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Ⅱ 暗黒武術会編

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✴︎49✴︎ 懸け×命×賭け



「それではいよいよ、戸愚呂弟選手対浦飯選手の試合を開始します!」

小兎が宣言し、場内は水をうったように静まりかえる。
注目の一戦に、観客たちは皆ごくりと生唾を飲み込んだ。

「第四試合を始める前にかけをしたい。もちろん私は戸愚呂が勝つ方にかける」

その時、マイクを持った左京がリング近くに躍り出た。

「かけるものは私の命だ」

「この試合を事実上の優勝決定戦とするってこと?」

神妙な顔つきの未来が左京に問う。

「その通り。未来さん、我々は観客を満足させるだけの武力は持ち合わせてないだろう?かけにのる気はないかい?」

つまり幽助と戸愚呂の試合において、勝った方に5試合目の分も含めて2勝を与えることを左京は提案しているのだ。

「…わかった。私の命を幽助の勝ちにかける」

しばらく考え込むようにしていた未来だったが、迷いのない表情でキッパリと言い切った。

これまで幽助たちは命をかけて戦ってきたのだ。
それは優勝商品となった未来のためでもあって…
どんな形であれ未来はそれに少しでもこたえたかった。

未来…!」

「ってことだから、幽助、絶対勝ってもらわないと困るよ!」

躊躇する幽助に、ニッと未来は笑う。プレッシャーを与えるような言葉の中にも、未来の幽助への信頼がにじみ出ていた。

「何か問題ある?幽助は勝てるよ」

確証なんてあるわけじゃない。
だけど。

ほかの誰より幽助に、未来は勝利を信じて試合に挑んでほしかった。

「…んなことオメーに言われなくてもわかってら!」

勝てる。勝ってみせる。

未来からの信頼を感じた幽助は、リングへと一歩ずつ足を進ませる。

「ぜってー勝つから。まかせとけ」

背中ごしに呟いた幽助に、見えないとわかっていても未来はこくりとうなずいた。

「話はまとまったね。ところで未来さん、君に話があるんだ。場所を移したい」

「え?」

思わぬ左京からの申し出に、眉を寄せる未来

「はあ?何言ってんだテメーは!」

「ああ、未来さんが心配なら誰か付き添ってもかまわないよ」

噛みついた桑原に、涼しい顔で左京が告げる。

「何を考えている左京」

「貴様が未来に話すことなど何もないだろう」

「よ~しわかった!ワシが未来に付き添うから、それで文句はないな?」

訝しげな視線を左京に向ける蔵馬と飛影を諭し、コエンマが提案した。

「ただ話を聞いてくるだけだ。な?」

「さすが霊界の統治者。物分かりがいい。さあこちらへ」

まだ納得のいかない表情をしている桑原らを残し、コエンマと未来は左京についていき会場を出ていった。
同時に、樹里の試合始めの合図の掛け声が背後で聞こえた。

「コエンマ様、なんで左京の話を聞こうと思ったんですか?」

左京には聞こえない声で、未来は隣のコエンマに訊ねる。
コエンマがああ提案したのは何か考えがあってだと思い、未来はおとなしく左京についていくことにしたのだ。

「…あやつの眼が気になったのだ」

「眼?」

「あやつの眼は自分の命を何度もドブにさらしてきた人間の眼だ」

保身を考えない人間の抱く野望は、他人はおろか自分自身をも巻き込む巨大な破壊行為と相場は決まっている。それがコエンマの持論だという。

「そんな人間が何を語るのか気になった。これで理由になっておるかの?」

「…はい。そうですね。私も気になります」

未来を精神的に追い詰めるゲームを持ちかけたり、命の取り引きを提案したり…
つかめない左京という人間が話す内容を、未来も聞いてみたいと感じた。

「そこの椅子に好きに腰をかけてもらっていいよ」

