想いの伝え方
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「ありがとう、蘭飛!これで鬼宿に渡せるよ~!」
「私も楽しかったですし、なによりお役に立ててよかったです」
とある晴れた日の昼下がり。美朱様に、一緒にお菓子を作ってくれないかと頼まれた。詳しく話を聞いてみると、異世界には日頃の感謝や想いを込めて相手に贈り物をする“バレンタイン”という行事があり、お菓子を作って鬼宿に贈りたいがひとりで作るには自信がなく手伝ってほしいとのこと。美朱様の話される異世界のお菓子を作ることはもちろん出来ないため、鬼宿が食べ馴染みのあるこちらの世界のものを提案し、無事完成させたところだった。
「蘭飛はそのお菓子、どうするの?」
手本として作ったそれに、美朱様の視線が注がれる。
「そうですね…ひとりで食べるには勿体ないですし、あとで柳宿とお茶する時に戴きますね」
「おお~!蘭飛のバレンタインのお相手は柳宿ってわけね!」
そう口元に手を当てニヤニヤと笑う美朱様に違和感を覚え、首を傾げる。今の会話の中でそんなに面白いことがあっただろうか。
「あれ、言わなかったっけ?バレンタインって大好きな人に、あなたのことが大好きです!って伝える日でもあるんだよ」
…大好きな人に、大好きって伝える ──?
「ちっ、違います…!そう意味があるって知らなくて、!」
「なら渡さないの?柳宿、絶対喜ぶと思うなー」
「そ、それは…そうかもしれないですけど…」
「ふふ、蘭飛顔真っ赤」
「もしかして、からかってます…?」
「そんなことないよ~」
すると美朱様は廊下の先に想い人の姿を見つけ、ぱぁっと笑みを浮かべた。
「それじゃ、あたし鬼宿に渡してくるね!本当にありがとう!蘭飛も頑張ってね!」
あとでいろいろ聞かせてね!と跳ねるように駆けていくその背中を見送り、胸に抱いた包みへと視線を落とす。
「……どうしよう…」
幸いなことに柳宿は朝から実家の用事で帰っていて、宮廷に戻るのは夜だと言っていた。まだ悩む時間はある、と庭をぶらぶら散歩したり、内容が入ってこないのに書物を読んでいるうちに、あっという間に日は傾き始めていた。
そうして、夕食の時間。
「鬼宿、すっごく喜んでくれたよ」
隣に座る美朱様が、嬉しそうにそう教えてくれた。その視線の先にいる鬼宿を見ると、確かに彼もすこぶる機嫌がいい。よかったです、と返すと美朱様は満足気に笑った。
「それで、蘭飛はどうするの?」
「…とりあえず…柳宿が戻ってきた頃に部屋に行ってみようと思います」
「そっか!大丈夫、柳宿も絶対喜んでくれるよ、あたしが保証する!」
「ふふ、心強いです」
よくよく考えてみたら、柳宿がバレンタインの意味を知っているはずもない。お菓子を渡したところでそれに特別な想いを込めているなんて思いもしないだろうから、普段通り自然にしていれば大丈夫。そう自分に言い聞かせると、だいぶ心が軽くなったような気がしたものの、食事はなかなか喉を通らなかった。
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