21.高熱は判断を鈍らせる
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握力を失ってうまく持てなかった私のせいで、床に叩きつけられてしまったグラスが、ゴロゴロと転がってテーブルの脚にぶつかって止まる。
それでも私は、拾ってやる気力はなく、木目調のフローリングに広がっていく水をぼんやりと見下ろしていた。
(ヤバい…。喉が痛い。水すら痛い。薬飲めない。)
やっとの思いで薬箱から取り出した市販薬は、テーブルの上に置かれたまま手つかずの状態だ。
私の頭の中は絶望でいっぱいだった。
ついさっき、空っぽの冷蔵庫に絶望したばかりだというのに————。
食べ物が何もないのなら、先に薬を飲んでしまおうと思ったのだけれど、作戦失敗だ。
(よし。やっぱり先に食べよう。食べて元気になろう。)
だが、冷蔵庫の中は何もない。
近くのコンビニまで行くしかないのか。
幸い、鍵と財布の入っているバッグは、昨日帰ってきたときにソファの上に投げ捨てたままになっていた。
バッグを手に取った私は、水たまりを作っているフローリングはそのままで、廊下へと向かってフラフラと歩き出す。
玄関までの距離が、こんなにも遠く感じたのは初めてだ。
こんな小さなアパートで、大冒険をしたような気持ちになれたのは、私が初めてなのではないだろうか。
(玄関の扉…、2トンかな。)
漸く辿り着いた玄関も、今の私には扉が重たすぎて重労働だ。
やっとの思いで外に出ると、冷たい冬の風が体温の高い私の身体を包み込む。
ここまでくるともう、寒いのか熱いのかも分からない。
だからと言って、無の境地でもない。
ただただ、ツライのだ。
(もう、帰りたい…。)
願望とは裏腹に、高熱で朦朧としていてもしっかりと鍵をかけようとしているのだ。
けれど、震える手では、鍵穴をとらえることが出来ず、鍵をかけるのを何度も失敗する。
そうして、数回目で漸く成功すると、私はそのままヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。
(よし、一旦休憩だ。)
私は玄関横の壁に背中を預ける。
そうだ、配達を頼めばいいんだ————どうしてもっと早く思いつかなかったんだろうか。
三度目の絶望感を味わいながら、私は目を閉じた。
それでも私は、拾ってやる気力はなく、木目調のフローリングに広がっていく水をぼんやりと見下ろしていた。
(ヤバい…。喉が痛い。水すら痛い。薬飲めない。)
やっとの思いで薬箱から取り出した市販薬は、テーブルの上に置かれたまま手つかずの状態だ。
私の頭の中は絶望でいっぱいだった。
ついさっき、空っぽの冷蔵庫に絶望したばかりだというのに————。
食べ物が何もないのなら、先に薬を飲んでしまおうと思ったのだけれど、作戦失敗だ。
(よし。やっぱり先に食べよう。食べて元気になろう。)
だが、冷蔵庫の中は何もない。
近くのコンビニまで行くしかないのか。
幸い、鍵と財布の入っているバッグは、昨日帰ってきたときにソファの上に投げ捨てたままになっていた。
バッグを手に取った私は、水たまりを作っているフローリングはそのままで、廊下へと向かってフラフラと歩き出す。
玄関までの距離が、こんなにも遠く感じたのは初めてだ。
こんな小さなアパートで、大冒険をしたような気持ちになれたのは、私が初めてなのではないだろうか。
(玄関の扉…、2トンかな。)
漸く辿り着いた玄関も、今の私には扉が重たすぎて重労働だ。
やっとの思いで外に出ると、冷たい冬の風が体温の高い私の身体を包み込む。
ここまでくるともう、寒いのか熱いのかも分からない。
だからと言って、無の境地でもない。
ただただ、ツライのだ。
(もう、帰りたい…。)
願望とは裏腹に、高熱で朦朧としていてもしっかりと鍵をかけようとしているのだ。
けれど、震える手では、鍵穴をとらえることが出来ず、鍵をかけるのを何度も失敗する。
そうして、数回目で漸く成功すると、私はそのままヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。
(よし、一旦休憩だ。)
私は玄関横の壁に背中を預ける。
そうだ、配達を頼めばいいんだ————どうしてもっと早く思いつかなかったんだろうか。
三度目の絶望感を味わいながら、私は目を閉じた。