暗い廊下を進んだ先にある左京に案内された部屋は窓がガラス張りになっており、リングが一望できた。

未来さん、君がいた世界はどんなところだった?」

「え…どうって…ここの世界とほとんど変わらないよ。あ、ただ、この世界みたいに妖怪が存在するとは思えないけど」

どうしてそんな質問をするのか疑問だったが、素直に未来は左京に答える。

「妖怪がいないのか…それはつまらないな。このつまらない人間界よりもっとつまらない」

左京は煙草をふかすと、心底残念そうに述べた。

「大~きな穴がいい。魔界と人間界を繋ぐ界境トンネルをつくりたいんだ。優勝賞金を使ってね」

「なっ…左京、自分がどんなに危険な発言をしているかわかっておるのか!?」

左京の野望を聞いた途端、コエンマが激しく狼狽した。

「どんな邪悪な妖怪でも自由に通れる道ができたら、世の中もっと混沌として面白くなる」

「あのコエンマ様、普通は邪悪な妖怪は人間界に来れないんですか?」

「正解に言うと、邪悪というより妖力の強い妖怪、だな」

根本的なことを知らない未来に問われ、コエンマが説明を始める。

「偶然にできる一瞬のひずみから魔界と人間界の移動は可能だ。だがひずみは小さく、妖力の強い妖怪は通れんのだ」

なるほど、と未来が呟く。

「でも左京、そんなことしたら自分の命も危うくなるんじゃないの?」

「わかってないなあ。だから面白いんだよ」

愚問だと言いたげに左京は微笑をたたえ、あからさまに顔をしかめる未来
すると左京がもう一度フッと片方の口角だけ上げて笑う。

「こんな思考狂ってる、と君は思うかい?」

「思うよ。思うに決まってる」

「どうしてこうなったんだろうな…」

自身の異常性を認め自嘲しているようでも、左京の瞳には後悔も憂いも何もない。
普通といわれる家庭に生まれ、親からも5人兄弟わけへだてなく愛情を注がれ育てられた。しかし自分だけがこうなった。

「結局腐ってたのはオレのここ。誰のせいでもないオレの脳ミソさ」

ぽんぽん、と左京は自分の頭を指でつつく。

「それゆえ君も巻き込み命のかけを要求したのは悪かったよ」

(全然悪びれてるようには見えないけど)

口に出したら、また左京は笑うだろうか。
そう思いつつも、未来は試す気にはなれなかった。

2本目の煙草をくわえた左京が、ふと窓の外へ目線を移す。

「おや、戸愚呂が100%になったようだね」

「ええ!?」

左京はしれっと言ったが、狼狽して未来は窓にはりついた。

「コエンマ様!観客の妖怪たちが蒸発したみたいにどんどん消えていってる…!」

「戸愚呂の妖気に抵抗力のない妖怪は殺られておるのだろう…」

むごいのう、としみじみ述べたコエンマ。
未来は憑かれたように呆然と無数の魂が戸愚呂の肩に吸い込まれていく様を見ていた。

「心配しなくていい。ここは室内だから安全だよ」

「ふん。ワシだって“壁”くらい作れる。場内にいても平気だった」

べ~と舌を出しそうな子供っぽい口調で、コエンマは左京に言ってのける。

「…コエンマ様。“壁”作ってくれますか?」

「え?あ、おい未来!」

言うが早いか、部屋を飛び出していった未来をコエンマは追いかける。

二人がいなくなると流れるような動作で、会場から逃げようとする妖怪たちをドームに閉じ込めるための巨大な壁を出現させるスイッチを押した左京。

未来の言動から自分と他人との違いを改めて感じ、ひとりきりになった左京は煙草の火を消す。
部屋がまた一段と暗くなり、あるのはただ闇だけだった。
まるで彼の心の深淵を映しているかのような。

***

「戸愚呂の妖気、このケガにはこたえるな…」

苦痛に顔を歪ませるのは、近くで試合を見守る蔵馬だ。隣にいる桑原、飛影も固唾を飲んで観戦している。
どんどん観客たちが蒸発して戸愚呂に吸い込まれていき、辺りはまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

