今、笑っているのは誰なのでしょうか
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「あのさぁ、」
やっと口を開いた銀時は、ため息を吐くように、言葉を落とす。
首の後ろを右手でさすりながら、眉間に皴を寄せるその姿は、話し出すその前から今のこの状況を『面倒くさい』と思っていることを、饒舌に語っていた。
でも、私にとっては、当然の主張だった。
銀時は、会う約束をしていた日に、仕事だと私に嘘を吐いて他の女と一緒にいた。
それは、恋人である私にとっては、許しがたいことで、なによりもとても悲しかった。
「そもそも、付き合おうとか、俺、言ったっけ?」
だんまりを決め込んでいた間、一生懸命に考えたのだろう言い訳は、言い訳にすらなっていなかった。
不貞がバレたそのときから今まで、銀時が考えていたのは、運が悪かったとか、面倒くさいとか、そんなことばかりだったのだろう。
私がどんなに苦しんでいるのかだとか、どれほど傷つけたのかだとか、後悔というものは、一切感じていないらしい。
確かに、銀時の言う通りだ。
私達は、自分達が恋人だと確かめ合ったことはない。
でも、それなら、どうして私に触れたのか。まるで、自分のもののように、私の名前を呼んだのは、どういうつもりだったのか。
言い返す言葉なら、幾らでも用意があった。
でも私には、銀時と戦う力が、残されていなかった。
「…分かった。もういい。」
「あっそ。じゃあ、俺、もう帰っていい?」
解放されてホッとした顔をするわけでもなく、銀時は適当に言う。
いつものように、私を抱くために会いに来ただけなのに、不貞を責められてしまった銀時にとって、目的を達成できなくなったのなら、ここにいる理由もないのだろう。
「好きにすれば。」
その言葉を、素直に受け取った銀時は、いとも容易く私に背を向ける。
でも、数歩進んだ先で、彼は立ち止まったのだ。
あぁ、もしかして———そう思ってしまった。
「また、部屋の掃除しに来てよ。
あと、作り置きの飯も欲しい。」
いつものように、銀時が言う。
私は一体、何を期待していたのだろう。
彼にはこれまでも、気遣いの欠片もない無作法なやり方で、何度も傷つけられたというのに———。
きっと私が悪いのだ。愚かな私が、悪い。
ほんの少しくらいは、銀時も私を———そんな希望的観測を、消すことが出来なかったから。
結局、最後に思い知らされたのは、銀時は、私を1人きり残して去っていく人だったということだ。
こうして、私達の物語は、幕を閉じた。
ねぇ、そうでしょう?
あなたが、幕をおろさせたのよ。
私は、望んでなんかいなかったのに————。
やっと口を開いた銀時は、ため息を吐くように、言葉を落とす。
首の後ろを右手でさすりながら、眉間に皴を寄せるその姿は、話し出すその前から今のこの状況を『面倒くさい』と思っていることを、饒舌に語っていた。
でも、私にとっては、当然の主張だった。
銀時は、会う約束をしていた日に、仕事だと私に嘘を吐いて他の女と一緒にいた。
それは、恋人である私にとっては、許しがたいことで、なによりもとても悲しかった。
「そもそも、付き合おうとか、俺、言ったっけ?」
だんまりを決め込んでいた間、一生懸命に考えたのだろう言い訳は、言い訳にすらなっていなかった。
不貞がバレたそのときから今まで、銀時が考えていたのは、運が悪かったとか、面倒くさいとか、そんなことばかりだったのだろう。
私がどんなに苦しんでいるのかだとか、どれほど傷つけたのかだとか、後悔というものは、一切感じていないらしい。
確かに、銀時の言う通りだ。
私達は、自分達が恋人だと確かめ合ったことはない。
でも、それなら、どうして私に触れたのか。まるで、自分のもののように、私の名前を呼んだのは、どういうつもりだったのか。
言い返す言葉なら、幾らでも用意があった。
でも私には、銀時と戦う力が、残されていなかった。
「…分かった。もういい。」
「あっそ。じゃあ、俺、もう帰っていい?」
解放されてホッとした顔をするわけでもなく、銀時は適当に言う。
いつものように、私を抱くために会いに来ただけなのに、不貞を責められてしまった銀時にとって、目的を達成できなくなったのなら、ここにいる理由もないのだろう。
「好きにすれば。」
その言葉を、素直に受け取った銀時は、いとも容易く私に背を向ける。
でも、数歩進んだ先で、彼は立ち止まったのだ。
あぁ、もしかして———そう思ってしまった。
「また、部屋の掃除しに来てよ。
あと、作り置きの飯も欲しい。」
いつものように、銀時が言う。
私は一体、何を期待していたのだろう。
彼にはこれまでも、気遣いの欠片もない無作法なやり方で、何度も傷つけられたというのに———。
きっと私が悪いのだ。愚かな私が、悪い。
ほんの少しくらいは、銀時も私を———そんな希望的観測を、消すことが出来なかったから。
結局、最後に思い知らされたのは、銀時は、私を1人きり残して去っていく人だったということだ。
こうして、私達の物語は、幕を閉じた。
ねぇ、そうでしょう?
あなたが、幕をおろさせたのよ。
私は、望んでなんかいなかったのに————。