♡とある愛のお話Ⅰ
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(※恋人設定・柳宿視点)
──〝今夜部屋に泊まりに来ない?〟って恋人に誘われたら普通「ああ、そういうコトか」ってならない?なるわよね?あたしならなるわ、当たり前じゃない。……ただし、蘭飛はそうじゃなかったみたいだけど。
「…さっきからなに?ジロジロ見て」
「べっつにぃ?なんでもないわよ」
「? 変な柳宿」
そう言って蘭飛は手元の書物へと意識を戻した。そんな彼女に気付かれないよう小さく溜め息をつき、窓から見える月を眺める。
「(…予定が狂っちゃったじゃない)」
─── 遡ること、数刻前。夕食の後、月が綺麗だったからふたりで庭を散歩して、それとなくいい雰囲気になって。まだ蘭飛と離れたくなかったから部屋に泊まりに来ないかと誘うと、蘭飛も微笑み返してくれ、支度してから行くね、と別れた。部屋に戻って湯浴みを済ませ、散らかっていない室内をもう一度念入りに確認して彼女が来るのを待っていると、コンコン、と控えめに扉を叩く音が響いた。
「いらっしゃい」
「ふふ、お邪魔します」
蘭飛も湯浴みを済ませたばかりなのか髪は僅かに湿っていて、頬も赤く色付いていた。そこはかとない色香にあてられそうになるが悟られないようにその手を引き、寝台に座らせ髪を乾かす。
「まだ濡れてるじゃない。風邪引くわよ」
「柳宿が待ってるんじゃないかって思ったら、つい。ごめんね、ありがとう」
「(…否定出来ない )」
櫛で髪を梳かすと気持ちいいのか、蘭飛は目を細めた。傷みのないそれを掬い顔を寄せると、石鹸の香りが鼻腔を擽る。
「…それ、恥ずかしいからやめて」
「あら、いいじゃない」
「…もっとちゃんと洗ってくればよかった」
「今度あたしが洗ってあげるわよ」
「っ、馬鹿!」
ぶつぶつ文句を垂れる姿でさえも愛おしく見え、相当惚れ込んでいるな、と自分のことながら苦笑した。ふと、彼女の膝に置かれた書物に気がついた。
「蘭飛、それは?」
「張宿に貸してもらったの。あと少しで読み終わるから、読んでもいい?」
〝あと少し〟。その言葉を信じて了承する。蘭飛は読むのも速いし、お茶でも飲んでいる間に終わるだろうと思っていた。しかし待てども待てども蘭飛が読み終わる気配がない。
「ね、いつ終わるの?」
「んー、どうだろう…結構難しいんだよね」
「ふーん」
自分から聞いておいて淡白な返事をしてしまったが、蘭飛はさほど気にしていないようでそれがまた悔しく思う。特にすることもないため、こっち見なさいよ、という念も込めながら蘭飛の観察を始めた。
「(髪、伸びたわねェ…最後に切ったのいつだったかしら。あ、目の下に睫毛ついてる。ふふ、眉間に皺寄せた。難しい言葉でもあったのね)」
紅をさしていなくても血色のいい蘭飛の唇に視線がいく。あそこにいつも触れるんだよな、と思っていると赤い舌でちろり、とそこを舐める仕草に胸が鳴った。
「(…ああ、まずい)」
たったそれだけのことで、これまでの蘭飛との行為が脳裏を過ぎっていく。これじゃただの変態じゃない!いや、確かに今日誘ったのだってそういう下心があったからだけど!
