Q.8 有難迷惑なお手伝いは断ってもいいですか?
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「俺が払ってやるよ。」
大量の荷物を抱えてふらつきながら立ち上がると、彼が優し気に言う。
そう言って、彼が手に持ったのは、私が立ち上がる前に、すぐに取り出せるようにとテーブルに置いておいた財布だった。
代わりに支払いしてくれる、というのは、彼がお金を出してくれると言う意味ではないようだ。
今更もう期待していないから、残念だとさえ思わない。
「なぁ、それずっと抱えてるの大変だろ?」
ずっと荷物を抱えて立っているのはツライから、早くお金を払ってカフェから出たいのに、彼はこの状態でまだ話そうとする。
「まぁ…、そうだね。」
「俺も疲れたしさ。ホテルに行かねぇ?」
「へ?」
「ホテルで休もうって言ってんだよ。
別に何かしようってわけじゃねぇし。」
「えっと…、でもそれは…。」
「行くだろ?生娘ぶってねぇで、行くって言えよ。」
彼は、素直に頷かない私に苛立っていた。
でもだからって、ホテルに行くなんて提案は受け入れられない。
彼が何もしないと言ったところで、今日一日の彼の行動を見ていれば、信用なんて欠片もあるはずがない。
それに、仮に信用したとしても、彼とホテルなんて絶対に行きたくない。
「あの…、私、大丈夫だから。自分で持てるよ。
心配してくれるのは嬉しいけど———。」
「あのさ、ここは行くって言うところだろ?
ずっと思ってたんだけど。お前さ、マジで空気読めねぇよな。」
彼が、呆れたようにため息を吐く。
その瞬間、私の中で何かが切れた音が響いた。
空気を読めない、と彼にだけは言われたくない。
調査兵にだけは、言われたくない。
彼といい、兵長さんといい、どうして———。
「いい財布を持ってるじゃねぇか。」
たった今、声を荒げて文句を吐き出しそうだった私の前に、黒いシャツを羽織った腕が伸びた。
彼のシャツの胸元を捻じり上げて、怖い顔で睨みつけているのは、兵長さんだった。
「兵長さん…!?どうして、ここに…っ!」
「ハンジに聞いた。コイツが、なまえの手伝いをすると言ってついていったこともな。
で、どうしてなまえが荷物を抱えることになってるんだ。」
兵長さんは、驚いた私の質問に答えると、彼を怖い顔で見上げた。
身長の高い彼を見上げるのは、兵長さんの方だ。
それなのに、彼の方が小さく見えるのは、彼が兵士長の登場に驚いて、おどおどし始めただけではないと思う。
彼という人間の小ささが、露になったように感じたのだ。
「お…、俺が…っ、ここの支払いをしてやるって言ったら…っ、
そのお礼に持ってくれるって…っ。お、おお俺だって、ずっと持たせるつもりはないですよ…!
支払いが終わるまでは、持っててもらおうと思って…っ。」
「へぇ。その財布、お前のだって言うのか。」
「は、はい!そうです!」
どうせバレないと思って、彼が都合のいい話をでっちあげる。
私には本当のことを伝える勇気がないと言われているみたいで、腹が立つよりも、悔しくなる。
「お前、いつからペトラと親しくなった?」
「…へ?」
「その財布についてるキーホルダーは、ペトラの手作りだろ。
アイツが、仲の良い女友達に渡してたヤツだ。
確か、なまえにもやると言ってたが?」
「あ…!いや、ち、違うんです!あ、そうだ、そうでした!
これは、なまえの財布なんです!」
「へぇ。で?」
「俺が払うって言ったんすけど、ここにあるもん注文したのは全部なまえだから
自分で食った分は自分が払うって言って、聞かなくてっ。」
兵長さんはそこまで聞くと、テーブルの上に雑に並んでいる食べ残されているたくさんの皿をチラリと見た。
「これを全部、なまえが食ったのか。」
兵長さんが聞いたのは、私ではなくて彼だった。
そうだと頷く彼をぼんやりと眺めながら、調査兵ではない私の言い分なんて、聞いてもらえないのだと思い知る。
仕方ない、私はただの調理師で、彼らの仲間ではないのだから———。
「毎日、調査兵達が食事を残さねぇように気を遣って
俺達の食事量まで把握して料理を作ってるなまえが、
こんな汚ぇ皿を残すわけねぇだろ。クソみてぇな嘘吐くんじゃねぇ。」
兵長さんに凄まれた彼が、情けない悲鳴のような声を上げると、へなへなと膝から崩れ落ちて行く。
ついに、彼を見下ろした兵長さんは、私の財布を奪い返すと、胸ポケットから自分の財布を取り出した。
「お前は、これを食い終わるまで帰ってくるんじゃねぇ。」
「え…っ、でも俺…っ、こんな量を食いきるなんて…っ。」
「俺の奢りだ。残したりしねぇよな。」
兵長さんは自分の財布からお札を数枚取り出すと、テーブルの上に少し強めに叩くように置く。
その衝撃で揺れたテーブルに、ビクッと肩を震わせ情けない悲鳴を上げた彼が、必死に頷いた。
大量の荷物を抱えてふらつきながら立ち上がると、彼が優し気に言う。
そう言って、彼が手に持ったのは、私が立ち上がる前に、すぐに取り出せるようにとテーブルに置いておいた財布だった。
代わりに支払いしてくれる、というのは、彼がお金を出してくれると言う意味ではないようだ。
今更もう期待していないから、残念だとさえ思わない。
「なぁ、それずっと抱えてるの大変だろ?」
ずっと荷物を抱えて立っているのはツライから、早くお金を払ってカフェから出たいのに、彼はこの状態でまだ話そうとする。
「まぁ…、そうだね。」
「俺も疲れたしさ。ホテルに行かねぇ?」
「へ?」
「ホテルで休もうって言ってんだよ。
別に何かしようってわけじゃねぇし。」
「えっと…、でもそれは…。」
「行くだろ?生娘ぶってねぇで、行くって言えよ。」
彼は、素直に頷かない私に苛立っていた。
でもだからって、ホテルに行くなんて提案は受け入れられない。
彼が何もしないと言ったところで、今日一日の彼の行動を見ていれば、信用なんて欠片もあるはずがない。
それに、仮に信用したとしても、彼とホテルなんて絶対に行きたくない。
「あの…、私、大丈夫だから。自分で持てるよ。
心配してくれるのは嬉しいけど———。」
「あのさ、ここは行くって言うところだろ?
