きみの隣で
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目の前の彼は顔をこれでもか言うほど真っ赤にさせて、でも真っ直ぐに私の目を真剣な眼差しで見ている。優しそうな彼は、ほんの数秒前に私に好きだと告げた。
呑気な声でアナウンスが流れる。すると、彼の手が私を電車に乗るよう促す。されるがままに乗り込むとすぐに電車が動き始め、彼の姿が小さくなる。そこで、私は朝起きてから今起きたことを頭の中で整理しながら学校へ向かう。途中で何度もオーバーヒートしたけれど。
「おっはよ~!結衣どしたん?顔赤いで?」
「あ、和葉ちゃん…おはよう。」
今朝を話をしようと口を開くけれど、次の言葉が出てこない。何から言えば良いのだろうか。正直、自分でもよく理解出来ていないのだ。
「え、何?!もしかして、結衣告白されたとかー?」
彼女はそれはそれは楽しそうに、からかうように笑いながら、詰め寄ってきた。こくり、と頷けば数秒の沈黙の後に大声で叫ぶ和葉ちゃんの声に学校中の生徒が振り返ったんじゃないかと苦笑した。
「どこのどいつや!私の結衣に手を出そうなんて!結衣に先越されるなんて!」
最後の言葉はきっと本音なんだろう。彼女は羨ましそうにこっちを見ている。
「で?どこの誰なん?身長は?年は?顔は?」
「質問多すぎて答えられへんねんけど…」
「ほな名前は?」
「くろばかいとくん。」
「学校は?」
「多分、あの制服は駅5つ隣の男子高。」
「歳は?」
「わからへん。」
「何でそうなったん?」
「え、なんか『ずっと見てました。好きです。付き合ってください。』って。」
「ずっと見てた?気持ち悪いなー。ずっとていつからなん?怖いわ。」
「言われてみれば…そうかも。」
なんて話していると先生が入ってきて、ホームルームすんぞー!と言うので自分の席に着いた。
ずっと見てたって気持ち悪いななんて話したのに、頭の中は顔を真っ赤にさせて真っ直ぐにこっちを見る彼の顔が授業中も離れなかった。
和葉ちゃんと今日はどこに寄ろうか話をしていたが、廊下から聞こえた一言に意識を全部持って行かれた。同時に高鳴る胸に私は戸惑いを隠せなかった。
「校門の前に男おるで!誰か待ってるんちゃうん!」
そんなはずないと思いながらも淡い期待を抱き、窓からそこに目を遣れば、今朝と同じように顔を真っ赤にしているくろばくんがいた。
「和葉ちゃん、ごめん!今日はちょっと」
「えー!何なん?あれがくろばかいと?何や面白そうやん!」
断りを入れようとした私の言葉を遮り、はよ行くで!と手を取られ、走り出した和葉ちゃんに私は引っ張られるように走った。
校門近くまで来ると、くろばくんが私に気付いたのか真っ赤なままふにゃりと笑った。
「よかった…会えて、」
安堵した表情でしゃがみ込むくろばくんに私は何て声をかけようか迷っていると、左手が解放された。と、同時に和葉ちゃんがずんずんと歩いている。
「あんたがくろばかいと?」
「え、そうだけど…」
「結衣のこと好きってほんまなん?て言うか、ずっと見てたとか気持ち悪いねんけど!見てるだけで結衣のこと何知ってんの?中途半端な気持ちやったら、結衣は渡されへんで!」
困惑した表情を浮かべるくろばくんに和葉ちゃんは早口で言い切った。
「林田さんの友達?」
「せや!何か文句ある?」
「文句はないけど、言いたいことはある。」
「何や言うてみ!」
「ずっと見てたって言って気持ち悪い思いさせて悪かったと思うけど、中途半端な気持ちじゃない。確かに知らない事ばっかりだけど、これから知りたいと思ってる。真剣な気持ちだって事をわかってほしい。」
今朝と同じように、顔は赤いけれど真剣な目をしているくろばくんに、私の鼓動はまた早くなる。男子に対する免疫の無さなのか、くろばくんだからなのかは、まだわからないけど。こんなに真剣に思ってくれている彼の気持ちに応えたいと思った。
「くろばくん、」
名前を呼べば、彼は緊張しているような吃驚したような顔をして私の目を見つめ返してくれた。
「お友達からでよかったら、よろしくお願いします。」
と言うと、目の前の2人は目を点にして固まっていた。数秒後、同時に不満そうな声と喜びの声が上がった。