Ⅳ 魔界編
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✴︎80✴︎ドキドキ
キーンコーンカーンコーン…
四時限目終了のチャイムと同時に、わっと歓喜にわく教室。
「やっと終わったー!」
「この後どっか飯食い行こーぜ」
「オレ部活あるから無理だわ」
テストの出来なんて関係なく、中間試験から解放された喜びに生徒たちは浸る。
それは盟王高校一の秀才、南野秀一とて例外ではなかった。
(…長かった)
席に座ったまま、思わずうーんと伸びをする。
魔界の穴事件が解決するやいなやすぐ試験週間が訪れ、もう一週間以上幽助たちと会っていない。
つまり、未来とも。
勉強会は中間試験前でも実施できると言ったのだが、彼女が遠慮するので折れてしまった。
「南野くん、問三の答え何にした?」
成績トップの蔵馬の机に、近づいてきたのは女子生徒数人。
「オレはAにしたよ」
「やった!私も南野くんと一緒!」
「ガーン私Aと迷ってCにしちゃった!」
「ショック~」
しかし、蔵馬と答えが食い違った女子生徒も、あまり落ち込んでいる風には見えない。
彼女らにとっては、試験の答え合わせよりも、理由をつけて蔵馬と会話することの方が目的であり重要なのだ。
「南野くん、やっぱりすごいねえ」
「頼りになるね。助かっちゃった」
「ありがとう!」
蔵馬が質問にいくつか答えると、満足した女子生徒たちは笑顔で去っていく。
「相変わらずモテモテだな南野」
話しかけてきたのは、蔵馬と並び盟王高校きっての秀才と有名な同級生の海藤優だ。
といっても、海藤は魔界の穴事件以来、蔵馬にとってただのクラスメイトではなくなった。
蔵馬の正体が妖怪であると知っており、なおかつ南野秀一として生きる面を見てきている、唯一の人物である。
「そのうち週末に勉強教えてくれなんて頼まれるぜ」
「さすがに休日までは協力しないさ」
「永瀬さんには教えるのに?」
帰り支度をしていた蔵馬の手が止まる。
その反応に意表を突かれたのは海藤の方だった。
「…驚いたな。図星だったのか?冗談で適当に言ってみただけなんだけど」
「未来には、時々勉強を教えてるんだ。もっぱら土日が多いかな」
海藤に一本取られてしまった蔵馬だが、開き直って白状する。
「へー。知らなかった。じゃあ今週や先週も?」
「いや、先週はオレが中間試験前だから未来が遠慮してやらなかった。今週は日曜の予定だ」
「そうなのか。永瀬さん、今学校に通えてないもんな。普段は何してるんだ?彼女」
「飲食店でバイトしてるらしい」
「大変だなあ、永瀬さんも」
ある日突然異世界に来てしまい、普通の高校生活をおくれなくなった未来に海藤は同情する。
「南野、今からそこ行こうぜ」
思わぬ海藤の提案に、蔵馬は戸惑う。
「今から?」
「特にこの後用事ないだろ?昼飯はそこで食おう。永瀬さんの働く店に貢献しようぜ」
それに、と海藤は続ける。
「南野、明日の打ち上げまで会うのが待ちきれないって顔してる」
「なっ…」
「冗談だ。それともまた図星だったのか?」
黙ってしまう蔵馬。会話は完全に海藤のペースである。
(…迂闊だった)
海藤の前で未来を想うような素振りをしたと、思い当たる節が全くないわけではない。
まあ、別に悪い気はしないのだが。
海藤に未来への想いを知られ、吉と出ることもないが凶と出ることもないだろう。
