。
不思議な力を秘めた石を通してこの石と自分を作った人を思う。
氷河の国を探そう。目的は変わり始めていた。
戦闘中に石を失くし探し物は二つになる。
もっとよく見える目が必要だった。
依頼した邪眼の移植手術。
特上の激痛に耐えせっかく鍛えた妖力も失う。
己の不覚で石を失った代償としては当然の報いだとお前は思った。
千里眼でほどなく氷河の国は見つかる。
氷女たちは皆どこか暗くいじけて見えて殺す気も失せた。
幻滅することでお前の復讐は終わった。
母の朽ちた墓を訪れる。
腹はたたない。これが彼女の意志だったのだろうとお前は考えた。
目的を果たすと同時お前は新たな目的を得る。
失踪した妹・雪菜を探すため人間界へ。
妙な人間との戦い。
浦飯幽助。不思議な男だ。
この男が齎した出会いによりお前は大きく変わることになる。
第一印象は覚えてない。
幽助が連れてきた女。そう認識してすぐにお前の眼中から女は消える。
それくらいお前にとってどうでもいい存在だった。
未来。
名を呼んでやると女は喜んだ。
理解できぬと呆れる反面愉快になったお前は笑う。
後に気づく。こんな笑い方をしたのは初めてだったと。
女も幽助と一緒だった。
恐れることなくお前の中に近づき踏み込む。
しかし悪い気はしなかった。
身を挺して雪菜の命を守った未来。
女への借りを返すためにもお前は武術会に参加する。
手に負えなくなる感情。
苛立ち。嫉妬。衝突。
苦しみつつもお前は答えに近づいていく。
借りを返し終えても女を守ってしまうお前。
もう言い訳になる理由がなくなった。
そして認める。彼女に惹かれていると。
飛影。
呼ばれるたび心地よさを得る。
すでにお前に氷泪石は必要なかった。
未来がいればそれでいい。
未来を守りたい。
生きる目的はまた変わり始めていた。
段々と欲張りになる心。未来が欲しい。
それが叶わぬと知ったときお前の世界は色を失う。
行くな。告げたお前の手を未来が取ることはなかった。
強引に未来を魔界へ連れ奪い去ってしまおうか。
なんて考えが過ぎるもお前は実行しなかった。
これ以上未来に拒否されることをお前が恐れたからだ。
未来を失うことは生きる意味を失うことと同義。
戦うことだけがお前に残りとうとうお前はいかに死ぬかを考える。
魔界へ行こうと決意する。死場にはもってこいのそこへ。
追い討ちをかけるように妹がよこした氷泪石。
これはオレの氷泪石じゃない。そう思いながらもお前は目的を殺がれたような虚無に襲われる。
もう氷泪石でお前の心は救われない。
石よりもずっと愛しくて満たされるものを知ってしまっていたから。
また訪れた血生臭い戦闘の日々。
よく見る夢が一つ増えた。
眠る度お前を選ばなかったあの日の未来と再会する。
時雨との対峙。炎の妖気を使えば勝機はある。
しかしお前はあえて剣のみの勝負に臨んだ。
以前は生きるために戦い勝つために手段を選ばなかった。目的があったからだ。今はない。
別にいつ死んでも構わなかった。
だから勝ち方にもこだわることができた。
相討ちか。悪くない。
薄れる意識の中で未来を想う。
いつの間にかお前の生きる目的となっていた女を。
最後の一瞬まで未来を忘れることはない。
その通りになったことに満足し生の終わりを悟ったお前は目を瞑る。
ひどく安らかな気分だった。
・・・
「そうか…そうだったのか飛影」
治療用カプセルの水の中で漂う飛影を見つめ言った軀。
同情しているわけではない。
飛影の意識は、今まで軀が触れたものの中で一番心地よかった。
「お前にはもう必要ないだろうな。だが約束は約束だ。褒美としてお前に石をやる」
飛影の首には三つの氷泪石が下げられている。
二つは、雪菜が渡したもの。
一つは、軀が返したものだ。
「不思議な石だな。憎しみを全て吸いとってくれるような力を感じる。オレはその石のおかげで救われた」
顔全体に巻かれた包帯を解くと、軀は衣服を脱ぎ捨てていく。
飛影になら全てを見せることができた。
己の過去の記憶でさえも。
生まれた時から玩具奴隷だった軀。
自由の代償として半身を失い、呪うことだけで強くなった。
目にとまる者一人残らず殺す時期が続く。
殺戮と憎しみに塗れた軀の人生を変えたのが、飛影の氷泪石だった。
「その石がなければこの体はまだ憎悪の象徴でしかなく戦闘はその発散の手段のままだっただろう。今ではこの右半身はオレの誇りだ。治す気もない」
右半身の皮膚は焼け爛れ、右腕と大腿部が機械化された痛々しい傷跡の残る身体。
しかし、左半身の胸の膨らみと曲線美は軀が女性であることを如実に物語っていた。
「お前を呼んだのは、こうしてお前の記憶を見たのはお前に興味があったからだ」
軀が飛影をスカウトしたのは、ただ戦力になると見込んだからではない。
自分を救ってくれた石の所有者である飛影がどんな人物か、会って知りたくなったのが本音だった。
「だがまさか飛影。お前はオレの元へ死ぬ為に来ていたとはな」
自嘲的に言った後、キッと鋭い眼差しで軀は飛影を見つめる。
「飛影。よく聞けよ」
真っ暗な闇の中、段々と覚醒していく意識。
おかしい。たしかに己は死んだはずなのに。
自分を呼ぶ声が聞こえる。
瞼を開け、誰かを確かめる気力はなかった。
未来だろうか。
いや違う。
この声は。
(……軀……?)
飛影が気づいたと同時、洪水のように彼女の意識が流れ込んでくる。
「飛影。お前は間違っている。未来と出会ってお前が得たのは生きる目的と死ぬ理由だけか?」
軀は語りかける。
自分でも驚いてしまうほど、熱が入った。
思わず語尾が強くなる。
理由がなければ生きられない、初恋に溺れた少年の不器用な生き様がとても歯痒く、もどかしかったのだ。
「お前が未来のために出来ることは本当にもう何もないのか?忘れるな飛影。お前がどうして変われたかを」
軀は飛影の記憶の中の、未来の笑顔を思い出す。
別に忘れられてもいい。
オレが忘れなければいい。
そう思った飛影。
しかし、軀には未来が飛影を忘れるとは到底思えなかった。
記憶の中の未来はいつも飛影を想っていた。大事な仲間だと。
そうでなければあんな風に微笑むわけがない。
二人の出会い。培った思い出。交わした言葉。共に過ごした時間。
無駄なことは一つもなかったはずだ。
未来に選ばれなかったからといって飛影が死に方を探すことは、それら全てを否定してしまう行為のように軀には感じられた。
未来を好きになったことで、飛影の心は癒され、喜び、苦しみ、学び……大きな成長を得たのに。
「未来が生きる目的なら…未来が願ったように生きろ」
未来は飛影がこれからも精一杯生きると信じて疑っていなかっただろう。
だからこそ、笑って去ることができたのだ。
飛影が未来の幸せを望んだように、未来も飛影の幸せを心から願ったはずだと軀は思う。
軀自身が今こうして、飛影に生きてほしい、という気持ちでいるのと同じように。
「生きろ飛影。お前はまだ死に方を求めるほど強くない」
また少年は少し変わる。
力強く懸命に絞り出された、彼女の“生きろ”の言葉によって。