27.汗と上がった熱
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ぐにゃりと視界が揺れた————と、頭が理解したときにはもうガシャーンという大きな音が耳をつんざいていた。
尻餅をついた格好で、私はガンガンと痛みの響く頭をどうにかしたくて、こめかみを指で抑える。
着替えの前にシャワーを浴びたのが失敗だった。きっと、下がっていたかもしれなかった熱がぶり返したのだ。
頭が痛いし、ぼんやりとする。身体も怠い。
床の上には、私が取り損ねて落としてしまったタオルと一緒に、四角にバスケットが転がっていた。その周りにもタオルが何枚も散らばっている。
数日前、仕事終わりに眠たい目をこすって、なんとか畳んで仕舞ったばかりだったのに———ぼんやりと思考のどこかでそんなことを考えていたような気がする。
まるで巨大な怪獣が駆け寄ってくるような大きな音が聞こえて来たのは、そんなときだ。
「どうした!?」
爆発でも起こしたかのように、洗面所に続く扉が勢いよく開く。
そこから飛び出してきたのは、エースだった。
「…!?はぁああ!?お前、何やってんだよ!?」
一瞬、驚き過ぎたエースの呼吸が止まったような息遣いが聞こえた。
その次の瞬間には、彼はもう叫んでいた。
頭に響くから大きな音を出さないで欲しい————高熱のせいで思考が鈍っている私は、シャワーを浴びたばかりの濡れる自分の裸体がエースの眼前に晒されていることを気にするだけの余裕はなかった。
けれど、目の前に突然、裸の女が現れたエースは違ったのだろう。
大きめのタオルをひったくるようにとると、私の両肩を隠すようにしてかけた。
「着替えるぞ。」
「…ん。」
なんとか返事はしたけれど、それが声になっていたかは分からない。
ぼんやりとした意識の中で、エースが動き回る気配だけはハッキリと感じていた。
まるで、勝手を知っている家にいるような迷いのない動きだ。
ラックの引き出しを開ける音がする。
着替えを出してくれているのだろう。
面倒くさがりの私は、入浴前に着替えを部屋から持っていくのも億劫になるタイプだ。
だから、洗面所にラックとバスケットを置いて、タオル類だけではなく下着や部屋着も用意しておくようにしている。
それは、昔も今も変わらない。部屋も間取りも変わっても、根本的な〝私〟は変わらないから、インテリアの配置も生活感も同じだ。
だから、エースにとっても都合が良かったのかもしれない。
「ほら、これ着ろ。」
床をぼんやりと見ていた私は、ゆっくりと顔を上げた。
差し出されているパジャマを受け取る。少し前に買ったばかりで、薄いブルーのモコモコ生地がとても可愛くてお気に入りだけれど、熱で汗が出まくる今はツライ。
もっとサラッとした生地のパジャマがよかった。
出来れば、ジャージとかでよかった。
けれど、それを伝える気力はない。
(まぁ、いいか。)
そう思って、改めて受け取ったパジャマを見下ろして、その上にパンティが乗っていることに気が付く。
今、私は裸なのだから、下着も必要だ。当然だ。
ブラジャーはない。寝るときはつけない派だから、有難い。
でも———。
(どうしてこれ・・・・。)
見覚えのあるパンティだった。
どうしてわざわざこんなおばさんくさいベージュ色のを選んだのか。パステルカラーのもう少し可愛いのだってあったはずだ。ベイが誕生日プレゼントにくれたセクシーなのもある(それは奥深くに眠っているけれど)。
「着替えられねぇのか?」
ボーっとしていたのだろうか。
エースに心配そうに訊ねられてしまった。
「だいじょぶ。」
年下の元カレに裸を晒し続けている上に、下着まで用意してもらった。
くわえて、着替えまで手伝ってもらうことになってしまったら、立ち直れない。
もぞもぞしながら、パジャマと下着を身につける。
ロングスカートタイプのパジャマだったから、着替えやすくて助かった。
「じゃあ、寝室行くぞ。」
頭上からエースの声がした。
それに頷こうとした私の背中に、大きな手が触れたのを感じる。
(あ。)
思った時にはもう、私はエースに横抱きに抱え上げられていた。
「自分で歩ける————。」
「またぶっ倒れたら面倒くせぇから、黙って任せとけ。」
