ep.07 君と「ふたり」になりたい
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灯りを落としたカラオケボックスの個室の中心で、虹色に光るカラーボールがまわるたびに、友人達の楽しそうな笑顔が色鮮やかに輝いていた。
一緒に遊ぼうと誘ってきた男子学生達は、上善寺高校の生徒で、同じ3年生の仲良し4人組だ。4人ともヤンチャそうな雰囲気で、女の子と遊ぶのには慣れているように見えた。
そういうところが、名前はとても苦手だった。けれど、友人達には、どうしても彼らと会いたい理由があった。
4人中3人が、とてもイケメンだったからだ。友人達にはそれぞれ狙いがあるらしく、お目当ての彼の隣にピッタリとくっついて、楽しそうにおしゃべりしている。
その結果、決して、不細工というわけではないのに残りものになってしまったもう1人の男子学生が、名前の隣にピッタリとくっついている。
「名前ちゃん、楽しんでる〜?次、一緒に歌おうぜ〜。」
「うーん。知ってる歌なら良いんだけど、最近、あんまり聴かないからなぁ。」
「大丈夫、大丈夫、人気あるやつにするから、絶対知ってるって!」
楽しそうに声をかけてくれる彼に、名前は曖昧な笑みを返した。
学生バッグの中に手を突っ込み、さりげなくスマホの時間を確認すると、もう22時を過ぎていた。
そろそろ帰ろうかーーー何度かそう言ってはみたのだけれど、その度に、普段はバイトで名前とはなかなか遊べないんだから、と友人に引き留められてしまった。
「はぁ…。」
誰にもバレないように、こっそりとため息を吐く。
両親が海外への出張に行っているときでよかった。
こんなに遅くなったら、両親も心配するだろうし、怒られてしまう。
でも、楽しい。楽しいはずだ。
東京にいる時に、何度も夢に見た。こんな風に、放課後を高校生らしく過ごしてみたかった。友達とバカ騒ぎするのが、ずっと憧れだった。
歌ったり、友人や男の子達のジョークに笑ったり、スマホのアプリを使ってグループゲームをしてみたり、楽しかった。楽しかったはずだ。
それなのに、なぜこんなに疲れているのだろう。
なぜこんなに気持ちが落ち込んでいるのだろう。
無理して笑って、好きでもない男の子に肩を抱かれて、興味のない歌を一緒に歌わされて、それでもやっぱり、無理して笑う。
これが、本当にずっとずっと欲しかった『友達』というものなのだろうか。
「名前ちゃん、どうした?なんか元気なくない?
もしかして眠いとか。俺の膝貸してやろうか〜。」
明るい彼が、明るく笑って、自分の膝を軽く叩いてみせた。
ジョークではあるのだろうが、あわよくばという本気が見え隠れしている。
「えッ!?だ、大丈夫!全然、眠くないよ!!」
「そっか〜、ざんねーん。俺が膝枕してやろうと思ったんだけどなぁ。
じゃあ、俺が、名前ちゃんに膝枕してもらおっかなぁ。」
彼が舌なめずりをする。そして、短くしている制服のスカートから覗く太ももに彼の手が触れた。
「いや!!」
気づいたら、大きな声を上げて、彼の手を叩いてしまっていた。
驚いた顔をして固まった彼の向こうで、彼の友人達が、何事かと眉を顰めているのが見えた。
ハッとした時にはもう、空気を読めよーーーーーーまるでそう言っているみたいに、名前の友人達が、キッと睨みつけてきていた。
「ごめッーーー。」
「もう〜、名前、何やってんの〜。好きな男の子に甘えられてビックリしたからって
そんな態度とっちゃ、勘違いされちゃうよ〜。」
友人のうちのリーダー格の女友達が、笑って言った。
それに、他の友達も同調する。
そうすれば、驚いて固まっていた彼の瞳が、期待に満ちていく。
「えー、名前ちゃんの狙いってソイツだったの?」
「あぁ、だから、ずっとそこに座ってたのか。」
「俺、名前狙いだったんだけど。」
彼の友人達は、女友達の言葉を真に受ける。
そこにすかさず女友達は「名前は諦めた方がいいよ。」「私達と遊ぼうよ。」と甘える。
そんな彼らのことはどうでもいい、とばかりに、彼が名前の前にずいっと顔を近づけて、真剣な瞳で訊ねる。
「そうだったの?」
「ち、違…ッ。」
否定しようとしたのだ。
ちゃんと、他に好きな人がいるのだと言ったって良かった。
けれど、友人達からの厳しい視線を感じて、名前は何も言えなくなった。
一瞬だけ口を噤んでから、ヘラヘラとした笑いを浮かべてから口を開いた。
「もう〜、違うってば〜。
恥ずかしいじゃん、そういうこと言わないでよ〜。」
名前がヘラヘラ笑うから、彼もヘラヘラと笑う。
友人も、彼の友人達も、ヘラヘラと笑う。
何が楽しいのか、名前には分からなかったけれど、ヘラヘラと笑い続けた。
「えー、恥ずかしがらないで、言ってよー。
ほら、俺のこと好きってさー。」
「あはは、言えないよー。」
名前はヘラヘラと笑う。
そうじゃない、とどうして言えないのだろうと考えながら、ヘラヘラと笑う。
