ep.27 残念な1日だった君が、笑ってくれますように
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4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
名前にとって、学校での好きな瞬間のひとつだ。
ほとんど眠りかけていた名前の意識が、一瞬で戻ってくる。
「じゃあ、続きはまた今度~。」
子守歌のような古典文を読んでいた教師が、また低いボソッとした声で言う。
もう少しハツラツと喋ってくれたら、あと5分は長く起きていられるのに——と名前は思っているのだけれど、実際は分からない。
出すだけで使っていないシャーペンと消しゴムとペンケースに片付けると、教科書と一緒に引き出しに仕舞う。
そして、名前は、机の横にかけておいた小さなトートバッグを手に取ると、弾けるように立ち上がった。
居場所のない教室にいるのが苦しくなると、音駒高校にいた頃から、屋上に逃げ出していた。
窮屈なくらいに狭い場所でたくさんの人と一緒にいると孤独を感じるのに、途方もないくらいに広い空の下に1人でいると、不思議と心が安らぐと知ったのは、いつだっただろう。
いつからか、そんな名前のそばでには、黒尾がいるようになった。
でも、黒尾はもうそばにいない。
独りぼっちになるはずだった名前には今、清水潔子という存在が出来た。
屋上でひとりぼっちで過ごしていた時に、たまたま潔子がやってきたのがきっかけだった。
それから、昼休みになると、清水と一緒に屋上に行って昼食をとるのがルーティンになっている。
言葉数が多い方ではない清水とは、会話が盛り上がるということはあまりない。
話のネタは、男子バレー部のメンバーの話や、昼休み明けの授業の話、覚えていないような些細なことくらいだった。
でも、名前にとって、たったそれだけの時間が、学校で過ごす最も大切な時間だった。
毎朝、目が覚めて最初に『学校に行きたくない』と思う。
身体が重たくて、ベッドから出たくなくて、カーテンの隙間から差す朝日さえ敵に思えて、恨めしくて仕方なくなる。
これが、名前にとっての“いつもの朝”だ。
でも、最近は少しだけ気持ちに変化が出てきているのを感じている。
行きたくない、と思った後に、清水と過ごす昼休みを思い出すのだ。バイトが休みの日は、第二体育館で男子バレー部の人達と過ごす時間も思い出す。いつも意地悪で素っ気ない月島のことも思い出す。
そうすると、不思議と『今日も頑張ろう』———そう思えるようになる。
背中を押すほどではない。でも、そんなひとつひとつが、ほんの少しだけ、名前を前向きにしてくれていた。
教室を出ると、先に授業が終わっていたらしい清水が弁当の入った小さなバッグを持って待っていた。
目が合うと、彼女がニコリと笑った。
「お待たせ…っ。」
「名前~!ちょっと待って~。」
清水に声をかけようとしたとき、後ろから呼び止められた。
途端に、身体に緊張が走る。背中が凍り付いたように冷えて、動きが鈍くなるのが自分でも分かった。
だから、顔に笑顔を貼り付けて、名前は振り返る。
「どした~?」
出来るだけ明るくを心掛けて、名前は返事をした。
追いかけてきたのは、いつも一緒にいるクラスメイトの3人だった。
高校3年という中途半端な時期に引っ越してきて、知らない人ばかりの教室でこれからの1年が不安でいっぱいのとき、最初に声をかけて来てくれた子達だ。
———大切な友達。
頭の中でそう唱える度、心が悲鳴を上げるようになったのは、仲良くなってすぐのことだった。
それでも、彼女達が、大切な友達であることに変わりはない。
一緒にいると息が苦しくなって、身体がうまく動かなくなって、早くここから逃げ出したいと思ってしまおうが、だからといって、自分から彼女達から離れていくことは絶対にない。
「最近、昼休みは一緒にいられないからさ~。」
「さみしくって。」
「行っちゃう前にギューでもしとこうかと思って~。」
そう言うなり、彼女達が名前の身体に纏わりつくように抱き着いて来た。
チラリと清水を見ると、少し驚いた顔をしていた。
「あ~、清水さん、もう来てたんだ。」
友人が清水に気付いた。
「最近、昼休みは名前と一緒にお昼食べてんだよね~?」
「え、うん。」
私に抱き着いたままの友人に声をかけられて、清水は困ったように答えていた。
「放課後は、男バレにまで押しかけてんでしょ~。」
「この子、思ったら即行動で人の気持ちなんにも考えないからさ。
迷惑かけてんじゃない?」
「嫌なら、ハッキリ言ってあげてよ~。」
「いや、そんなことは———。」
