◇No.40◇彼女は喜ばせたかっただけなのです
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船長室に戻ったローは、ソファに座って、特に気に入っている医学書を読んですごしました。
浮足立っている船内を歩き回って、浮かれている船員に関わるのが面倒だったのです。
でも、とても不思議でした。
いつもなら医学書を読んでいれば、あっという間に時間が過ぎていくのに、今日は時間の流れがとてもゆっくりだったのです。
もう、そろそろか————。
そう思って時計を見る度に、期待は裏切られます。
時計の長い針は、半周していればいい方でした。
細かい文字が並ぶ医学書を読むのにも疲れてきたローは、鼻頭を指で摘まんで大きくため息を吐きます。
今日は意味もなく憂鬱な日のようです。
窓の外は雨が降ですし、きっと、そのせいでしょう。
天気というのは、人間の心の機嫌を変えてしまうこともあります。
もう一度、ため息を吐いたローは、まだ数ページしか読み終えていない医学書をテーブルの上に置くと、ソファに横になりました。
憂鬱な気分の時は、無理になにかをしようとするよりも、眠ってしまうのがいい、そう考えたのです。
しかし、目を閉じて見ても、瞼の裏になまえの顔が浮かんでしまい、眠れそうにありません。
頭の奥には、船員から聞いた話と嬉しそうな仲間の声まで響いてきます。
彼女はロボットです。人間に尽くすために生まれて来ました。
だから、人間の言葉を素直に受け止めて、喜ばせようとします。
それは、ローも充分理解しているつもりでした。
彼らにおくっているというキスがまさにそれです。
なまえは、大切な仲間を喜ばせたい、それだけなのです。
そう、それだけなのです。
大好きという言葉も、暖めるために抱きしめてくれた細い腕も、キスも———。
彼女が、ローを愛しているからでは、なかったのです。
分かっていた、分かっていたはずなのに———。
浮足立っている船内を歩き回って、浮かれている船員に関わるのが面倒だったのです。
でも、とても不思議でした。
いつもなら医学書を読んでいれば、あっという間に時間が過ぎていくのに、今日は時間の流れがとてもゆっくりだったのです。
もう、そろそろか————。
そう思って時計を見る度に、期待は裏切られます。
時計の長い針は、半周していればいい方でした。
細かい文字が並ぶ医学書を読むのにも疲れてきたローは、鼻頭を指で摘まんで大きくため息を吐きます。
今日は意味もなく憂鬱な日のようです。
窓の外は雨が降ですし、きっと、そのせいでしょう。
天気というのは、人間の心の機嫌を変えてしまうこともあります。
もう一度、ため息を吐いたローは、まだ数ページしか読み終えていない医学書をテーブルの上に置くと、ソファに横になりました。
憂鬱な気分の時は、無理になにかをしようとするよりも、眠ってしまうのがいい、そう考えたのです。
しかし、目を閉じて見ても、瞼の裏になまえの顔が浮かんでしまい、眠れそうにありません。
頭の奥には、船員から聞いた話と嬉しそうな仲間の声まで響いてきます。
彼女はロボットです。人間に尽くすために生まれて来ました。
だから、人間の言葉を素直に受け止めて、喜ばせようとします。
それは、ローも充分理解しているつもりでした。
彼らにおくっているというキスがまさにそれです。
なまえは、大切な仲間を喜ばせたい、それだけなのです。
そう、それだけなのです。
大好きという言葉も、暖めるために抱きしめてくれた細い腕も、キスも———。
彼女が、ローを愛しているからでは、なかったのです。
分かっていた、分かっていたはずなのに———。