「このままじゃ喰われちまう!」
「浦飯負けるなー!」
「戸愚呂を倒せ!倒すんだ!」

生き残るためにはもう幽助に頼るしかない。
これまでとは一転、観客の妖怪たちは彼を応援し始める。

「おまえもしかしてまだ 自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」

「がっ…がは…」

100%の戸愚呂に圧倒的な力の差を知らしめされた幽助は、地面に膝をつき吐血する。

「な…なんか体が寒くてだるい…」

「しっかりしろ!気を高めるんだ!」

観客席の片隅で震える鈴駒に、酎が叫び励ます。

「下っ腹を中心に全身をガードしろ…ん!?」

その時、一筋の閃光がはしり鈴駒に命中した。

「力が湧いてきた…!」

ハッとする鈴駒が辺りを見回すと、会場中に気弾が舞い、死にそうな妖怪たちが力を取り戻している。

「…未来!?」

いつの間にか会場に戻ってきていた彼女の行動に驚き、声が裏返る蔵馬。

「蔵馬!蔵馬にも当てるよー!」

宣言通り未来から発しられた気弾はまっすぐ蔵馬の元へ向かう。
2ヶ月間の桑原、蔵馬、飛影との修行で聖光気を自在に操れるようになっていた未来は、自身もコエンマの壁に守られながら妖怪たちを助けていた。

「フン。だから正義の味方気取りの偽善者は嫌いだ」

未来の近くの観客席にいた死々若丸が眉間にしわを寄せる。

「別に正義感からやってるわけじゃないよ!目の前で大量にヒトが死んでいく様子なんてトラウマになるでしょ!」

間髪いれず未来が大声で叫ぶ。

「…地獄耳かアイツは」

まさか聞こえているとは思っていなかった死々若丸だ。

「自分のための行動だ、と未来は言いたいわけか」

お前と似ているな?とからかうように笑う鈴木に、プイッと死々若丸は顔を背けたのであった。

「浦飯。お前も気弾に当たって体力を回復させたいなら頼むがいい」

それでも勝負は変わらないと、膝まづき下を向いている幽助を上から目線で嘲笑う戸愚呂。

「…ハッハハ…」

しかし顔をふせたままカラカラと笑いはじめた幽助に意表をつかれる。

(あんだけ妖怪に罵倒されたくせして、トラウマになるからって助けるのかよ。イカれてんじゃねーのか?)

血を流しふらふらだった幽助が、いつぶりかの笑みをこぼす。

(ま、オレもイカれたバトル野郎だけどよ…サンキュー未来。なんか元気もらえた)

立ち上がった幽助がすうっと息を吸い、戸愚呂に向かってめいっぱい叫ぶ準備をする。

「パワーアップさせてもらえ?ふざけんな!んなことしなくても勝ってやるよ!」

幽助が拳を振り上げ殴りかかると、戸愚呂の体は数十メートル後ろにふっ飛ばされた。

「いいぞいいぞー!」
未来も浦飯も頑張れー!」
「やっちまえー!」

未来と幽助に、はちきれんばかりの声援がおくられる。

「まったく、調子のいい奴らだな」

そんな観客の妖怪たちを見、呆れた凍矢が呟く。

「ま、応援は多いにこしたことねーべ。未来!幽助!頑張るだ!」

周りにためらわず陣は二人の応援に専念する。
それもそうだな、と凍矢は笑い、陣と共に応援に加わったのだった。

「こんなもんかね?お前の力は…」

「やっぱそううまくはいかねーか」

殴られるもさほどダメージを受けていない戸愚呂を見すえながら、幽助は口元に垂れた血をぬぐう。

(くそ…どんだけカッコつけても…やべーな、これは…勝てねえ)

