【第十三訓】お姫様抱っこが良いんじゃない、誰にされるかが大事なのだ
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なまえは、静かに、瞼を押し上げた。
見上げた視線に映るのは、見慣れない古い木目の天井だった。
寝起きでぼんやりする頭で、しばらく考えて、ここが真選組の屯所であることを理解する。それと同時に、自分が、真選組の隊士であることも思い出した。
現在、真選組の隊士は100人を越えている。その半数以上はこの屯所で生活を共にしているが、残りの妻帯者や何かしらの事情のある隊士は、別の家に帰っている。そして、出勤日は朝の8時半までに屯所へやってきて、隊長の指示のもと、江戸の治安を守るために忙しく仕事をこなす。彼らが、屯所に泊まるのは、当直の日だけだ。
特に事情があるわけでも、夫がいるわけでもないなまえは、当然のように、屯所で生活をすることになっていた。
これからは、ここが、なまえの家なのだ。ここで寝起きをして、食事をして、隊士達と共に暮らす。
「…昨日、どうやって部屋に戻ったんだっけ。」
ゆっくりと身体を起こしながら、自問するように呟く。
昨晩、なかなか眠りにつけずに、部屋のすぐ外にある縁側で月を見上げていた。
欠けた月は、ひどく寂しそうで、孤独を訴えるように、私の心を重たくしていったのだ。
「あ…、総ちゃん…。」
ひとり、縁側に座って月を見上げていたところに、総悟がやってきたことを思いだした。
あんな真夜中に何をしていたのか分からないが、どうせ、ろくでもない悪戯でも思いついて、早速行動に移していたということなのだろう。
そしてきっと、その悪戯の被害者は、土方だ。
怒っている土方と、飄々と聞き流している総悟を想像してしまって、思わず、クスリと笑いが漏れる。
総悟は、昔からそうだった。
決して、性格が悪いわけではないのだけれど、素直じゃないのだ。
土方を怒らせるのだって、本当は、構ってもらいたいのではないかと思っている。
そんなことしなくても、総悟の周りには、彼を愛する人で溢れているのに、贅沢だ。
人間とはきっと〝欲〟の底を知らないのだろう。
もっと、もっと、と欲しくなる。
何もない人間からすれば、姉を失ったばかりの総悟だって、同情はすれど、羨望の対象にだってなりえることを、彼はきっと知らない。
「また、花火、見たいなぁ。」
起き上がったなまえは、布団を畳みながら、心の声を漏らす。
総悟は覚えてすらいなかった、花火大会の夜。遠くで、残り火だけを散らす花火を見た。
あの儚い光を、総悟は花火だとは認識していないようだったが、なまえにとってあれは、紛れもなく花火だった。
欠けた月がひとりきりで寂しそうに浮かぶ夜空を彩った、あれは、紛れもなく花火だった。
隊服に着替えたなまえは、自分の姿を箪笥の扉裏に貼ってある鏡で確認をする。
「総ちゃん達と同じだ。」
嬉しそうに頬を緩ませた顔が、鏡の向こうに映っていた。
昨日までは、自分が真選組の隊士だという自覚があまりなかったのに、隊服を着ただけで、心が引き締まった。
これから、自分は、彼らの仲間になる。家族に、なる。
「今度こそ、守るんだ。」
強い覚悟が、なまえの声と、握った拳を震わせていた。
見上げた視線に映るのは、見慣れない古い木目の天井だった。
寝起きでぼんやりする頭で、しばらく考えて、ここが真選組の屯所であることを理解する。それと同時に、自分が、真選組の隊士であることも思い出した。
現在、真選組の隊士は100人を越えている。その半数以上はこの屯所で生活を共にしているが、残りの妻帯者や何かしらの事情のある隊士は、別の家に帰っている。そして、出勤日は朝の8時半までに屯所へやってきて、隊長の指示のもと、江戸の治安を守るために忙しく仕事をこなす。彼らが、屯所に泊まるのは、当直の日だけだ。
特に事情があるわけでも、夫がいるわけでもないなまえは、当然のように、屯所で生活をすることになっていた。
これからは、ここが、なまえの家なのだ。ここで寝起きをして、食事をして、隊士達と共に暮らす。
「…昨日、どうやって部屋に戻ったんだっけ。」
ゆっくりと身体を起こしながら、自問するように呟く。
昨晩、なかなか眠りにつけずに、部屋のすぐ外にある縁側で月を見上げていた。
欠けた月は、ひどく寂しそうで、孤独を訴えるように、私の心を重たくしていったのだ。
「あ…、総ちゃん…。」
ひとり、縁側に座って月を見上げていたところに、総悟がやってきたことを思いだした。
あんな真夜中に何をしていたのか分からないが、どうせ、ろくでもない悪戯でも思いついて、早速行動に移していたということなのだろう。
そしてきっと、その悪戯の被害者は、土方だ。
怒っている土方と、飄々と聞き流している総悟を想像してしまって、思わず、クスリと笑いが漏れる。
総悟は、昔からそうだった。
決して、性格が悪いわけではないのだけれど、素直じゃないのだ。
土方を怒らせるのだって、本当は、構ってもらいたいのではないかと思っている。
そんなことしなくても、総悟の周りには、彼を愛する人で溢れているのに、贅沢だ。
人間とはきっと〝欲〟の底を知らないのだろう。
もっと、もっと、と欲しくなる。
何もない人間からすれば、姉を失ったばかりの総悟だって、同情はすれど、羨望の対象にだってなりえることを、彼はきっと知らない。
「また、花火、見たいなぁ。」
起き上がったなまえは、布団を畳みながら、心の声を漏らす。
総悟は覚えてすらいなかった、花火大会の夜。遠くで、残り火だけを散らす花火を見た。
あの儚い光を、総悟は花火だとは認識していないようだったが、なまえにとってあれは、紛れもなく花火だった。
欠けた月がひとりきりで寂しそうに浮かぶ夜空を彩った、あれは、紛れもなく花火だった。
隊服に着替えたなまえは、自分の姿を箪笥の扉裏に貼ってある鏡で確認をする。
「総ちゃん達と同じだ。」
嬉しそうに頬を緩ませた顔が、鏡の向こうに映っていた。
昨日までは、自分が真選組の隊士だという自覚があまりなかったのに、隊服を着ただけで、心が引き締まった。
これから、自分は、彼らの仲間になる。家族に、なる。
「今度こそ、守るんだ。」
強い覚悟が、なまえの声と、握った拳を震わせていた。