Ⅱ 暗黒武術会編
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✴︎24✴︎化粧使い画魔
(蔵馬と幽助なら大丈夫。絶対に勝つ…!)
気持ちを切り替えて、未来は二人を信じて勝利を願う。
「蔵馬なら勝てる!頑張って!」
蔵馬は未来の声援に、片手を上げて応えた。
「蔵馬vs画魔、始め!」
試合開始の合図早々、筆を2本取り出した画魔。
「元来化粧にはすごい魔力が宿っている。人間も祈願祭などでやるだろう。日常生活でも女は魅惑の化粧を使うしな」
画魔は化粧筆で目元、口周りを赤く塗っていく。かなり凄味が増し、前とは別人である。
「薄い顔だった画魔がどんどん怖めな感じに…。印象が全然変わっちゃった。はーっ化粧ってやっぱすごいね」
私も化粧で化けれるかなあ、と未来。
「お前はそのままがいい」
未来の顔をまじまじと見ながら飛影は言った。
「え…そう?」
素顔のままで可愛いから十分、と飛影に言われたようで、照れて内心喜ぶ未来。
(未来も物好きな奴だ。あんな風に顔に色をつけて怪物のようになりたいのか)
しかし、飛影は化粧イコール画魔のように化け物っぽくなるもの、という認識しかないだけであった。
「オレが化粧の本当の魔力を見せてやろう。オレ特製の化粧水を使ってな。戦闘の粧!」
顔だけでなく、画魔は体にも筆を滑らす。筆につけた化粧水の力だろう、画魔の妖気は急激に高まっていった。
「しゃあーー!」
全身に赤い模様をほどこした画魔が蔵馬に向かっていく。
「画魔選手のすごい連続攻撃!蔵馬選手、反撃のチャンスがありません!」
高速で拳をふる画魔とそれを避ける蔵馬を、小兎は必死に目で追っていく。
「敵の性質を見極めてから戦法を決める…蔵馬の悪いクセだ。あれだけスピードがあると武器を出すスキが作りにくい」
ローズウィップを出せない蔵馬を見て、飛影が言う。
「植物を武器化する時間は与えねえぜ!このままケリをつけてやる」
先に仕掛けたのは画魔だった。
「う!足が…!?」
自らの左足の異変に気づいた蔵馬。
「蔵馬の足首に模様がついてる!画魔がいつの間にかつけたの…!?」
素早い画魔の動きに、未来はついていけなかった。
「どうだ!?足が鉛のように重いだろう!あんたもう逃げられねえぜ!」
左足を引きずって動く蔵馬を、画魔は嘲笑う。
「死の化粧だからなァ!」
今度は左足だけでなく、両手、両足まで蔵馬に模様をつけた画魔。
「とらえたぜ!獄錠の粧!あんたの手足の自由を奪った!例えるなら手足それぞれに70kgの錠をはめたとでもいうところか」
「くっ」
合計280kgの重さに、蔵馬は身動きがとれない。
「ど、どうしよう…そうだ!模様が付いた部分の服をローズウィップで切り取っちゃえばいいよ!」
「これで自慢の武器は一切使えまい!」
「あ、そっか、ローズウィップ出せないのか…」
タイミング良く入った画魔の言葉から、未来は基本的なことに気づかされた。
「くくく、身じろぎさえせんとは覚悟を決めたか?さぁあ一撃で決めてやるぜ!」
「蔵馬あ!」
蔵馬に飛びかかった画魔に、未来は息を飲んだが…
「がはっ…髪で…!?」
身体の至るところに切れ込みをいれられ攻撃されたのは、画魔の方だ。
「悪いな。使えるのは手足だけじゃない」
ローズウィップを自らの髪の毛から出した蔵馬。髪にはムチが絡み付き、ポニーテール蔵馬が誕生していた。
「蔵馬…超美少女ーー!!」
言った後ではっ、と未来は己の口を手でふさいだ。蔵馬には聞こえていなかったらしく、胸を撫で下ろした。
「ぐっは…つめを誤ったぜ。少々手こずってもあんたの妖気すべてを防ぐべきだった」
大ダメージを与えられた画魔は、立っているのがやっとだ。
「あまり喋らない方がいい…もう勝負はついた。オレの呪縛に使っている妖気を解いて自分の傷の治癒に向けないと危険だぞ」
画魔との試合を終えるつもりの蔵馬はローズウィップを解く。
「そうかな…勝負はまだ分からねえ」
つらそうな状態でも、画魔は笑うのをやめない。
「呪縛されたままでも今のキミよりは素早い。ムダ死にはよせ。キミは死ぬにはおしい使い手だ」
「光栄だ!」
蔵馬の言うことに聞く耳を持たず、画魔は攻撃を始めた。
手、足、口…体の至るところから血を吹き出して蔵馬を殴ろうとする画魔。
しかし、彼のよろめいた体では蔵馬に一撃も加えられない。
「よせ!ムリに動けば本当に死ぬぞ!」
「ハッハッ…」
蔵馬の説得もむなしく、画魔は荒い息で攻撃を続ける。
そして…
「ダウン!カウントをとります!」
力尽き倒れた画魔に、カウントを数え始める小兎。
「…もう二度と立てないだろう」
蔵馬が無念そうに呟いた。
「画魔、死んじゃうのか…」
自分を彼らのホテルの部屋に閉じ込めず、闘技場に連れていく提案をしてくれたのは画魔だったと思い出す未来。後味が悪い勝利だと思った。
(きっと、蔵馬もそう思ってるよね…。って、ん!?)
未来の目に映ったのは、全身に赤い模様をほどこされた蔵馬の姿。胸の前には“封呪”の文字がある。
「くくくくくくく。封じた…」
「なに?」
倒れながらも不気味に笑う画魔の言っていることが、蔵馬は分からない。
「あんた、オレの筆には注意していたが返り血には無頓着だったな。化粧水の正体を教えてやろう、オレの血さ」
「!!」
蔵馬はやっと自分にほどこされた模様に気づく。画魔の血だから、赤い模様なのだということも発覚した。
「用心深く頭の切れるあんたに化粧をほどこすのはまさに命がけだ。念縛封呪の粧!あんたの妖気は完全に封じたぜ」
「しまった…」
意表を突かれた蔵馬が冷や汗をかく。
「これが忍よ…先の勝利のために死を選ぶ」
「そこまでするなんて…」
捨て身の戦法をとった画魔から、未来は魔忍の厳しさを思い知る。
彼らが勝ち抜き戦という対戦方法をとった理由もわかった。個人の死より、チームの勝利を優先する魔忍の考え方故だろう。
「オレが死んでも10分くらいは妖気は消えねェ。それまで次の相手をかわせるかな…」
最後まで不敵に笑いながら、仲間に勝利を託し画魔は息絶えていった。
「ど、どうしよう…そうだ!恥ずかしいかもしれないけど服を脱いだ方がいいよね。一時の恥より命の方が大事だもん」
「どうする蔵馬…画魔の作る化粧水はどんな服も通り抜けて皮膚に付着するぞ」
「あ、そうなんだ…」
またもやタイミング良く入った、今度は吏将の発言に、未来は自分の提案の馬鹿らしさに気づかされた。
「でかしたぞ画魔…10分で十分だ。カタキは討つ」
黒マントを脱ぎ去り、颯爽と次なる敵が現れる。
(あの人は…!)
雑魚妖怪から逃げる道中、未来とぶつかった凍矢だ。
聡明そうな次なる蔵馬の相手から一筋縄ではいかない気配を感じ、冷や汗をかく未来だった。