◇No.33◇探しています
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部屋の扉を開いたガリーナは、とてもご機嫌にローを招き入れました。
最上階のこの部屋は、リビングの大きな窓からセレブ街が見渡せます。
人間なんて、蟻程度にしか見えません。
ここから、窓の外を見続けていたら、人間のことを人間とは思えなくなるのかもしれません。
それなら、機械をひとつ壊すことくらい、ガリーナにとっては蟻を踏み潰すよりも心が痛まないのでしょう。
でも、ローやペンギン達にとって、なまえはもう、機械ではないのです。
「ローから会いに来てくれるなんて、嬉し——。」
踊るような声色でローの首に両手をまわそうとしていたガリーナは、腕を掴まれて壁に背中から叩きつけられました。
背中に刺さる痛みに思わず顔を歪めたガリーナに、ローが怒鳴ります。
「なまえをどこにやった!?」
「・・・いきなり何?私に会いに来たんじゃないの?」
「おまえが町の男を誘惑して、なまえのことを調べてたのはもう分かってるんだ!
アイツをどこにやった!?」
「会いに来てくれたんだと思ったのに、いきなり他の女の名前を連呼されて最悪な気分。
それに意味も分かんないし。」
ガリーナが不機嫌そうに口を尖らせました。
ローの眉間に皴が深く刻まれます。
「なまえに何をしたかって聞いてんだ!!」
「…ローが私よりあの娘を選ぶから、どんな娘のか気になって聞いただけよ。
まさかロボットだとは思わなくてビックリしたけど、
それなら恋人じゃないんだろうし、別にどうでもよくなったわ。」
ガリーナは、つまらなそうにしたまま続けました。
ローは、一度口を閉じました。
確かに、ロボットが恋人だと思う人間はいないでしょう。
ですが、だからと言って、ガリーナがなまえに手を出さないかどうかは、分かりません。
だって、実際、グロスには何の動きもないのです。
そして、いつもローに忠実ななまえが、雨が降っているのに船内へ帰ってこないどころか、洗濯物を濡らしたままどこかに行くなんてあり得ません。
何か事件に巻き込まれた以外には、考えられないのです。
どうしても疑うことはやめられず、どうやって口を割らせようかローが考えていると、ガリーナが先に口を開きました。
「ていうかさ、何熱くなってんの?」
「あ?」
「よくわかんないけど、あの娘がいなくなったってことなんでしょ?
たかだか機械がいなくなっただけで、何を熱くなってんのって言ってんの。」
「アイツは、俺達の仲間だ!!ただの機械なんかじゃねぇ…!!」
ガリーナの胸ぐらを掴む手に力がこもり、さらに強く壁に背中を押しつけました。
痛そうに、ガリーナが顔を顰めます。それでも、彼女は続けました。
「…っ、仲間だと思ってたのは、ロー達だけなんじゃない?」
ガリーナに言われて、ローは眉を顰めます。
ピリッとした空気が流れましたが、彼女は気にせず続けます。
「だって、機械が人間の、しかもよりによってすごく人間臭い海賊の中で
暮らすなんて大変そうだもの。きっと無理してたと思うわ。」
ガリーナが言います。
ローは、言い返す言葉を持っていませんでした。
確かにそうかもしれない——、そう思ってしまったのです。
なまえは、ハートの海賊団の船員としてうまくやっていました。
仲間達との絆も生まれていると感じています。
ですが、夜になると必ず自分の元へ来てバーに誘う姿を見ると、仲間達が寝静まる長い夜を辛く感じているのだろうといつも思うのです。
機械扱いをされていた研究施設の方がいいとは絶対に思いません。
ですが、人間と同じように扱われているからこそ、夜になる度になまえは、自分は仲間とは違うと感じているのではないか——。
なまえに心はないと分かっていながら、どうしてもそう考えてしまいます。
そんなローの心情を察したのか、ガリーナが少しご機嫌に口の端を上げました。
「ねぇ、あの娘より私の方が役に立つと思わない?」
「何だって?」
「私なら、ローの言う通りにできるわ。あの頃みたいにバカな男を誘惑して情報を持っ来てあげるし
ローの身体だって、毎晩でも満足させてあげるわ。
幾らあの娘が高性能のロボットだって、ほら…そういうの、出来ないでしょ?」
ガリーナが、少しだけ眉尻を下げて言いながら、ローの頬を撫でました。
小馬鹿にしたような言い方が、やけに癪に触って、ローは、反吐が出そうでした。
