【第十三訓】お姫様抱っこが良いんじゃない、誰にされるかが大事なのだ
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準備を終えたなまえは、食堂にやってきていた。
早朝にも関わらず、食堂は、隊士達でかなりの賑わいだ。皆、意外と早起きらしい。
まだ寝惚け眼でぼんやりとしている隊士も多かったが、全員がしっかりと隊服に身を包んでいる。
それもこれも、鬼の副長と名高い土方十四郎が、彼らを怖い目を光らせているからだろう。
いや、怖い目を光らせるというか————。
「なんだこりゃァァァアアアッ!?辛ェェェェェエエエエエッ!!
誰だ!?俺のマヨネーズに辛子を紛れ込ませた奴はァァアアアア!!」
土方は、涙目を光らせながら、顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
「お~、すげ~や、土方さん。
一発で、当たりを当てちまった。」
おぼんに朝食を乗せた総悟が、顔を真っ赤にして騒いでいる土方のそばを通り過ぎようとする。
やはり、犯人は総悟だったようだ。
すぐに、土方に首根っこを捕まえられて、怒鳴りつけられる総悟だが、飄々とした様子で聞き流している。
とても懐かしい光景に、思わず、なまえの頬が緩んでいく。
そんななまえに気づいたのは、他の誰でもなく、総悟だった。
目が合うと、総悟は、「話は終わってない!」と引き留める土方を適当にあしらいつつ、自分の朝食を乗せたおぼんを彼に押し付けて、なまえの元へと歩み寄る。
「起きたのかィ。昨日は、どんなにひっぱたいても無反応だったくせに。」
目の前までやってくると、総悟が意地悪く言う。
でも、やはり、昨日の夜、なまえは、総悟と話しながら夜空を見上げているうちに、眠ってしまったようだ。
「ごめんね。起きたら、部屋で寝てたから驚いたよ。
総ちゃんが、誰かを呼んでくれたんでしょう?ありがとうね。」
「は?」
「それで、誰が私を部屋まで運んでくれたの?近藤さん?」
お礼を言わなければ———、となまえは食堂を見渡す。
でも、賑やかな食堂の中で、ひと際賑やかそうな近藤の姿は、なかなか見つからない。
「どうして、アンタを部屋に運んだのが近藤さんだと思うんだ?」
「あれ?違うの?じゃあ、トシくん?」
「違ぇ。」
「じゃあ、終?」
「…違うの?じゃあ、誰だろう。クイズ?
昔からの知り合いだと思うんだけど、誰かなぁ。
んー…、総ちゃんではないし。」
「どうして、俺ではねェんだ。」
「総ちゃん?無理だよ~。だって、私、重いもん。」
なまえは、腹を抱えて笑った。
まだ子供だった総悟を抱っこしてあげた想い出ならあるけれど、そんな彼に抱えられる自分の姿なんて想像もつかなかったのだ。
でも、笑われたのが気に入らなかったのか、総悟が纏う雰囲気が負の感情で包まれたのが分かった。
怒らせてしまった———そう思った時にはもう、なまえの足は床から離れて浮いてしまっていた。
「これで、アンタが礼を言うべき相手が誰か分かったかイ。」
なまえは、総悟に見下ろされていた。
背中と太ももにまわる腕の感触は、筋肉質で硬くて、男の人のそれだ。
なまえの腕が触れる胸板も、見上げた視界に入る首筋も、太くなった骨格の全てが、総悟の成長を表していた。
大人の女を軽々と持ち上げることのできる総悟は、もう子供ではなかった。
再会した日から、なんとなく気づいていたけれど、知らないフリをした。
彼にはずっと、可愛い弟のままでいてもらいたかった。
食堂の真ん中で、突然、一番隊の隊長が新人隊士をお姫様抱っこしている状況は、騒がしい食堂でも、さすがに目立った。
異常だった。
隊士達の視線を感じながら、なまえは、とぼけるように笑った。
「総ちゃんも大きくなったんだねェ。力持ち!」
ハハと軽く笑ったなまえは、楽しそうに総悟の頭を撫でる。
総悟が、不機嫌そうに眉を顰めたのには気づいたけれど、知らないフリをした。
「ありがとうね。お姉ちゃんは弟の成長が嬉しいよ。」
最後に優しく総悟の頭を撫でた後に、見慣れない胸板を押して、腕の中から飛び降りる。
「でも、今度は私が抱っこしてあげるから、また一緒に寝て、可愛い寝顔を見せてね。」
なまえが、ニコリと笑う。
総悟は、その笑みが気に入らないとばかりに、「嫌だね。」とそっぽを向いた。
早朝にも関わらず、食堂は、隊士達でかなりの賑わいだ。皆、意外と早起きらしい。
まだ寝惚け眼でぼんやりとしている隊士も多かったが、全員がしっかりと隊服に身を包んでいる。
それもこれも、鬼の副長と名高い土方十四郎が、彼らを怖い目を光らせているからだろう。
いや、怖い目を光らせるというか————。
「なんだこりゃァァァアアアッ!?辛ェェェェェエエエエエッ!!
