◇No.33◇探しています
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その頃、高級マンションの最上階では、コートを抱きしめてヒステリックに叫ぶガリーナとローの睨み合いが続いていました。
そこへ、ローのコートのポケットの中で子電伝虫が鳴き出します。
連絡をしてきたのは、シャチでした。
≪キャプテン!!なまえの居場所が分かりました!!
ガキ達がなまえに会ってました!!≫
「ガキ?船内にいたってことか?」
ローが訝し気に言いました。
シャチの言うガキとは、エレン達のことだとすぐに理解していました。
彼らは、船内から出ないようにローから指示をだされています。大人達にもしつこく言い聞かせられているはずです。
ですが——。
≪それが、コッソリ抜け出してたらしくて、森に探検に行ったときに
なまえに会ったそうなんです!≫
「森?」
なぜ森に——、そう思ってついこぼしたローの視線の端で、毛皮のコートを抱きしめるガリーナの肩が少し揺れました。
ガリーナを見れば、綺麗に整えた細い眉が歪んで、眉間に皴を作っています。
≪そこで危ねぇから船に帰れって言われたらしいんすけど、
一緒に帰ろうって誘ったアイツ等に、自分は迷子になったベポを
森に探しに行くから無理だって断れたって!≫
「ベポは迷子になってんのか?」
≪キャプテェェエエンッ!俺はここにいるよ!!森で迷子なんて嘘なんだ!!≫
「あぁ…、そういうことか。」
ローが呟くように言いながら、目の前にいるガリーナを睨みつけました。
ガリーナは、これでもかというほどに眉を歪めて、悔しそうに唇を噛んでいました。
その表情は、エレン達の目撃情報は、正しいということを教えてくれました。
なまえを自ら森へ向かわせた方法が分かった今、どうやって毛皮のコートを手に入れたのかも、大体は察しがつきます。
≪はい!今回ばかりは、クソガキ共にグッジョブっす!!≫
≪そうだぞ!!俺達のおかげだからな!!絶対になまえを見つけてこいよ!!≫
≪調子に乗るなよ、クソガキ!≫
≪うるせぇ!!熊のくせに、なんで海賊なんだよ!!≫
≪すみませ———。≫
子電伝虫の向こうが騒がしくなってきたので、ローは強制的に切りました。
欲しい情報は手に入りました。
もうこの部屋に残る必要もありません。
あとは、森の中からなまえを見つけ出してやることだけです。
シャチから連絡を受けた他の船員達も森に向かいだすでしょう。
分厚い雲はまだ空を覆っているはずです。
雨が降り出してしまう前に、自分も—。
「待ってよ!!これがどうなってもいいの!?」
走り出そうとしたローをガリーナが引き留めました。
振り返ったローが見たのは、まるで人質のようにハサミをつきたてられている毛皮のコートでした。
「この部屋から出て行くなら、この毛皮のコート、ハサミでグチャグチャにするから!」
「すればいい。」
「は?」
「お前にくれてやるよ、そんなもん。
なまえには、もっといいのを買ってやる。」
「な…!!何よ、それ…!!」
ガリーナはまだ喚いていたけれど、ローは無視しました。
背を向け、玄関まで走ります。
その後ろを縋るように追いかけながら、ガリーナが叫び続けます。
「待って!!置いて行かないでよ!!
待ちなさいってば!!」
鍵のしまっていた玄関の扉を開けたローのコートを、必死に追いかけたガリーナが、やっとの思いで掴みました。
ローが振り返ります。そして、口を開く前に、ガリーナは大声で彼を責め立てました。
「どうしてよ!?ローは、利用する以外に女に優しくするような男じゃないでしょう!?
いつだって淡白だった!!それなのに何を必死になってんの!?
