ep. 22 君はショートケーキよりも優しくて甘ったるい
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帰り支度を終えたクラスメイト達が続々と教室を出ていく中、月島もスクールバッグを持って立ち上がった。
「じゃあね、ツッキー。」
山口がニッと笑って、下手くそなウィンクをしてくる。
彼が期待しているようなことは起きないし、月島にそんなつもりもない。
けれど、彼は月島の否定を聞く気もなく、さっさと帰ってしまった。
月島は小さく息を吐いてから、スマホを見た。
————
終わった!今から行くね!
————
5点こと名前からの連絡が来ている。
いや、今日からは“15点“と格上げするべきなのだろうか。
月島にとっては、5点も15点もどんぐりの背比べなのだが、名前にとっては違うのだろう。驚くべきことに、高校生になってから初めて2桁の点数を取れたらしい名前は、掃除の時間にいつものように非常階段にやってくると、15点と書かれた小テストを自慢げに掲げた。
週末のテスト対策の勉強が役に立ったようだ。
そして、勉強を教えてくれた礼をしたいから、と放課後に一緒に帰ろうと誘われたのだ。
なんでも、白鳥沢にケーキが美味しいと話題のカフェがあるらしい。
来週からテストが始まる為、今週からは部活は休みになっている。もちろんテスト勉強の為に早く帰れ、と言うことなのだが、平気で月島を誘う名前には、教師の心遣いは届いていないらしい。
月島が教室から出ると、廊下の壁沿いに取り付けられているベンチに座ってスマホを触っている名前がいた。
東京から転校してきた美人な先輩がいるという噂は1年の中でも有名だった。そんな噂がなくても名前は、他人の視線を奪うほどのオーラがある美人だ。クラスメイトだけではなく、廊下に出た1年の多くが、名前を見つけて驚いた顔をした後に、友達同士でコソコソと話し出している。
あからさま過ぎる同級生たちの姿に、月島は思わず眉を顰めた。
けれど当の本人は、全く気にしている様子はない。普段から、じっと見られながら噂話をされることに慣れているのか。呆れるくらいに鈍感なのか。
月島が前に立つと、気配を感じたらしい名前がスマホから顔を上げた。
「おつかれさま!」
顔を上げた名前が、にこりと笑う。
野次馬と化した同級生たちにとって、それはサインになった。
「あれ、4組の月島じゃない?」
「あの人が待ってたのって、月島君だったの?」
周囲の同級生達の驚いた顔やコソコソとした話し声の矛先が、名前から月島に向かう。
こうなるのはわかっていた。だから嫌だったのだ。本当に最悪だ。
「お待たせしました。
ていうか、わざわざ教室まで来なくても良かったんですけど。」
「VIP待遇でいいでしょ。」
「むしろ罰ゲーム…。」
ボソッとつぶやいた月島の声は聞こえなかったのか、名前が楽しそうに笑いながら、ピョンッと飛び跳ねるように立ち上がった。
そして、「さぁ、行こう!」とさっさと行ってしまう。
すぐに月島が追いつくと、待っていたように名前が喋り出す。
「カフェ、今からでも今日の予約出来たから、さっきやっておいたよー!」
「あんまり大きい声で言うのやめてもらえますか。
今から寄り道して帰ります、て宣言してるのと同じですよ。」
「ダメなの?」
「どうして今日から部活が休みなのか、考えたら分かるデショ。」
「せっかくの青春、部活ばっかしてるバカ野郎の為に
テスト前くらい遊べ、ていう先生達からの心遣いでしょ?」
名前が至極当然のように言う。
そうか。名前は、そうやって自分の都合の良いように教師からの心遣いを湾曲して受け取っているらしい。
「急がなくていいように、少し時間に余裕もって予約しておいたよ!
偉いでしょ!」
名前が、自慢げにニシシと笑った。
呆れて言葉も出なかった。
「じゃあね、ツッキー。」
山口がニッと笑って、下手くそなウィンクをしてくる。
彼が期待しているようなことは起きないし、月島にそんなつもりもない。
けれど、彼は月島の否定を聞く気もなく、さっさと帰ってしまった。
月島は小さく息を吐いてから、スマホを見た。
————
終わった!今から行くね!
————
5点こと名前からの連絡が来ている。
いや、今日からは“15点“と格上げするべきなのだろうか。
月島にとっては、5点も15点もどんぐりの背比べなのだが、名前にとっては違うのだろう。驚くべきことに、高校生になってから初めて2桁の点数を取れたらしい名前は、掃除の時間にいつものように非常階段にやってくると、15点と書かれた小テストを自慢げに掲げた。
週末のテスト対策の勉強が役に立ったようだ。
そして、勉強を教えてくれた礼をしたいから、と放課後に一緒に帰ろうと誘われたのだ。
なんでも、白鳥沢にケーキが美味しいと話題のカフェがあるらしい。
来週からテストが始まる為、今週からは部活は休みになっている。もちろんテスト勉強の為に早く帰れ、と言うことなのだが、平気で月島を誘う名前には、教師の心遣いは届いていないらしい。
月島が教室から出ると、廊下の壁沿いに取り付けられているベンチに座ってスマホを触っている名前がいた。
東京から転校してきた美人な先輩がいるという噂は1年の中でも有名だった。そんな噂がなくても名前は、他人の視線を奪うほどのオーラがある美人だ。クラスメイトだけではなく、廊下に出た1年の多くが、名前を見つけて驚いた顔をした後に、友達同士でコソコソと話し出している。
あからさま過ぎる同級生たちの姿に、月島は思わず眉を顰めた。
けれど当の本人は、全く気にしている様子はない。普段から、じっと見られながら噂話をされることに慣れているのか。呆れるくらいに鈍感なのか。
月島が前に立つと、気配を感じたらしい名前がスマホから顔を上げた。
「おつかれさま!」
顔を上げた名前が、にこりと笑う。
野次馬と化した同級生たちにとって、それはサインになった。
「あれ、4組の月島じゃない?」
「あの人が待ってたのって、月島君だったの?」
周囲の同級生達の驚いた顔やコソコソとした話し声の矛先が、名前から月島に向かう。
こうなるのはわかっていた。だから嫌だったのだ。本当に最悪だ。
「お待たせしました。
ていうか、わざわざ教室まで来なくても良かったんですけど。」
「VIP待遇でいいでしょ。」
「むしろ罰ゲーム…。」
ボソッとつぶやいた月島の声は聞こえなかったのか、名前が楽しそうに笑いながら、ピョンッと飛び跳ねるように立ち上がった。
そして、「さぁ、行こう!」とさっさと行ってしまう。
すぐに月島が追いつくと、待っていたように名前が喋り出す。
「カフェ、今からでも今日の予約出来たから、さっきやっておいたよー!」
「あんまり大きい声で言うのやめてもらえますか。
今から寄り道して帰ります、て宣言してるのと同じですよ。」
「ダメなの?」
「どうして今日から部活が休みなのか、考えたら分かるデショ。」
「せっかくの青春、部活ばっかしてるバカ野郎の為に
テスト前くらい遊べ、ていう先生達からの心遣いでしょ?」
名前が至極当然のように言う。
そうか。名前は、そうやって自分の都合の良いように教師からの心遣いを湾曲して受け取っているらしい。
「急がなくていいように、少し時間に余裕もって予約しておいたよ!
偉いでしょ!」
名前が、自慢げにニシシと笑った。
呆れて言葉も出なかった。