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Ⅰ 四聖獣編

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ヒロイン
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✴︎13✴︎暗黒武術会への招待者



「あっ、幽助!」

未来が飛影と歩いていると、向こう側から幽助がやって来た。

「さっき蔵馬ともすれ違ったんだけどよ、オメーら三人までここに来てたなんて驚いたぜ」

迷宮城で出会った五人全員が再び集結した、というわけである。

未来、足を撃たれたって聞いたが大丈夫か?ったくあの垂金のヤロー」

「私はもう平気。幽助こそ大丈夫なの?」

「これくらいのケガ、幻海婆さんとの修行に比べたら屁でもねぇよ」

垂金の最低さに幽助は舌打ちをすると、不良なめんな、と握りこぶしをつくった。

「桑原はだいぶ身体にガタがきてたみてーだけどな」

「そっか…。桑ちゃんはまだ闘技場にいるの?」

おう、と幽助が頷くと、未来は競技場へ急ぐ。聖光気の能力で桑原の回復を助けられたらとの思いからだ。

「飛影、久しぶりの感動の兄妹の対面だっただろ」

未来が立ち去ると、ニヤニヤして幽助が飛影へ言った。

「雪菜はオレを知らん。これからも知る必要はない。氷女は氷河の国を出ないで暮らすしきたりがあるからな」

「えっそうなのか」

てっきり雪菜も飛影の存在を知っていると思っていた幽助だ。

「オメーもしかしてその邪眼は彼女を見つけだすために…」

「くだらん」

幽助の言葉を飛影がさえぎる。
飛影の本心はわからないが…

(氷河の国から出れないって…おいおい桑原また失恋かよ。未来の時も相当ヘコんでたのに、あいつ生きていけるか?)

幽助は今後の桑原の精神状態を案じるのであった。

***

「大丈夫…!私…人間(あなた)のこと好きです」

「……ありがとう…」

闘技場では、雪菜と桑原が妖怪と人間の垣根をこえ心を通わせていた。

(う~ん、なんかイイ感じだな。ジャマしちゃわるいかも)

競技場に着いた未来だったが、なんだかいい雰囲気の雪菜と桑原の間に入れず、そっと扉の影から彼らを見守っている。

未来

「ひゃっ」

背後から突然呼びかけられて、驚いた未来が肩を上げた。

「なんだ蔵馬か~。気配をたって近づかないでよ」

「飛影にも以前同じことを言われましたよ」

「まあとにかく、蔵馬お疲れさま。ありがとうね」

未来はヘレンちゃんと戦い疲れているであろう蔵馬に聖光気弾を当てる。

(すごいな…妖力がどんどん回復していく)

蔵馬は改めて未来の能力に感心した。

「ありがとう。だいぶ楽になったよ」

「よかった!ねえ蔵馬、あそこに倒れてるのが幽助たちと戦った人だよね?」

未来は霊剣が腹に突き刺さったサングラスの男を指差す。

「ああ。さっき幽助とすれ違った時に聞いたが、戸愚呂というらしい」

「そっか…強そうだなあ」

未来は戸愚呂が生き返りやしないかという不安に襲われた。

(まさかね。杞憂、杞憂)

その後、六人は垂金の別荘を後にして。
雪菜は再度お礼を言い、氷河の国へ帰っていった。

***

「いらっしゃい!」

ここは雪村食堂。
看板娘が最近一人増え、今日も大繁盛だ。

未来ちゃんに来てもらえて本当助かるよ。今日はもう上がりでいいよ」

「はい、ありがとうございました!」

妻の体調を気遣っていた螢子の父親は、未来が働いてくれてありがたそうである。
未来も優しい螢子の両親や常連客に囲まれるこの仕事が気にいっており、螢子とは仕事の後しばしばガールズトークに花を咲かせ、同年代の女友達ができて嬉しかった。

(今はちょうど幽助たちの中学が終わった頃かな?迎えに行ってみよう)

螢子か幽助か桑原に会えたら…
そんな軽い気持ちで未来は皿屋敷中へ足を運んだ。

「幽助!」

帰宅する生徒で溢れかえっている皿屋敷中の校門。
ちょうど幽助の姿を発見し、未来は声をかける。

未来!どうしたんだよ」

二人が会うのは垂金の別荘以来、ほぼ一週間ぶりだ。
周りの生徒は超不良の幽助と親しげな未来を、一体何者かとちらちら見ていた。あまり見すぎると幽助に“見てんじゃねー!”と怒鳴られそうなのでさりげなく、だが。

「バイトが終わって、幽助たちに会えないかな~と思って来たの」

「オレは今から久々にパチンコ巡りするとこ。霊界からの指令もしばらくねぇらしいしな。オメーも来るか?」

「中学生がパチンコなんて、ダメですよ!」

ちゃかすように幽助に言った未来

「オメーこういう時だけ年上ヅラすんなよ」

「じゃあ私もパチンコデビューしちゃおっかな」

「お二人さん、話が弾んでるところ申し訳ないがねぇ」

背後から聞こえた低い声に、幽助と未来は凍りつく。

サングラスをした大男…
忘れもしない、戸愚呂の姿があった。

「ま、まさか。てめーはたしかに…」

倒したはず、と幽助が言う前に。

「ついてきな二人共。話がある」

「…!」

目に見えない素早さで、戸愚呂は幽助の制服に一筋の切れ目を入れていた。

(そんな…生きていたなんて…)