「何か困ったことがあったらいつでも私達に言ってね!」
「名前のことなら、よく分かってるから!」
「私達に任せて!」
友人達は笑って言う。
どうして彼女達が自分を呼び止めたのか、なんとなく察しがついた。
清水も分かっただろうか。
『名前の本当の友達は私達だ。アンタは、私達が許した時間だけしか、そばにいられない。』
彼女達がかけているそんな圧に、清水が気づかないことを必死に願う。
「あ、でも、心配しないで。
今日の放課後は男バレの邪魔はさせないからね!」
突然の友人の宣言に、清水は困惑していた。
今日はバイトが休みであることは、昨日の昼休みに言ってある。
本当なら、今日の放課後はいつものように清水の手伝いとして男子バレー部のマネージャー業を行うことになっていた。
けれど、その予定は却下となってしまった。
彼女達の元にいつか一緒に遊んだ他校の男子から、今日の放課後に一緒に遊ぼうと連絡が来たのだ。
前回も似たようなことがあったときは、偶々通りかかった月島が機転を利かせて逃がしてくれた。
けれど、そのときの遊びは、名前が行かなかったことで他校の男子が機嫌を悪くして最悪だったと聞いている。
彼らはどうしても、一緒に遊んだ時のメンバーで会いたいらしい。
きっと、名前が来なかったら、今度は機嫌が悪くなるのは他校の男子だけではない。
彼女達に嫌われたくない————名前に断るという選択肢は残されていなかった。
「じゃあ、お昼休みは清水さんにうちの可愛い子お貸しするから。」
「放課後にはしっかり返してね。」
「いつもうちの名前をありがとう。」
彼女達が、清水に微笑む。
そこに好意を感じられる人間がいたら、その人は頭がおかしい。
だから、必死に好意を探してばかりいる自分はきっとどうかしているのだろう。
こんな姿、清水にだけは絶対に見られたくなかった————名前は、逃げるように、清水から目を逸らした。
「じゃあ、行こうか。」
清水が、名前に声をかけた。
小さく頷いて、名前は清水の隣に並んだ。
でも、本当はこのまま清水の隣にいてもいいのか———自信はない。
それでも、出来るだけ早くこの場から立ち去りたくて、名前は彼女達に背を向けて歩き始める。
そんな名前の手首を清水が掴む。
思わず振り向いたとき、清水は彼女達に向かって口を開いていた。
「名前さんはすごく良い子だから、一緒にいて困ったことなんて一度もないよ。
私が一緒にいるのが楽しくて一緒にいるだけだから、心配しなくても大丈夫。」
「名前が良い子!?」
「まじウケんだけど〜!」
名前にとっては意外で、驚いて、嬉しくて堪らなかったそのセリフに、彼女達は可笑しな芸人のギャグをを聞いたみたいな反応を返す。
余程ツボにハマったのか、彼女達は腹を抱えて笑った。
彼女達は、1年の時からずっと同じクラスなのだそうだ。
とても仲が良くて、明るくて、いつも笑っていて、自分もその輪の中に入れてもらえたときは、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
今も、同じことに笑える彼女達が羨ましい。
自分も同じことに笑える友達が欲しいだけなのに———でも、彼女達が笑っている時、名前はいつも笑える要素がわからなくて困惑ばかりしている。
「さ、今度こそ行こうか。」
清水が、名前に微笑む。
漸く彼女達から解放されて、名前は清水と並んで屋上へ向かう。
いつもだったら、屋上へ向かいながら、昼食の時間が楽しみでワクワクしているはずの廊下が、今日はぼやけて見える。脚が重たくて、頭が回らない。
怖くて、何も考えないようにしているのかもしれない。
(平常心、平常心。)
名前は心の中で必死に唱える。
いつもはどうしているのかを、回らない頭でなんとか思い出すよう努力する。
そうだ。いつもは、昼食がワクワク過ぎて、心がフライングした結果、清水の今日のお弁当の中身を当てるゲームをしていたはずだ。
今日もそれをしないと、清水が気づてしまう。気遣わせてしまう。
でも、喉の奥がしぼんでしまったみたいに空気が全く通らなくて、声を出せないのだ。
「今日の私のお弁当はね、昨日の夜のきんぴらを入れてきたの。
お母さんの得意料理なの。すごく美味しいから、名前さんにも食べさせてあげるね。」
先に口を開いたのは、清水の方だった。
名前が一番避けたい展開だった。
清水の優しい気遣いが、名前の心を抉る。
「…ごめんね。」
なんとか音になった声は、とても小さいくせに震えていて、ちゃんと清水に伝わったか自信はない。
けれど、今の名前にとっては、それが精一杯だった。
清水は、どんな顔をしていたのだろう。
顔を見る勇気が出なくて、俯いたままの名前には分からなかった。
