ep.25 君は僕の彼女じゃない
Name change
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体育館の近くにある中庭までは、後少しだったらしいーーーーと黒尾と名前と離れてからすぐに気づいた。
ボールが床を跳ねる音や、キュッキュッと鳴らすバレーシューズの音、ざわざわと騒がしい体育館の中に入ると、合宿に参加しているほとんどのメンバーがもう集まって、午後の練習の準備を始めていた。
自分も準備運動を始めようかと考えていると、なぜかものすごく怖い顔をした澤村と般若が乗り移ったヤンキーみたいな顔をした田中が猛スピードで駆け寄ってきた。
どうしたんですか、と訊ねるよりも先に、澤村と田中が矢継ぎ早に喋り出す。
「名前さんが音駒にきてるってどういうことだよ、説明しろ、月島。」
「うぉおおおおおい!お似合いカップル!?はぁあああ!?どういうことか説明しやがれ、クールビューティーメガネやろおおおおおお!!」
澤村も田中も、揃って月島に説明を求めていた。
けれど、全く別角度からの質問だ。特に、田中の質問に至っては、全く意味がわからない。
ということで、月島は田中のことは一旦スルーすることにして、澤村と向き合った。
「よく分からないですけど、転校関連のことで音駒の校長先生と話があったらしくて
母親と一緒に朝から来てたみたいです。」
「なんだ、そういうことか。」
納得してくれたらしく、澤村はなぜか心底ホッとしたように息を吐いた。
その隣で、月島の今の説明も全く聞かずに「シカトですか、クールメガネさんよぉ!」とガンを飛ばしてくる田中は、相変わらず騒がしくて煩い。
「じゃあ、月島が合宿に名前さんを呼んだわけじゃないんだな?」
「どうして、僕がわざわざ名前さんを呼ぶんですか。」
意味がわからない。
憮然とした顔をして答えた月島に、澤村はもう一度、安堵の息を吐いた。
けれどこれで、黒尾が名前を見つけても驚いた顔をしていなかった理由をなんとなくだけれど理解した。
誰かが、月島が名前と一緒にいるのを見たのかもしれない。
澤村から少し離れた場所から、音駒高校男子バレー部のメンバーがちらちらと視線を向けて来ているのも、そういうことだろう。
そこへ、空気を読むことはせずに賑やかにやってきたのは、木兎だ。その隣には、赤葦もいる。
「ヘイヘイヘーイ!雑誌、見させて貰ったぜ〜い!」
いきなり、木兎が月島の肩に腕を回してきた。
その腕の先には雑誌が握られている。視界に入ったその記事に見覚えのありすぎる男女が載っているのに気づいて、月島から血の気が引く。
木兎が「クールビューティーお洒落じゃねぇかぁ!」と騒ぐ度に、彼の腕の先が揺れるせいで記事をしっかり確認することは出来なかったが、そこに映っているのは、どう見ても月島と名前だ。
「うちのマネージャーがこの記事見つけて、みんなで見てしまったんだ。ごめんね。」
煩い木兎の隣で、赤葦が謝りながら、雑誌を奪い返した。
そして、よく見えるようにしようとしたのか、月島と名前が載っているページを丁寧に開いてみせた。
バレーボールに夢中なスポーツ少年が読むようなスポーツ雑誌ではなく、ファッション系の女性誌だ。
月島にとっても無縁な存在の雑誌だった。
けれど、右のページに載っているバストアップの写真は、名前と月島のものだ。名前がふざけて月島の頬を突いている。2人の肩のあたりに、「蛍 高校1年生」「名前 高校3年生」と書いている。
他人の空似として誤魔化すには、名前も年齢も合致しすぎていて、憂鬱な気分になる。
左のページは、全身ショットだった。求めてもいないのに、編集者が感心したお洒落ポイントとというのが、ご丁寧に矢印付きで書かれている。
騒がしい木兎に赤葦がついてきた理由に納得した後、さっきから田中が騒がしくて仕方がない原因を漸く月島も把握した。
フェスに参加したあの日、この女性誌の撮影クルーに捕まってしまったのだ。
彼らが探していたのは若い男女のカップルで、フェスに参加していた恋人達のお洒落をチェックするという特集ページを作るのだと説明を受けた。