なまえのことをどんな風に悪く言われても、彼女の船長として腹が立ったでしょうが、その中でも一番最低な言い方はどれかと言われたら、それは今ガリーナが、暗になまえは仲間としてだけではなく女としても無能だと罵りながら、自分の女としての株を上げるために言ったそのセリフだったのです。
怒りのままにガリーナの胸ぐらを掴みあげたローは、苛立ちをぶつけるように、軽い身体を近くのソファに投げ捨てました。
5人掛けほどの大きなソファに、ガリーナが背中から落ちるとドンッと大きな音が響きました。
痛みに顔を歪めるガリーナをよそに、ローは右腕を前に伸ばし、Roomを唱えます。
豪華な広いリビングが、ドーム状のサークルに包まれました。
「スキャン。」
妖刀〝鬼哭〟の柄を上にして持ったローは、それを横にスライドさせました。
スキャンとは、サークル内にある目的物を文字通りスキャンして探し出す技です。
そして、ローはすぐに、リビング奥にあるクローゼットの中にある毛皮のコートを見つけました。
ペンギンからも、ガリーナと思われる女が、毛皮のコートを着ているなまえに手をあげようとしていたのを見たと報告を受けていました。
だから、もしも本当にガリーナが犯人なら、必ずこの部屋にあるはずだと思ったのです。
これで、ガリーナへの疑いが確信に変わりました。
ハッとして、ガリーナがすぐにクローゼットに走りました。
そして、ローに奪い返される前に、クローゼットの中に仕舞っていた毛皮のコートを腕にしっかりと抱きしめます。
「それはなまえのだな。どうしてお前が持ってるか説明しろ。」
「これは私の!!」
「俺がアイツに買ってやった。この街にそれは1つかねぇって話だ。
お前がそのコートを欲しがってたことも把握済みだ。」
「…っ、分かってたなら!!どうして、私じゃなくてあのロボットに買うの!?
私は、自分のものを返してもらっただけよ!!私は悪くない!!」
ガリーナがヒステリックに叫びました。
まるで理屈の通じない子供のようです。
なまえなら、こんな風に声を荒げることなんかしないのに——。
ふ、とローの頭に浮かんだのは、『私はローの大好きな人です。』と無邪気に言ったなまえのいつもの澄ました表情でした。
最上階のこの部屋は、リビングの大きな窓からセレブ街が見渡せます。
人間なんて、蟻程度にしか見えません。
ここから、窓の外を見続けていたら、人間のことを人間とは思えなくなるのかもしれません。
それなら、機械をひとつ壊すことくらい、ガリーナにとっては蟻を踏み潰すよりも心が痛まないのでしょう。
でも、ローやペンギン達にとって、なまえはもう、機械ではないのです。
「ローから会いに来てくれるなんて、嬉し——。」
踊るような声色でローの首に両手をまわそうとしていたガリーナは、腕を掴まれて壁に背中から叩きつけられました。
背中に刺さる痛みに思わず顔を歪めたガリーナに、ローが怒鳴ります。
「なまえをどこにやった!?」
「・・・いきなり何?私に会いに来たんじゃないの?」
「おまえが町の男を誘惑して、なまえのことを調べてたのはもう分かってるんだ!
アイツをどこにやった!?」
「会いに来てくれたんだと思ったのに、いきなり他の女の名前を連呼されて最悪な気分。
それに意味も分かんないし。」
ガリーナが不機嫌そうに口を尖らせました。
ローの眉間に皴が深く刻まれます。
「なまえに何をしたかって聞いてんだ!!」
「…ローが私よりあの娘を選ぶから、どんな娘のか気になって聞いただけよ。
まさかロボットだとは思わなくてビックリしたけど、
それなら恋人じゃないんだろうし、別にどうでもよくなったわ。」
ガリーナは、つまらなそうにしたまま続けました。
ローは、一度口を閉じました。
確かに、ロボットが恋人だと思う人間はいないでしょう。
ですが、だからと言って、ガリーナがなまえに手を出さないかどうかは、分かりません。
だって、実際、グロスには何の動きもないのです。
そして、いつもローに忠実ななまえが、雨が降っているのに船内へ帰ってこないどころか、洗濯物を濡らしたままどこかに行くなんてあり得ません。
何か事件に巻き込まれた以外には、考えられないのです。
どうしても疑うことはやめられず、どうやって口を割らせようかローが考えていると、ガリーナが先に口を開きました。
「ていうかさ、何熱くなってんの?」
「あ?」
「よくわかんないけど、あの娘がいなくなったってことなんでしょ?
