第二話.幼馴染み
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「⋯蘭飛様、大変申し上げにくいのですが⋯康琳様にお任せして本当によろしかったのでしょうか?」
「⋯まぁ⋯⋯やり方が少しだけ、あれ?とは思いますが⋯⋯そこは、ほら⋯ね?」
康琳はあれからすぐ瓦礫の撤去作業に入ってくれ、確かに退かしてくれてはいる⋯のだけれど。その方法は李凪が疑問を抱いても仕方ないほどに、あまりにも雑なものだった。
「わ~~~っ!!!」
「よけろ~~っ!!!」
軽々と瓦礫を持ち上げては、誰がいてもお構い無しに辺りに放り投げていく。人々が叫びながら逃げ惑う光景は、さながら地獄絵図のようだった。これは近付かない方が懸命だろうと見守っていると、瓦礫の中からふたつの人影が現れた。美朱様と鬼宿だ。大きな怪我をした様子はないふたりにほっと胸を撫で下ろし、美朱様へと駆け寄る。
「失礼いたします」
傍らに跪き足の傷口を確かめると、出血はしているもののそこまで深い傷ではないようだ。駆けつけてきた医官から道具を受け取り処置していく。
「イタタタ⋯ありがとうね、蘭飛」
「いえ⋯大したことのない傷で安心しました」
「えへへ、鬼宿が庇ってくれたんだ。それにあの子が助けてくれたから」
そう美朱様が視線を向ける先にいるのは、あれだけの瓦礫を持ち上げたのに涼しい顔をして服についた砂埃を払う康琳だった。
「そなたは後宮の妃か?…先程の力は、まさか…!」
「私は康琳。── 七星士名では〝柳宿〟と申します」
康琳は左胸で朱く光り輝く〝柳〟の字──朱雀七星士である証を覗かせる。それを見た美朱様は沸き立った。
「三人目は女の子だったのね!助けてくれてありがとう!私、夕城美朱!」
美朱様が握手を求めるものの康琳はそれを無視し、医官の治療を受けている鬼宿へと近付いた。
「私が助けたかったのはこちらの方ですわ!」
そう言って鬼宿の頬に手を添えると、あろうことか彼の唇に自身のそれを重ねたのだ。は?、と突然の行動に言葉を失うと、どうやら驚いたのは私だけではないらしい。美朱様も陛下も、普段は冷静な李凪までもがその光景に驚愕していた。
♢
「⋯⋯はぁ⋯⋯」
後宮へ戻る李凪を見送った後、お茶の支度を手に美朱様の部屋へと向かう途中で溜め息を零す。いくら長い付き合いとは言え、先程の康琳のあの行動には度肝を抜かれた。なんとなく先行きを不安に思いつつ、今は見守るしかないと割り切ることを決めるうちに主人の部屋の前へ到着すると、不思議なことに扉が僅かに開いているではないか。
「⋯⋯何をなさっているのですか?」
室内には布かなにかで足を縛られ床に転がる鬼宿とその布の端を手綱のように握る康琳、そして明らかに着替え途中の様子な美朱様の三人がいた。すぐさま椅子に掛けられた浴巾で美朱様の身体を覆う。
「蘭飛!それが柳宿がいきなり…!」
「あら ──」
「はじめまして柳宿様。美朱様の侍女を務めさせていただいております、神 蘭飛と申します」
「なに ──」
「申し訳ございませんが主人はお着替えの途中ですのでお引き取り願います」
康琳の声を遮って被せるように言い連ねる。ここで私達が顔見知り…況してや幼馴染みだと知られてしまうと、都合の悪いことが起こるかもしれない。ここは初対面の振りをしておこう。状況を把握しきれていない康琳とついでに鬼宿も部屋から追い出すことに成功した。
「…蘭飛すごーい…!あの柳宿に何も言わせないで追い出しちゃうなんて!」
瞳を輝かせ拍手する美朱様に苦笑してしまう。この短時間で康琳は一体何をしたんだろうか。
「せっかく三人目を見つけたと思ったのに、あの子と上手くやっていく自信無いんだぁ⋯」
「美朱様⋯」
「でも巫女をやるって決めたからにはこんなことで弱音吐いてちゃダメだよね!」
異世界からひとりやって来て不安や心細さがあっても決して可笑しくないのに、微塵も感じさせない心の強さに正直驚いた。それと同時に、なぜこの少女が朱雀の巫女に選ばれたのか⋯その理由がなんとなくだが分かったような気がした。
「では⋯お茶の支度が出来ていますので作戦会議にいたしましょうか」
「やった!もしかしてお菓子もあったり⋯?」
「ふふ、もちろんご用意してあります」
「わーい!お腹ペコペコだったんだよね!」
あっという間に茶菓子を平らげた美朱様に呆気にとられたものの、飾らないその姿は年相応のもので自然と笑みが零れた。
「うーん⋯柳宿と仲良くなるにはどうしたらいいかな」
「⋯美朱様、鬼宿様とはどう親しくなられたのですか?」
「鬼宿?鬼宿は初めてこっちの世界に来た時、男の人達に絡まれてたのを助けてくれたの。それから一緒にいるうちにーって感じ、で……」
どうやって異世界からやって来たのかと知的好奇心を擽られるもなんとか抑え、なにやら考え込んだ美朱様の言葉を待った。
「…そうだよ、柳宿のことまだなんにも知らないじゃん」
美朱様はそう呟いたと思いきや突然立ち上がった。
「あたし分かったかも!ありがとう、蘭飛!」
お茶ごちそうさま!と部屋を飛び出していった美朱様。何がなんだか分からなかったが放っておくなんて出来るはずもなく、その背中を慌てて追いかけた。
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