一瞬弱気な考えが浮かんだが、幽助はそれを払拭しまた立ち上がろうとする。

「盛り上がってるとこ邪魔するよ」

パタパタと青い生き物が対峙する幽助と戸愚呂の間に飛んできた。

「プーちゃん!?でも声は幻海師範…!」

ありえない出来事に、聖光気を送りつつ未来は目を奪われる。

「幽助、お前はこのままだと勝てないよ。たとえ未来にパワーアップさせてもらったとしてもね」

プーの姿を借りた幻海からの辛辣な言葉に、言い返すこともできず幽助は唇を噛む。

「戸愚呂、幽助の本当の底力が見たいならてっとり早い方法がある。こいつの仲間を殺すことだな」

「なっ…何言ってんだよばーさん!?」

幽助だけではない。幻海の衝撃的な一言に、未来も血の気が引いていく。
戸愚呂は桑原、蔵馬、飛影ら三人の元へと向かう。

「これがお前の首つっこんだ世界なんだよ幽助。力のないもんは何をされても仕方がないのさ」

「…うるせえ!やめろ戸愚呂!」

幻海へ聞き耳をもたず幽助が足掻くも、戸愚呂は虫を追い払うかのごとく簡単に彼を殴り飛ばしてしまう。

「お前がいいな」

幽助の仲間の一人を選び、戸愚呂がスッと指さした。



スローモーションのように未来には見えた。

胸に戸愚呂の指が食い込み、桑原が倒れていく光景が。

血を流す桑原の元へ駆け寄ろうとすれば、“壁”から出るなとコエンマに引き留められた。

何回目の前で死んだ仲間の名を呼んだか分からない。

ただ、ただ叫んでいた。



「許せねー…誰よりオレ自身を許せねーよ…」

仲間ひとり助けられなかった。
幽助を無力感と情けなさが襲う。

そして次第に霊力が高まっていく。

「ふっきれたな浦飯!今お前は確実に強い!もっと強くはなりたくないか?ほかの全てを捨ててでも!」

どんどん霊力を増していく幽助に興奮し、喜ぶ戸愚呂が一気にまくしたてる。

「オレは捨てられねーよ。みんながいたからここまでこれたんだ」

「っ…幽助…」

体を震わせる未来は、自然と彼の名前が口をついてきた。

「あんたの捨てたものの重みが…ようやく…わかりやがった」

戸愚呂の強さにどこか憧れ、すべてを投げうってでも強くなりたいという思いがあった幽助。
幻海が何度も、何度も教えてくれたことの意味が今さらわかった。

「オレは捨てねー!!しがみついてでも守る!!」

キッと戸愚呂を睨みつけると、幽助が渾身の一撃をくわえる。
幽助の強さをひしひしと肌で感じた戸愚呂は、フルパワーの100%中の100%となり更に異形をとる。

「何か一つを極めるということは他の全てを捨てること!それが出来ぬお前は結局はんぱ者なのだ!」

「捨てたのかよ?逃げたんだろ?」

全身のありったけの力を指先に集中させ、幽助が今までとは比べものにならないほど大きな霊丸をつくる。

「あんたの全てを壊してオレが勝つ!」

「ぐっあああああ…」

幽助の霊丸を受け止めた戸愚呂だったが、ついに耐えかね霊丸が大きく弾けた。

「…礼を言うぞ浦飯…こんな力が出せたのは初めてだ…」

フルパワーになったはずみでバリッと戸愚呂の体が殻がとれたかのように破滅していき、力尽きた彼はその場に倒れこむ。

(他の誰かのために120%の力が出せる…それがお前たちの強さ…)

