26.冷めたお粥を温める
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お椀にたっぷり入っていたお粥が半分に減った頃、寝室の扉が開いた。
寝室から出て来たエースは、ダイニングで食事をしている私を見つける。
一瞬、目が合った気はしたけれど、彼はスッと目を逸らすとリビングの方へと行ってしまった。
食事が出来るまで回復したのを見て、もう帰ろうと思ったのかもしれない。
それならば、せめてお礼を伝えなければ———そう思って立ち上がろうとした私よりも先に、リビングに行ったはずのエースが、何かを手に持ってキッチンに戻って来た。
「飯、食えてんなら、
あとでこれも飲んどけよ。」
そう言って、エースがダイニングテーブルの上に置いたのは、病院で処方された薬の入った白い紙袋だった。
どうやらエースは、リビングに置いていた薬を取りに戻ってくれただけだったようだ。
「ありがとう。」
「—————腹減った。俺も食おう。」
礼を言って薬を手に取った私をジッと見た後、エースはまたスッと目を逸らした。
「あ、じゃあ、私が準備を———。」
「いい。自分で出来る。病人はおとなしくしてろ。」
「・・・ごめん。ありがとう。」
素っ気なく拒否されたけれど、今のはエースの優しさだと分かる。
背中越しに、エースがお粥を温め直しているのを感じながら、私は少し冷め始めて来たお粥を口に運ぶ。
うん、やっぱり、美味しい。
「これ、エースが作ってくれたんだよね。
ありがとう。」
自分の分のお粥を用意すると、エースは私に向かい合うようにして椅子に座る。
そのタイミングに合わせて、私は彼に礼を伝えた。
早速お粥を口に運ぼうとしていたエースは、一瞬だけ動きを止めた後に「普通だし。」と素っ気なく答えると、今度こそお粥を口に入れた。
お互いがお粥を咀嚼するだけの静かな空気が流れる。
「・・・・。」
一口お粥を食べただけで箸を止めたエースは、私の方を見て何かを言おうとしては、口を閉じる。
「どうしたの?」
「…っ、なんでもねぇ。」
スッと目を逸らすエースからは、少し気まずそうにしているような空気感が伝わってくる。
なんでもないような態度には思えないけれど、あまりしつこく訊ねれば、それはそれで、またエースを怒らせてしまいそうだ。
どうしたのだろうかと考えて、なんとなく、見当がついた。
『美味しい?』
誰かの為に料理を作ったことのある人なら、ほとんどがこう質問したくなるだろう。
もしかしたら、エースも、味を気にしたのだろうか。
「エースが作ったお粥、すごく美味しいね。
世界一の味かも!!私、おかわりしちゃおうかな。」
「…!?バ、バッカじゃねぇの…!
ただのお粥だし!!」
褒めすぎただろうか。
もしかしたら私も、あの日の約束を叶えてくれるみたいに、エースに看病をしてもらえてお粥まで作ってもらえたことが嬉しくて、おかしくなっているのかもしれない。
驚いた顔をしたエースは、怒ったように言って私から完全に横を向いてしまった。
けれど、真っ赤に染まって、嬉しそうにニヤけている頬は隠しきれていない。
クスクスと笑うと、いたたまれなくなったのか、エースがお粥を勢いよく口の中にかき込んだ。
一瞬でお粥がなくなったお椀をテーブルの上に置いて、一息ついた後に、エースが口を開く。
「…熱は?」
「んー、わかんないけど、たぶん、少しは下がったと思う。
こうやって、話したり、歩いたり、食事もとれるし。」
「ふーん。」
明後日の方を向いて、エースは興味なさそうに言った。
寝室から出て来たエースは、ダイニングで食事をしている私を見つける。
一瞬、目が合った気はしたけれど、彼はスッと目を逸らすとリビングの方へと行ってしまった。
食事が出来るまで回復したのを見て、もう帰ろうと思ったのかもしれない。
それならば、せめてお礼を伝えなければ———そう思って立ち上がろうとした私よりも先に、リビングに行ったはずのエースが、何かを手に持ってキッチンに戻って来た。
「飯、食えてんなら、
あとでこれも飲んどけよ。」
そう言って、エースがダイニングテーブルの上に置いたのは、病院で処方された薬の入った白い紙袋だった。
どうやらエースは、リビングに置いていた薬を取りに戻ってくれただけだったようだ。
「ありがとう。」
「—————腹減った。俺も食おう。」
礼を言って薬を手に取った私をジッと見た後、エースはまたスッと目を逸らした。
「あ、じゃあ、私が準備を———。」
「いい。自分で出来る。病人はおとなしくしてろ。」
「・・・ごめん。ありがとう。」
素っ気なく拒否されたけれど、今のはエースの優しさだと分かる。
背中越しに、エースがお粥を温め直しているのを感じながら、私は少し冷め始めて来たお粥を口に運ぶ。
うん、やっぱり、美味しい。
「これ、エースが作ってくれたんだよね。
ありがとう。」
自分の分のお粥を用意すると、エースは私に向かい合うようにして椅子に座る。
そのタイミングに合わせて、私は彼に礼を伝えた。
早速お粥を口に運ぼうとしていたエースは、一瞬だけ動きを止めた後に「普通だし。」と素っ気なく答えると、今度こそお粥を口に入れた。
お互いがお粥を咀嚼するだけの静かな空気が流れる。
「・・・・。」
一口お粥を食べただけで箸を止めたエースは、私の方を見て何かを言おうとしては、口を閉じる。
「どうしたの?」
「…っ、なんでもねぇ。」
スッと目を逸らすエースからは、少し気まずそうにしているような空気感が伝わってくる。
なんでもないような態度には思えないけれど、あまりしつこく訊ねれば、それはそれで、またエースを怒らせてしまいそうだ。
どうしたのだろうかと考えて、なんとなく、見当がついた。
『美味しい?』
誰かの為に料理を作ったことのある人なら、ほとんどがこう質問したくなるだろう。
もしかしたら、エースも、味を気にしたのだろうか。
「エースが作ったお粥、すごく美味しいね。
世界一の味かも!!私、おかわりしちゃおうかな。」
「…!?バ、バッカじゃねぇの…!
ただのお粥だし!!」
褒めすぎただろうか。
もしかしたら私も、あの日の約束を叶えてくれるみたいに、エースに看病をしてもらえてお粥まで作ってもらえたことが嬉しくて、おかしくなっているのかもしれない。
驚いた顔をしたエースは、怒ったように言って私から完全に横を向いてしまった。
けれど、真っ赤に染まって、嬉しそうにニヤけている頬は隠しきれていない。
クスクスと笑うと、いたたまれなくなったのか、エースがお粥を勢いよく口の中にかき込んだ。
一瞬でお粥がなくなったお椀をテーブルの上に置いて、一息ついた後に、エースが口を開く。
「…熱は?」
「んー、わかんないけど、たぶん、少しは下がったと思う。
こうやって、話したり、歩いたり、食事もとれるし。」
「ふーん。」
明後日の方を向いて、エースは興味なさそうに言った。