26.冷めたお粥を温める
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深夜0時過ぎ。寝室の扉を閉めた私は、やっと大きく息を吐けた。
目が覚めて、エースに抱きしめられていると気づいたときは確かに驚いた。けれど、熱のせいか、まだ頭痛が残っていて意識もぼんやりとしているおかげで、傍目には冷静でいるように見られる程度の反応で済んだのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
エースが私の家にいる理由については、起きてすぐに時間を確認する為に見たスマホにベイからメッセージが届いていて、理解した。
目覚める前に、ベッドにエースがいたのを見たような記憶もうっすらあるし、彼女の言っていることに間違いはないのだろう。
そうでなければ、エースが私の家にいる理由に説明もつかない。
(…でも、どうして抱きしめてたんだろう。)
私は、さっきまでエースにそうされていたように、自分の身体を両腕でそっと抱きしめた。
熱があるせいだろうか。
エースに抱きしめられていた腕の辺りが、炎に包まれているみたいに熱いまま消えないのだ。
『俺の彼女。』
私の肩を抱いたエースの声が蘇る。
まさか、本気になんてしてない。
きっと、可愛い女の子達にやきもちを妬いてもらおうとしたのだ。
そうに違いない。
だって、まさか———。
(…そうだよ。そ、そう…!だって、エースには…。)
そもそも、エースには恋人がいたのではなかったか。
初詣に行った神社で、エースと一緒にいたオレンジ色の髪の美人で可愛い彼女のことを思い出す。
年齢はエースより少し下か同じくらい。
エースの隣がとても似合う人だった。
私なんかよりずっと———。
小さく息を吐いた私は、キッチンへ向かう。
食べ物はないことを知っていたから、水分だけでもとろうと思ったのだ。
そこで私は、片付けていたはずの鍋がIHコンロに置かれているのに気が付いた。
不思議に思いながら、鍋の蓋を開けて理解する。
鍋の中には、お粥が入っていた。
カトラリーボックスからティースプーンを取り出して救ってみると、水分を吸って膨張したまま少し固まっていた。けれど、食べられないほどではない。
もう少し水を足して温めれば大丈夫そうだ。
シンプルな塩味で、野菜や卵なんかのトッピングは何もない。
それが、食欲のない今の私にはちょうど良かった。
早速、お粥を温めてから、お椀に盛り付ける。
それから、冷蔵庫の中を開け、梅干しを取りだして、2粒を皿に移した。
「いただきます。」
ダイニングテーブルに食事を用意した私は、早速お粥を口に運ぶ。
一瞬、喉に走った激痛に顔を顰めたけれど、すぐに表情が緩んだ。
柔らかくて、温かいお粥の優しい味が、胸の奥までじんわりと染み込んでいく。
まるで、数年の時を経て、高校生だったエースが届けてくれた健気さのようだった。
目が覚めて、エースに抱きしめられていると気づいたときは確かに驚いた。けれど、熱のせいか、まだ頭痛が残っていて意識もぼんやりとしているおかげで、傍目には冷静でいるように見られる程度の反応で済んだのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
エースが私の家にいる理由については、起きてすぐに時間を確認する為に見たスマホにベイからメッセージが届いていて、理解した。
目覚める前に、ベッドにエースがいたのを見たような記憶もうっすらあるし、彼女の言っていることに間違いはないのだろう。
そうでなければ、エースが私の家にいる理由に説明もつかない。
(…でも、どうして抱きしめてたんだろう。)
私は、さっきまでエースにそうされていたように、自分の身体を両腕でそっと抱きしめた。
熱があるせいだろうか。
エースに抱きしめられていた腕の辺りが、炎に包まれているみたいに熱いまま消えないのだ。
『俺の彼女。』
私の肩を抱いたエースの声が蘇る。
まさか、本気になんてしてない。
きっと、可愛い女の子達にやきもちを妬いてもらおうとしたのだ。
そうに違いない。
だって、まさか———。
(…そうだよ。そ、そう…!だって、エースには…。)
そもそも、エースには恋人がいたのではなかったか。
初詣に行った神社で、エースと一緒にいたオレンジ色の髪の美人で可愛い彼女のことを思い出す。
年齢はエースより少し下か同じくらい。
エースの隣がとても似合う人だった。
私なんかよりずっと———。
小さく息を吐いた私は、キッチンへ向かう。
食べ物はないことを知っていたから、水分だけでもとろうと思ったのだ。
そこで私は、片付けていたはずの鍋がIHコンロに置かれているのに気が付いた。
不思議に思いながら、鍋の蓋を開けて理解する。
鍋の中には、お粥が入っていた。
カトラリーボックスからティースプーンを取り出して救ってみると、水分を吸って膨張したまま少し固まっていた。けれど、食べられないほどではない。
もう少し水を足して温めれば大丈夫そうだ。
シンプルな塩味で、野菜や卵なんかのトッピングは何もない。
それが、食欲のない今の私にはちょうど良かった。
早速、お粥を温めてから、お椀に盛り付ける。
それから、冷蔵庫の中を開け、梅干しを取りだして、2粒を皿に移した。
「いただきます。」
ダイニングテーブルに食事を用意した私は、早速お粥を口に運ぶ。
一瞬、喉に走った激痛に顔を顰めたけれど、すぐに表情が緩んだ。
柔らかくて、温かいお粥の優しい味が、胸の奥までじんわりと染み込んでいく。
まるで、数年の時を経て、高校生だったエースが届けてくれた健気さのようだった。