Q10.優しいお手伝いをしてくれるのですか?
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どの茶葉もガラス瓶に入れられていたが、ショーケースのようなものはなく、壁一面に敷き詰められた木棚に雑然と並べられていた。
男女が来店しただけで2人が恋人だと思い込んだり、遠回しに間違いを指摘すれば、疑いもなく信じた店主のあまり細かいことを考えない性格の〝雑さ〟が出ているのだろう。
ガラス瓶の前には、小さな木箱が置いてあり、そこに、香りを確認する用としてサンプルの茶葉が入ってある。
木箱の表面には、味の特徴や効能が、とても綺麗な字で、細かく几帳面に書かれていて、店主とのイメージとの違和感も覚える。
なにより———。
私は、すぐ隣に視線を向ける。
肩が触れそうなくらいの至近距離にいる兵長さんは、隣で真面目な顔をして、小さな木箱を独特な手のカタチで持ち上げて、サンプル用の茶葉の香りをかいでいる。
視界の端に常にチラチラと映りこむ兵長さんの姿が邪魔でゆっくりと茶葉を選ぶことが出来ず、何度もその場を離れて違う茶葉のコーナーへ逃げるのだ。
けれど、私が何処へ行こうとも、その度に彼がついてくる。
「あの…、兵長さんも紅茶の葉を買われるんですか?」
好きなんですもんね———あくまでも雑談を装って、兵長さんに声をかけた。
サンプルの茶葉の香りをかいでいた兵長さんが顔を上げ、私の方を向く。
「あぁ…、そうだな。俺も個人的に何か買って帰らねぇと、
店主がうるせぇだろうしな。」
兵長さんは、チラリとレジカウンターの方を向いた。
会計をしているのは、少し前に入ってきた若い女性だった。気に入った紅茶の葉を見つけたようで、とても嬉しそうにしながら、ガラス瓶を紙袋に詰める店主と話をしている。
「私のことは気にしないで、ゆっくり選んでくださいね。」
それじゃ———優しさを装って微笑み、私は兵長さんに背を向けた。
今度こそ、ひとりでゆっくりと選びたかったのだ。
邪魔だからそばにいないで、から考えれば、遠回しではあったけれど、それでもハッキリと言った。逃げきれるはずだった。
でも、兵長さんに首根っこを捕まえられて、私は呆気なく捕獲される。
強引に引き寄せられ、私の肩がぶつかったのは兵長さんの肩だった。
あっという間のことに驚いて顔を上げれば、眉をつり上げた彼と目が合う。
「あの…っ。」
「お前、何の為に俺がついて来たと思ってる。」
「…宅配サービスをお願いするため、ですよね?」
素直に答えれば、兵長さんはこれ見よがしにため息を吐いた。
そして手を放してから、正しい回答を教えてくれる。
「バカか。それは、ついでに頼んだだけだ。
今日は調査兵団の為に食材の買い出しだったんじゃねぇのか。」
「そうですけど。」
それがなにか———そう思いながら言えば、兵長さんはさらに呆れたように首を竦める。
「ひとりであれこれ悩むより、調査兵の俺も一緒に選んでやった方が
少しは役に立つだろ。」
「え?」
「お前みたいに栄養のことなんかはよくわからねぇが、
仲間の好みくらいは大体見てりゃ覚えてる。」
「もしかして…、アドバイスをくれるんですか…?」
驚いた。だから、素直に驚いた表情しか出来なかった。
そして、戸惑ってもいた。
まさか、隣から離れなくて邪魔だっただけの兵長さんが、買い物に付き合おうと思ってくれていたなんて、想像もしていなかったのだ。
でも、兵長さんは、当然のように続ける。
「お前も調査兵団のことで
気になることがあれば、俺に聞けばいい。」
「あり、がとうございます。」
呆気に取られていたと思う。
なんとか礼を言った私に「あぁ。」とだけ短く答えた兵長さんは、さっきまでしていたように、また、小さな木箱を手に取って、サンプル用の茶葉の香りをかぎ始める。
そんな彼の隣で、私も、一番近くの木箱に手を伸ばした。
