24.優しくて、残酷な言葉
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ガシャン———。 勢いよく閉じた扉に背中を預けて、腰から滑り落ちるようにして玄関に座り込んだ。 風邪で上がりきった高熱が、血流に乗って一気に頬の辺りに集まってきているみたいで、顔がすごく熱い。 「おれ…、なに、言ってんだ…?」 誰かに見られているわけでもないのに、無性にどこかに隠れてしまいたくなって、エースは両手で顔を覆うとそのまま、指の隙間から天井を仰ぐ。 『今度…!アンタが熱出したら…っ そんときは、おれがそばにいてやるから…!』 自分が発した言葉が信じられなくて、顔から火が出そうだ。 どうして、あんな恥ずかしいことを言ってしまったのだろう。 (本気か?) 熱い顔を両手で覆い隠したまま、何度も自問自答してみるけれど、答えは出ない。 気づいたら、口が勝手に動いていたのだ。 本当にそうしてやろうと思ったわけではない。でも、あれは嘘だとも言い切れない自分がいる。 今の自分の精神状態がよく分からなくて、なんだか気持ちが悪い。 そのせいなのか、ドキドキするのだ。心臓が嫌に激しく鼓動している。その鼓動が頭の奥にまで響いて聞こえてくるから、うるさ過ぎて落ち着いてこの状況を考えてみることも出来ない。 (だって、アイツが…!) 優しく微笑んだのだ。名前が、優しく微笑んだ。 そんなこと、彼女に関して言えば、いつものことだったはずだ。 高校2年生に進級して、担任として名前に出逢った時から、彼女はいつも笑顔を欠かさなかった。 どんなに冷たい態度をとろうが、暴言を吐こうが、それは変わらない。 まるで荒ぶる刃のように悪戯に傷つけようとしたところで、彼女は逃げようともしないで、笑っていた。 どちらかと言えば、そんな彼女が苦手だった。彼女のような大人に出逢ったのは初めてで、どう対処すればいいのか分からず、距離を置くことばかりを考えていたのだ。 それなのに、今日はなぜか、名前の笑顔にいつもとは違う感情を抱いてしまった。 それを何という言葉に変換するのが正しいのかは分からないけれど、胸の奥が少しだけ熱くなったのは覚えてる。 『エースのそばにいられて私もよかったよ。 また、ツラいときはいつでも頼ってね。どこにいても、絶対に駆けつけるから。』 名前があんなことを言うから悪いんだ————鼓動が速すぎるせいで、心臓が苦しい。 エースは、心臓を握り潰すように、シャツを掴んだ。 どうしてだろう。 なぜか、今すごく、名前の笑顔に会いたい————。 |