けれど、清水のいる右隣はなんだか暖かくて、優しい風が吹いていたような気がした。
ずっと———。ずっとここにいたいな、と思う。春風のようだった。
名前にとって、学校での好きな瞬間のひとつだ。
ほとんど眠りかけていた名前の意識が、一瞬で戻ってくる。
「じゃあ、続きはまた今度~。」
子守歌のような古典文を読んでいた教師が、また低いボソッとした声で言う。
もう少しハツラツと喋ってくれたら、あと5分は長く起きていられるのに——と名前は思っているのだけれど、実際は分からない。
出すだけで使っていないシャーペンと消しゴムとペンケースに片付けると、教科書と一緒に引き出しに仕舞う。
そして、名前は、机の横にかけておいた小さなトートバッグを手に取ると、弾けるように立ち上がった。
居場所のない教室にいるのが苦しくなると、音駒高校にいた頃から、屋上に逃げ出していた。
窮屈なくらいに狭い場所でたくさんの人と一緒にいると孤独を感じるのに、途方もないくらいに広い空の下に1人でいると、不思議と心が安らぐと知ったのは、いつだっただろう。
いつからか、そんな名前のそばでには、黒尾がいるようになった。
でも、黒尾はもうそばにいない。
独りぼっちになるはずだった名前には今、清水潔子という存在が出来た。
屋上でひとりぼっちで過ごしていた時に、たまたま潔子がやってきたのがきっかけだった。
それから、昼休みになると、清水と一緒に屋上に行って昼食をとるのがルーティンになっている。
言葉数が多い方ではない清水とは、会話が盛り上がるということはあまりない。
話のネタは、男子バレー部のメンバーの話や、昼休み明けの授業の話、覚えていないような些細なことくらいだった。
でも、名前にとって、たったそれだけの時間が、学校で過ごす最も大切な時間だった。
毎朝、目が覚めて最初に『学校に行きたくない』と思う。
身体が重たくて、ベッドから出たくなくて、カーテンの隙間から差す朝日さえ敵に思えて、恨めしくて仕方なくなる。
これが、名前にとっての“いつもの朝”だ。
でも、最近は少しだけ気持ちに変化が出てきているのを感じている。
行きたくない、と思った後に、清水と過ごす昼休みを思い出すのだ。バイトが休みの日は、第二体育館で男子バレー部の人達と過ごす時間も思い出す。いつも意地悪で素っ気ない月島のことも思い出す。
そうすると、不思議と『今日も頑張ろう』———そう思えるようになる。
背中を押すほどではない。でも、そんなひとつひとつが、ほんの少しだけ、名前を前向きにしてくれていた。
教室を出ると、先に授業が終わっていたらしい清水が弁当の入った小さなバッグを持って待っていた。
目が合うと、彼女がニコリと笑った。
「お待たせ…っ。」
「名前~!ちょっと待って~。」
清水に声をかけようとしたとき、後ろから呼び止められた。
途端に、身体に緊張が走る。背中が凍り付いたように冷えて、動きが鈍くなるのが自分でも分かった。
だから、顔に笑顔を貼り付けて、名前は振り返る。
「どした~?」
出来るだけ明るくを心掛けて、名前は返事をした。
追いかけてきたのは、いつも一緒にいるクラスメイトの3人だった。
高校3年という中途半端な時期に引っ越してきて、知らない人ばかりの教室でこれからの1年が不安でいっぱいのとき、最初に声をかけて来てくれた子達だ。
———大切な友達。
頭の中でそう唱える度、心が悲鳴を上げるようになったのは、仲良くなってすぐのことだった。
それでも、彼女達が、大切な友達であることに変わりはない。
一緒にいると息が苦しくなって、身体がうまく動かなくなって、早くここから逃げ出したいと思ってしまおうが、だからといって、自分から彼女達から離れていくことは絶対にない。
「最近、昼休みは一緒にいられないからさ~。」
「さみしくって。」
「行っちゃう前にギューでもしとこうかと思って~。」
そう言うなり、彼女達が名前の身体に纏わりつくように抱き着いて来た。
チラリと清水を見ると、少し驚いた顔をしていた。
「あ~、清水さん、もう来てたんだ。」
友人が清水に気付いた。
「最近、昼休みは名前と一緒にお昼食べてんだよね~?」
「え、うん。」
私に抱き着いたままの友人に声をかけられて、清水は困ったように答えていた。
「放課後は、男バレにまで押しかけてんでしょ~。」
「この子、思ったら即行動で人の気持ちなんにも考えないからさ。
迷惑かけてんじゃない?」
「嫌なら、ハッキリ言ってあげてよ~。」
「いや、そんなことは———。」
「何か困ったことがあったらいつでも私達に言ってね!」
「名前のことなら、よく分かってるから!」
「私達に任せて!」
友人達は笑って言う。
