やきもちやきあい
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蘭飛と喧嘩してから数日が経った。あの日から会話をするのはおろか、目すら合わせていない。いつも隣同士だった食事の席も真反対の場所を選んで座るため、美朱や他の七星達もあたし達の変化に気付き始めているようだった。
「ね、柳宿。蘭飛と何かあった?」
夕食時。隣に座る美朱が肘で小突き、声を潜めながら聞いてきた。その視線の先には井宿や張宿と楽しそうに話をする蘭飛がいる。
「別に。何もないわよ」
「何もないってことないでしょ!誰が見たって二人とも変だよ」
「なんや、やっぱりお前ら喧嘩でもしたんか?」
「珍しいこともあるんだな」
美朱との会話を聞こえたらしく翼宿と鬼宿も加わった。蘭飛がこちらに気付いていないのを確認し、話を続ける。
「早いとこ謝った方がいいんじゃねえの?」
「ちょっと、なんであたしが悪い体になってんのよ」
「えー、でも蘭飛が意味なく怒ることある?」
「あの子、あんたが思ってるよりずっとお子ちゃまなんだから。あたしに悪いとこがあればもちろん謝るけど、こっちはなんにもしてないんだから謝るわけないでしょ」
「かー!頑固のオカマはこれだから」
「殴るわよ?」
拳を作ってみせると顔を青くさせた翼宿はすぐに黙り込んだ。
「とにかく!向こうが勝手に怒ってるだけなんだから放っておくのが一番よ」
「あたしは早く仲直りした方がいいと思うけどなぁ…」
「ご馳走様。先に部屋戻るわね」
美朱の呟きに聞こえなかったふりをして夕食の席を立った。しかし部屋に戻ったものの、頭に浮かぶのは他の者と楽しげに話す蘭飛だった。
長年一緒に過ごしてきたのだからそれなりに喧嘩もしてきた。だけど今回みたいに長期戦になるのは初めてで、正直どうすればいいか分からなくなっている自分もいる。
「…少し風にでも当たってこようかしら」
ひんやりとした風に当たりながら廷内を歩いていると、無意識に蘭飛の部屋の近くまで来ていたことに気付いた。そんな自分に呆れ、溜息を吐いて引き返そうとした、その時。
「蘭飛ちゃん、そんなところで何をやってるのだ?」
「井宿さん。ちょっと月見酒でもと思って場所を探してるんです」
廊下の角の向こうから井宿と蘭飛の声が聞こえた。盗み聞きするつもりはないが、どうしてもそちらに意識が集中してしまう。というかあの子ったら懲りずにまた飲もうとしてるのね…!?
「よかったら井宿さんも一緒にどうですか?ひとりで飲むのもつまらないし」
「だぁ…さすがにこの寒さじゃ外で飲むのはつらいのだ」
「そうですか?それが気持ちいいのに」
「なら柳宿を誘ったらいいと思うのだ」
井宿が発した名前に蘭飛が固まったのが空気で伝わってきた。あたしだって驚いて声が出そうになったけど我慢したくらいだ。
「何があったか知らないが、君達に喧嘩は似合わないのだ」
「…私だって喧嘩したくてしてるんじゃないです…ただ、──」
突如吹いた風が、その先の言葉を掻き消した。こっそり覗き見る蘭飛の瞳には涙が浮かんでおり、胸の奥の方が締めつけられる錯覚に陥る。震えるその肩に井宿がそっと手を添えた。
「ここじゃ寒い。よかったらおいらの部屋で話を聞くのだ」
「ありがとうございます…」
井宿の言葉に頷く蘭飛に、隠れていたことも忘れて二人の前に飛び出した。
「ちょっと待ちなさい!」
「! 柳宿、…?」
「井宿、悪いけど蘭飛借りるわよ」
井宿の返事を待たずに蘭飛の腕を掴む。後ろで蘭飛が何か言っているのも気にせず、その場から離れるように歩を進めた。
「まったく…世話が焼ける二人なのだ」
井宿がそんなことを呟いていただなんて、あたし達はもちろん知らない。
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