Q15. あることないこと言い触らすのはやめてくれますか?
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駐屯兵団本部司令室を出た私は、不意に悪寒を覚えて、身震いをした。
心臓がきゅっと縮んで、身体が強張る。
(風邪でも引いたのかな。)
思わず立ち止まった私は、自分の身体を両腕で抱きしめて、最近の自分の生活態度を思い返す。
早朝に起きて、朝食作りから始まり、昼間は団長から頼まれていた仕事をこなしながら、兵舎を見廻って調査兵達の体調を気遣い、夕食後の片づけまでした後は自由時間だ。
本を読んだり、残していた仕事をしてみたり、と思いのまま過ごして、日付を跨ぐ前には眠るようにしている。
もちろん、栄養管理も徹底しているし、風邪を引くような生活態度ではないはずだ。
けれど———。
(最近は、リヴァイ兵長に振り回され過ぎて
精神的に疲れてるってのはあるかも。)
きっとそれだ———。
ここにはいないリヴァイ兵長に若干腹が立った。
でも、文句を言う勇気もなければ、文句を言ったところで会話が噛み合うとも思えない。
あの人のことを考えるとさらに疲れるだけだと思い直し、私は小さく首を横に振ると、記憶を頼りに来た道を戻る。
駐屯兵団本部は、調査兵団の何倍も兵士を抱えているだけあって、とても大きい。
方向感覚に優れているわけではないけれど、方向音痴というわけでもないが、何処も見ても同じ景色で迷子になりそうだ。
(えっと…、たぶん…。こっちかな。)
必死に記憶を辿りながら、見覚えがある気がする角を曲がる。
廊下には駐屯兵達が数名いる。これまでも何人もの駐屯兵とすれ違っている。
その誰かに出口を訊ねれば教えてくれるのだろうけれど、忙しそうにしている彼らに声をかけるのは躊躇われた。
そうして、広すぎる駐屯兵団本部の建物内で、孤独に出口を探していると、後ろから声をかけられた。
「なまえさん?」
低い男性の声だった。聞き覚えはないけれど、耳障りの良い優しそうで穏やかな声だ。
「はい?」
振り返った私は驚いた。
目の前で、「やっぱりそうだ。」とホッとしたように息を吐いたのは、私が密かに憧れていたグスタフさんだったのだ。
「え・・・。どうして、私の名前…。」
驚いて、心の声が漏れた。
けれど、言いながら、グスタフさんはピクシス司令の参謀だということを思い出していた。
ピクシス司令から、調査兵団が雇っている調理師兼栄養管理士が、駐屯兵団の献立を作成することが決まったと聞いていたのかもしれない。
そんな私の想像は、すぐにグスタフさんに否定される。
「あ、申し訳ない。いきなり名前で呼ばれたら気持ち悪いですね。
ハンジさんから、君のことをよく聞いていたから、思わず…。」
「ハンジさんから、ですか?」
どうして、ハンジさんがグスタフさんに私の話を———なんとなく嫌な予感もした。
けれど、グスタフさんの穏やかな表情を見る限り、ハンジさんからおかしな話は聞かされているような感じでもないようだ。
———そう、思いたい。
「調査兵団に、毎日美味しい食事を作ってくれる可愛いお嫁さんがやって来たって
うちに仕事で来る度に嬉しそうに自慢してるんですよ。」
「えっ。」
「来週からは駐屯兵団もお世話になると司令から聞いて、
私も今から楽しみにしているんです。」
「いえ…っ、そんな…。」
身体中の熱が一瞬で顔に集まったのを感じた私は、真っ赤な顔を隠すように俯くと、消え入りそうな小さな声で答えた。
知らないところで、まさかそんな風にハンジさんに言い触らされていたとは思わなかった。
さらには、憧れのグスタフさんに期待までされていると知り、恥ずかしさといたたまれなさでどこかへ隠れてしまいたくなる。
「実は、午後からの約束の前にどうしてもなまえさんに伝えておきたいことがあって
ちょうど今から調査兵団の兵舎にお邪魔しようと思っていたところだったんですよ。
まさか、駐屯兵団本部でなまえさんを見つけられるなんて幸運だったな。」
「そう、なんですか?」
午後からの約束とはなんだろう———そう思いながらも、訊ねるのは失礼な気がして、私は必死に記憶を手繰り寄せようとしていた。
今日は、エルヴィン団長から頼まれていた仕事が終われば、フリーになるはずだった。
夕食の献立とその準備も出来ているし、今夜の担当の調査兵達にはレシピも伝えてある。やるべきことはすべて終わらせているはずだ。
駐屯兵団には献立を作成するだけだとエルヴィン団長からも聞いている。
そもそも、憧れのグスタフさんが関わっている仕事なら、私が忘れるわけがないのに———。
「とても大切な話なので、出来れば2人になれたら嬉しいんだけど、
構わないかい?」
グスタフさんが、少しだけ首を傾げる。
