きみの隣で
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携帯の画面に映る林田の文字に自然と頬が緩む。数時間前まで駅のホームで見ていただけだったのに、今は連絡をしようと思えばいつでも出来る。携帯を眺めて、思い出すのは顔を赤くさせながら、「お友達からでよかったら、よろしくお願いします。」と言ったいつもより近い距離にある林田さんの顔と声。それだけで幸せを感じた。
林田さんを初めて見たのは、半年前。息を切らして階段を駆け下りていた彼女は、後少しというところで電車を逃してしまっていた。息を整えながら、恥ずかしかったのか少し頬を赤らめている彼女に可愛らしい印象を受けた。学生カバンとは別に持っているトートバッグから何かを取り出そうとして、プリントが風に舞う。それがたまたま俺の方に飛んできて、拾った時に見えた彼女の名前。
(林田結衣…か)
視界の端に捉えたローファーに顔を上げれば、困ったように笑う彼女がいた。
「すみません…!わざわざ拾っていただいてありがとうございます!」
はじまりはそんなことだった。彼女はきっと、そんなこと忘れているだろう。そこから、毎日いろんな彼女を見て、恋だと気付くのにはそう時間はかからなかった。けど、それを恋だと認めるのに時間を要した。殆ど知らない相手に恋をするなんて、考えたこともなかったからだ。
でも、今朝も放課後も自分の事しか考えていなかった自分に余裕がないなと自嘲した。と同時に、林田さんに悪いことしたなと後悔した。女子高の校門であんな事があったのだから、きっと質問攻めに合うのが目に見えるからだ。
(謝りのメール入れておこう)
メール画面に初めて映る名前に口元が緩むのを抑えられなかった。明日に何が起こるかなんて、この時は気付かず、彼女に話しかけられる嬉しさでいっぱいだった。
(黒羽快斗くん、か…)
携帯に映る彼の名前。今日の朝まで1度も話した事はなかったのに、今は携帯に連絡先が入っている。人生何が起こるか、わからないなと微笑んだ。