誰だ!?俺のマヨネーズに辛子を紛れ込ませた奴はァァアアアア!!」
土方は、涙目を光らせながら、顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
「お~、すげ~や、土方さん。
一発で、当たりを当てちまった。」
おぼんに朝食を乗せた総悟が、顔を真っ赤にして騒いでいる土方のそばを通り過ぎようとする。
やはり、犯人は総悟だったようだ。
すぐに、土方に首根っこを捕まえられて、怒鳴りつけられる総悟だが、飄々とした様子で聞き流している。
とても懐かしい光景に、思わず、なまえの頬が緩んでいく。
そんななまえに気づいたのは、他の誰でもなく、総悟だった。
目が合うと、総悟は、「話は終わってない!」と引き留める土方を適当にあしらいつつ、自分の朝食を乗せたおぼんを彼に押し付けて、なまえの元へと歩み寄る。
「起きたのかィ。昨日は、どんなにひっぱたいても無反応だったくせに。」
目の前までやってくると、総悟が意地悪く言う。
でも、やはり、昨日の夜、なまえは、総悟と話しながら夜空を見上げているうちに、眠ってしまったようだ。
「ごめんね。起きたら、部屋で寝てたから驚いたよ。
総ちゃんが、誰かを呼んでくれたんでしょう?ありがとうね。」
「は?」
「それで、誰が私を部屋まで運んでくれたの?近藤さん?」
お礼を言わなければ———、となまえは食堂を見渡す。
でも、賑やかな食堂の中で、ひと際賑やかそうな近藤の姿は、なかなか見つからない。
「どうして、アンタを部屋に運んだのが近藤さんだと思うんだ?」
「あれ?違うの?じゃあ、トシくん?」
「違ぇ。」
「じゃあ、終?」
「…違うの?じゃあ、誰だろう。クイズ?
昔からの知り合いだと思うんだけど、誰かなぁ。
んー…、総ちゃんではないし。」
「どうして、俺ではねェんだ。」
「総ちゃん?無理だよ~。だって、私、重いもん。」
なまえは、腹を抱えて笑った。
まだ子供だった総悟を抱っこしてあげた想い出ならあるけれど、そんな彼に抱えられる自分の姿なんて想像もつかなかったのだ。
でも、笑われたのが気に入らなかったのか、総悟が纏う雰囲気が負の感情で包まれたのが分かった。
怒らせてしまった———そう思った時にはもう、なまえの足は床から離れて浮いてしまっていた。
「これで、アンタが礼を言うべき相手が誰か分かったかイ。」
なまえは、総悟に見下ろされていた。
背中と太ももにまわる腕の感触は、筋肉質で硬くて、男の人のそれだ。
なまえの腕が触れる胸板も、見上げた視界に入る首筋も、太くなった骨格の全てが、総悟の成長を表していた。
大人の女を軽々と持ち上げることのできる総悟は、もう子供ではなかった。
再会した日から、なんとなく気づいていたけれど、知らないフリをした。
彼にはずっと、可愛い弟のままでいてもらいたかった。
食堂の真ん中で、突然、一番隊の隊長が新人隊士をお姫様抱っこしている状況は、騒がしい食堂でも、さすがに目立った。
異常だった。
隊士達の視線を感じながら、なまえは、とぼけるように笑った。
「総ちゃんも大きくなったんだねェ。力持ち!」
ハハと軽く笑ったなまえは、楽しそうに総悟の頭を撫でる。
総悟が、不機嫌そうに眉を顰めたのには気づいたけれど、知らないフリをした。
「ありがとうね。お姉ちゃんは弟の成長が嬉しいよ。」
最後に優しく総悟の頭を撫でた後に、見慣れない胸板を押して、腕の中から飛び降りる。
「でも、今度は私が抱っこしてあげるから、また一緒に寝て、可愛い寝顔を見せてね。」
なまえが、ニコリと笑う。
総悟は、その笑みが気に入らないとばかりに、「嫌だね。」とそっぽを向いた。
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