私にはそんな風になってくれなかったのに!!」
「お前、自分となまえが同列だとでも思ってんのか。」
眉を顰めたローが、蔑むような目でガリーナを見下ろしました。
彼女が男からそんな目を向けられるのは、初めてでした。
しかもそれが、自分が欲しくて仕方ない男の目だというのが信じられなず、ガリーナは困惑します。
だって、ガリーナは、なまえと自分が同列だなんて全く思っていません。
その逆です。もっともっと下の方になまえがいるはずだったのです。
それがどうして——。
「とにかく離せ!」
腕を掴むガリーナの手を乱雑に振り払おうと、ローが手を振り上げました。
振り上げられた手を見上げたガリーナは、ローに軽蔑するような目を向けました。
「まさか…、あの機械のことマジで〝大好きな人〟だなんて、言わないよね。」
そんなこと言ったら許さない——。
軽蔑するようなガリーナの目は、無言でそうローに語っていました。
振り下ろされる直前だったローの手が、ピタリと止まります。
それは、ほんの数秒だけでした。
ですが、それは、ローにとっても、ガリーナにとっても、とても長く感じる静寂でした。
ローは、手を振り下ろし、コートを掴むガリーナの手を乱雑に払いました。
痛みに顔を顰めたガリーナに背を向け、ローが玄関の扉を開きました。
「…否定した覚えはねぇ。」
後ろにいるガリーナへチラリと視線を向けた後、ローはスッと目を反らし低い声で呟くように答えました。
それでもしっかりと耳に届いてしまったガリーナは、大きく目を見開きます。
ハッキリと〝そう〟だとローが認めたわけではありません。
ですが、さっきもロー自身が言ったように、否定もしませんでした。
どうしても信じられませんでした。
だって、ローは、仲間に対しては人間らしい感情を持っていましたが、女に対してはそれこそ性欲処理用の道具のような扱いでした。
欲しいものを買ってくれたり、ねだれば何でも叶えてくれましたが、優しくしている風を装っていても、そこに“心”がないことはガリーナは気づいていました。
それでも、他の女は絶対に愛さない男だったから、ガリーナは安心していたんです。
それが、どうして——。
機械のことを〝大好きな人〟だとしてしまうなんて、ありえません。
信じられない台詞を残して玄関から飛び出して行ったローの背中を、ガリーナはすぐに追いかけました。
でも、真っ赤な絨毯の敷き詰められたマンションの廊下にガリーナが出たときには、ローの背中はあっという間に追いつかないところまで走っていました。
だから、彼女は怒りと悔しさ、戸惑い、全ての感情の赴くままに叫びました。
「アンタ、頭がおかしいんじゃないの!?機械に惚れてるって!?
はぁああ!?気持ち悪い!!アンタみたいな変態、こっちから願い下げなんだから!!!!」
振り返らない背中に唇を噛み、ガリーナはプライドを抱えて座り込みます。
すぐにローの背中は廊下の角を曲がり、見えなくなりました。
「ハハ…アハハハハ…ッ。」
真っ赤な絨毯が敷き詰められた豪華絢爛な廊下には、自分が負けたとは認めないガリーナの、渇いた笑い声が響いていました。
ガリーナにとって、これは二度目の屈辱でした。
失恋だとは絶対に認めない彼女ですが、そういうことになるのでしょう。
相手は、また今回もローです。
でも、今回の方がずっとずっと悔しいのはきっと、彼女が初めて〝女〟に負けたからでしょう。
そこへ、ローのコートのポケットの中で子電伝虫が鳴き出します。
連絡をしてきたのは、シャチでした。
≪キャプテン!!なまえの居場所が分かりました!!
ガキ達がなまえに会ってました!!≫
「ガキ?船内にいたってことか?」
ローが訝し気に言いました。
シャチの言うガキとは、エレン達のことだとすぐに理解していました。
彼らは、船内から出ないようにローから指示をだされています。大人達にもしつこく言い聞かせられているはずです。
ですが——。
≪それが、コッソリ抜け出してたらしくて、森に探検に行ったときに
なまえに会ったそうなんです!≫
「森?」
なぜ森に——、そう思ってついこぼしたローの視線の端で、毛皮のコートを抱きしめるガリーナの肩が少し揺れました。
ガリーナを見れば、綺麗に整えた細い眉が歪んで、眉間に皴を作っています。
≪そこで危ねぇから船に帰れって言われたらしいんすけど、
一緒に帰ろうって誘ったアイツ等に、自分は迷子になったベポを
森に探しに行くから無理だって断れたって!≫
「ベポは迷子になってんのか?」
≪キャプテェェエエンッ!俺はここにいるよ!!森で迷子なんて嘘なんだ!!≫
「あぁ…、そういうことか。」
ローが呟くように言いながら、目の前にいるガリーナを睨みつけました。
ガリーナは、これでもかというほどに眉を歪めて、悔しそうに唇を噛んでいました。
その表情は、エレン達の目撃情報は、正しいということを教えてくれました。
なまえを自ら森へ向かわせた方法が分かった今、どうやって毛皮のコートを手に入れたのかも、大体は察しがつきます。
≪はい!今回ばかりは、クソガキ共にグッジョブっす!!≫
≪そうだぞ!!俺達のおかげだからな!!絶対になまえを見つけてこいよ!!≫
≪調子に乗るなよ、クソガキ!≫
≪うるせぇ!!熊のくせに、なんで海賊なんだよ!!≫
≪すみませ———。≫
子電伝虫の向こうが騒がしくなってきたので、ローは強制的に切りました。
欲しい情報は手に入りました。
もうこの部屋に残る必要もありません。
あとは、森の中からなまえを見つけ出してやることだけです。
シャチから連絡を受けた他の船員達も森に向かいだすでしょう。
分厚い雲はまだ空を覆っているはずです。
雨が降り出してしまう前に、自分も—。
「待ってよ!!これがどうなってもいいの!?」
走り出そうとしたローをガリーナが引き留めました。
振り返ったローが見たのは、まるで人質のようにハサミをつきたてられている毛皮のコートでした。
「この部屋から出て行くなら、この毛皮のコート、ハサミでグチャグチャにするから!」
「すればいい。」
「は?」
「お前にくれてやるよ、そんなもん。
なまえには、もっといいのを買ってやる。」
「な…!!何よ、それ…!!」
ガリーナはまだ喚いていたけれど、ローは無視しました。
背を向け、玄関まで走ります。
その後ろを縋るように追いかけながら、ガリーナが叫び続けます。
「待って!!置いて行かないでよ!!
