Ⅰ 四聖獣編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
✴︎7✴︎目覚め
ピピピ。
幽助の持つテクマクマヤコン風の道具が鳴る。
「ぼたん、どうした!?」
「今螢子ちゃんと学校にいるんだけど…魔回虫にとりつかれた人間に囲まれてる!奴ら明らかに螢子ちゃんを探してるよ。狙ってきてるんだ!」
「なにィ!早く…早くしねーと…!」
途端に血相を変え走り出した幽助に、未来たちも続く。
螢子という人物がよっぽど幽助にとって大事な人なのだろうと未来は思った。
「桑ちゃん、螢子って人は幽助の彼女なの?」
「その一歩手前って感じだな。幼なじみらしいぜ」
走りながら未来が訊ねると、桑原が応えた。
(なるほど。そんな子が狙われてるとなっちゃあ、幽助も焦るよね。螢子ちゃんてコ、大丈夫かな…)
同じく魔回虫にとりつかれた人間に襲われた経験のある未来は、螢子のことを思うと心配になる。
「あの塔だ!あそこを登っちまえば最上階だぞ」
朱雀がいる場所へ近づいた一行だったが、行く手を阻むようにぞろぞろと大量の虚ろな目をした人間が現れた。
「あれは養殖人間…!奴らを倒して突破するのはかなり手間ですよ」
「痛みも恐怖も感じない生きたでく人形みたいな奴らだからな」
さすが魔界関係のことに詳しい蔵馬と飛影だ。
「くそ面倒くせー!オレのショットガン式霊丸百連発でコナゴナにしてやらあ!」
「待った!無駄に霊力は使わないで」
冷静さを欠いた幽助の肩を蔵馬がつかむ。
「上にあるあの窓からなら養殖人間を倒さなくても塔に入れるよ!幽助たちならジャンプして届くんじゃない!?」
「ムチャいうんじゃねー!バッタじゃねんだぞ」
未来が指した窓を見上げて幽助がツッコむ。
「オレに名案がある!」
飛影の案にすべてが賭けられた!!のだが…
「た、高~い…」
蔵馬に肩車されている未来。その蔵馬は桑原の肩の上に乗っており 、未来は相当な高さにいた。
飛影の“名案”に従い、幽助を除く四人は肩車で縦に連なっているのだ。
「飛影、靴の裏くらい多少はらってから乗ってよ…。めちゃめちゃ砂が落ちてくるんですけど」
両肩に無遠慮に足をのせ立っている飛影へ、未来が文句を言う。
「知るか」
(うん、そう言うと思ってたお…)
期待?を裏切らない飛影の返事である。
「なんでオレが…」
自分の配置に不満そうな桑原だが、最も身長の高い彼が一番下なのは当然といえよう。
「うおお行くぜーー!」
勢いをつけて走ってきた幽助が、彼らを踏み台にして跳び上がり、なんとか窓の桟を掴む。
「桑原!蔵馬!飛影!未来!サンキュー!無事に戻ったらおごるぜ」
「気をつけてね!」
「死ぬんじゃねーぞ!」
幽助は未来と桑原の声援に応えるように親指を立てると、塔の中へと姿を消した。
体制を崩した四人に、容赦なく養殖人間たちが近づいてくる。
「未来は離れていた方がいい。奴らはオレ達で片付ける」
「わかった。みんな、お願いね!」
蔵馬に促され、塔から離れるべく駆けて行く未来だった。
***
塔の最上階で、豪勢な椅子に座りながら一部始終を見ていたのは四聖獣のリーダー・朱雀だ。
「もうじき浦飯幽助がここへ来るな。ムルグ、お前は下に行って未来とかいう浦飯の仲間の女の様子を見ておけ」
朱雀が鮮やかな体色の小鳥に命令する。
「あの女がどうかしましたの?」
「あの女…未来の気の変化が気になる。今まで感じたことのない、不思議な気だ。何かあったらすぐオレに知らせろ」
「分かりました朱雀様。偵察に行って参りますわ」
朱雀に忠実な小鳥、ムルグが空に羽ばたいた。
***
どれくらい時間が経っただろう。
延々と出現する養殖人間たちを倒していく桑原らの様子を、未来は離れた所から見守っていた。
(私も何か協力できることがあったらいいのにな)
何も出来ない自分がもどかしい未来。三人に養殖人間を任せて自分は安全な所で待つしかない現状がふがいなかった。
(さっきからなんか身体がムズムズして気持ち悪いし…)
いまだかつて感じたことのない症状だった。じわじわと濃くなる体調不良に、ため息をついた未来がなんとはなしに右手をグーパー動かす。
(桑ちゃんの霊剣みたいに私もなんか出せたらいのになあ。気功法みたいなかんじ?)
手持ち無沙汰の未来は本当に軽い気持ちで、体内のエネルギーを全て右手に集中させるイメージで力を込めてみた。
(……え!?)
瞬間、ぐるんと身体を掻き回すような感覚が未来を襲う。
手の平に浮かんだ淡い光を放つ小さな塊を、未来は信じられないといった瞳で見つめていた。
「み、みんなー!これどうしよー!?」
不測の事態にパニックになる未来が、大声で戦闘中の三人へ助けを呼ぶ。
「未来ちゃん!?なんだあの玉は!?」
「未来の持っていた能力がこの世界に来たことによって開花したようですね」
「蔵馬やはりお前も気付いていたか。あいつの異質な気が変化していっていたことに」
慌てふためいている未来、見間違いかと目を擦る桑原とは対照的に、さして驚かない蔵馬と飛影である。
「未来ちゃんの気が変化してた!?」
未来の“異質な気”すら感じとれない桑原はさっぱりワケがわからない。
「君と幽助は霊気をあやつるようになって日が浅いから気付かなかったんだろう。慣れたらすぐわかるよ」
「とにかく未来ちゃんの能力が開花したっつーことだな!」
何が何だか知らないが養殖人間に対抗する味方が増えるなら万々歳だと、先の蔵馬の発言を繰り返した桑原はガッツポーズだ。
「未来ちゃん!それ養殖人間にぶつけてみてくれー!」
「え!?こ、こうかな!?」
オロオロする未来は桑原の指示に従おうと、塊を勢いよく放つイメージを頭に描き、手の平を養殖人間たちへ向けてみた。
「あ、当たった!良かった!」
弾はめでたく養殖人間のひとりに命中し、ホッと胸を撫で下ろす未来であったが。
「あれ!?」
未来のエネルギー弾に当たり倒されるかと思われた養殖人間は、一回り体が大きくなり筋肉が隆起していった。
「な、なんか強そうになってねーか!?」
ほかの養殖人間たちに霊剣を振り回しながら、戸惑う桑原が声を上げる。
「未来のエネルギー弾は攻撃性がないんだ…!」
「当てた相手をパワーアップさせるようだな」
蔵馬と飛影もこの展開には意外そうである。
「じゃ、じゃあ今度はみんなに当ててみるね!」
三人へ向かってエネルギー弾を十発ほど放ったつもりの未来だが、それらはすべて養殖人間に当たった。
逆に苦戦を強いられる桑原、蔵馬、飛影たちである。
「貴様…マジメにやっているのか?」
キレ気味の飛影が未来を睨む。
「おかしいな…みんなほんとごめん!次は当てるから!」
焦っている上にまだ気の扱いに慣れていない未来は、上手くコントロールが出来なかったのだ。
四人は気付いていなかった。
彼らの様子を見ていた一羽の鳥の存在に。