ep. 22 君はショートケーキよりも優しくて甘ったるい
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ケーキが美味しいと話題のカフェは、白鳥沢学園近くにあった。
そのためか、店内には、白鳥沢学園の制服を着た若い男女が多くいた。
白を基調とした清潔感のあるインテリアが並ぶ、落ち着いた雰囲気のカフェだ。
名前と月島は、店員に案内され、窓際の席に座った。
メニュー表を開きつつも、なんとなく周囲を見渡して見る。人気があると言うのは本当らしく、店内の席は9割以上が埋まっている。月島たちの次に入ってきた女子グループは、人数が多いこともあって、テラス席に案内されたようだ。
客のほとんどが、女子グループか、男女のカップルだ。
もしかして、自分達もカップル同士に見られているのだろうかーーーそんなことを思って、テーブルを挟んで座る名前に視線を向けると、ワクワクした顔をしてメニュー表を見ていた。
彼女は本当に、全く、他人の目が気にならないらしい。
そんな彼女が、友達の目は気をして、空気を読んで、無理ばかりしている姿と重ならない。
他人と友達は、彼女の中では大きく違っているのだろう。
不意に名前がメニュー表から顔を上げて、月島の方を見た。
「どれにするか決めた?」
「ショートケーキセットにします。」
「やっぱり、いいよねぇ。王道〜。
ん〜。悩む〜。」
「何と悩んでるんですか?」
「全部。」
「…。」
ドン引きする月島に、名前が「冗談、冗談」と笑う。
「この苺タルトと悩んでるの。」
名前がメニュー表を開いた状態でテーブルの中央に置いた。
月島は軽く覗き込むようにして、メニュー表の中央に載っている苺タルトの写真を確認する。
初めからショートケーキにするつもりだった月島は、他のメニューはほとんど見ていなくて気づかなかった。
どうやら、苺タルトは新作ケーキらしい。
たっぷりのカスタードの上に、これでもかというほどに苺が乗っている。
生地には、いわゆるタルト生地ではなくて、サクサクしていそうなパイ生地を使用しているようだ。
確かに美味しそうだ。
「やっぱり、初めては、一番人気のショートケーキにするべきか。
でも、一目惚れしちゃった苺タルトをなかったことには出来ない。」
名前は、メニュー表の苺タルトの写真をじっと見つめながら、「うーん。」と唸り始める。
このまま、彼女がどちらにするか決めてくれるのを待っていたら、日が暮れそうだ。
「それなら、僕のショートケーキを半分あげますよ。
そうすれば、どっちも食べられるでしょ。」
「え、いいの!?」
名前がキラキラした瞳で月島を見て言う。
ショートケーキは好きだけれど、半分あげるくらいどうってことない。
そもそもカフェ代は名前が支払ってくれるのだ。美味しいと話題のショートケーキを無料で半分食べられるだけでお得だ。
構わないと頷けば、名前は月島を救世主を見るような目で見てくれる。
なんだかウザいから今すぐやめて欲しい。
「じゃあ、私の苺タルトと半分こしようよ!」
「半分こ?」
「そう!そうすれば、私も月島君も
ショートケーキと苺タルトのどっちも食べられて、幸せだよ!」
まだ食べてもいないのに、名前が心底幸せそうな笑顔を見せた。
混んでいるというのにそれほど待たずに届いたショートケーキと苺タルトは、名前の不器用な手で、どう見ても月島の方が大きく切り分けられた。
それでも、ショートケーキにのっているたったひとつの苺を当然のように月島に与える。
少しずつわかってきた。名字名前という人間は、そういう人だ。
「こっちの苺をあげます。これでチャラでしょ。」
月島は、タルトの上にたっぷり乗っている苺を2個、フォークでとって、小さくなった苺タルトとショートケーキが並ぶ名前の皿に乗せた。
少し驚いた顔をした後、名前がとても嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「月島くんって、そういう人だよね。」
「…そういうってなんですか。
別に、聞きたくもないけど。」
「すごく優しいってこと。」
聞きたくないと言ったのにーーーー。