戸愚呂は敗れた。
しかし満足そうに死んでいったように見えたのは、気のせいではないだろう。

「浦飯選手の勝利ですー!」

樹里と小兎が声を揃えて宣言すると、蔵馬、飛影、未来、コエンマが満身創痍の幽助の元へ走る。

「幽助!しっかりしろ!勝ったぞ幽助!キミが勝ったんだ!」

意識が朦朧としているのか、生気のない幽助に懸命に蔵馬が呼びかける。

「オレ…生きてんのか…」

「生きてる!生きてるよ幽助!」

「見事な一発だったぞ!」

未来とコエンマも声をかけるも、幽助は浮かない顔のままだ。

「ちくしょう…桑原に何て言えばいい!?あいつに何をしてやれば…」

「桑ちゃん…」

「自分を責めるな幽助。未来も泣くな」

うなだれる幽助、未来、コエンマの様子に、参ったように頬をかく蔵馬。

「三人共ごめん。桑原くんは元々死んじゃいなかったんだ」

「は!?」

三人が頭をあげれば、ピンピンした桑原とバッチリ目があった。

「よっ!浦飯にはショック療法もいいかと思ってよ!」

未来とコエンマは遠くにいて伝えるタイミングがなかった、と蔵馬が桑原の言葉に付け加える。

「な、なあんだもう…よかった…」

拍子抜けして力が抜けた未来は、へなへなと座り込む。安堵の気持ちと、聖光気をたくさん放出した疲労感からだ。

「いててて死ぬ死ぬマジで!」

「…あ。そういやなんで戸愚呂はコイツを殺さなかったんだ?」

どこにそんな力が残っていたのだろうか。騙されたことに怒り桑原をボコボコにしていた幽助が、はたと手を止めた。

「桑原の防御力が上がっていて心臓を貫けなかったんだろう。あきらめの悪さだけはピカイチだからな」

「ほめてねーだろ」

そんな飛影と桑原のやり取りに、ふっと口元を緩める未来。毎度の二人の小競り合い見てると、全てが無事ちゃんと終わったんだと思えて安心した。

「はじめから戸愚呂は桑原くんを殺す気はなかったんじゃないかな。オレには彼がずっとこうなることを期待していたような気がしてならない」

悪役を演じてでも、本当に強い者が自分を倒してくれることを望んでいたのではないか、と蔵馬は言う。

「多分それが正解だろうね」

颯爽と現れた左京が手にしたスイッチを押せば、地響きが起きドーム全体が崩れていく。

「賭けは私の負けだ。ドームは間もなく爆発する。私の野心もろともな」

「何!?巻き添えはごめんだ!」
「どこから逃げれるんだ!?」
「浦飯が空けた穴がある!」

焦る観客たちは逃げ惑い、出口を探し駆け回りパニックに陥る。

「雪菜さんが危ねえ!」

猛ダッシュで駆けていった桑原に、幽助と飛影も続く。

「ねえ、賭けなんてどうでもいいよ!死ぬ必要ないってば!」

命を懸けた賭けに勝利した未来は、その場に残り左京の説得を試みる。

「それは無理だな。ギャンブラーとして負けをチャラになんてできない」

「でも…」

未来は渋るが、その瞳から揺るぎそうもない左京の信念を感じた。

「ひとつ聞かせて。なんで界境トンネルの話を私にしたの?」

「…希望だったんだよ」

「え?」

左京の発言の意図するものがわからず、聞き返す未来

「魔界と人間界をつなぐ穴を作った人間はこれまで一人もいないし、本当にトンネルが完成するか不安なところもあった」

不安なんて感情を左京も抱くのかと、未来は心底意外だった。

「魔界以上に行き来が困難な異世界から来た君の存在は、界境トンネル成功の可能性を見い出す希望だったんだよ。だから君には話しておこうかな、となんとなく思えたんだ」

「…そう」

次々と固いコンクリートのブロック片が落下し、左京と未来たちの間を遮っていく。

未来、もう行こう」

「ここは危険だぞ」

「…うん。そうだね。早く逃げなきゃね!」

蔵馬とコエンマに急かされ、未来は駆け出す。

「バイバイ!」

振り向きざまそう言い残して。
左京はまたいつもの笑い方をすると、片手をあげ未来に応えた。

***

ガーガーいびきをかく者。
すうすう静かに寝息をたてる者。

その日の夜、まだ9時であるにもかかわらず、死闘の疲れから浦飯チームのメンバーは熟睡し床についていた。ただ一人、ソファーに座る未来を除いては。
コンコンとノックの音がしたので未来がドアを開ければ、ホテルの廊下にコエンマが立っていた。

「コエンマ様!どうしたんですか?」

「ワシは今から霊界に帰るが、未来も来るか?お前が自分の世界に帰ることに関しての話も二人でしたいしな」

「…行きます」

浦飯チームの優勝を見遂げ、もう思い残すことは何もない。

「わかった。まあ深夜にでも未来はまたここへ帰るとよい」

「はい。さすがに私も何も言わずに幽助たちとお別れは嫌ですしね」

未来は霊界へ移動すべく自分のベッドに寝転がると、コエンマの力を借りて幽体離脱をする。

刻一刻と、別れの時は近づいている。
彼女のそばで眠りにつく4人の仲間たちは、その事実に微塵も気づいていなかった。


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