甘い香りに誘われて
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── 紅南国・宮廷。料理人達が夕食の支度に忙しなく動き回っている厨房の一角に、蒸籠を真剣に見つめる美朱と、そんな美朱を傍らで微笑みながら見つめる蘭飛の姿があった。
「蘭飛、そろそろいいんじゃない?!」
「そうですね、では開けてみましょうか」
「うんっ!」
美朱が蓋を上げると、ほのかに甘い香りが周囲に漂った。立ち込める湯気の先にふっくらとした桃饅頭を確認すると、美朱は蘭飛の手を取りぴょんぴょんと跳ねて喜びを表した。
「やったぁ!成功だよ~!」
「ふふ、味見してみてはいかがですか?」
「えっ、いいの?」
もちろんです、と蘭飛が皿に取り分けると、美朱は差し出された桃饅頭にかぷりと食いついた。そして頬に手を当てその味を堪能する。
「美味しい~っ!あたし、こんな美味しいの作ったの初めて!蘭飛のおかげだよ、本当にありがとう!」
「いえ、私はほんの少しお手伝いしただけですよ。せっかくの作りたてです、温かいうちに鬼宿に持っていってあげてください」
「でも、まだ片付けが残ってるし…」
「あとは私がやっておきますので」
「~~、っありがとう!」
美朱は蘭飛に抱きつき再度礼を言うと、桃饅頭片手に足早に厨房を後にした。
「蘭飛様、片付けは私どもが致します」
ふたりの様子を見守っていた料理人が蘭飛に申し出た。しかし蘭飛は器具を片す手を止めずに、ふるふると首を横に振る。
「こちらの勝手で無理を言ってお借りしたんですから、最後までやらせてください」
そう言われてしまっては、料理人も身を引く他なかった。
蘭飛は空になった蒸籠を積み重ねながら、今朝のことを思い返す。朝食後自室に戻ろうとした蘭飛に美朱が、料理を教えてほしい、とお願いした。鬼宿に贈りたいんだろうと察した蘭飛が断るわけがなく、二つ返事で引き受けると、美朱は満面の笑みを浮かべて喜んだ。
「(上手に出来てよかった)」
水で濡れた手を手拭いで拭いながら、安堵の息をついた。母から料理を教わってきたものの後宮入りしてからは機会がなく、多少の不安があったからである。
「さて、と」
片付けを終えた蘭飛は、皿に山積みにされた桃饅頭と向き合った。失敗した時用にと多く拵えたが、無事にすべて上手く出来上がったため大量に余ってしまった。だが厨房にそのままにしておくわけにもいかない。とりあえず、と蘭飛は料理人の人数分の桃饅頭を謝礼代わりに置く。そして一番大きな蒸籠にそれらを詰め直すと、厨房を後にした。
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