もちろん、月島と名前は恋人同士ではないし、そういうものには興味がないので断ったのだがーーーーー。
「ツッキー、名前さんと付き合ってるの?」
いつからいたのか、そう訊ねたのは、山崎だった。
「そんなわけないデショ。
そういう関係じゃないから無理だって言ったのに、
それでもいいからってしつこく写真撮らされただけ。」
月島は不機嫌そうに答える。
渋々の撮影だった。月島だけではなく名前からも、記事の一番端に小さく載せる程度にしてほしいと伝えたのだ。
それがどうしてか、見開きページの全てが、月島と名前だけの特集になっている。確かにお礼としてお金は貰ったが、これは詐欺だ。
「ちょっと貸してください。」
赤葦から雑誌を受け取った月島は、次のページを開いてみた。
思った通り、まだ特集ページは続いていた。大体、1ページあたり3組程度のカップルが載っている。
それなのにどうしてーーーー自分達だけは、見開きページを使われているのか。
本当に端に少し載っているだけだったのなら、こうして大々的にバレてしまうこともなかったかもしれないのにーーーー。
「ほら、コレ見てよ。この人達は、付き合って7ヶ月とか、2年5ヶ月とか書いてる。
でも、僕たちのところにはそんなのない。
それが、無理やり、企画に参加させられただけだって証拠。」
月島は、他のカップル達と自分達の違いをすぐに見つけて、指摘をした。
それでやっと、疑いは晴れた。
そういうことかーーーーと野次馬達が散り散りになり、月島は澤村達と準備運動を始めた。
なぜか怖い顔で瞬きを忘れたのかと思うほどじっと月島を見ていた研磨も、赤葦と話をした後からは、興味をなくしたようにチラリとも視線を向けなくなった。それを合図にしたように、音駒高校のメンバー達も午後からの練習の準備を始めた。
けれど、体育館を見渡してみても、黒尾はまだ戻ってきていない。
今頃、名前も誤解を解いているのだろうか。
必死になって「そうじゃないの。」「月島くんなんて好きじゃないよ。」なんて、黒尾に説明をしているのかもしれない。
なんだか無性に腹が立って、意味もなく田中を煽ってみた。田中がもっと騒がしくなっただけだった。失敗した。
ボールが床を跳ねる音や、キュッキュッと鳴らすバレーシューズの音、ざわざわと騒がしい体育館の中に入ると、合宿に参加しているほとんどのメンバーがもう集まって、午後の練習の準備を始めていた。
自分も準備運動を始めようかと考えていると、なぜかものすごく怖い顔をした澤村と般若が乗り移ったヤンキーみたいな顔をした田中が猛スピードで駆け寄ってきた。
どうしたんですか、と訊ねるよりも先に、澤村と田中が矢継ぎ早に喋り出す。
「名前さんが音駒にきてるってどういうことだよ、説明しろ、月島。」
「うぉおおおおおい!お似合いカップル!?はぁあああ!?どういうことか説明しやがれ、クールビューティーメガネやろおおおおおお!!」
澤村も田中も、揃って月島に説明を求めていた。
けれど、全く別角度からの質問だ。特に、田中の質問に至っては、全く意味がわからない。
ということで、月島は田中のことは一旦スルーすることにして、澤村と向き合った。
「よく分からないですけど、転校関連のことで音駒の校長先生と話があったらしくて
母親と一緒に朝から来てたみたいです。」
「なんだ、そういうことか。」
納得してくれたらしく、澤村はなぜか心底ホッとしたように息を吐いた。
その隣で、月島の今の説明も全く聞かずに「シカトですか、クールメガネさんよぉ!」とガンを飛ばしてくる田中は、相変わらず騒がしくて煩い。
「じゃあ、月島が合宿に名前さんを呼んだわけじゃないんだな?」
「どうして、僕がわざわざ名前さんを呼ぶんですか。」
意味がわからない。
憮然とした顔をして答えた月島に、澤村はもう一度、安堵の息を吐いた。
けれどこれで、黒尾が名前を見つけても驚いた顔をしていなかった理由をなんとなくだけれど理解した。
誰かが、月島が名前と一緒にいるのを見たのかもしれない。
澤村から少し離れた場所から、音駒高校男子バレー部のメンバーがちらちらと視線を向けて来ているのも、そういうことだろう。