戸愚呂の強さを目の当たりし、未来は声も出ない。

「待て!未来まで連れていく必要はねーだろ。オレだけでいいはずだ」

幽助の言葉に、ニヤッと戸愚呂が片方の口角を上げる。

「優しいんだねぇ。だがこれから話すことはそこのお嬢ちゃんにも十分関係がある。ぜひ来てもらいたい」

「知るかっ…」

「幽助!」

戸愚呂に刃向かおうとした幽助の服のすそを、未来はきゅっと掴む。

「私も行くよ。行きたいの」

「でも未来…」

これから戸愚呂に何をされるか分からない…未来を危険な目にあわせたくない幽助。
だが未来は幽助一人だけ行かせるのは心配でたまらなかったし、自分に関係があるという戸愚呂の話も気になった。

「別にオレはあんたらを殺しに来たわけじゃない。用件を飲むならね…ついてきな」

緊張の面持ちで幽助と未来は戸愚呂の後を静かについていった。

三人が去った後の校門はざわつく。
野次馬の生徒たちが幽助たちの様子を見ていたのである。

「誰だ!?ヤクザか今の男!」

「浦飯がサングラス男の彼女である、あの女の子と浮気したに一票」

「私もそれに一票!」

「オレの女に手ぇ出すな!とこれから浦飯がボコられるに一票」

「いやいやサングラス男はあの女の子のストーカーでだな…」

三角関係を仕立て上げ、好き勝手に想像する部外者たちであった。

***

建設中のビルに幽助と未来が連れてこられた時には、辺りはもう日が落ちて暗くなっていた。

「やられたとみせたのは実は演技でね…」

「さっさと用件言いやがれ!」

威勢よく戸愚呂に言った幽助だが、その体はかすかに震えている。

「ふっ…オレが怖いか?」

「ふざけんじゃねー!」

戸愚呂は幽助の胸の内を見抜いていた。

「つまらん強がりはやめろ。敵の本当の強さがわかるのも強さのうちだ。お前は強い、まだまだ強くなるはずだ。だからこそお前に見せておく気になった」

戸愚呂が妖気を上げていき…

「本当のオレをなァ!!!」

一気に戸愚呂の筋肉が隆起した。

「きゃ…」

戸愚呂の放出する妖気で大気がふるえ、バランスを崩した未来は立っているだけで精一杯だ。

「オレの能力は筋肉操作。お前と戦った時は20%ぐらいだったかな」

20%。
その数字は幽助を絶望に落としいれた。
あの時でさえ幽助は戸愚呂に苦戦していたのだ。

「そしてこれが60%ってとこか。3分でこのビルを平らにしてみせようか?」

「あ…う…」

60%の戸愚呂の姿に圧倒され、幽助は言葉らしい言葉を紡ぐことが出来ない。

「嘘…」

ありえないほど筋肉を隆起させその強さを醸し出す戸愚呂に、未来は目の前が真っ暗になった。

「二ヶ月後ある場所で武術会が開かれる。闇の世界を利用して暗躍している人間の金持ちや実力者が、それぞれ最強と自負する戦士五人を参加させて戦うトーナメントだ」

静寂の中で、戸愚呂の渇いた低い声が響く。

「桑原、蔵馬、飛影、そして浦飯が今大会のゲストだ。断ればその場でオレが殺す…」

幽助と未来はピクリとも動けないまま戸愚呂のセリフを聞く。

「死に物狂いで強くなることだ。生き延びるためには勝つしかない。優勝チームには何でも望みを叶える権利が与えられるぞ」

戸愚呂はそこで一呼吸おいた。

「それに…今回の大会は一味違う。優勝商品がつくからな。未来っていったっけねぇ。あんたがその商品だよ」

優勝商品が、私?
未来は戸愚呂の言葉がすぐには理解出来なかった。

「自分では分かっちゃいないだろうが、異世界から来たあんたにはそれだけの価値があるんだよ」

珍しいものは価値が高い…そうだろ?、とクククと笑う戸愚呂が同意を求める。

「妖怪どもや闇社会の人間が、喉から手が出る程あんたを欲しがってる。特殊な能力も持っているようだしね…」

戸愚呂は蔵馬の妖力を回復させた未来の姿をサングラスごしに見ていたのだ。

「話は以上だ。次は暗黒武術会場で会おう」

そう言うと戸愚呂は立ち去った。

「…っ」

ガク、と地面に膝と手をつく幽助。頭がカチ割れそうなほどの悔しさが彼の胸を占めていた。

(暗黒…武術会…)

未来は膝まずく幽助の隣で、その不穏な武術会の名を復唱し、ただ呆然と立ち尽くしていた。


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