頭が良い奴は察しも良いと、痛感する蔵馬なのであった。
***
昼食時を少し過ぎ、賑わいも落ち着いてきた雪村食堂にて。
「いらっしゃいませ~」
盟王高校の制服を着た二人は、接客業にふさわしく笑顔の眩しい、数ヶ月前増えた看板娘に迎えられた。
「って、蔵馬と海藤くん!?」
「未来、久しぶり」
「どうも」
驚く未来に、二人は片手をあげ挨拶する。
「お、未来ちゃん、知り合いかい?ちょうどキリがいいし休憩入っていいよ!二人と一緒にまかない食べちゃいな!」
「ありがとうございます。では休憩入ります!」
螢子の父親の気遣いにより、未来は盟王コンビと共に遅い昼食をとることとなった。
人数分のコップに水を注ぎ、持ってくると彼らの座るテーブルに自分も席をつく。
「びっくりした~。蔵馬がお店に来たの初めてじゃない?海藤くんも一緒に来てくれるとは!テスト今日で終わりだったんだっけ」
「未来の働きぶりを覗きに来たんですよ」
中間試験明けの二人をお疲れ様、と未来は労う。
しばらくすると料理が出来上がり、昼食をとりつつ三人は談笑する。
「打ち上げって、明日だよね」
「うん!幻海師範の家で、午後六時半集合だよ。皆で集まるの楽しみだな」
蔵馬に頷く未来。
魔界の穴事件のお疲れ様会は、明日土曜に幻海邸で開かれることとなった。
「飛影を呼びたくても、どこにいるか分からないから困ったな。あの日、オレが帰宅した時にはもういなくなっていて打ち上げのこと伝えられなかったから」
「あ、それは大丈夫だよ!飛影、今うちに一緒に住んでるから」
ピシ、と蔵馬が固まって、危うく箸を落としそうになる。
「未来、今なんて?」
「飛影も今、幻海師範の家に居候してるの。魔界の穴事件が解決した日から」
あっけらかんと答えた未来の衝撃発言に、蔵馬は絶句し言葉が出ない。
そんな二人を交互に見た海藤は、
「つまり、同棲中ってことか」
と、一人納得して呟く。
「その言い方はおかしいって!師範もいるし…そうそう、雪菜ちゃんも一緒に同居してるんだよ。飛影が来た次の日から雪菜ちゃんも来てさ」
「四人暮らしなのか。雪菜ちゃんって?」
「あ、海藤くんは知らないか。以前知り合った、雪女の子なの。魔界の穴事件の噂を聞きつけて、心配してうちに来てくれたんだ」
「未来…それはマズいと思うよ」
蔵馬にとっては幻海や雪菜が一緒だろうが関係なかった。いや、飛影と二人きりだったらもっと問題だったが。
未来の横で、頭を抱える蔵馬がハァ、とため息をつく。
「何が?」
「だから、飛影と一緒に住んでるってことが」
「うーん、私も感覚マヒしてるのかな…。師範や雪菜ちゃんも一緒だし、私たち暗黒武術会の時はホテルで同室だったじゃない?だから問題ないかなって思ったんだけど…やっぱ客観的に見たらおかしいかな」
「おかしいよ。すごくおかしい」
飛影と同居してほしくないという超個人的な理由からだったが、未来に考え直してもらうべく蔵馬は主張する。
「そっか…そうだよね」
納得した様子の未来だったが、でも、と続けた。
「幽助と螢子ちゃんを見て思ったの。飛影にも帰る場所があったらなって」
妖怪の感覚からしたら家がないのは大した問題ではないのかもしれない。
けれど、未来はあの日、訪れた飛影を彼に帰る場所がないと知りつつ見送ることができなかった。
