第二話.幼馴染み
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私達の前に宮廷中の武人が一堂に会した。陛下の考えとは、宮廷にいる武人を集めその中から字がある者を見つけ出す…というもの。しかし、本物の七星士となれば自分と戦い合える力を持っているはず、と相手を買って出た鬼宿の身軽で無駄のない動きに武人達は次々に倒れていった。
「へ、へぇ⋯結構強いじゃん」
美朱様の言う通り、鬼宿の実力はかなりのものだった。いくら日々鍛錬している武人といっても、結局はただの人間。それに比べて鬼宿は七星士であり、あの構えは相当腕の立つ者に修行をつけてもらったと見受けられる。
「(⋯⋯さて、と)」
結果が分かりきっている勝負の見物はそこそこに、先程から感じている視線の出処を探る。すると美朱様の背後遠くにある宮廷の柱の陰から顔を覗かせる、ひとりの人物。それは後宮に戻ったはずの李凪だった。美朱様が鬼宿に夢中になっている間に気付かれないよう静かにその場を離れる。
「李凪、何かあったんですか?」
「蘭飛様…あの、それが…」
伏し目がちに申し訳なさそうな面持ちで歯切れの悪い李凪に疑問は深まるばかりだ。首を傾げていると、彼女の後ろからよく知った人物が顔を出した。
「蘭飛!あんたこんなとこで何やってんのよ!?」
「康琳っ?!どうしてここに…!」
「朱雀の巫女が現れたって聞いて見に来てみたらたまたま李凪と鉢合わせてね。この子が主不在でちょこまかするわけないから、ちょおっと聞いたら全部白状してくれたわっ!」
幼馴染みであり後宮の妃である康琳のあまりの剣幕に思わず後退る。…ああ、おそらく李凪もこうやって問い詰められたんだろうなと簡単に予想できた。
「申し訳ありません、蘭飛様……私が不甲斐ないばかりに…」
「いいんです、李凪。私でも康琳の迫力には勝てません」
「ちょっと!あたしの迫力って何よ?!」
「ここ宮廷だよ?誰がどこで見てるか分からないからあんまり素を出さない方がいいんじゃない?」
そう言うと康琳は数秒考えた後咳払いをして、私としたことが…おほほほっ、だなんて言い出した。康琳のこういうところ、本当に扱いやすくて助かる。
「で、あんたはなんで宮廷にいるのよ。ていうかその格好は?」
「んー⋯⋯康琳と一緒の理由、かな。これは事を円滑に進めるために必要な変装」
「⋯⋯ふーん。あんたから見てどうなのよ、あの子は」
「気が早いなぁ、さっき会ったばかりだからまだ分からないよ。でもこうして七星士探しを間近で見られるから、どんな人なのかよく知ることが出来そう」
「七星士探し?あれが?」
「うん。〝宮〟と〝武〟に関連する七星を探してるの」
ちらりと康琳の様子を窺うも、さして普段と変わらずまるで他人事のように喧騒を眺めている姿に小さく息をついた。⋯やっぱり一筋縄ではいかなそうだ。
「じゃああたしは後宮に戻るわ」
「え、もういいの?」
「用は済んだしね。あんたも程々にしなさいよ」
もう少し引き留めたいといった気持ちもあるものの、私には強制も強要もする権利なんてない。こればかりは本人の意志が大切であり、尊重すべきことなのだから。
「⋯⋯うん、分かった」
後ろ手を振る康琳の背中を見送ろうとした、その瞬間。
「っ、!?」
轟音が辺りに響き渡り地が揺れた。咄嗟に瞑った目を開くと、先程まで確かに建物があった場所が瓦礫の山と化しているではないか。
「美朱!!鬼宿!!」
叫びにも似た声を上げて駆け寄る陛下の姿を見て、二人が下敷きになってしまったことをようやく把握する。李凪の制止の声も聞かずに向かおうとするものの、強い力で腕を引かれて阻まれた。
「放して、康琳」
「あんたにアレがどうにか出来るわけ?」
「⋯ただ黙って見ているわけにいかないでしょう?」
非力、無力。そんなことは自分が一番分かっている。⋯それでも目の前で起こっている事態から目を背けるなんて、したくない。二人の名を呼びながら瓦礫を退かそうとする陛下と、危険だからと制止する側近達。頼みの綱の武人達は鬼宿との戦いで気絶してしまっているこの状況下で、少しでも自分に出来ることをしなければ。
「………お馬鹿、なーに怖い顔してんのさ」
康琳は半ば呆れ顔で、私の前髪をくしゃ、と撫でた。
「いくらあたしでも見て見ぬ振りなんてしないわよ。ちゃちゃっと片付けてくるから、あんたはここから動かないように」
「!⋯それって、」
「返事は?」
「⋯はい」
「よろしい。李凪、蘭飛のことしっかり見張っておくのよ」
「承知いたしました」
くるりと踵を返して瓦礫の山へと歩を進める康琳の名を呼ぶ。
「っ、康琳!ありがとう!」
「この〝柳宿〟様に任せなさい!」
康琳の口から出た〝柳宿〟の名。たったそれだけのことが嬉しくて、こんな状況で不謹慎だと思いつつも口元が緩んでしまう。
「⋯⋯康琳様は大丈夫でしょうか」
「心配いりません。私の幼馴染みはとても頼りになりますから」
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