学生鞄の中では、スマホがバイブを鳴らしていた。
何コール目かで切れたスマホには、黒尾からの着信の通知だけが残った。
一緒に遊ぼうと誘ってきた男子学生達は、上善寺高校の生徒で、同じ3年生の仲良し4人組だ。4人ともヤンチャそうな雰囲気で、女の子と遊ぶのには慣れているように見えた。
そういうところが、名前はとても苦手だった。けれど、友人達には、どうしても彼らと会いたい理由があった。
4人中3人が、とてもイケメンだったからだ。友人達にはそれぞれ狙いがあるらしく、お目当ての彼の隣にピッタリとくっついて、楽しそうにおしゃべりしている。
その結果、決して、不細工というわけではないのに残りものになってしまったもう1人の男子学生が、名前の隣にピッタリとくっついている。
「名前ちゃん、楽しんでる〜?次、一緒に歌おうぜ〜。」
「うーん。知ってる歌なら良いんだけど、最近、あんまり聴かないからなぁ。」
「大丈夫、大丈夫、人気あるやつにするから、絶対知ってるって!」
楽しそうに声をかけてくれる彼に、名前は曖昧な笑みを返した。
学生バッグの中に手を突っ込み、さりげなくスマホの時間を確認すると、もう22時を過ぎていた。
そろそろ帰ろうかーーー何度かそう言ってはみたのだけれど、その度に、普段はバイトで名前とはなかなか遊べないんだから、と友人に引き留められてしまった。
「はぁ…。」
誰にもバレないように、こっそりとため息を吐く。
両親が海外への出張に行っているときでよかった。
こんなに遅くなったら、両親も心配するだろうし、怒られてしまう。
でも、楽しい。楽しいはずだ。
東京にいる時に、何度も夢に見た。こんな風に、放課後を高校生らしく過ごしてみたかった。友達とバカ騒ぎするのが、ずっと憧れだった。
歌ったり、友人や男の子達のジョークに笑ったり、スマホのアプリを使ってグループゲームをしてみたり、楽しかった。楽しかったはずだ。
それなのに、なぜこんなに疲れているのだろう。
なぜこんなに気持ちが落ち込んでいるのだろう。
無理して笑って、好きでもない男の子に肩を抱かれて、興味のない歌を一緒に歌わされて、それでもやっぱり、無理して笑う。
これが、本当にずっとずっと欲しかった『友達』というものなのだろうか。
「名前ちゃん、どうした?なんか元気なくない?
もしかして眠いとか。俺の膝貸してやろうか〜。」
明るい彼が、明るく笑って、自分の膝を軽く叩いてみせた。
ジョークではあるのだろうが、あわよくばという本気が見え隠れしている。
「えッ!?だ、大丈夫!全然、眠くないよ!!」
「そっか〜、ざんねーん。俺が膝枕してやろうと思ったんだけどなぁ。
じゃあ、俺が、名前ちゃんに膝枕してもらおっかなぁ。」
彼が舌なめずりをする。そして、短くしている制服のスカートから覗く太ももに彼の手が触れた。
「いや!!」
気づいたら、大きな声を上げて、彼の手を叩いてしまっていた。
驚いた顔をして固まった彼の向こうで、彼の友人達が、何事かと眉を顰めているのが見えた。
ハッとした時にはもう、空気を読めよーーーーーーまるでそう言っているみたいに、名前の友人達が、キッと睨みつけてきていた。
「ごめッーーー。」
「もう〜、名前、何やってんの〜。好きな男の子に甘えられてビックリしたからって
そんな態度とっちゃ、勘違いされちゃうよ〜。」
友人のうちのリーダー格の女友達が、笑って言った。
それに、他の友達も同調する。
そうすれば、驚いて固まっていた彼の瞳が、期待に満ちていく。
「えー、名前ちゃんの狙いってソイツだったの?」
「あぁ、だから、ずっとそこに座ってたのか。」
「俺、名前狙いだったんだけど。」
彼の友人達は、女友達の言葉を真に受ける。
そこにすかさず女友達は「名前は諦めた方がいいよ。」「私達と遊ぼうよ。」と甘える。
そんな彼らのことはどうでもいい、とばかりに、彼が名前の前にずいっと顔を近づけて、真剣な瞳で訊ねる。
「そうだったの?」
「ち、違…ッ。」
否定しようとしたのだ。
ちゃんと、他に好きな人がいるのだと言ったって良かった。
けれど、友人達からの厳しい視線を感じて、名前は何も言えなくなった。
一瞬だけ口を噤んでから、ヘラヘラとした笑いを浮かべてから口を開いた。
「もう〜、違うってば〜。
恥ずかしいじゃん、そういうこと言わないでよ〜。」
名前がヘラヘラ笑うから、彼もヘラヘラと笑う。
友人も、彼の友人達も、ヘラヘラと笑う。
何が楽しいのか、名前には分からなかったけれど、ヘラヘラと笑い続けた。
「えー、恥ずかしがらないで、言ってよー。
ほら、俺のこと好きってさー。」
「あはは、言えないよー。」
名前はヘラヘラと笑う。
そうじゃない、とどうして言えないのだろうと考えながら、ヘラヘラと笑う。
学生鞄の中では、スマホがバイブを鳴らしていた。
何コール目かで切れたスマホには、黒尾からの着信の通知だけが残った。