ずっと思ってたんだけど。お前さ、マジで空気読めねぇよな。」
彼が、呆れたようにため息を吐く。
その瞬間、私の中で何かが切れた音が響いた。
空気を読めない、と彼にだけは言われたくない。
調査兵にだけは、言われたくない。
彼といい、兵長さんといい、どうして———。
「いい財布を持ってるじゃねぇか。」
たった今、声を荒げて文句を吐き出しそうだった私の前に、黒いシャツを羽織った腕が伸びた。
彼のシャツの胸元を捻じり上げて、怖い顔で睨みつけているのは、兵長さんだった。
「兵長さん…!?どうして、ここに…っ!」
「ハンジに聞いた。コイツが、なまえの手伝いをすると言ってついていったこともな。
で、どうしてなまえが荷物を抱えることになってるんだ。」
兵長さんは、驚いた私の質問に答えると、彼を怖い顔で見上げた。
身長の高い彼を見上げるのは、兵長さんの方だ。
それなのに、彼の方が小さく見えるのは、彼が兵士長の登場に驚いて、おどおどし始めただけではないと思う。
彼という人間の小ささが、露になったように感じたのだ。
「お…、俺が…っ、ここの支払いをしてやるって言ったら…っ、
そのお礼に持ってくれるって…っ。お、おお俺だって、ずっと持たせるつもりはないですよ…!
支払いが終わるまでは、持っててもらおうと思って…っ。」
「へぇ。その財布、お前のだって言うのか。」
「は、はい!そうです!」
どうせバレないと思って、彼が都合のいい話をでっちあげる。
私には本当のことを伝える勇気がないと言われているみたいで、腹が立つよりも、悔しくなる。
「お前、いつからペトラと親しくなった?」
「…へ?」
「その財布についてるキーホルダーは、ペトラの手作りだろ。
アイツが、仲の良い女友達に渡してたヤツだ。
確か、なまえにもやると言ってたが?」
「あ…!いや、ち、違うんです!あ、そうだ、そうでした!
これは、なまえの財布なんです!」
「へぇ。で?」
「俺が払うって言ったんすけど、ここにあるもん注文したのは全部なまえだから
自分で食った分は自分が払うって言って、聞かなくてっ。」
兵長さんはそこまで聞くと、テーブルの上に雑に並んでいる食べ残されているたくさんの皿をチラリと見た。
「これを全部、なまえが食ったのか。」
兵長さんが聞いたのは、私ではなくて彼だった。
そうだと頷く彼をぼんやりと眺めながら、調査兵ではない私の言い分なんて、聞いてもらえないのだと思い知る。
仕方ない、私はただの調理師で、彼らの仲間ではないのだから———。
「毎日、調査兵達が食事を残さねぇように気を遣って
俺達の食事量まで把握して料理を作ってるなまえが、
こんな汚ぇ皿を残すわけねぇだろ。クソみてぇな嘘吐くんじゃねぇ。」
兵長さんに凄まれた彼が、情けない悲鳴のような声を上げると、へなへなと膝から崩れ落ちて行く。
ついに、彼を見下ろした兵長さんは、私の財布を奪い返すと、胸ポケットから自分の財布を取り出した。
「お前は、これを食い終わるまで帰ってくるんじゃねぇ。」
「え…っ、でも俺…っ、こんな量を食いきるなんて…っ。」
「俺の奢りだ。残したりしねぇよな。」
兵長さんは自分の財布からお札を数枚取り出すと、テーブルの上に少し強めに叩くように置く。
その衝撃で揺れたテーブルに、ビクッと肩を震わせ情けない悲鳴を上げた彼が、必死に頷いた。