ムスッとした顔をした月島の前で、名前は、貰ったばかりの苺を頬張る。
心から美味しそうに頬を緩める名前が可笑しくて、月島は小さく笑った。
そのためか、店内には、白鳥沢学園の制服を着た若い男女が多くいた。
白を基調とした清潔感のあるインテリアが並ぶ、落ち着いた雰囲気のカフェだ。
名前と月島は、店員に案内され、窓際の席に座った。
メニュー表を開きつつも、なんとなく周囲を見渡して見る。人気があると言うのは本当らしく、店内の席は9割以上が埋まっている。月島たちの次に入ってきた女子グループは、人数が多いこともあって、テラス席に案内されたようだ。
客のほとんどが、女子グループか、男女のカップルだ。
もしかして、自分達もカップル同士に見られているのだろうかーーーそんなことを思って、テーブルを挟んで座る名前に視線を向けると、ワクワクした顔をしてメニュー表を見ていた。
彼女は本当に、全く、他人の目が気にならないらしい。
そんな彼女が、友達の目は気をして、空気を読んで、無理ばかりしている姿と重ならない。
他人と友達は、彼女の中では大きく違っているのだろう。
不意に名前がメニュー表から顔を上げて、月島の方を見た。
「どれにするか決めた?」
「ショートケーキセットにします。」
「やっぱり、いいよねぇ。王道〜。
ん〜。悩む〜。」
「何と悩んでるんですか?」
「全部。」
「…。」
ドン引きする月島に、名前が「冗談、冗談」と笑う。
「この苺タルトと悩んでるの。」
名前がメニュー表を開いた状態でテーブルの中央に置いた。
月島は軽く覗き込むようにして、メニュー表の中央に載っている苺タルトの写真を確認する。
初めからショートケーキにするつもりだった月島は、他のメニューはほとんど見ていなくて気づかなかった。
どうやら、苺タルトは新作ケーキらしい。
たっぷりのカスタードの上に、これでもかというほどに苺が乗っている。
生地には、いわゆるタルト生地ではなくて、サクサクしていそうなパイ生地を使用しているようだ。
確かに美味しそうだ。
「やっぱり、初めては、一番人気のショートケーキにするべきか。
でも、一目惚れしちゃった苺タルトをなかったことには出来ない。」
名前は、メニュー表の苺タルトの写真をじっと見つめながら、「うーん。」と唸り始める。
このまま、彼女がどちらにするか決めてくれるのを待っていたら、日が暮れそうだ。
「それなら、僕のショートケーキを半分あげますよ。
そうすれば、どっちも食べられるでしょ。」
「え、いいの!?」
名前がキラキラした瞳で月島を見て言う。
ショートケーキは好きだけれど、半分あげるくらいどうってことない。
そもそもカフェ代は名前が支払ってくれるのだ。美味しいと話題のショートケーキを無料で半分食べられるだけでお得だ。
構わないと頷けば、名前は月島を救世主を見るような目で見てくれる。
なんだかウザいから今すぐやめて欲しい。
「じゃあ、私の苺タルトと半分こしようよ!」
「半分こ?」
「そう!そうすれば、私も月島君も
ショートケーキと苺タルトのどっちも食べられて、幸せだよ!」
まだ食べてもいないのに、名前が心底幸せそうな笑顔を見せた。
混んでいるというのにそれほど待たずに届いたショートケーキと苺タルトは、名前の不器用な手で、どう見ても月島の方が大きく切り分けられた。
それでも、ショートケーキにのっているたったひとつの苺を当然のように月島に与える。
少しずつわかってきた。名字名前という人間は、そういう人だ。
「こっちの苺をあげます。これでチャラでしょ。」
月島は、タルトの上にたっぷり乗っている苺を2個、フォークでとって、小さくなった苺タルトとショートケーキが並ぶ名前の皿に乗せた。
少し驚いた顔をした後、名前がとても嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「月島くんって、そういう人だよね。」
「…そういうってなんですか。
別に、聞きたくもないけど。」
「すごく優しいってこと。」
聞きたくないと言ったのにーーーー。
ムスッとした顔をした月島の前で、名前は、貰ったばかりの苺を頬張る。
心から美味しそうに頬を緩める名前が可笑しくて、月島は小さく笑った。