どうして彼女達が自分を呼び止めたのか、なんとなく察しがついた。
清水も分かっただろうか。
『名前の本当の友達は私達だ。アンタは、私達が許した時間だけしか、そばにいられない。』
彼女達がかけているそんな圧に、清水が気づかないことを必死に願う。
「あ、でも、心配しないで。
今日の放課後は男バレの邪魔はさせないからね!」
突然の友人の宣言に、清水は困惑していた。
今日はバイトが休みであることは、昨日の昼休みに言ってある。
本当なら、今日の放課後はいつものように清水の手伝いとして男子バレー部のマネージャー業を行うことになっていた。
けれど、その予定は却下となってしまった。
彼女達の元にいつか一緒に遊んだ他校の男子から、今日の放課後に一緒に遊ぼうと連絡が来たのだ。
前回も似たようなことがあったときは、偶々通りかかった月島が機転を利かせて逃がしてくれた。
けれど、そのときの遊びは、名前が行かなかったことで他校の男子が機嫌を悪くして最悪だったと聞いている。
彼らはどうしても、一緒に遊んだ時のメンバーで会いたいらしい。
きっと、名前が来なかったら、今度は機嫌が悪くなるのは他校の男子だけではない。
彼女達に嫌われたくない————名前に断るという選択肢は残されていなかった。
「じゃあ、お昼休みは清水さんにうちの可愛い子お貸しするから。」
「放課後にはしっかり返してね。」
「いつもうちの名前をありがとう。」
彼女達が、清水に微笑む。
そこに好意を感じられる人間がいたら、その人は頭がおかしい。
だから、必死に好意を探してばかりいる自分はきっとどうかしているのだろう。
こんな姿、清水にだけは絶対に見られたくなかった————名前は、逃げるように、清水から目を逸らした。
「じゃあ、行こうか。」
清水が、名前に声をかけた。
小さく頷いて、名前は清水の隣に並んだ。
でも、本当はこのまま清水の隣にいてもいいのか———自信はない。
それでも、出来るだけ早くこの場から立ち去りたくて、名前は彼女達に背を向けて歩き始める。
そんな名前の手首を清水が掴む。
思わず振り向いたとき、清水は彼女達に向かって口を開いていた。
「名前さんはすごく良い子だから、一緒にいて困ったことなんて一度もないよ。
私が一緒にいるのが楽しくて一緒にいるだけだから、心配しなくても大丈夫。」
「名前が良い子!?」
「まじウケんだけど〜!」
名前にとっては意外で、驚いて、嬉しくて堪らなかったそのセリフに、彼女達は可笑しな芸人のギャグをを聞いたみたいな反応を返す。
余程ツボにハマったのか、彼女達は腹を抱えて笑った。
彼女達は、1年の時からずっと同じクラスなのだそうだ。
とても仲が良くて、明るくて、いつも笑っていて、自分もその輪の中に入れてもらえたときは、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
今も、同じことに笑える彼女達が羨ましい。
自分も同じことに笑える友達が欲しいだけなのに———でも、彼女達が笑っている時、名前はいつも笑える要素がわからなくて困惑ばかりしている。
「さ、今度こそ行こうか。」
清水が、名前に微笑む。
漸く彼女達から解放されて、名前は清水と並んで屋上へ向かう。
いつもだったら、屋上へ向かいながら、昼食の時間が楽しみでワクワクしているはずの廊下が、今日はぼやけて見える。脚が重たくて、頭が回らない。
怖くて、何も考えないようにしているのかもしれない。
(平常心、平常心。)
名前は心の中で必死に唱える。
いつもはどうしているのかを、回らない頭でなんとか思い出すよう努力する。
そうだ。いつもは、昼食がワクワク過ぎて、心がフライングした結果、清水の今日のお弁当の中身を当てるゲームをしていたはずだ。
今日もそれをしないと、清水が気づてしまう。気遣わせてしまう。
でも、喉の奥がしぼんでしまったみたいに空気が全く通らなくて、声を出せないのだ。
「今日の私のお弁当はね、昨日の夜のきんぴらを入れてきたの。
お母さんの得意料理なの。すごく美味しいから、名前さんにも食べさせてあげるね。」
先に口を開いたのは、清水の方だった。
名前が一番避けたい展開だった。
清水の優しい気遣いが、名前の心を抉る。
「…ごめんね。」
なんとか音になった声は、とても小さいくせに震えていて、ちゃんと清水に伝わったか自信はない。
けれど、今の名前にとっては、それが精一杯だった。
清水は、どんな顔をしていたのだろう。
顔を見る勇気が出なくて、俯いたままの名前には分からなかった。
けれど、清水のいる右隣はなんだか暖かくて、優しい風が吹いていたような気がした。
ずっと———。ずっとここにいたいな、と思う。春風のようだった。