その思いは、昨日の幽助と螢子とのやり取りから、より一層強くなった。
「いつか飛影が自分で帰る場所を見つけるまでは、幻海師範の家がその役割を担えばいいから」
未来にとっての帰る場所は、元の世界で家族と暮らす家と、幻海邸。
幽助にとっての帰る場所は、母親と暮らすマンションと、螢子だ。
家なき子の飛影に、未来は家のあたたかさ、帰る場所があるという安心感を知ってほしくなった。
飛影が大事な仲間だから。
「幻海師範もね、私と飛影に、家事をするならこの家に好きなだけいていいし好きな時に出て行って構わないって言ってくれてるの」
口ぶりこそ厳しいが、幻海の優しさを未来はこの世界に来た時からずっと感じてきた。
「だから、おかしいと思われても、私は飛影を追い出せないな…。飛影が出て行きたいって言ったら止めないけどさ」
それに、海藤がいるので口には出さなかったが、兄妹である飛影と雪菜が共に過ごす時間を未来は奪いたくなかった。
「いつも雪菜ちゃんと三人で家事分担してやって、夜は幻海師範も一緒にテレビ観たり、ゲームしたり、ほのぼのした日々だよ。この前ゲームバトラーもやった!」
「ゲームバトラーか。懐かしいな。まだ洞窟でやってから一週間ちょっとしか経ってないのに」
未来が持ち出した話題に一抹の懐かしさを感じつつ、海藤はチラッと向かいの蔵馬を見る。
(南野からしたら、好きな女と友人の男が一つ屋根の下なんて面白くないだろうな)
二人きりで話したいことがあるかもしれないし、気を利かしてトイレと断り席を外してやろうと海藤は思い立つ。
しかし、海藤よりも早く、先に立ち上がったのは蔵馬だった。
「未来。ちょっとこっち来て」
「え?」
蔵馬に手を引かれ、困惑しつつ未来は彼に従い店の外に出る。
(驚いた…まさか飛影が未来と同居していたとは)
肝を冷やされた蔵馬だが、どうやら飛影は行動を起こしてはおらず未来との関係に変化はないようなのでひとまず安堵した。
だが、安心している暇はない。
迫る焦燥感が、蔵馬を急がせる。
ちょうど蔵馬も未来への感情を持て余していた頃だった。
そろそろ彼女へ気持ちを伝えたい。
そして、未来を自分のものにしたい。
「蔵馬、どうしたの?」
「突然ごめん。少し二人で話したくて」
雪村食堂の傍らの道路脇で、蔵馬と未来は向かい合う。
「未来。明後日は勉強会の予定だったけど、変更できない?」
「構わないよ!いつにする?」
「変更するのは、日時じゃなくてさ。その日は勉強はせずに、どこか遠出しないか」
「え。それって」
「デートしよう」
今度は未来が驚かされる番だった。
「どこか行きたいとこある?オレは縦浜なんてどうかと考えてるんだけど」
「あ…いいね!前テレビで特集してて、行きたいなって思ってたんだ」
縦浜は皿屋敷市から電車で40分ほどの、デートスポットとして栄える海辺街である。
「でも、なんでいきなり、そんな…」
蔵馬とは一度二人きりで出掛けたことがある。
本屋に行って、ランチして、プラネタリウムへ行き、盟王高校で勉強して。
前回は本屋で参考書を探すという名目上のなりゆきでのデートだったが、今回は違う。
いきなりデートなんて誘ってきた蔵馬に未来は戸惑い、動揺してしまう。彼が何を考えているのか分からない。
「…いきなりじゃないよ」
真剣な翡翠色の瞳に見つめられて、未来は声が出せなくなる。
