22.熱を出した日
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遠い日の、夢を見ていた。
ゆっくりと意識は浮上していくけれど、視界も思考回路もぼんやりしている。
(あぁ…、買い物、しに行こうとして…寝ちゃったんだ。バカだな。)
どれくらい寝ていたのだろう。とても長い夢を見ていた気がする。
凍えて震える身体は、冷たい風に包まれ過ぎて感覚がなくなり始めていた。
こんな真冬にアパートの廊下で寝ていたのだから当然だ。
そういえば、何も考えずに部屋着のままで部屋を出て来たから、コートすら着ていない。
熱を下げるために食事をしようとして買い物に行くはずだったのに、こんな薄着で外気に晒されて寝ていたら、もっと熱が上がる。本末転倒だ。
(エース、私が熱を出したらそばにいてくれるって
言ってたなぁ。)
夢で見た遠い記憶のエースの姿が蘇る。
貸しがどうのなんて言い訳していたけれど、あれはきっと、エースなりの感謝の言葉だったのだと知っている。
あの頃は、ただの生徒と担任教師で、彼がどれくらい本気でそのつもりだったのかは分からない。
恋人同士になってからも、エースが体調を崩すこともなかったし、私が熱を出すこともなかったから、結局、看病をしてもらうことはなかった。
だから、今———。
(エースに、そばにいてほしいな…。)
思ってしまってから、何て身勝手なことを言っているのだろうかと、自分に呆れてしまった。
誰に向けて隠すためだったのかは分からない。
私は、弱弱しくこみ上げてきた失笑を隠すためだけに、抱き寄せた膝に顔を埋めた。
けれど、なぜかすぐに腕を引っ張り上げられてしまった。そのまま顔も上げれば、目の前に誰かの脚がぼんやりと見えた。
「————。」
その人は、膝を折り曲げて屈むと、私の顔を覗き込き何かを言ってくる。
けれど、うまく聞き取れない。
でも、額に触れたその人の手が冷たくて、気持ちが良くて自然と目を閉じる。
ずっとこのままその手に触れていて欲しい———そう思ったのも束の間、いきなり浮遊感に襲われた私は思わず目を開けてしまう。
高熱でこみ上げる生理的な涙のせいで、ぼんやりとした視界いっぱいに、私はその人の顔を見た———そんな、気がしたのだ。
(あぁ、夢か…。)
そうだとしか思えなかった。
だって、ふわふわと揺れる景色の中で、私が見たその人は、今このとき会いたくて会いたくて仕方なかった、エースだったから———。
ゆっくりと意識は浮上していくけれど、視界も思考回路もぼんやりしている。
(あぁ…、買い物、しに行こうとして…寝ちゃったんだ。バカだな。)
どれくらい寝ていたのだろう。とても長い夢を見ていた気がする。
凍えて震える身体は、冷たい風に包まれ過ぎて感覚がなくなり始めていた。
こんな真冬にアパートの廊下で寝ていたのだから当然だ。
そういえば、何も考えずに部屋着のままで部屋を出て来たから、コートすら着ていない。
熱を下げるために食事をしようとして買い物に行くはずだったのに、こんな薄着で外気に晒されて寝ていたら、もっと熱が上がる。本末転倒だ。
(エース、私が熱を出したらそばにいてくれるって
言ってたなぁ。)
夢で見た遠い記憶のエースの姿が蘇る。
貸しがどうのなんて言い訳していたけれど、あれはきっと、エースなりの感謝の言葉だったのだと知っている。
あの頃は、ただの生徒と担任教師で、彼がどれくらい本気でそのつもりだったのかは分からない。
恋人同士になってからも、エースが体調を崩すこともなかったし、私が熱を出すこともなかったから、結局、看病をしてもらうことはなかった。
だから、今———。
(エースに、そばにいてほしいな…。)
思ってしまってから、何て身勝手なことを言っているのだろうかと、自分に呆れてしまった。
誰に向けて隠すためだったのかは分からない。
私は、弱弱しくこみ上げてきた失笑を隠すためだけに、抱き寄せた膝に顔を埋めた。
けれど、なぜかすぐに腕を引っ張り上げられてしまった。そのまま顔も上げれば、目の前に誰かの脚がぼんやりと見えた。
「————。」
その人は、膝を折り曲げて屈むと、私の顔を覗き込き何かを言ってくる。
けれど、うまく聞き取れない。
でも、額に触れたその人の手が冷たくて、気持ちが良くて自然と目を閉じる。
ずっとこのままその手に触れていて欲しい———そう思ったのも束の間、いきなり浮遊感に襲われた私は思わず目を開けてしまう。
高熱でこみ上げる生理的な涙のせいで、ぼんやりとした視界いっぱいに、私はその人の顔を見た———そんな、気がしたのだ。
(あぁ、夢か…。)
そうだとしか思えなかった。
だって、ふわふわと揺れる景色の中で、私が見たその人は、今このとき会いたくて会いたくて仕方なかった、エースだったから———。