【第十訓】歓迎会は歓迎される側もする側も気持ちが大事
Name change
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「それでは!!我々の元に帰ってきてくれた名前から、ご挨拶を!!」
いつの間に起きたのか、ふんどし一丁のゴリラ———もとい、近藤勲が、中央の前に立って、総悟達と喋っていた名前を呼んだ。
今まで誰とでも明るく話していた様子の彼女が、人前に立つことが苦手だとは思えない。
だが、彼女は一瞬だけ困ったように、周りを見渡した。
けれど、すぐに周囲の隊士達に囃し立て出すと、仕方がなさそうに苦笑しながら首を竦め、立ち上がる。
「さぁ!!こっちこっち!!」
近藤が嬉しそうに手招きをする。
だが、客観的には、ふんどし一丁のセクハラ上司が、新人の美人を呼び出すという最悪な図だ。
訴えられても良さそうなものだが、名前は、近藤の格好を面白そうに笑いながら、彼に駆け寄った。
そして、どこからか近藤が持ってきたらしいマイクを受け取り、広間に集まった大勢の隊士達と向かい合う。
「えー…っ、名前です!」
名前が、若干緊張気味に名前を名乗ると、隊士達からドッと笑いが生まれた。
「知ってるぞー!!」
「なんだ、緊張してんのか!!」
「好きなように喋れ!!」
「スリーサイズ!!」
「近藤さんのですかイ?上から150、150、150だぜイ。」
隊士達が、面白おかしく野次を飛ばす。
歓迎会主役の挨拶よりも自分達の野次の方が楽しくなってしまった彼らを、中央の前に立つ名前が、愛おしそうに見つめる光景は、さっきまで拗ねていた銀時にとっても、そこまで悪いものではなかった。
野次が主導権を持ち出してすぐに、土方が隊士達に喝を入れ、漸く名前に挨拶の時間が戻ってくる。
また、名前は、少し緊張したように顔を強張らせた。そして、唾を飲み込むと、深呼吸をしてから、覚悟を決めたように口を開く。
「私は昔、とても大切に想っていた人達から逃げました。」
名前が、ゆっくりと話し始める。
それは、歓迎会の挨拶でよく聞く導入とは大きく違っていた。
だからなのか。それとも、彼女があまりにも真剣に話し始めたからなのか、さっきまで騒がしいだけだった広間が、一瞬で静まり返る。
「あの頃、私は、真っ直ぐな刀のような彼らの仲間になりたかった。
強い彼らの、仲間になりたかった。でも、ご存じの人もいる通り、
私は、大切な人達の仲間になるどころか、彼らの大切な居場所すら守れませんでした。」
「…っ!名前は悪くねぇだろ!!あれは、名前のせいじゃねぇ!!」
挨拶を無視して叫んだのは、誰だったのか。
今のと同じようなセリフが、広間のあちこちから一斉に飛んだせいで、分からなかった。
一瞬、面食らったように目を見開いた名前は、泣きそうな顔をした後に「ありがとう。」と、とても優しく微笑んだ。
少し前に、銀時は、土方から、〝青い空の女〟が、突然現れて突然消えたと聞いていた。
でも、それだけでは、過去、彼らに何があったのかを知ることは出来ない。
ただ、今このやり取りで分かるのは、その別れは、お互いにとって不本意でありながら、すれ違いによるものだったのだろうということだ。
もしかしたら、彼女も、彼らも、別れの理由を自分達のせいにして後悔していたのかもしれない。
だから、この日の再会が、彼らを、青空も負けを認めるくらいの満面の笑みにしているのだろう、とそんな気がしたのだ。
そんな柄にもないことを銀時が考えていると、名前が気を取り直すように、ひとつだけ咳払いをした。
それによって、隊士達の意識がまた、彼女へと向く。
「どのツラを下げて顔を出したんだって感じですが!
恥ずかしながら、名前、帰ってまいりました!!」
明るく務めた名前が、敬礼ポーズをする。
隊士達からは、わざとらしいくらいの大きな笑い声がドッと溢れ「よ!」「待ってました!」と掛け声まで飛び交う。
そんな彼らに、嬉しそうにハニかんで、名前が続ける。
「あの頃よりも、強くなりました!今度こそ、皆さんを!!皆さんの居場所を、守らせてください!!
皆さんの本物の仲間になれるように!!努力して参りますので!!
ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします!!」
名前が頭を下げ、歓迎会主役の挨拶を終えれば、隊士達から、大歓迎だという声が上がる。
「勝手言ってやがる。
俺は、アンタに守られるつもりなんかねぇぜ。」
ふいっと目を逸らし、総悟が口を尖らせれば、名前が彼の元へと駆け寄って「生意気言って~!」と、憎たらしい顔をしている生意気な頬を両手で包んだ。
「ガキ扱いすんじゃねぇ。」
「なんで~。可愛いんだから、いいじゃーん。」
じとっと睨みつける総悟に、名前がつまらなそうに口を尖らせる。
総悟が彼女の手をはがそうとしたところで、本当に離れることがないのは、彼らがお互いにそんな気がないからなのだろう。
「あ~ぁ、完全に片想いじゃねぇか。」
銀時は、盃を口に運びながら、誰に言うでもなく小さく呟く。
総悟が、遠い日の初恋をまだ引きずっているのかどうかなんて、分からない。
だが、女としてなのか、突然いなくなり突然帰ってきて旧友としてなのか、どちらにしろ名前を意識しているのは確かだ。
それに対し、残念ながら、総悟に対する名前の感情は、どう見ても、可愛くて仕方のない弟に対してのそれでしかなさそうだ。
「総悟~!今日はお姉ちゃんと一緒に寝ようね~!」
「嫌だね。」
飄々としている総悟を眺めた後、銀時は小さく鼻で笑い、最後の一杯の酒を喉の奥に流し込んだ。
いつの間に起きたのか、ふんどし一丁のゴリラ———もとい、近藤勲が、中央の前に立って、総悟達と喋っていた名前を呼んだ。
今まで誰とでも明るく話していた様子の彼女が、人前に立つことが苦手だとは思えない。
だが、彼女は一瞬だけ困ったように、周りを見渡した。
けれど、すぐに周囲の隊士達に囃し立て出すと、仕方がなさそうに苦笑しながら首を竦め、立ち上がる。
「さぁ!!こっちこっち!!」
近藤が嬉しそうに手招きをする。
だが、客観的には、ふんどし一丁のセクハラ上司が、新人の美人を呼び出すという最悪な図だ。
訴えられても良さそうなものだが、名前は、近藤の格好を面白そうに笑いながら、彼に駆け寄った。
そして、どこからか近藤が持ってきたらしいマイクを受け取り、広間に集まった大勢の隊士達と向かい合う。
「えー…っ、名前です!」
名前が、若干緊張気味に名前を名乗ると、隊士達からドッと笑いが生まれた。
「知ってるぞー!!」
「なんだ、緊張してんのか!!」
「好きなように喋れ!!」
「スリーサイズ!!」
「近藤さんのですかイ?上から150、150、150だぜイ。」
隊士達が、面白おかしく野次を飛ばす。
歓迎会主役の挨拶よりも自分達の野次の方が楽しくなってしまった彼らを、中央の前に立つ名前が、愛おしそうに見つめる光景は、さっきまで拗ねていた銀時にとっても、そこまで悪いものではなかった。
野次が主導権を持ち出してすぐに、土方が隊士達に喝を入れ、漸く名前に挨拶の時間が戻ってくる。
また、名前は、少し緊張したように顔を強張らせた。そして、唾を飲み込むと、深呼吸をしてから、覚悟を決めたように口を開く。
「私は昔、とても大切に想っていた人達から逃げました。」
名前が、ゆっくりと話し始める。
それは、歓迎会の挨拶でよく聞く導入とは大きく違っていた。
だからなのか。それとも、彼女があまりにも真剣に話し始めたからなのか、さっきまで騒がしいだけだった広間が、一瞬で静まり返る。
「あの頃、私は、真っ直ぐな刀のような彼らの仲間になりたかった。
強い彼らの、仲間になりたかった。でも、ご存じの人もいる通り、
私は、大切な人達の仲間になるどころか、彼らの大切な居場所すら守れませんでした。」
「…っ!名前は悪くねぇだろ!!あれは、名前のせいじゃねぇ!!」
挨拶を無視して叫んだのは、誰だったのか。
今のと同じようなセリフが、広間のあちこちから一斉に飛んだせいで、分からなかった。
一瞬、面食らったように目を見開いた名前は、泣きそうな顔をした後に「ありがとう。」と、とても優しく微笑んだ。
少し前に、銀時は、土方から、〝青い空の女〟が、突然現れて突然消えたと聞いていた。
でも、それだけでは、過去、彼らに何があったのかを知ることは出来ない。
ただ、今このやり取りで分かるのは、その別れは、お互いにとって不本意でありながら、すれ違いによるものだったのだろうということだ。
もしかしたら、彼女も、彼らも、別れの理由を自分達のせいにして後悔していたのかもしれない。
だから、この日の再会が、彼らを、青空も負けを認めるくらいの満面の笑みにしているのだろう、とそんな気がしたのだ。
そんな柄にもないことを銀時が考えていると、名前が気を取り直すように、ひとつだけ咳払いをした。
それによって、隊士達の意識がまた、彼女へと向く。
「どのツラを下げて顔を出したんだって感じですが!
恥ずかしながら、名前、帰ってまいりました!!」
明るく務めた名前が、敬礼ポーズをする。
隊士達からは、わざとらしいくらいの大きな笑い声がドッと溢れ「よ!」「待ってました!」と掛け声まで飛び交う。
そんな彼らに、嬉しそうにハニかんで、名前が続ける。
「あの頃よりも、強くなりました!今度こそ、皆さんを!!皆さんの居場所を、守らせてください!!
皆さんの本物の仲間になれるように!!努力して参りますので!!
ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします!!」
名前が頭を下げ、歓迎会主役の挨拶を終えれば、隊士達から、大歓迎だという声が上がる。
「勝手言ってやがる。
俺は、アンタに守られるつもりなんかねぇぜ。」
ふいっと目を逸らし、総悟が口を尖らせれば、名前が彼の元へと駆け寄って「生意気言って~!」と、憎たらしい顔をしている生意気な頬を両手で包んだ。
「ガキ扱いすんじゃねぇ。」
「なんで~。可愛いんだから、いいじゃーん。」
じとっと睨みつける総悟に、名前がつまらなそうに口を尖らせる。
総悟が彼女の手をはがそうとしたところで、本当に離れることがないのは、彼らがお互いにそんな気がないからなのだろう。
「あ~ぁ、完全に片想いじゃねぇか。」
銀時は、盃を口に運びながら、誰に言うでもなく小さく呟く。
総悟が、遠い日の初恋をまだ引きずっているのかどうかなんて、分からない。
だが、女としてなのか、突然いなくなり突然帰ってきて旧友としてなのか、どちらにしろ名前を意識しているのは確かだ。
それに対し、残念ながら、総悟に対する名前の感情は、どう見ても、可愛くて仕方のない弟に対してのそれでしかなさそうだ。
「総悟~!今日はお姉ちゃんと一緒に寝ようね~!」
「嫌だね。」
飄々としている総悟を眺めた後、銀時は小さく鼻で笑い、最後の一杯の酒を喉の奥に流し込んだ。