本当に蔵馬は綺麗な顔立ちをしていると、ドキドキして沸騰しそうな頭の中でぼんやりと考える。
「飛影と同居してほしくなくても、今のオレの立場じゃ口出しする権利はないって実感したら…少し、急ぎたくなった」
困ったように蔵馬は俯き、自身の前髪をくしゃっと軽く掴む仕草の後、また真っ直ぐ未来に向き直る。
「未来に伝えたいことがあるんだ。未来が嫌じゃなかったら、二人きりで日曜は出掛けてもいいかな」
コクコク、とピンク色に頬を染めた未来は、蔵馬の目が見れず下を向いて黙ったまま頷いた。
「よかった」
可愛らしい了承の反応に、安堵した様子の蔵馬は優しい笑みをこぼす。彼だって、それなりに緊張していたのだ。
「飛影や雪菜ちゃんを誘うのはナシですよ」
「わ、わかった」
やっと声を出せた未来が、頬を染めたまま首を縦に振ると、蔵馬がクスッと柔らかく微笑した。
それからのことを、未来はよく覚えていない。
店内に戻り、海藤と三人でまた当たり障りのない会話をして。
その後のバイト中、幻海邸に帰った後も、どこか上の空だった気がする。
手元が危なっかしいと雪菜からは心配されて包丁を取り上げられ、魚を焦がしたため飛影と幻海から非難の視線を浴びせられた。
『好きです、桑乃さん!僕と付き合ってください』
『幽太郎さん…!』
そんな調子で過ごした夕飯の後、心ここにあらずな状態のまま、リビングで未来は幻海と雪菜と共に最近ハマっていたドラマの最終回を視聴していた。
互いの想いを確かめ合い熱い抱擁を交わす二人に、普段の未来なら涙ぐんでいたはずだ。
「やっと告白かい」
「ごほっ」
「大丈夫ですか!?」
告白、という幻海の口から飛び出したワードで、飲んでいた茶が気管に入りむせてしまう未来。
咳き込む未来の背中を雪菜が撫でる。
「ライバル・秀子の登場とか、謎の少年・トビカゲが邪魔してきたりして、全然進展しませんでしたもんね。いい最終回でしたね!」
咳が落ち着き雪菜に礼を言うと、未来早口で感想を述べた。
「じゃ、じゃあ私お先にお風呂入ってきます!」
エンドロールが流れるとそそくさと逃げるように風呂場へ去っていった未来を、訝しむ幻海なのだった。
幻海邸の浴室で、髪と身体を洗い終わった未来は湯船に浸かっていた。
一人きりになると否応なしに考えてしまうのは、蔵馬のこと。
(伝えたいことがあるって…告白…されるのかな)
今日の蔵馬の態度を見て何も察しないほど、未来は鈍感ではなかった。
(蔵馬、私のこと、好きなのかな)
自分で考えたことなのに、ゆでだこのように赤くなった未来は顔の半分まで湯に浸かる。チャプンと水面がゆらゆら揺れた。
蔵馬に想われているのでは、と感じたことは今までにも一度あった。
彼と初めてデートをした時のことだ。
あの日の蔵馬はなんだかいつもと違って、でも最後にはやっぱりはぐらかして、なんだ深い意味はなかったのかと未来は安心して…
だから今日まで、蔵馬が自分のことを好きかも…なんて考えたことがなかった。
(自意識過剰かな?でも…)
今日の一連の蔵馬の思わせぶりな言動。
蔵馬は他人をからかうのは好きな性分だが、人の気持ちをもてあそぶような男ではないと未来は知っている。
(どうしよう、告白されたら…)
さきほどのドラマの告白シーンが脳裏によみがえる。自分と蔵馬に変換して未来は一人照れた。
(なくない!?断る理由なくない!?)