「柳宿?」
「えっ?!な、なにっ?」
「ううん、心ここに在らずって感じだったから…大丈夫?」
「なっ、なんでもないわよ!」
「そう?ならいいけど」
なんとか誤魔化せたようで、聞こえないように安堵の息をつく。
「(…まぁ、あたしも男ってこと、か)」
女装している頃には考えられなかった、欲。蘭飛に向けるこの想いを愛情と悟った時には、自分が男に戻りつつあることはすでに自覚していた。特にここ最近は何かと理由をつけては蘭飛に触れたくなる。こんなに欲深い人間だったのかと自分で戸惑ってしまうくらいだ。そして更に、蘭飛も同じであってほしいと望んでしまう。あたしが蘭飛を愛しているくらい……いや、それ以上に蘭飛に愛されたいと思うあたしは強欲なんだろうか。
「ねェ、蘭飛」
「なに?」
「あたし、蘭飛が好き」
別に不安になっているとかそういうのは一切なく、まして蘭飛を疑うつもりなんて微塵もない。けれど想いを伝えたら蘭飛がどんな反応をするのか…気になってしまったのだ。
「私も柳宿が大好きだよ」
純粋に真っ直ぐとこちらに向けられた瞳と、柔らかで心地よい声色。それだけで蘭飛の言葉が嘘偽りないものだと確信できた。
「…そう、嬉しいわ」
「…ごめん、私なにか不安になることしちゃった…?」
「ふふ、なーんもしてないわよ」
「本当に?」
「本当。ただ強いて言うなら…」
椅子から立ち上がり寝台に座る蘭飛の隣へと場所を移した。
「そろそろあたしに構ってくれてもいいんじゃない?」
蘭飛の手にする書物の端を摘み上げ、ポイとその辺へと投げ捨てた。拾おうと手を伸ばした彼女の手首を掴んで腕の中へと閉じ込め、待ち焦がれていた柔らかな感触を堪能させてもらう。
「っ、あの…柳宿…?」
「ん?」
爪先で腰をなぞると薄い寝間着で刺激を拾いやすくなっているせいか、ピクリと蘭飛の身体が小さく跳ねた。
「待って…っ」
「待たない。あたしがどうして今夜誘ったのか、お子ちゃまじゃないんだから分かってるわよね?」
「なんと、なく…?」
「あら、分かってたのにあんなの持ってきてたってわけ」
「だって…勘違いだったら恥ずかしいし…」
「あんたからの〝お誘い〟だったらいつだって大歓迎よ」
少しの間疑問符を浮かべる蘭飛だったが、その意味合いを理解した途端これでもかというほど真っ赤な顔で口をはくはくとさせた。
「えっ、なっ、!」
「ふは、なに生娘みたいな反応してんのさ」
全部あたしに見られて、触られちゃってるのに──。耳元でそう囁くと、恥ずかしさが限界を超えてしまったらしい蘭飛の目には羞恥からきたであろう涙が浮かんだ。……ちょっと意地悪し過ぎちゃったかしら。
「……私だって柳宿の恥ずかしいところ、全部知ってるんだから」
おそらく蘭飛なりの対抗。しかしあたしにはどうしようもなく可愛く見えてしまう。
「ふふ、そうね」
軽くあしらわれ不服そうにする蘭飛の後頭部に手を回し、ゆっくりと寝台に押し倒す。行為開始を予感させる特有の雰囲気にまだ慣れないのか、蘭飛は視線をあちこち動かした。そんな彼女の頬に唇を落とすと、動きを止めてジトッと見つめられた。
「…なによ。もしかしてこっちじゃないから不満だった?」
むに、と蘭飛の唇に人差し指を当てるもののその表情は変わらず。…まさか本当にからかい過ぎた?ここで蘭飛の気を損ねてオアズケなんかされたら堪ったもんじゃない、と情けないことに一気に焦り始める。
「……悔しい」
「は?」
「私ばっかりドキドキさせられて悔しい」
「……はぁぁぁ……なんだ、そんなことね」
拗ねたように呟く蘭飛に、思わず長い溜め息が出た。
「私だって柳宿のことドキドキさせたいのに」
「あのねェ…あんたはそのままでいいの。もう充分間に合ってるんだから」
「…そうなの?」
「じゃなきゃこんなコトになってないでしょうが」
蘭飛はまだなにか言いたげな様子だったが、それを遮るように唇で唇を塞いだ。僅かに開いていたのを見逃すわけがなく、舌を差し入れて彼女のそれを逃さまいと絡めとる。蘭飛から洩れる甘い声と、唾液の混ざり合ういやらしい水音が興奮を助長させていった。
「(…ホント、なんも分かってないんだから)」
頬を染めながら必死に応えようとしてくれているところも、あたしの服を掴むやわい力も。熱の篭った吐息でさえ、あたしを虜にする要因になっているっていうのに。
「、ンっ……柳…娟…」
「! …狡いコね」
そんな蕩けきった表情と声で名前を呼ぶなんて、あたしを欲してくれているみたいじゃない。まるで全身で愛を伝えてくれているように思えて、堪らず蘭飛を抱きしめた。
「愛してる」
呼応するように蘭飛があたしの頬に口づけたのを合図に、彼女の腰紐に指をかけた。
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