第一話.伝説の幕開け
▽名前変換!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―紅南国・後宮―
「あの話、聞きました?」
「〝朱雀の巫女〟が現れたって話でしょう?」
「本当に異世界から来たんですって!」
代わり映えのない退屈な後宮での妃としての暮らし。あてがわれた自室で好きな読書をするものの、飽きと疲れというものは当たり前のように来るわけで。気晴らしのため散歩をしていると、三人の侍女が内緒話する姿を見つけた。盗み聞きは趣味ではないが、聞こえてきた内容はとても興味深いものだった。
「その話、私にも詳しく聞かせてくださいませんか?」
「「「蘭飛様!」」」
突然声を掛けられたことに侍女たちは驚いて慌てて頭を下げた。そんなに畏まる必要はない、と頭を上げるよう促して早速本題へと入る。
「朱雀の巫女、とおっしゃっていましたよね?」
私の問い掛けに侍女たちはなかなか答えようとはしてくれない。大方、仕事中に噂話をしていたことを咎められると思っているのだろう。…そういえばこの三人は、よく他の妃や女官に注意されているところを見掛ける。それを思い出すと口を閉ざしてしまうのも納得出来た。どうすれば良いものか、と考えあぐねている、と。
「どうやら朱雀の巫女様が宮廷に現れたようなのです」
背後から聞き馴染みのある声で返答があった。ぎくりと肩を揺らして振り返ると、専属の侍女である李凪がそこにいた。
「勝手にお部屋を抜け出されては困ります、蘭飛様」
「ご、ごめんなさい。…それで今の話は本当ですか?」
はい、と李凪は頷いた。この子が確証無しに物事を言わないことは私が一番知っている。…ということは、やはり。
「お邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした。他の人には内密にするので安心してくださいね」
強ばっていた三人の表情が緩んだことを確認し、踵を返して自室を目指す。
「李凪。ひとつ、お願いがあるのですが」
「私に可能なことでしたら、何なりと」
私と背格好の似ている李凪のものなら、違和感はないはず。その〝お願い〟を述べると、普段あまり変化を見せない李凪の顔色がどんどん青ざめていった。
「…それはいくら何でも…」
「お願いします、李凪にしか頼めないことなんです」
「……ずるいです、蘭飛様」
ハァ、と小さく息をつく李凪に心の中で深く謝罪した。
♢
李凪に借りた侍女の服に身を包み、宮廷へと向かう。何人かの文官に声を掛けられることもあったが、後宮からの使いだと伝えればなんの疑いもなく通ることが出来た。物は試しに…とその内のひとりに朱雀の巫女の侍女役を申し出てみると、たまたま適材を探している最中だったらしい。くれぐれも失礼のないように、とだけ言い残し慌ただしく去っていった。
「こうも簡単に事が進むとは…正直拍子抜けですね」
「後宮の妃が侍女に扮するだなんて普通の人間は考えもしないことですよ。…こんな見つかったらお叱りを受けること、本当になさるんですか?」
「私は自分の目で見極めたいので」
「…康琳様には、どう説明を?」
同じ後宮の妃であり幼馴染みのその名に、思わず苦笑が零れる。何も言わずに出てきてしまったからきっと…いや、確実に怒られるだろう。康琳が怒ると厄介なのは李凪も重々承知しているため、不安になる気持ちもよく分かる。
「康琳に何か問われてもあとで私から必ず説明をするから、と言い続けてください」
「…
李凪は渋々と了承の意を表した。そうこう話をしているうちにとある一室の前へと到着する。
「迷惑をかけますね、李凪」
「いえ、そのようなことはありません。…行ってらっしゃいませ、蘭飛様。お帰りをお待ちしております」
「ありがとうございます」
改めて扉へと向き合う。この中に紅南国皇帝〝彩賁帝〟──七星士名〝星宿〟と、噂の朱雀の巫女様、朱雀七星士〝鬼宿〟がいるとの話だ。
ひとつ深呼吸をし、扉を数回叩いた。
_