僅かに染まっているように見える頬が、精悍な男らしい顔立ちを柔らかく見せる。
彼の素の表情を、ほんの少し覗き見れたような気がして、胸がときめいた。
心臓がきゅっと縮んで、身体が強張る。
(風邪でも引いたのかな。)
思わず立ち止まった私は、自分の身体を両腕で抱きしめて、最近の自分の生活態度を思い返す。
早朝に起きて、朝食作りから始まり、昼間は団長から頼まれていた仕事をこなしながら、兵舎を見廻って調査兵達の体調を気遣い、夕食後の片づけまでした後は自由時間だ。
本を読んだり、残していた仕事をしてみたり、と思いのまま過ごして、日付を跨ぐ前には眠るようにしている。
もちろん、栄養管理も徹底しているし、風邪を引くような生活態度ではないはずだ。
けれど———。
(最近は、リヴァイ兵長に振り回され過ぎて
精神的に疲れてるってのはあるかも。)
きっとそれだ———。
ここにはいないリヴァイ兵長に若干腹が立った。
でも、文句を言う勇気もなければ、文句を言ったところで会話が噛み合うとも思えない。
あの人のことを考えるとさらに疲れるだけだと思い直し、私は小さく首を横に振ると、記憶を頼りに来た道を戻る。
駐屯兵団本部は、調査兵団の何倍も兵士を抱えているだけあって、とても大きい。
方向感覚に優れているわけではないけれど、方向音痴というわけでもないが、何処も見ても同じ景色で迷子になりそうだ。
(えっと…、たぶん…。こっちかな。)
必死に記憶を辿りながら、見覚えがある気がする角を曲がる。
廊下には駐屯兵達が数名いる。これまでも何人もの駐屯兵とすれ違っている。
その誰かに出口を訊ねれば教えてくれるのだろうけれど、忙しそうにしている彼らに声をかけるのは躊躇われた。
そうして、広すぎる駐屯兵団本部の建物内で、孤独に出口を探していると、後ろから声をかけられた。
「なまえさん?」
低い男性の声だった。聞き覚えはないけれど、耳障りの良い優しそうで穏やかな声だ。
「はい?」
振り返った私は驚いた。
目の前で、「やっぱりそうだ。」とホッとしたように息を吐いたのは、私が密かに憧れていたグスタフさんだったのだ。
「え・・・。どうして、私の名前…。」
驚いて、心の声が漏れた。
けれど、言いながら、グスタフさんはピクシス司令の参謀だということを思い出していた。
ピクシス司令から、調査兵団が雇っている調理師兼栄養管理士が、駐屯兵団の献立を作成することが決まったと聞いていたのかもしれない。
そんな私の想像は、すぐにグスタフさんに否定される。
「あ、申し訳ない。いきなり名前で呼ばれたら気持ち悪いですね。
ハンジさんから、君のことをよく聞いていたから、思わず…。」
「ハンジさんから、ですか?」
どうして、ハンジさんがグスタフさんに私の話を———なんとなく嫌な予感もした。
けれど、グスタフさんの穏やかな表情を見る限り、ハンジさんからおかしな話は聞かされているような感じでもないようだ。
———そう、思いたい。
「調査兵団に、毎日美味しい食事を作ってくれる可愛いお嫁さんがやって来たって
うちに仕事で来る度に嬉しそうに自慢してるんですよ。」
「えっ。」
「来週からは駐屯兵団もお世話になると司令から聞いて、
私も今から楽しみにしているんです。」
「いえ…っ、そんな…。」
身体中の熱が一瞬で顔に集まったのを感じた私は、真っ赤な顔を隠すように俯くと、消え入りそうな小さな声で答えた。
知らないところで、まさかそんな風にハンジさんに言い触らされていたとは思わなかった。
さらには、憧れのグスタフさんに期待までされていると知り、恥ずかしさといたたまれなさでどこかへ隠れてしまいたくなる。
「実は、午後からの約束の前にどうしてもなまえさんに伝えておきたいことがあって
ちょうど今から調査兵団の兵舎にお邪魔しようと思っていたところだったんですよ。
まさか、駐屯兵団本部でなまえさんを見つけられるなんて幸運だったな。」
「そう、なんですか?」
午後からの約束とはなんだろう———そう思いながらも、訊ねるのは失礼な気がして、私は必死に記憶を手繰り寄せようとしていた。
今日は、エルヴィン団長から頼まれていた仕事が終われば、フリーになるはずだった。
夕食の献立とその準備も出来ているし、今夜の担当の調査兵達にはレシピも伝えてある。やるべきことはすべて終わらせているはずだ。
駐屯兵団には献立を作成するだけだとエルヴィン団長からも聞いている。
そもそも、憧れのグスタフさんが関わっている仕事なら、私が忘れるわけがないのに———。
「とても大切な話なので、出来れば2人になれたら嬉しいんだけど、
構わないかい?」
グスタフさんが、少しだけ首を傾げる。
僅かに染まっているように見える頬が、精悍な男らしい顔立ちを柔らかく見せる。
彼の素の表情を、ほんの少し覗き見れたような気がして、胸がときめいた。