22.熱を出した日
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私立白髭高等学校最寄駅から4駅先のゴア駅で降りた私は、豪華絢爛な駅舎に目を丸くした。 サーモンピンク色に染められた外観は、しつこいくらいの黄金の飾りで囲まれている。 特に驚いたのは、駅口すぐのところで出迎えてくれる噴水の中央にドンと置かれた巨大な黄金ライオンだ。 彼が大きく開いた口から、大量の札束を吐き出しているのを見て、思わず「ひゃぁ!」と変な声を上げてしまったくらいだ。 高級ブランドに身を包んだ貴婦人や紳士達に訝し気な視線を向けられ、恥ずかしさで隠れてしまいたくなりながらも、破天荒な黄金ライオンをよく見てみれば、口から吐き出しているのは札束ではなく大量の水だ。何処からか札束の映像を映し出しているらしい。 (これは…、最先端…なのかな?) 豪華絢爛な駅舎であることは理解したけれど、アンティークな小さな小屋風な駅が好きな私とは相容れないらしい。 それにしても、さすがドーン区だと感心する。 この辺りは、有名な富裕層地区だ。その中でもゴア駅の辺りは、特にお金持ちの人達が住んでいる場所だ。 庶民的な家で、庶民的な暮らしをして育ってきた私が、彼らの価値観を理解できるわけなどあるわけないのだ。 「えっと…、住所は…。」 プリントアウトしてきた担当クラスの住所欄を片手に、私はキョロキョロと辺りを見回す。 そんな私の様子に気が付いた貴婦人達が、また訝し気な顔をして何かを話し始めた。 完全に、怪しい人だと思われている。 早くここから離れなくちゃ————そう思って歩き出そうとしてすぐに、私は声をかけられた。 「すみません、身分証を確認させて頂いてもいいですか?」 にこやかに浮かべられた笑顔の仮面の下に、ヒシヒシと伝わってくる敵意。 彼は、パリッとした制服に身を包んだ警察官だった。 どうやら私は、通報されていたらしい———。 すぐに身分証を見せ、慌てて弁解をすると共に、ついでだと思って警察官に生徒の家も訊ねた。 警察からの職質は、運が悪かったのではなくて、良かったのだと思うことにした。 |