第二話.幼馴染み
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美朱様が向かった先は宮廷に新たに用意された康琳の部屋だった。どうやら侍女の代わりに康琳の世話をして距離を縮める作戦を企てたらしい。
「侍女の代わりに私の世話をする?…別に構わなくってよ。ただし私と〝彼〟の邪魔は絶っ対しないでくださいましね?」
康琳が鬼宿を抱きしめると同時に聞こえる骨の軋む嫌な音。鬼宿はあまりの痛さに言葉を失った。…康琳はそろそろ自分の怪力加減を自覚した方がいいと思う。
「美朱、髪を結うの手伝いなさいな」
「~♪」
「っ痛いわね!引っ張らないでよ!」
康琳は強く髪を引っ張っていない美朱様に思いきり水をかけた。なんとも理不尽である。
「蘭飛、貴女が代わりに結いなさい」
指名されたことに驚きつつも断る理由はないため、受け取った櫛をその柔らかな髪に通していく。
「(……拗ねてる)」
自分で指名したにも関わらず、鏡に映った康琳は明らかに不機嫌な様子でこちらに見向きもしない。…確かになんの説明も無しに初対面の振りをされたら良い気分はしないよな、と反省した。
それから康琳は美朱様に廊下の掃除もさせた。綺麗な箇所にも新たに塵を落としては何度もやり直しをさせる、まるで姑のような姿には苦笑いを抑えられなかった。痺れを切らして文句を言おうとした美朱様だったが、康琳にどこから持ってきたのかも分からない机を投げつけられ当然避けることも出来ず顔面で受け止めてしまう。…それはいくらなんでもやりすぎでしょう!
「ここは私が代わりますので美朱様はお休みになってください」
「自分で決めたことなんだもん、最後までやるよ!それに蘭飛は柳宿じゃなくてあたしの侍女なんだよね?あたしのお世話だけでも大変なんだから仕事増やしちゃ悪いって!」
「美朱様…」
朱雀の巫女という周囲の者より上の立場にいるにも関わらず飾らないこの性格と、侍女である私にも気を遣うその優しさ── 望んでいた巫女の姿、そのもの。この方になら誠心誠意仕えることが出来るかもしれない。
世話を一通り終えた美朱様を部屋へ送り、私は話をするために再度康琳の元へ向かった。
「柳宿様、お茶をお持ちいたしました」
「………」
「……康琳、ごめんってば。謝るから機嫌直してよ、ね?」
手を合わせて詫びるとそっぽを向いたままの康琳がゆるりと視線だけをこちらに寄越した。
「……あたしが納得する説明しないと許さないわよ」
むすっとした声色ではあったが、ようやく聞く耳を持ってくれたようだ。
「美朱様には〝柳宿〟と幼馴染みだってこと内緒にしてるから咄嗟にあんな態度取っちゃったの。本当にごめんね」
「なんで黙ってるのよ。なに、あたしと幼馴染みがそんなに不服なわけ?」
「もう…そんなわけないでしょ。特に聞かれなかったから答えなかっただけ。…それに朱雀の巫女が自分の力で七星士を見つけることが出来るのかを見たかったの」
「そっちが本音ね。それで?どうせ自分のことも黙ってるんでしょ、いつ言うつもりなの?」
「んー…まだ決めきれてない、かな」
「あら意外。とっくに決めてるのかと思ってたわ」
「いろんな意味で人が良いお方だから守ってあげなきゃとは思うんだけどね。たとえば…美朱様を虐める人から、とか?」
康琳は机上のお茶を取ろうと伸ばした手をピタリと止める。
「…随分とあの子のこと気に入ったみたいね」
「それは康琳もでしょう?」
「どこをどう見たらそう思うのよ」
「好きな子ほど虐めたくなるって昔からよく言うじゃない」
「残念。あたし、好きな人には尽くすタイプなの」
沈黙の時間が流れる。こんな話をするために来たんじゃないんだけどな、と心の中で溜め息をついた。
「そろそろ戻らないと」
張り詰めた空気のまま退室するのは後ろ髪を引かれる思いではあるものの、現時点での自分の立場を考えるとここに長居することは出来ない。
「巫女サマのお世話も大変ね」
康琳がそう鼻で小さく笑った。
「……私、さっき康琳が言ったように美朱様のこと気に入ってるの。だから…あんまりやり過ぎると怒るからね」
それだけを言い残して部屋を後にする。少しの牽制と威嚇を込めたつもりだったが、柳宿が追ってくることはなかった。
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