容姿端麗。成績優秀。
おまけに優しくて、性格も良い。
非の打ち所がない完璧な蔵馬を断る理由なんて見つからないし、彼をフるなんて失礼極まりない愚行なのではないか。
未来の蔵馬に対する評価は高く、そう思わざるをえない。
(私にもついに初彼氏が…)
ちょうど幽助と螢子の絆の深さを目の当たりにして羨ましくなった矢先の出来事だったため、初彼氏ができる予感にそわそわしてしまう。
(気が早いか!?これで告られなかったらとんだピエロだよ…ピエロ鈴木だよ…)
美しい魔闘家の姿が頭にちらつき、浮かれる自分を未来は律する。
(それに私はいつか元の世界に帰らなくちゃいけないんだし。よく考えなきゃ…)
今恋人をつくっても、別れの時に自分も相手も苦しみ悲しむことになってしまうかもしれない。
(そもそもなんで蔵馬みたいな人が私を?って思うし…でもあの態度みたら期待しちゃう…)
未来は湯に浸かったまま悶々と思考を巡らせていた。
(…やば…気持ち悪くなってきた。長湯しすぎたな、上がろう)
のぼせる頭でなんとか湯船から出た未来だが、脱衣所に出た途端気持ちの悪さがピークに達し座り込む。
(早く出て…水飲んで横にならないと…)
フラフラになりながらも立ち上がり、頑張って服は着た。
しかし、視界がどんどんぼやけていき、未来はそのまま倒れてしまった。
「未来さん?大丈夫ですか?」
しばらくして、未来の長湯を心配した雪菜が脱衣所の扉をノックするが、応答はない。
「未来さん、開けますよ…未来さん!?」
倒れた未来の姿に、雪菜は悲鳴をあげた。
***
意識を取り戻した未来が瞼を開けると、心配そうに自分を覗き込む雪菜と目が合う。
(そうか、私、湯あたりして…)
布団に寝かされていた未来に、倒れる前の記憶が戻っていく。
「未来さん!よかった!」
目を覚ました未来に雪菜は顔をほころばせると、水の入ったコップを差し出した。
「雪菜ちゃん、ありがとう。迷惑かけちゃったね。ごめんね」
「迷惑だなんてそんな!」
浮かれて長湯してのぼせるなんて、なんたる醜態だ。
雪菜に申し訳なかったと反省する未来。
「私、飛影さん呼んできますね。未来さんのこと心配してましたから」
「飛影?」
「はい。未来さんをここまで運んだのも飛影さんなんですよ」
にこっと雪菜は笑うと、ふすまを開けて出て行った。
(飛影が運んでくれたの、うっすら覚えてる。…お姫様抱っこで)
途端、恥ずかしくなった未来は頭まで布団を被る。
何を今更意識しているのだろう、とも思う。
飛影には戦闘中に助けられた時など何度もお姫様抱っこされたことがある。
命に関わる際の出来事なので、未来も普通に受け入れていたけれど。
(飛影以外の男の人にそんなことされたことないよね。陣くらい?それも一回だけ)
彼氏でもない男性に頻繁に姫抱きされていたなんて、よくよく考えれば異常なのだ。
蔵馬の言う通り、今こうして飛影と同居している状況もおかしいのだろう。
(どこまでの行為は仲間としておかしくなくて、何以上だとおかしいんだろ…)
命をかけた戦いの場に身をおいていると、境が分かりにくくなる。
命からがら助かった際や生き返った時の抱擁は、仲間同士ならば当然だ。
仲間のピンチに駆けつけるのも違和感はない。
たとえ相手が異性であっても、きっと。
(意識して考えてしまう時点でおかしいのかな…)
仙水のアジトまで飛影が助けに来てくれたこと。
その時と、生き返った時に抱きしめられたこと…。
未来は飛影とふれあった際のことを思い返していた。
「未来」
聞き慣れた低い声に名を呼ばれ、未来が布団から少し顔を出す。
「飛影…運んでくれたんだってね。迷惑かけてごめんね。ありがとう」
「身体は大丈夫なのか」
「うん。おかげさまでよくなった」
少し元気になった未来を見ると、飛影は長居せず部屋を出る。一人でゆっくり休ませてやろうという気遣いだろう。
「しっかり寝とけ」
「うん…おやすみ」
飛影が去り、部屋に一人きりになった未来はうるさい胸の鼓動に気づく。
(なんで私、こんなにドキドキしてるの…)
同時に、罪悪感が胸を刺し苦しくなる。
この罪悪感は何への?
飛影への?蔵馬への?
今の未来にはまだ分からなかった。
かき乱される心から逃れるように、布団に全身をくるみ眠りの世界に入ろうと必死に目を瞑る未来なのだった。