ひだまり
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どれくらい寝ていたのだろう。腰が痛くて目を覚ませば、いい匂いが部屋を立ち込めている。ふと、キッチンに目を遣れば、快斗くんが何かを作っていた。あれから何度も何度も快斗くんがここを訪れ、気付けば手料理を振舞ってくれる仲になった。どうして、そこまでしてくれるのか聞きたくても、ずっと聞けないでいた。ただの気紛れかもしれない。そう考えれば考えるほど、自分が傷付くのが目に見えて臆病になっていた。
それでも、快斗くんからもらう優しさや暖かさには嘘がないような気もしていた。
「あ、結衣さん起きた?」
「んー…眠いけど起きる。いい匂いするー」
「今日は結衣さんの好きなオムライス。どう?」
快斗くんが手にしている物に視線を送る。ことんと音を立てて、お皿が机に乗るとそこには、ふわふわとろとろのタマゴが巻かれたオムライスが湯気を立てていた。
「おいしそう!!目覚めた!快斗くん早く早く!」
「待ってよ、結衣さん。オムライスは逃げねぇって。」
「だって、お腹空いたんだもん。」
きらきらと目を輝かせ、嬉しそうにオムライスを見ている結衣を見て、快斗はくすりと笑う。
快斗が隣に腰かける頃には、スプーンを持って手を合わせた状態で待っていた。
「いただきまーす!んー、おいしい!快斗くん天才!」
「本当結衣さんが1番美味しそうに食べてくれる。てか、結衣さん食べてる時は本当幸せそうだよな。」
私は快斗くんの言葉に引っかかりを感じた。心の奥で黒い靄が広がっていく。
「うん!幸せだよ!だって美味しいんだもん!」
(さっきから、だもんって子どもかよ。オムライスで目輝かせて…くそ、かわいい)
「ねえ、快斗くん。」
「な、なに。」
先程まで嬉しそうにオムライスを頬張っていた結衣が、急に落ち着いた声で真剣な目をして快斗を見つめる。数秒合っていた視線を逸らし、床を見つめ1度たくさんの息を吸い込んだ。
「他の女の子にもこんなことしてるの?」
「え?そう見える?」
「う、ううん!」
私は何と言う答えを待っていたのだろうか。1度引っかかった言葉が頭の中で、ぐるぐると回り続ける。
(1番美味しそうに食べるのが私か。)
快斗くんが手料理を振る舞う人が私だけじゃない。それが、こんなにも苦しいなんて言えなかった。
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