そこへ、空気を読むことはせずに賑やかにやってきたのは、木兎だ。その隣には、赤葦もいる。
「ヘイヘイヘーイ!雑誌、見させて貰ったぜ〜い!」
いきなり、木兎が月島の肩に腕を回してきた。
その腕の先には雑誌が握られている。視界に入ったその記事に見覚えのありすぎる男女が載っているのに気づいて、月島から血の気が引く。
木兎が「クールビューティーお洒落じゃねぇかぁ!」と騒ぐ度に、彼の腕の先が揺れるせいで記事をしっかり確認することは出来なかったが、そこに映っているのは、どう見ても月島と名前だ。
「うちのマネージャーがこの記事見つけて、みんなで見てしまったんだ。ごめんね。」
煩い木兎の隣で、赤葦が謝りながら、雑誌を奪い返した。
そして、よく見えるようにしようとしたのか、月島と名前が載っているページを丁寧に開いてみせた。
バレーボールに夢中なスポーツ少年が読むようなスポーツ雑誌ではなく、ファッション系の女性誌だ。
月島にとっても無縁な存在の雑誌だった。
けれど、右のページに載っているバストアップの写真は、名前と月島のものだ。名前がふざけて月島の頬を突いている。2人の肩のあたりに、「蛍 高校1年生」「名前 高校3年生」と書いている。
他人の空似として誤魔化すには、名前も年齢も合致しすぎていて、憂鬱な気分になる。
左のページは、全身ショットだった。求めてもいないのに、編集者が感心したお洒落ポイントとというのが、ご丁寧に矢印付きで書かれている。
騒がしい木兎に赤葦がついてきた理由に納得した後、さっきから田中が騒がしくて仕方がない原因を漸く月島も把握した。
フェスに参加したあの日、この女性誌の撮影クルーに捕まってしまったのだ。
彼らが探していたのは若い男女のカップルで、フェスに参加していた恋人達のお洒落をチェックするという特集ページを作るのだと説明を受けた。
もちろん、月島と名前は恋人同士ではないし、そういうものには興味がないので断ったのだがーーーーー。
「ツッキー、名前さんと付き合ってるの?」
いつからいたのか、そう訊ねたのは、山崎だった。
「そんなわけないデショ。
そういう関係じゃないから無理だって言ったのに、
それでもいいからってしつこく写真撮らされただけ。」
月島は不機嫌そうに答える。
渋々の撮影だった。月島だけではなく名前からも、記事の一番端に小さく載せる程度にしてほしいと伝えたのだ。
それがどうしてか、見開きページの全てが、月島と名前だけの特集になっている。確かにお礼としてお金は貰ったが、これは詐欺だ。
「ちょっと貸してください。」
赤葦から雑誌を受け取った月島は、次のページを開いてみた。
思った通り、まだ特集ページは続いていた。大体、1ページあたり3組程度のカップルが載っている。
それなのにどうしてーーーー自分達だけは、見開きページを使われているのか。
本当に端に少し載っているだけだったのなら、こうして大々的にバレてしまうこともなかったかもしれないのにーーーー。
「ほら、コレ見てよ。この人達は、付き合って7ヶ月とか、2年5ヶ月とか書いてる。
でも、僕たちのところにはそんなのない。
それが、無理やり、企画に参加させられただけだって証拠。」
月島は、他のカップル達と自分達の違いをすぐに見つけて、指摘をした。
それでやっと、疑いは晴れた。
そういうことかーーーーと野次馬達が散り散りになり、月島は澤村達と準備運動を始めた。
なぜか怖い顔で瞬きを忘れたのかと思うほどじっと月島を見ていた研磨も、赤葦と話をした後からは、興味をなくしたようにチラリとも視線を向けなくなった。それを合図にしたように、音駒高校のメンバー達も午後からの練習の準備を始めた。
けれど、体育館を見渡してみても、黒尾はまだ戻ってきていない。
今頃、名前も誤解を解いているのだろうか。
必死になって「そうじゃないの。」「月島くんなんて好きじゃないよ。」なんて、黒尾に説明をしているのかもしれない。
なんだか無性に腹が立って、意味もなく田中を煽ってみた。田中がもっと騒がしくなっただけだった。失敗した。