「・・・ごめん。」
目を伏せて謝る私の頭上に、今度は聞こえてくるのはエースのため息だった。
尻餅をついた格好で、私はガンガンと痛みの響く頭をどうにかしたくて、こめかみを指で抑える。
着替えの前にシャワーを浴びたのが失敗だった。きっと、下がっていたかもしれなかった熱がぶり返したのだ。
頭が痛いし、ぼんやりとする。身体も怠い。
床の上には、私が取り損ねて落としてしまったタオルと一緒に、四角にバスケットが転がっていた。その周りにもタオルが何枚も散らばっている。
数日前、仕事終わりに眠たい目をこすって、なんとか畳んで仕舞ったばかりだったのに———ぼんやりと思考のどこかでそんなことを考えていたような気がする。
まるで巨大な怪獣が駆け寄ってくるような大きな音が聞こえて来たのは、そんなときだ。
「どうした!?」
爆発でも起こしたかのように、洗面所に続く扉が勢いよく開く。
そこから飛び出してきたのは、エースだった。
「…!?はぁああ!?お前、何やってんだよ!?」
一瞬、驚き過ぎたエースの呼吸が止まったような息遣いが聞こえた。
その次の瞬間には、彼はもう叫んでいた。
頭に響くから大きな音を出さないで欲しい————高熱のせいで思考が鈍っている私は、シャワーを浴びたばかりの濡れる自分の裸体がエースの眼前に晒されていることを気にするだけの余裕はなかった。
けれど、目の前に突然、裸の女が現れたエースは違ったのだろう。
大きめのタオルをひったくるようにとると、私の両肩を隠すようにしてかけた。
「着替えるぞ。」
「…ん。」
なんとか返事はしたけれど、それが声になっていたかは分からない。
ぼんやりとした意識の中で、エースが動き回る気配だけはハッキリと感じていた。
まるで、勝手を知っている家にいるような迷いのない動きだ。
ラックの引き出しを開ける音がする。
着替えを出してくれているのだろう。
面倒くさがりの私は、入浴前に着替えを部屋から持っていくのも億劫になるタイプだ。
だから、洗面所にラックとバスケットを置いて、タオル類だけではなく下着や部屋着も用意しておくようにしている。
それは、昔も今も変わらない。部屋も間取りも変わっても、根本的な〝私〟は変わらないから、インテリアの配置も生活感も同じだ。
だから、エースにとっても都合が良かったのかもしれない。
「ほら、これ着ろ。」
床をぼんやりと見ていた私は、ゆっくりと顔を上げた。
差し出されているパジャマを受け取る。少し前に買ったばかりで、薄いブルーのモコモコ生地がとても可愛くてお気に入りだけれど、熱で汗が出まくる今はツライ。
もっとサラッとした生地のパジャマがよかった。
出来れば、ジャージとかでよかった。
けれど、それを伝える気力はない。
(まぁ、いいか。)
そう思って、改めて受け取ったパジャマを見下ろして、その上にパンティが乗っていることに気が付く。
今、私は裸なのだから、下着も必要だ。当然だ。
ブラジャーはない。寝るときはつけない派だから、有難い。
でも———。
(どうしてこれ・・・・。)
見覚えのあるパンティだった。
どうしてわざわざこんなおばさんくさいベージュ色のを選んだのか。パステルカラーのもう少し可愛いのだってあったはずだ。ベイが誕生日プレゼントにくれたセクシーなのもある(それは奥深くに眠っているけれど)。
「着替えられねぇのか?」
ボーっとしていたのだろうか。
エースに心配そうに訊ねられてしまった。
「だいじょぶ。」
年下の元カレに裸を晒し続けている上に、下着まで用意してもらった。
くわえて、着替えまで手伝ってもらうことになってしまったら、立ち直れない。
もぞもぞしながら、パジャマと下着を身につける。
ロングスカートタイプのパジャマだったから、着替えやすくて助かった。
「じゃあ、寝室行くぞ。」
頭上からエースの声がした。
それに頷こうとした私の背中に、大きな手が触れたのを感じる。
(あ。)
思った時にはもう、私はエースに横抱きに抱え上げられていた。
「自分で歩ける————。」
「またぶっ倒れたら面倒くせぇから、黙って任せとけ。」
「・・・ごめん。」
目を伏せて謝る私の頭上に、今度は聞こえてくるのはエースのため息だった。