待ちなさいってば!!」
鍵のしまっていた玄関の扉を開けたローのコートを、必死に追いかけたガリーナが、やっとの思いで掴みました。
ローが振り返ります。そして、口を開く前に、ガリーナは大声で彼を責め立てました。
「どうしてよ!?ローは、利用する以外に女に優しくするような男じゃないでしょう!?
いつだって淡白だった!!それなのに何を必死になってんの!?
私にはそんな風になってくれなかったのに!!」
「お前、自分となまえが同列だとでも思ってんのか。」
眉を顰めたローが、蔑むような目でガリーナを見下ろしました。
彼女が男からそんな目を向けられるのは、初めてでした。
しかもそれが、自分が欲しくて仕方ない男の目だというのが信じられなず、ガリーナは困惑します。
だって、ガリーナは、なまえと自分が同列だなんて全く思っていません。
その逆です。もっともっと下の方になまえがいるはずだったのです。
それがどうして——。
「とにかく離せ!」
腕を掴むガリーナの手を乱雑に振り払おうと、ローが手を振り上げました。
振り上げられた手を見上げたガリーナは、ローに軽蔑するような目を向けました。
「まさか…、あの機械のことマジで〝大好きな人〟だなんて、言わないよね。」
そんなこと言ったら許さない——。
軽蔑するようなガリーナの目は、無言でそうローに語っていました。
振り下ろされる直前だったローの手が、ピタリと止まります。
それは、ほんの数秒だけでした。
ですが、それは、ローにとっても、ガリーナにとっても、とても長く感じる静寂でした。
ローは、手を振り下ろし、コートを掴むガリーナの手を乱雑に払いました。
痛みに顔を顰めたガリーナに背を向け、ローが玄関の扉を開きました。
「…否定した覚えはねぇ。」
後ろにいるガリーナへチラリと視線を向けた後、ローはスッと目を反らし低い声で呟くように答えました。
それでもしっかりと耳に届いてしまったガリーナは、大きく目を見開きます。
ハッキリと〝そう〟だとローが認めたわけではありません。
ですが、さっきもロー自身が言ったように、否定もしませんでした。
どうしても信じられませんでした。
だって、ローは、仲間に対しては人間らしい感情を持っていましたが、女に対してはそれこそ性欲処理用の道具のような扱いでした。
欲しいものを買ってくれたり、ねだれば何でも叶えてくれましたが、優しくしている風を装っていても、そこに“心”がないことはガリーナは気づいていました。
それでも、他の女は絶対に愛さない男だったから、ガリーナは安心していたんです。
それが、どうして——。
機械のことを〝大好きな人〟だとしてしまうなんて、ありえません。
信じられない台詞を残して玄関から飛び出して行ったローの背中を、ガリーナはすぐに追いかけました。
でも、真っ赤な絨毯の敷き詰められたマンションの廊下にガリーナが出たときには、ローの背中はあっという間に追いつかないところまで走っていました。
だから、彼女は怒りと悔しさ、戸惑い、全ての感情の赴くままに叫びました。
「アンタ、頭がおかしいんじゃないの!?機械に惚れてるって!?
はぁああ!?気持ち悪い!!アンタみたいな変態、こっちから願い下げなんだから!!!!」
振り返らない背中に唇を噛み、ガリーナはプライドを抱えて座り込みます。
すぐにローの背中は廊下の角を曲がり、見えなくなりました。
「ハハ…アハハハハ…ッ。」
真っ赤な絨毯が敷き詰められた豪華絢爛な廊下には、自分が負けたとは認めないガリーナの、渇いた笑い声が響いていました。
ガリーナにとって、これは二度目の屈辱でした。
失恋だとは絶対に認めない彼女ですが、そういうことになるのでしょう。
相手は、また今回もローです。
でも、今回の方がずっとずっと悔しいのはきっと、彼女が初めて〝女〟に負けたからでしょう。