たかだか機械がいなくなっただけで、何を熱くなってんのって言ってんの。」
「アイツは、俺達の仲間だ!!ただの機械なんかじゃねぇ…!!」
ガリーナの胸ぐらを掴む手に力がこもり、さらに強く壁に背中を押しつけました。
痛そうに、ガリーナが顔を顰めます。それでも、彼女は続けました。
「…っ、仲間だと思ってたのは、ロー達だけなんじゃない?」
ガリーナに言われて、ローは眉を顰めます。
ピリッとした空気が流れましたが、彼女は気にせず続けます。
「だって、機械が人間の、しかもよりによってすごく人間臭い海賊の中で
暮らすなんて大変そうだもの。きっと無理してたと思うわ。」
ガリーナが言います。
ローは、言い返す言葉を持っていませんでした。
確かにそうかもしれない——、そう思ってしまったのです。
なまえは、ハートの海賊団の船員としてうまくやっていました。
仲間達との絆も生まれていると感じています。
ですが、夜になると必ず自分の元へ来てバーに誘う姿を見ると、仲間達が寝静まる長い夜を辛く感じているのだろうといつも思うのです。
機械扱いをされていた研究施設の方がいいとは絶対に思いません。
ですが、人間と同じように扱われているからこそ、夜になる度になまえは、自分は仲間とは違うと感じているのではないか——。
なまえに心はないと分かっていながら、どうしてもそう考えてしまいます。
そんなローの心情を察したのか、ガリーナが少しご機嫌に口の端を上げました。
「ねぇ、あの娘より私の方が役に立つと思わない?」
「何だって?」
「私なら、ローの言う通りにできるわ。あの頃みたいにバカな男を誘惑して情報を持っ来てあげるし
ローの身体だって、毎晩でも満足させてあげるわ。
幾らあの娘が高性能のロボットだって、ほら…そういうの、出来ないでしょ?」
ガリーナが、少しだけ眉尻を下げて言いながら、ローの頬を撫でました。
小馬鹿にしたような言い方が、やけに癪に触って、ローは、反吐が出そうでした。
なまえのことをどんな風に悪く言われても、彼女の船長として腹が立ったでしょうが、その中でも一番最低な言い方はどれかと言われたら、それは今ガリーナが、暗になまえは仲間としてだけではなく女としても無能だと罵りながら、自分の女としての株を上げるために言ったそのセリフだったのです。
怒りのままにガリーナの胸ぐらを掴みあげたローは、苛立ちをぶつけるように、軽い身体を近くのソファに投げ捨てました。
5人掛けほどの大きなソファに、ガリーナが背中から落ちるとドンッと大きな音が響きました。
痛みに顔を歪めるガリーナをよそに、ローは右腕を前に伸ばし、Roomを唱えます。
豪華な広いリビングが、ドーム状のサークルに包まれました。
「スキャン。」
妖刀〝鬼哭〟の柄を上にして持ったローは、それを横にスライドさせました。
スキャンとは、サークル内にある目的物を文字通りスキャンして探し出す技です。
そして、ローはすぐに、リビング奥にあるクローゼットの中にある毛皮のコートを見つけました。
ペンギンからも、ガリーナと思われる女が、毛皮のコートを着ているなまえに手をあげようとしていたのを見たと報告を受けていました。
だから、もしも本当にガリーナが犯人なら、必ずこの部屋にあるはずだと思ったのです。
これで、ガリーナへの疑いが確信に変わりました。
ハッとして、ガリーナがすぐにクローゼットに走りました。
そして、ローに奪い返される前に、クローゼットの中に仕舞っていた毛皮のコートを腕にしっかりと抱きしめます。
「それはなまえのだな。どうしてお前が持ってるか説明しろ。」
「これは私の!!」
「俺がアイツに買ってやった。この街にそれは1つかねぇって話だ。
お前がそのコートを欲しがってたことも把握済みだ。」
「…っ、分かってたなら!!どうして、私じゃなくてあのロボットに買うの!?
私は、自分のものを返してもらっただけよ!!私は悪くない!!」
ガリーナがヒステリックに叫びました。
まるで理屈の通じない子供のようです。
なまえなら、こんな風に声を荒げることなんかしないのに——。
ふ、とローの頭に浮かんだのは、『私はローの大好きな人です。』と無邪気に言ったなまえのいつもの澄ました表情でした。