わざわざ言わなかったけれど、彼が言ったそれこそが、私が求めていた〝手伝い〟だった。
でも、まさかそれを、空気を全く読めない兵長さんがしてくれるなんて———。
男女が来店しただけで2人が恋人だと思い込んだり、遠回しに間違いを指摘すれば、疑いもなく信じた店主のあまり細かいことを考えない性格の〝雑さ〟が出ているのだろう。
ガラス瓶の前には、小さな木箱が置いてあり、そこに、香りを確認する用としてサンプルの茶葉が入ってある。
木箱の表面には、味の特徴や効能が、とても綺麗な字で、細かく几帳面に書かれていて、店主とのイメージとの違和感も覚える。
なにより———。
私は、すぐ隣に視線を向ける。
肩が触れそうなくらいの至近距離にいる兵長さんは、隣で真面目な顔をして、小さな木箱を独特な手のカタチで持ち上げて、サンプル用の茶葉の香りをかいでいる。
視界の端に常にチラチラと映りこむ兵長さんの姿が邪魔でゆっくりと茶葉を選ぶことが出来ず、何度もその場を離れて違う茶葉のコーナーへ逃げるのだ。
けれど、私が何処へ行こうとも、その度に彼がついてくる。
「あの…、兵長さんも紅茶の葉を買われるんですか?」
好きなんですもんね———あくまでも雑談を装って、兵長さんに声をかけた。
サンプルの茶葉の香りをかいでいた兵長さんが顔を上げ、私の方を向く。
「あぁ…、そうだな。俺も個人的に何か買って帰らねぇと、
店主がうるせぇだろうしな。」
兵長さんは、チラリとレジカウンターの方を向いた。
会計をしているのは、少し前に入ってきた若い女性だった。気に入った紅茶の葉を見つけたようで、とても嬉しそうにしながら、ガラス瓶を紙袋に詰める店主と話をしている。
「私のことは気にしないで、ゆっくり選んでくださいね。」
それじゃ———優しさを装って微笑み、私は兵長さんに背を向けた。
今度こそ、ひとりでゆっくりと選びたかったのだ。
邪魔だからそばにいないで、から考えれば、遠回しではあったけれど、それでもハッキリと言った。逃げきれるはずだった。
でも、兵長さんに首根っこを捕まえられて、私は呆気なく捕獲される。
強引に引き寄せられ、私の肩がぶつかったのは兵長さんの肩だった。
あっという間のことに驚いて顔を上げれば、眉をつり上げた彼と目が合う。
「あの…っ。」
「お前、何の為に俺がついて来たと思ってる。」
「…宅配サービスをお願いするため、ですよね?」
素直に答えれば、兵長さんはこれ見よがしにため息を吐いた。
そして手を放してから、正しい回答を教えてくれる。
「バカか。それは、ついでに頼んだだけだ。
今日は調査兵団の為に食材の買い出しだったんじゃねぇのか。」
「そうですけど。」
それがなにか———そう思いながら言えば、兵長さんはさらに呆れたように首を竦める。
「ひとりであれこれ悩むより、調査兵の俺も一緒に選んでやった方が
少しは役に立つだろ。」
「え?」
「お前みたいに栄養のことなんかはよくわからねぇが、
仲間の好みくらいは大体見てりゃ覚えてる。」
「もしかして…、アドバイスをくれるんですか…?」
驚いた。だから、素直に驚いた表情しか出来なかった。
そして、戸惑ってもいた。
まさか、隣から離れなくて邪魔だっただけの兵長さんが、買い物に付き合おうと思ってくれていたなんて、想像もしていなかったのだ。
でも、兵長さんは、当然のように続ける。
「お前も調査兵団のことで
気になることがあれば、俺に聞けばいい。」
「あり、がとうございます。」
呆気に取られていたと思う。
なんとか礼を言った私に「あぁ。」とだけ短く答えた兵長さんは、さっきまでしていたように、また、小さな木箱を手に取って、サンプル用の茶葉の香りをかぎ始める。
そんな彼の隣で、私も、一番近くの木箱に手を伸ばした。
わざわざ言わなかったけれど、彼が言ったそれこそが、私が求めていた〝手伝い〟だった。
でも、まさかそれを、空気を全く読めない兵長さんがしてくれるなんて———。