12.ファミレス
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テーブルの上に敷き詰められた料理皿とエースの食べっぷりを眺めながら、私は遠い日のことを思いだしていた。
まだ、私が、彼の担任教師を純粋にしていた頃だ。
お腹がいっぱいだと腹をさすっては居眠りを挟むエースは、急ぐ様子もなく、ただのんびりと食事をしていた。そんな彼の姿を眺めながら、私は、どうして、彼が大量の料理を頼んだのかをやっと理解したのだ。
きっと、エースは、家に帰りたくなかったのだろう。
ひとりきりの家に、もしくは、外食の楽しい想い出を作った賑やかな家族のいる家に。
だから私は、食べながら眠るエースを起こしながらも、急かしたりはしなかった。
家族と向き合うことは大切なことだとは思っていた。
でも、あのとき、彼には、逃げてもいいと思える安全な場所を与える大人が、必要だった。
「相変わらず、食べながら寝るんだね。」
ちょうど起きたところだったエースに、クスリと笑った。
少し驚いたように目を見開いた後、エースは「るせぇ。」と目を逸らす。
そしてまた、沈黙が始まった。
「私の番号、シャンクスさんに聞いたの?」
ステーキにナイフを入れていたエースが、ピタリと動きを止めた。
視線を上げて私を見るエースは、眉を思いきり歪めて「当然だろ」と表情で語っている。
まだ、私の番号を残していたと勘違いされたと思って、気分を悪くしたのかもしれない。
「知らねぇから電話も出来ねぇって言ったら、
聞いてもいねぇのに、教えてきた。」
「そっか。ごめんね。
———でも、連絡先は交換しておいた方がいいかなって思ってたんだ。
もし…、よかったら、なんだけど…、さっきの番号、登録してもいいかな?」
「・・・・・好きにしろよ。」
返事は遅かったけれど、とりあえずは、許可を貰って、私はホッと息を吐く。
早速、着信履歴を開き、該当の番号を編集する。
名前を登録した途端、着信履歴に【エース】と表示された。
当然のそれに、ドキリとしてしまう。
時間が戻ったわけではない。でも、懐かしい着信履歴の番号が、幸せな日々をフラッシュバックさせるから、今の落差を改めて実感してしまったのだ。
「わざわざ、私のアパートの最寄り駅まで戻ってきてもらってごめんね。」
気を取り直すために、私は話題を変えた。
肉を咀嚼していたエースは、飲み込んだ後に、口を開いた。
「俺の家、反対方向だから。」
「その近くの駅まで行ったのに。それくらい平気だよ。」
言いながら、エースは私に家を知られたくなかったのかもしれないことに気づいた。
だから、次に、当然のようにエースが発した言葉は、とても意外だった。
「危ぇだろ。」
「え?」
思わず、小さな声が漏れてしまったけれど、エースは気にした様子はなかった。
でも、だからと言って、言葉を補足することもせず、テーブルに残っている食事を、気持ちのいいくらいにたいらげてく。
そんなエースを眺めながら、私は思ってしまったのだ。
今夜、彼が、大量に料理を注文した理由は、何だろう。
お腹を空かせていただけなのだろうか。それとも———。
まだ、私が、彼の担任教師を純粋にしていた頃だ。
お腹がいっぱいだと腹をさすっては居眠りを挟むエースは、急ぐ様子もなく、ただのんびりと食事をしていた。そんな彼の姿を眺めながら、私は、どうして、彼が大量の料理を頼んだのかをやっと理解したのだ。
きっと、エースは、家に帰りたくなかったのだろう。
ひとりきりの家に、もしくは、外食の楽しい想い出を作った賑やかな家族のいる家に。
だから私は、食べながら眠るエースを起こしながらも、急かしたりはしなかった。
家族と向き合うことは大切なことだとは思っていた。
でも、あのとき、彼には、逃げてもいいと思える安全な場所を与える大人が、必要だった。
「相変わらず、食べながら寝るんだね。」
ちょうど起きたところだったエースに、クスリと笑った。
少し驚いたように目を見開いた後、エースは「るせぇ。」と目を逸らす。
そしてまた、沈黙が始まった。
「私の番号、シャンクスさんに聞いたの?」
ステーキにナイフを入れていたエースが、ピタリと動きを止めた。
視線を上げて私を見るエースは、眉を思いきり歪めて「当然だろ」と表情で語っている。
まだ、私の番号を残していたと勘違いされたと思って、気分を悪くしたのかもしれない。
「知らねぇから電話も出来ねぇって言ったら、
聞いてもいねぇのに、教えてきた。」
「そっか。ごめんね。
———でも、連絡先は交換しておいた方がいいかなって思ってたんだ。
もし…、よかったら、なんだけど…、さっきの番号、登録してもいいかな?」
「・・・・・好きにしろよ。」
返事は遅かったけれど、とりあえずは、許可を貰って、私はホッと息を吐く。
早速、着信履歴を開き、該当の番号を編集する。
名前を登録した途端、着信履歴に【エース】と表示された。
当然のそれに、ドキリとしてしまう。
時間が戻ったわけではない。でも、懐かしい着信履歴の番号が、幸せな日々をフラッシュバックさせるから、今の落差を改めて実感してしまったのだ。
「わざわざ、私のアパートの最寄り駅まで戻ってきてもらってごめんね。」
気を取り直すために、私は話題を変えた。
肉を咀嚼していたエースは、飲み込んだ後に、口を開いた。
「俺の家、反対方向だから。」
「その近くの駅まで行ったのに。それくらい平気だよ。」
言いながら、エースは私に家を知られたくなかったのかもしれないことに気づいた。
だから、次に、当然のようにエースが発した言葉は、とても意外だった。
「危ぇだろ。」
「え?」
思わず、小さな声が漏れてしまったけれど、エースは気にした様子はなかった。
でも、だからと言って、言葉を補足することもせず、テーブルに残っている食事を、気持ちのいいくらいにたいらげてく。
そんなエースを眺めながら、私は思ってしまったのだ。
今夜、彼が、大量に料理を注文した理由は、何だろう。
お腹を空かせていただけなのだろうか。それとも———。